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ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


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40 ギルドマスターはスカートをめくります

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!

「……うん、やっぱりない」


 宿屋の二階という設定状況にあるギルドルームは、このあいだマメにもらったギルドルーム購入券と引き替えた場所。

 結構な広さがあって自由にレイアウトできるんだけど、今は会議室みたいな無機質状態でガランとしている。

 バザーで安く見つけてきた木製のテーブルと椅子を何脚か並べただけなんだけど、どうもこれ、鍛冶職がスキル上げで作ったものみたい。

 そんなスキルがあることにもビックリだけど、ひょっとして、探せばソファとかも売ってるんじゃない?

 今度マメに相談してみようと思うんだけど、そのギルドルームでウィンドウを開いていたわたしは、公式のサイトを隅々まで目を通して一つの結論を出したところ。

 思わず声に出しちゃったところに反応したのはトール君。


『グレイさん、何かあったんですか?』

「ちょっと調べ物をしていただけ」


 そういえばカニやんがピンときたみたい。


『このあいだのノブナガ?』

「そそ。

 こっそり修正告知(アナウンス)出してたんじゃないかって思ったんだけど、サイトのどこを見てもなかった」

『残念。

 草臥れ儲けのお疲れ様』

『あの……ノブナガ、の~りんさんたちが行ってると思います』


 トール君、そんなに遠慮がちに言わなくても大丈夫よ……って思ったんだけど、その理由を、本人たちが自己申告してきた。


『こらトール!』

『言うんじゃねぇ!』


 ……あ~そういうこと。

 つまり、今日はまだりりか様がログインしていないのをいいことに、脳筋オッサンコンビがシャチ銀を脱走して琵琶湖まで散歩してるのね。

 あの二人には色々やってくれた罰ゲームに、りりか様のレベル上げの手伝いを言いつけてあるんだけど、まぁりりか様がまだログインしてないのなら別にいいんだけど。

 それにの~りん一人じゃ無理だしね、ノブナガは……って思ったら、また……


『ココちゃんさんも一緒、のはずです』


 うん、だから別にトール君が悪いことしてるわけじゃないから、そんなに遠慮がちっていうか、申し訳なさそうに言わなくていいんだって。

 そうしたら急にカニやんが直通会話に切り替えてきた。


『最近あの二人、ずっと一緒なんだよ』

「別にいいんじゃないの?」

『……噂じゃの~りんが(コク)ったらしい』

「あら、そうなの?

 で? で?」

『やっぱ好きだね、こういう話』


 ちょっとカニやん、なんで笑うのよ、もう!

 つまりさっきのトール君の、あの申し訳なさそうな物言いはこの噂を知ってるからね。

 恥ずかしいお年頃って、初々しいわ。

 とりあえずカニやん、早く先を話しなさいよ!


『返事はまだだってさ』

「なんだー……」

『グレイさん、それ、どっちに期待してるの?』

「もちろん上手くいくほうに決まってるでしょ」

『あーやっぱりそっち』


 他にどっちがあるっていうのよ?

 ちょっとなによ、カニやんはの~りんが振られるほうを期待したわけ?

 人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られてしまえ!


『痛いのは嫌です』

「じゃ、なに?

 カニやんもココちゃんが好きとか?」

『……なんか、最近そんなのばっかりだな』

「そうなの?」

『このあいだ、マメにも似たようなことを言われた』

「で、なんて答えたの?」

『うるさいんですけど?』


 自分でも食いつきすぎって思ったけど、凄く邪険に突き返された。

 こう……ちっとも照れないのがカニやんらしいんだけど……面白くなぁ~い!


『なんか不満そうだね』

「うん、不満」

『俺のことなんていいから、自分のことを考えたら?』

「?」

『だからそういうとこ』


 わ、わかんないんだけど……頭を抱えて悩んでたら、いつものように隣にすわっていたクロウに頭を撫でられる。

 ……子どもじゃないんだけど……ま、いっか。

 でも四人が琵琶湖にいるならちょうどいいと思ったんだけど、わたしの検証依頼に脳筋オッサンコンビときたら……


『難しいことはわからん』

『俺、細かいことは無理』


 ……脳筋親父どもめ……実際にやって確かめるだけだっていってるのに無理の一点張り。

 まずは人の話をちゃんと最後まで聞いて、考えて、それから返事をしてくれる?

 話の途中でいきなり 「無理」 とかいうのはやめてよ。


 失礼ね!


 しかも全然難しいことなんて頼んでないのに。

 実際に湖に入ってみるだけでいいのに、これのどこが難しいのよ?

 これのどこが細かいのよ?

 いい? 断りたいならその理由を、400字詰め原稿用紙1枚以内にまとめなさい。

 細かいとか、難しいっていうのはこういうことをいうのよ!


『んじゃ、行く?』

「どこに?」

『もちろん琵琶湖。

 こっち、トール君とマメがいるけど』

『マメは行きませーん!

 ジャック君たちと銅に潜ります』


 ジャック君は、双子やゆりりんと一緒にシャチ銅に潜ってるから、カニやんとトール君が琵琶湖に行くなら、マメは年少者パーティーに合流したいってことね。

 最近ゆりりんが保育士さん状態になってるんだけど、たまには交代したほうがいい?

 そう思ったんだけど、ゆりりんは聖女なのよ。


『のんびり回れて楽しいですよ』


 ……だって。

 ほんと天使様!

 ありがとう。

 今度、レベル上げとかクエストする時は言ってね。

 最優先でお手伝いするから!


「だいたいココちゃんって、中学生くらいじゃないの?」

「そうなんですか?」

「いや、知らんけど」


 なによカニやん、その無責任な 「知らんけど」 って……。

 ナゴヤドームを出て琵琶湖に向かう途中、ナゴヤジョーから来た二人と合流したんだけど、唐突にカニやんが話を蒸し返してきたの。

 でもね、自分で蒸し返しながらもうんざりって、どうなのよ?


「の~りんさんって、幾つなんですか?」

「知らん」


 うん、私も知らない。

 知らないけど、大学生以上、新人社会人くらいかなってみてる。

 普段の話し方とか話してることとか、あと顔の感じかな?

 だってそれぐらいしか実年齢を推測できる要素ってないんだもん。

 服装は、ね。

 現実じゃ考えられないような服ばっかりみんな着てるから。

 わたしだってチャイナだし、クロウとトール君は鎧付けてるし、カニやんだって魔法使いらしいローブとか。

 そういえば、裾をからげて走り回ってるのは見るけど、すね毛は確認してなかったわ。


 生えてるの?


 どこまでリアルなのかちょっと確認したくなって……ちょっとした出来心で……カニやんのローブの裾をまくってみたんだけど……あら?

 後ろに引き戻されたかと思ったら地面が遠ざかって……首が絞まるのはなぜ?


「……クロウさん、悪いけど目を離さないでくれる?」

「すまん」


 ……どうしてクロウが謝るのかわからないんだけど、とりあえず、人の襟首掴んで持ち上げるのはやめてくれない?

 この、猫みたいな扱い、やめて欲しいんだけど。

 挙げ句に、琵琶湖湖畔で合流した脳筋親父どもには……


「なにグレイさん、珍しく旦那怒らせたのか?」

「雨降るからやめろよな」

「いや、俺のスカートめくりやがった」


 ちょっとカニやん、誤解……じゃなくて、語弊があるんだけど!

 確かにめくったけど、それ、スカートじゃないでしょっ!

 ちょっと、わざと言ってるでしょ!


「まーた小学生みたいなことしてんのか」

「懲りないなぁ」


 うん、なんかね、悪戯をした男子小学生を叱るみたいな感じになってるんだけど……もうね、すっごい屈辱的!

 なにはともかく、この二人には言われたくない!!


「言われるようなことするからだろ?

 なにめくってんだよ、人の服」

「いや、ちょっとす……」


 ダメダメ、さすがにすね毛なんて言っちゃ駄目よ、わたし。

 よりによってオッサンのすね毛を見たかったなんて、ただの変態じゃない。

 服をめくっただけでこの言われようなのに、すね毛を見たかったなんて言ったらどんな扱いを受けるかわかったもんじゃないわ。

 これ以上主催者(マスター)の立場がなくなるのは、なんとしても避けたい……これ、結構切実だから。

 クロウにぶら下げられながらも色々考えて悶えていたら、カニやんとクロウが顔を見合わせて、二人して大きく溜息を吐くとか……なんでよー!!


「クロウさんにズボン脱いでもらったら?

 俺はお断り」

「それじゃただの変態でしょーが!」

「すでに変態でしょう」

「わたしのどこが変態よ?」

「その発想が」

「ちょっと気になっただけ!」

「グレイさん、喪女かと思ったら痴女でもあったとか」

「ちがーう!」


 どっちも違うから! ……たぶん……うん、少なくとも痴女ではない!

 クロウはクロウで、やっと下ろしてくれたと思ったら……


「脱ぐか?」


 ………………………………………………………………………………………………………………もうね、誰もなにも言えなかった。

 わたしだけじゃなくて、誰も。

 口が利けないどころか、みんな動けなくなるくらい驚いた。

 だってクロウが、よ!

 あり得ないじゃない。

 そもそもこれは冗談なの? 本気なの?

 そこからして全くわからないんだけど、普通に真顔で言わないでよ。

 カニやんなんて


「本物のクロウさん?」


 とか真顔で言っちゃって、思いっきり睨まれてた。

 いや、でもその疑問、わたしも思ったのよ。

 寸前でカニやんが言ってくれたから言わずにすんだけど、一瞬遅かったら言ってたわね。

 危なかった。

 カニやんは睨まれるだけですんだけど、たぶん、わたしだったら拳骨くらい食らっていたはず。

 そんなことを考えてホッとしていたら出たわ、アラートが!


alert 第六天魔王ノブナガ / 種族・幻獣

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