表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

365/808

365 ギルドマスターは童心に返ります

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 わたしの選択肢は幾つあったのだろう?

 それすら分からない状況は、わたしに選択する余地も与えてくれなかった。

 なぜならばルゥが、嬉々として 【グリーン・ガーデン】 v.s. 【アタッカーズ】 の戦場に向かって行っちゃったんだもの。

 ちょっと待って、ルゥ!


 おいていかないでぇ~!!


 いつもながら情けないお話で申し訳ございません。

 ここでルゥを見失ってしまうと、たぶん探すことは不可能になる。

 もちろんまた回収すればいいんだけれど、とりあえずここは追いかけます。

 【グリーン・ガーデン】 のメンバーも 【アタッカーズ】 のメンバーもルゥのことを知っていて、プレイヤーたちの激しい戦いなど意に介さず、軽快な足取りで戦場を駆け抜けてゆくルゥに気付くとみんなが手や足を止める。


「あ、あの犬」

「女王様の犬」

「ワンコだー」

「うわ、犬!」


 まぁそんなことを口々にいいながら、あの短い足で、まるでスキップでもするようにリズミカルな足取りで駆け抜けるルゥを見る。

 正しくは犬じゃなくて、ワンコでもなくて(フェンリル)なんだけどね。


「みんな、お邪魔してごめんなさい。

 すぐ、すぐ通り抜けるから」


 ほんと、ごめんなさい。

 二つのギルドメンバーにぺこぺこと頭を下げながら、頑張ってルゥを追いかけるわたし。

 もうね、さっきまでのシリアス展開はどこに行ったのか、不思議なくらいのコント状態よ。

 情けなくって情けなくって涙が出そう。

 ちょっと涙でルゥのお尻が滲んじゃう。


 尻尾が……


 たまにルゥにちょっかいを出そうとするプレイヤーもいるんだけれど、そこは 【幻獣】 だから。

 しかもルゥってば残念なAI搭載のくせに、なぜか戦闘能力だけは高いのよね。

 さらにはプレイヤー相手にはちゃんと加減をしていて、冗談半分にルゥを捕まえようとして行く手に立ち塞がるプレイヤーには、寸前で直角にコースを変更して躱すという超上級スキルを発動。

 まるで忍者のように素早い身のこなしはお見事。

 あまりにも速くて、一瞬分身したように見えたくらい。

 躱されたプレイヤーの両腕は空振りをして、自分で自分を抱きしめるという虚しい結果に……。


 ちょっと同情


 ちょっとだけよ、もちろん。

 だってルゥはわたしのものなんだから、もっふりを堪能していいのはわたしだけで、わたしだけの特権です。

 でもその特権と引き替えに情けないコントを披露する羽目になり、半泣きになりながらもルゥを追いかけ、もうちょっとで目的の階段に辿り着けると思ったところであなぐまさんに声を掛けられた。


「そういえば陛下、うちのギルマスを見ませんでしたか?」


 そういえば出会ったわ。

 しかもロクローさんを探しに来るだろう 【アタッカーズ】 の本隊を避けてこちらの道を選んだつもりが、ばったりバッチリ出くわすっていうね。

 【グリーン・ガーデン】 というおまけ付きで。

 さらにはわたしの口が滑るといううっかりまでが付いてきた。


「ロクローさんなら、さっきわたしが落と……」


 やばい!!


 自分のうっかりに気づいた瞬間、全身の毛穴から汗が噴き出したと思う。

 久々に汗染みが気になる。

 こんな真冬に汗染みが気になるなんて、わたしの交感神経、どうかしちゃったんじゃない?

 あら? 発汗は副交感神経だったかしら?


 まぁいい


 なぜならば今はそれどころじゃないから!

 途中で気がついて、慌てて口を押さえたんだけれど遅かった。

 うん、まぁ 「落と……」 まで言っちゃえば続きに来る言葉なんて簡単に想像がつく。

 だって今はイベントの真っ最中で、ここはPKが可能なイベントエリアだもの。

 たぶんあなぐまさんも、ロクローさんが落ちていることは知っているんだと思う。

 マップから位置情報が消えちゃうからね。

 でもピンポイントでわたしに訊いてくるなんて、とんでもない罠だわ。

 まんまと引っ掛かっちゃったじゃない。


「いえ、アンジェリカにも訊いたんですけど、見掛けてないそうなんで」


 ん? でもそのアンジェリカさんがいないんだけど? ……と思ったら、フレデリカさんが教えてくれた。


「親切に答えてやったのに、用済みとばかりにバッサリ斬りやがって!

 このド腐れ野郎!」


 …………可愛い顔してなかなかの言葉遣いね、フレデリカさん。

 うん、まぁわたしも時々荒れるから人のことは言えないけど。

 それにしてもあなぐまさんって、結構な不破さんタイプだわ。

 もちろんあなぐまさんにはあなぐまさんの言い分がある。


「詠唱を始めるから斬るしかない」


 これはどっちもどっちね。

 で、結果としてわたしはその両方のギルドから追われることになった。

 わたしがロクローさんを落としたと知った 【アタッカーズ】 のメンバーが、あなぐまさんを筆頭に追いかけてきたのが最初だったんだけれど、そのあとを、主催者(アンジェリカさん)を落とされた 【グリーン・ガーデン】 が追いかけている状態。

 そんなわけだから 【グリーン・ガーデン】 が追いかけているのは、正しくはわたしじゃなくて 【アタッカーズ】 というか、あなぐまさんというか……どっちでもいい問題よね、これ。

 まぁわたしじゃない、これは間違いない。


 【素敵なお茶会】 同様、様々な(クラス)のメンバーを持つ 【グリーン・ガーデン】 はともかく、剣士(アタッカー)のみで構成される 【アタッカーズ】 は足が速い。

 これを振り切るのは難しいんだけれど、せめて追いつかれないようスキルでその足を止める。

 通路一杯に範囲魔法を掛けると、スキルの影響を受けるプレイヤーはその効果時間内は硬直して動けない。

 その硬直時間を利用して少しでも逃げる、逃げる、とにかく逃げる。

 でもこれ、絶対に振り切るのは無理。


 だるまさんがころんだ


 もちろん 【ぼうさんがへをこいた】 でもいい。

 結構いい人数でそんな感じの状態になっているんだけれど、童心に返って楽しむどころか全然楽しめなくて、いつ追いつかれるかハラハラドキドキよ。

 絶対にワクワクはない。

 こういうのをお尻に火が付いた状態っていうのよね。


 かちかち山


 あれは背中だっけ? ……感覚的に大差ないとみた。

 でも火が付いているのはわたしだから、わたしは狸か。

 結果的に狸は大やけどを負うけれど、どうせ焼けるなら、こう……燃えるような恋というものをしてみたい。

 火遊びは絶対に出来ないタイプだって自覚があるのでそこは諦めるけれど、どうせ火傷するなら身を焦がすような恋とか、そういうのに憧れます。

 改めて気がつけば、この歳になって初恋もまだという……落ち込む。

 でも背後から来るご一行様が少しずつ間合いを詰めてきているから、おちおち落ち込んでもいられない。


 忙しすぎる!


『いい加減童心から離れなよと思ったら、急に大人になるわけ?

 しかも初恋もまだってどんな喪女だよ』


 何度も言いますが、わたしは自立した立派な成人です。

 大人です。

 喪女具合については……自覚に欠けておりました点を反省いたします。


『そこまで喪女って、記念物だね』

『危険物の間違いだろ?』

『ギルマスって初心(うぶ)っすね』

『あの、たぶん俺もまだです……』


 みんな、どこにそんな余裕があるのか言いたい放題なんだけれど、最後のはもちろんトール君です。

 ここで同士! と固く握手を交わせないのは、わたしがトール君よりだいぶん歳上だからです。

 現役男子高校生と23歳OLとでは、全然意味も価値も立場も違うんだもの!!


『はいはい、泣くのはあとにして。

 ワンコ、そっちに行かせてやったでしょ?

 ちゃんと連れてきてる?』


 うん、大丈夫。

 一緒に 【だるまさんがころんだ】 の鬼をしてくれているから。


『グレイさんの位置確認出来たけど、そのまま来る?』


 うんざりしているカニやんの声は、【鷹の目】 との膠着状態が思わしくないことを示唆している……と思う。

 訊いても、どうなっているか教えてくれないんだもん。


『教えたって対処出来ないでしょ?

 それどころじゃないんだから』


 頑張って走りながらイベントウィンドウを確認してみたら、このまま行けば 【素敵なお茶会】 の本隊と合流出来そうなんだけれど、引き連れたご一行様丸ごと合流することになる。

 しかもマップの位置が悪く、このまま突っ走れば 【鷹の目】 の背後から合流することになる。


 無理ゲー


 だって 【鷹の目】 は 【素敵なお茶会】 の本隊とわたしで挟撃に出来るけれど、わたしは引き連れてきたご一行様と 【鷹の目】 に挟撃される。

 どう考えても無理ゲーでしょ、これは。

 一応マップは確認したけれど、こういう時に限って一本道……といっているあいだにも 【鷹の目】 の後方を守る剣士(アタッカー)が見えた。


「後方から灰色の魔女が接近します!」


 エリアチャットだから、この距離なら他のギルドメンバーの会話も丸聞こえ。

 しかも主催者のセブン君への報告だったからか、一際大きな声を出しちゃって。

 おかげで後ろから来るあなぐまさんたちにもバッチリ聞こえていた。


「前方に別ギルド!」

「火力を分散させるな!」

「【素敵なお茶会(おちゃかい)】 の本隊かっ?」

「射撃注意!」

「うしろからも来てる、注意しろ!」


 色んなプレイヤーの色んな声や言葉が混じる中、銃弾が飛んできて魔法も飛んでくる。

 銃弾に関しては射線を切る以外に防御する方法はないけれど、魔法攻撃はあえて受けることにした。

 ここに来るまでに 【だるまさんがころんだ】 で、散々範囲魔法を発動してかなりのMPを失っているからね。

 常時発動(パッシブ)スキル 【愚者の籠】 でMPを回復させてもらう。

 追いついた 【アタッカーズ】 の剣士(アタッカー)たちをスパークで弾き返しつつ、柱を使って 【鷹の目】 の射線を切る。

 すぐに 【グリーン・ガーデン】 もなだれ込んで来て、さらなる混戦が広がる。


 凄い密集


「新手は相手にするな!

 【素敵なお茶会(おちゃかい)】 を押して離脱する!」


 セブン君は、あとから来た二つのギルドの正体を知らない。

 だから一つのギルドだと思い込んでいる節がある。

 この指示から推測しても、多分そうだと思う。

 そこで数的に不利と見て、優位とは言えなくとも 【素敵なお茶会】 方向に離脱するほうが損害が少ないと判断したのね。

 舐められたものだわ。


 でも駄目よ。

 セブン君には悪いけれど 【素敵なお茶会(わたしたち)】 のため、【鷹の目】 には全滅必死の盾になってもらうわ。

 だから逃がさない。


 絶対にね……ふふふ

まだ終わらないクリスマスイベント!

・・・このまま節分まで突っ込むか・・・(汗

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ