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37 ギルドマスターは襲撃されます

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!


今日も少し早めの投稿です、よろしくお付き合いくださいませ。


末尾に資料整理の 「おまけ」 を付けてみました。

よろしければそちらもお楽しみ下さい。

「アールグレイ、ログインしましたー」

『グレイさん、こんー』

『こんー』


 三日ぶりのログインにちょっとドキドキしてたんだけど、インカムからいつもと変わらないメンバーの挨拶が返ってくる。

 よかった、いつもどおり……


『グレイさん、大丈夫?』

『どこですかー?

 会いたいでーす!』

『もう平気ですか?』


 ……って思ったんだけど、そうでもなかったわ。

 やっぱり心配掛けちゃったわね、ごめん。

 しかもなんか妙にインフォメーションが多いんだけど、何かしら、これ?


information クロウ からアイテムが届いています

information マメ からアイテムが届いています

information ノーキー からメッセージが届いています

information マダム・バタフライ からメッセージが届いています

information ラッキーセブン からメッセージが届いています

information 春雪 からメッセージが届いています

information クロウ からアイテムが届いています

information 運営 からアイテムが届いています

information シシリー からメッセージが届いています

information 運営 からアイテムが届いています

information ローズ からメッセージが届いています

information ………………………………

…………………………… ………………………………


 ……なにかしらね、この量は?

 まだ延々と続いてるんだけど、ざっと目を通して最初のほうは知っている名前が並んでいたんだけど、運営以外には覚えのない名前が出てくるのはなぜ?

 最終的には知らない名前ばかりが並び出すんだけど、なんなの、これ?


『グレイさんのところにもファンレター、届いてるんじゃない?』


 は? ファンレターってなに?

 ちょっと詳しく教えてくれない、カニやん……に訊いたんだけど、いつもの軽い調子でクロエが割り込んでくる。


『なにって、このあいだのイベントを見てファンになりましたーだってさ。

 僕のところにも一杯届いてるよ』

『あの実況、音声入ってなかったらしいから、脳筋コンビにも届いてるんだってさ』


 はぁ……なに、それ?

 うん、まぁ脳筋オッサンコンビだってね、あのアホさを出さなければ格好いいのよ。

 ただね、ろくなことを考えないのと、ろくなことを言わないって難点があるだけ。

 で、この話を知ってるってことは、クロエのところにも届いてて、カニやんのところにも届いてるってことね。

 ということは、もちろんクロウにも届いてるってことよね。

 ……あら? 珍しく本人がいないじゃない。


『そういえばクロウさん、まだログインしてないんだ。

 グレイさんより遅いとか、珍しいね』

『一人ってことはグレイさん、ちょっと気をつけたほうがいいよ』


 この時、カニやんの警告に従ってさっさと移動してればよかったんだけどね、ちょっとうっかりしてて、広場に居続けちゃった。

 とりあえずメッセージを、知り合いから届いている分だけでも確認しておこうと思ったんだけど……イベント当日、うっかり受け取り忘れていた分から昨日まで、クロウからきっかり四本、HPポーションが届いていた。

 ほんといつまで続くのよ、この罰ゲーム。

 まだ使い道が浮かばなくて溜まる一方なんだけど……。

 で、五本目がまだ届いていないってことは、やっぱり今日はまだログインしていないみたい。

 それから……マメからメッセージ? ……と思ったら、アイテム?

 またこんな無駄遣いして、なにを考えてるんだか……


「ねぇマメ、このギルドルーム購入券はなによ?」

『プレゼントでーす』


 プレゼントって、あんたね……誰かとどこかに潜っているらしいマメ。

 まだステータスの振り直しはしてないらしいんだけど、とりあえず今日も楽しく遊んでるみたいね。

 うん、結構……それはね。

 問題はこのギルドルーム購入券よ。


『それでギルドルームを購入してー存分にクロウさんとイチャコラしてくださーい』


 ……殺す


 どんなお仕置きをしてやろうかと思ったら、それを邪魔するみたいにカニやんとか、どこかにいるらしい脳筋コンビから怒濤の反論が返ってきた。


『マメ、てめー!』

『このあいだ、そんなんじゃねーとか言ってたくせに!』

『汚ねーぞ、この野郎!』

『マメは女でーす、野郎じゃありません。

 今はクロウさんいないから、平気でーす』

『おんま、計算ずくかー!』

『お前も対人エリア(フェイト)行って来いやー!』

『ぶった斬られろ!』


 このあとも延々と喧々囂々。

 どうもわたしが休んでいるあいだになにかあったらしいんだけど、誰かこの状況を説明してくれないかしら?

 そんなことを思っていたら、双子を連れたゆりりんが通りかかった……というか、これからどこかに行くところだったみたい。

 武器屋と薬屋に寄って必要な物の準備を終えたところだって。


「ギルマスー」

「ギルマスだー」


 うんうん、今日も双子は可愛いわね。

 結構派手な髪色をしてるけど、顔つきはちょっと幼い。

 小学生ってことはなさそうだけれど、高校生ってほどでもないかな?

 本人たちも中学生ってバラしちゃってるし、言ってることとかもそれっぽいし。

 これで社会人だったら、ビックリな童顔ね。

 きっと一部の人たちから、物凄く(あが)(たてまつ)られると思う。

 もののついでってことで、いつものように清楚なゆりりんが、わたしが休んでいるあいだのこと……つまりこの状況について教えてくれた。

 もちろんこのギルドルーム購入券に関わるやりとりを、ね。


「……ひどい、カニやんまで一緒になって……」

『グレイさん、それ、誤解だから。

 俺にはマメの考えがわからない』


 大丈夫、わたしもわからないから。

 理解出来たら一緒になって悪ふざけしそうだから、むしろわからないままでいて欲しい。

 わたしも、わからないままでマメの個性を楽しむから。

 とりあえずこのギルドルーム購入券はありがたく受け取らせてもらうわ。

 これ、券は誰でも購入できる課金アイテムだけど、実際にギルドルームと引き替えられるのは主催者(ギルドマスター)だけっていう不備があるのよ。

 しかも、当たり前のことだけど購入後の返品は不可。

 まぁこれは他の課金アイテムにもいえることなんだけど……つまりマメに返してもどうしようもないのよね。

 みんなで使える休憩所兼ミーティングルームとかあってもいいと思うし、今回はありがたく頂戴するわ。

 でも三枚って……


 無駄遣いして!


 時間を見つけて適当な広さのギルドルームを探しに行くってことで、とりあえずこれはこのままポストに保留。

 こういう時は、やっぱりクロウやクロエ、カニやんとも相談よね。

 みんなの意見も聞いたほうがいいかしら?

 ……そこから三人と打ち合わせるわ。

 あとは……運営からのアイテムね。


item 修験の書(1・5倍) / 譲渡不可

item 修験の書(2倍) / 譲渡不可

item 装備引換券 / 譲渡不可


 修験の書って、確か効果時間中の経験値が倍増するやつよね。

 これ、りりか様が使えば 「レベル30の壁」 も越えやすくなるんじゃない?

 ちょうど今、脳筋オッサンコンビ柴さん、ムーさんにの~りん、ココちゃんとシャチ銀に潜ってるっていうし、さっそくりりか様のポストに送ろうと思ってウィンドウをポチったんだけど……あら? エラー? 送付できませんでした……って、なんで?

 もう一回挑戦したんだけど、やっぱり送付できないって……だからなんで?


「ねぇ、この修験の書って送付できないの?」

『イベント報酬の?』


 答えてくれたのはカニやん。

 他のメンバーとは違って、フレンドとダンジョンに潜ってるんだって。


『それさ、譲渡不可って書いてない?』


 ……書いてあるわね、うん。

 カニやんには 『ちゃんと見て』 って笑われちゃった。

 システムの不具合じゃなくて、わたしのうっかりね、了解。

 これはつまり運営の、あくまでも参加者にしか恩恵はあげないっていう主張ね。


 ケチ……


 その修験の書が二つあるのは、参加賞で1・5倍、生存者(サバイバー)には2倍だって。

 この装備引換券は優勝賞品ね。

 うん、ま、これは譲渡不可でもいいかな。

 あとで公式サイトでも見てゆっくり選びましょっと!


 楽しみ


 ちなみにわたしが 【経験の書】 をりりか様にあげようとしたことは、クロエとカニやんには読まれてた。

 しかもクロエには 『お人好し』 とも言われちゃったし。

 放っておいてくれる。

 そのクロエはトール君、マコト君と琵琶湖湖畔を散歩中。

 言わなくてもわかってると思うけど、ノブナガには気をつけてね……っていうか、そこを散歩してるってことは、ノブナガを探してるってことじゃないの?

 パパしゃんとマメは、アイテムを買いにナゴヤドームに戻ってきたゆりりんと双子を待ってる最中っていうから、シャチ銅に潜る予定かな?

 まだ双子のレベルじゃ、シャチ銀は無理だもんね。

 じゃ、わたしは残りのメッセージに目を通そうかなって思ったんだけど、邪魔が……。


「見つけたぞ、アールグレイ!」


 はい、見つかったわ。

 なにか用かしら、ローズ。

 いきなり呼び捨てはやめてくれる?


「今日こそクロウ様を、あんたの魔の手から解放する!」


 うん、今更ってくらいいわれ続けてるけど、人聞きの悪いこといわないでくれる?

 しかもそのセリフ、もう聞き飽きたし、言われるたびに言い返すのももう飽きたし。

 あんたの目的はわかったから、いい加減、わたしじゃなくて直接クロウに交渉してくれない?

 わたしじゃどうしようもないんだから。


「しかも果たし合いの約束をすっぽかすとか、何様のつもりだ?」


 うん? そんな約束した覚えはないんだけど……あ、これか。

 お休みしているあいだにメッセージが届いてたわね、確か。

 ちょうど開いていたメッセージリストの中に、確かにローズの名前がある。

 このままだとウィンドウを叩き割られそうなので……無理だとは思うけど、彼女はやりかねないのよね。

 とりあえずウィンドウを閉じる。

 これ、ローズピンクっていうの?

 かなり派手な濃いピンク色の髪に、独創的な髪型をしたローズは、すでにお察しいただけてると思うけれどギルド 【特許庁】 に所属している剣士(アタッカー)

 課金カスタマイズだと思うんだけど、薔薇の蔓を思わせる柄の描かれた、とっても独創的な黒いビキニアーマーとか着てるのよね。


 若いわ……


 わたしなんて、もうショーパンですら穿けないとか思ってるのに、なに、その露出の高さ。

 しかもマントとかを羽織って隠そうともしてないとか……あ、でも胸はわたしのほうが……ゲフゲフ……なんでもありません、今のはなしで。

 【特許庁】 の中じゃそれほど目立たないけれど、こういう街中じゃね、すっごく目立つのよローズってば。

 しかも大声を張り上げるもんだからあっという間に人だかりが出来て、ちょっとした騒ぎになっちゃってる。

 これはどう収めたもの?

 こんなわたしの心中などお構いなしのローズは、さらに声を張り上げるのよ。


「すっかり有名人になって、いい気になるなよ!」

「なってません。

 わたしにだって都合ってものがあるんだから、勝手なことをいわないでくれる?

 ちょっとお休みしてて、メッセージを見てなかったのよ」

「うるさい、黙れ!

 これでも食らえ!」


 誰が食らうか!


 ほんと、自分勝手なんだから。

 なるべく平静を装って正論で返したら、口ではかなわないとでも思ったのか、ローズがいきなり剣を振り上げてきた。

 ここにも単細胞脳筋がいたわ。

 剣士(アタッカー)がみんな脳筋だとは思わないけど、思いたくなるくらい脳筋が多いのはわたしの周りだけ?

 しかも 「食らえ」 なんていわれて黙って食らうわけないでしょ?

 それとも 「食らう」 のが当たり前だと思ってるわけ?

 あんた、そういうプレイをクロウに求めたって無駄だからね。

 ほんと、絶対無駄だから。


 保証するわ


 あの愛想の悪いクロウが、そんなくだらないプレイになんて絶対付き合ってくれるもんですか。

 そういうのだったらむしろ、 【特許庁(あんたんとこ)】 のギルマ……いやいやいや、なんでもない、なんでもありません。

 下手にあの人のことを考えたら本人登場……とかしそうで怖いからやめておく。

 とりあえず、わたしに大人しく斬られるつもりはないの。

 ここはPKエリアじゃないから魔法を発動させても効果はないし、MPも減らない。

 同じように効き目はないんだけどね、ローズは剣士(アタッカー)だから。

 HPこそ減らないし、痛みとかもないんだけれど、斬ることは出来るのよ。

 どうも彼女は公衆の面前でわたしを斬って勝利宣言をしたいみたいなんだけど、そんなことをしてどんな意味があるっていうのよ?

 イベント終了後すぐにログアウトしたわたしは重装備(チャイナ)のままだったんで、杖を(こん)の代りに、打ち込んでくるローズの剣を受ける。

 右から、左から、また右から……ローズが剣士(アタッカー)としてはどのくらいの位置にいるのかわからないんだけど、攻撃はわりと単調で受けるのは苦じゃない。

 例え斬られてもダメージは受けないけれど、黙って斬られるのは性に合わないっていうか、その、なんていうか……


 とっても不愉快


 AGIはわたしの方が上かな?

 日頃からトッププレイヤーのクロウを間近に見ているおかげか、全然彼女の動きが速く見えない。

 速いどころか、なんとなく動きが読めるというか、先がわかるっていうか。

 これだったら 【素敵なお茶会(うち)】 の脳筋オッサンコンビのほうが、全然速いし格好いいわね。

 もちろん速さや格好良さだけが問題じゃないんだけど、とりあえず対応は間に合ってるし、上手く隙を衝けばわたしからも打ち込める。

 それが余計にローズを怒らせてるんだけど、怒れば怒るほど攻撃が単調になる。

 でもわたしにはSTRがないから重いのよ、ローズの一撃一撃が。

 しかも大振り。

 もうね、わたしへの恨みを込めて渾身の力で撃ち込んでくる感じ。

 でもこのあいだ対峙したノギさんの剣と比べれば全然軽いし、怒りの形相で睨まれても全然怖くないのよ。

 でもこれ、いつまで続ければいいの?

 そろそろ腕が痛くなってきたってことで、仕掛けてみた。

 ステータスの差は埋めがたいんだけど、渾身の力でローズの剣を払いのける。

 クロウを真似て大剣を使うローズは大振りだから、次の攻撃に移るまでに少し掛かる。

 素早く身を屈めたわたしはローズの足を引っかけて体勢を崩させると、そのままみぞおち辺りを狙って杖で突……え? なに?

 いきなり背後から腕を掴まれて……なに、これ?

 …………………………えっと…………いきなり背後から抱きすくめられて身動きがとれなくなっちゃったんだけど……うしろ、誰……?

 状況が理解出来ずに硬直するわたしは、後ろから耳元で囁かれる。

 直後、わたしの背筋を耐えがたいほどの悪寒が走った。


「俺、強い女って好き」

「……ぃ……ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃーっ!!」


 ……さっき、チラッとでもこいつのことを考えたの悪かったのね、きっと……


登場人物:アールグレイ / 女性型・魔法使い / 白いロングヘア 瞳は紫


ギルド 【素敵なお茶会】 の主催者で、灰色の魔女の異名を持つ最強の魔法使い。

年齢的に露出は無理ということでチャイナドレスの下にズボンを穿き、マントを羽織って二の腕も隠すサービスの悪さ。

同じ理由で化粧(課金カスタマイズ)もしている。

【焔蛇】 のスキル3つを取得している稀少なプレイヤーで、【業火】 と 【焔獄】 を愛用。

他にも攻撃系のみならず、回復系など数多の大技を取得している重火力の魔力タンク。

魔力吸収スキルを保持するため、基本的に物理攻撃でしか落とせない難物。

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― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!ひ~ けいさつかんさ~ん、変態がわきましたぁぁぁぁぁ~
[気になる点] 生存者には2倍ねぇ...しっかり生存者扱いになったのだろうか... [一言] ここまで沢山VRゲーム小説を読んできたけどここまでしっかりMMOしてるゲーム小説は中々ない、とても気に入り…
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