表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

344/808

344 ギルドマスターはクリスマスチキンを作ります

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 タマちゃんがルゥよりしなやかな身のこなしとわたしは言ったけれど、決してルゥがタマちゃんより弱いわけじゃない。

 そもそもルゥはNPC最強の 【幻獣】 で、タマちゃんがハイスペックの 【妖獣】 だったとしても 【幻獣(ルゥ)】 には勝てないように作られている。

 ごめんね、タマちゃん。

 でもこればっかりはどうしようもないのよ。


 ただお猫様だけあってタマちゃんの身のこなしは、とってもしなやかでスピーディ。

 比べてルゥはワンコ……じゃなくて(フェンリル)

 しかも全身を酷い癖っ毛に覆われていて、モッフモフの魅惑的なボディ……じゃなくて、いや、モッフモフの魅惑的なボディをしているのも事実なんだけれど、スリムというより筋肉質のがっしり型。

 だから戦い方もパワフルでスピーディ。

 時々お茶目なポーズを決めながら、油断をしているキュ○ピーもどきの羽根を食い千切ったりと残虐なことをしてみせる。

 ルゥったら、こんなに可愛いのに本性はとっても残虐なのよね。


 ワンコとお猫様の違いかしら?


 その違いを見ていてちょっと思ったことがあるの。

 脳筋コンビとカニやんの戦い方、その姿というか、その雰囲気に似ているなって。

 あ、でもタマちゃんと違って、カニやんは自由気ままには動かないけどね。

 しっかり二人を援護してるわよ。

 そんなわたしたちの前に現われたのが、初実装となった 【聖獣】。


alert 大天使ウリエル / 種族・聖獣


「大天使っ?」

「聖獣って……」

「また(いか)ついのが来たな」


 初めて見る 【聖獣】 にメンバーが口々に感想を漏らす。

 それは驚きだったり、疑いだったり、あるいはいつもと変わらなかったり。

 

 不意になにもない空間が歪んだような気がしたと思ったら、その歪みの中から姿を見せる中性的な天使。

 キ○ーピーもどきの天使とはサイズもデフォルメ全然違う、宗教画に出て来そうなお姿をした天使様が現われた。

 それこそ針金で支えているんじゃないかと思わせるキュ○ピーもどきの天使の輪とは比べものにならない、眩いほどに輝く天使の輪っかを頭上に戴いて。


 ちなみに柴さんが 「厳つい」 といったのはそのゴージャスな感じのことだと思う。

 天使に性別はないって聞いたことがあるんだけれど、確かにわたしたちの前に現われた大天使ウリエルは中性的。

 モデルにした絵がそうだったんだと思うけれど、長い髪に柔和な顔立ちをしている。

 おかげで気迫のようなものはないんだけれど、全長はクロウより大きいから二メートル以上あると思う。

 そしてそれが大きくて立派な、それこそキュー○ーもどきの天使が付けたちっぽけな翼とは比べものにならないくらい大きくて立派な翼を、ばっさばっさと羽ばたかせ、頭上には神々しいほどの金輪を戴いてわたしを見下ろしている。


「起動……焔獄(えんごく)

「下がれ、グレイ」


 わたしを庇うように、大天使様とのあいだに立ちはだかるクロウ。

 その動きより一瞬速く放った焔獄は、確かに大天使様に当たった。

 けれどダメージは出なかった。

 さらりともHPが流出しなかったの。

 つまりこれはあれよね。


 魔法攻撃無効


「女王、こそあど言葉が増えるのは歳の証拠だぞ」


 うるさい!


 わたしはまだ23よ。

 30オーバーの柴さんにはいわれたくありません。


「脳年齢の話な。

 俺らもそっち行くか?」


 どうしようかな。

 えっと、悩んでいる暇もないんだけれど……と思いつつもわたしが戸惑っているあいだに、柴さんじゃなくてムーさんが大天使に向かって飛びかかっていた。


 一見丸腰に見えるウリエルなんだけれど、手にはトーチのような物を持っていた。

 でもそこから、ムーさんが飛びかかった刹那に焔が吹き出して(やいば)となり、剣となる。

 そしてムーさんの剣を易く受け止める。


「こいつ、かった!」


 金属でもないくせに、ウリエルの剣はムーさんと(やいば)を合わせた瞬間に剣戟を響かせる。

 そして互いに引かず……と思いたいけれど、大天使ウリエルはアラートが出る程度には強力な等級(クラス)

 初対面のわたしたちに 【聖獣】 の性質はわからないけれど、アラートが意味するところはたぶん種族に関係なく共通だと思う。

 そして案の定、じわりじわりと押されるムーさん。

 このままじゃ押し返されるのも時間の問題。


「そこの筋肉、自慢の肉が泣いてるぞ」

「泣きてぇのは俺!」

「むっさい男泣きなんぞ見たくない」


 ムーさんを馬鹿にしつつも援護するカニやんだけれど……あら? 魔法攻撃は無効だったはずじゃあ……?


 おかしいわね


 確かにさっき、わたしが放った焔獄は通じなかったはず。

 それこそさらりともHPの流出はなかったのよ。

 なのにカニやんが放った 【氷雪乱舞】 はヒット。

 ただ魔法耐性が高いのか、貫通攻撃の直撃だったはずなのにダメージが低い。

 ようやくのことでサラッとHPが流出した感じ。


 さすが大天使様


 腹が立つくらい耐性が高い。

 ムーさんも腹が立つくらい運動神経がよく、巻き添えを食わないよう素早く身をかわしていた。

 無数の(つぶて)が飛ぶんだから、一つ二つくらい食らえばいいのに。

 でも一つとして食らわないのがランカーなのよね。

 本当にムカつく。


「なんで俺がヘボの攻撃を食らうんだよ」


 わたしに言い返しつつも、ムーさんはカニやんを見てべっと舌を出している。

 そして再び大天使に斬り掛かるんだけれど、相棒の柴さんはどうしたのよ?

 そもそもいつもなら、ムーさんが力比べになった時点で柴さんが横槍を入れてムーさんの後退を助けるはず。

 その柴さんは何処で何をしているのよ? ……と思ったら、大天使の背後に回り込んでいた。

 そうして後背から狙うつもりなのかと思ったら、全然違うことを考えていたっていうね。


 スカートめくり


 ………………あ、いけない。

 柴さんが、大天使様のスカート……じゃなくてローブの裾を持ってまくるのを見た瞬間にちょっと意識が飛びそうになった。

 よりによってイベント中の、それも交戦中に意識を飛ばしちゃうなんてどうかしてるわ。

 タイミングが最悪よ。

 しかも天使の放った矢を避けられず、代わりにクロウが受けちゃうし。

 もしこれで、クロウが天使と恋に落ちたらどうしてくれるのよっ?


「落ちねーし」


 すかさず突っ込んでくるのはすぐそこにいるカニやんなんだけれど、もちろん根拠なんてないでしょ。


「そっちこそ、なに考えて言ってるの?」


 だって天使の矢尻、ハートじゃない。

 しかもピンクよ、ピンクのハート。

 なにかしらそういう効果とかあったらどうしてくれるのよっ?


「いずれはそういう状態異常、付与してくるかもしれないけど実装前だし。

 今は心配しなくてよくね?」


 いずれそういう状態異常を実装するつもりで、下ごしらえをしている可能性はカニやんも認めるけれど、今はまったく心配ないって。

 もちろんそれならいいんだけれど、とりあえず回復しなきゃ……と思ったらクロウに断られた。


「大丈夫だ。

 MPの無駄遣いをするな」

「振られてやんの」


 大天使様のスカート……じゃなくて、ローブをまくり損ねた柴さんは逆に大天使様の強烈な蹴りを食らい、気前よく吹っ飛ばされて草原を転がっていった。

 ようやく起き上がったと思ったら、その手に剣を拾いつつ余計な突っ込みを入れてくる。


 余計なお世話です!


 だいたい柴さんってば、さっきわたしの年齢のことをどうこう言っていたけれど、脳年齢がどうとかって言っていたけれど、柴さんこそ精神年齢小学生男児並みじゃない!

 なに大天使様のスカートめくってるのよ?

 そもそも天使に性別はないって言ってるでしょっ?

 いいこと? よく聞くのよ。

 その大天使様は女の人に見えるけれど女の人じゃなくて、男の人でもあるんだから!


「グレイさん、日本語がおかしい」


 呆気にとられる脳筋コンビとカニやんが言い返せずにいると、恭平さんが代わりに言い返してくる。

 でもね、こんなことまでカニやんをフォローしなくていいから。


「フォローもなにも……そもそもさ、前に俺のローブをめくろうとしたのはグレイさんでしょ。

 なに言ってるのさ」


 …………え? そうだっけ?

 あれ? そうだっけ?

 いやだわ、久々に変な汗が噴き出してきて汗染みが気になってきた。

 そういえばそれ……あ、やだ、何か思い出してきた。

 ヒントはすね毛よね。


「それそれ。

 ちゃんと覚えてるじゃん」


 覚えてなかったわよ、いま思い出したの。

 そんな恥ずかしい記憶、とっくの昔に抹消してたわよ。

 あんな記憶、立派な黒歴史じゃない。

 よりによってそれを復元させるなんて、三人とも、あとで覚えてなさいよ!


 とりあえず汗染みが気になるんだけど、凄く気になるんだけれど、状況判断が先よね。

 この大天使の出現(湧き)に切っ掛けがあるかどうかはわからない。

 でもこんなに派手に交戦すれば、クロエが見つけたギルドに 【素敵なお茶会(わたしたち)】 のことを気づかれた可能性はある。

 十分すぎるくらいにね。

 もちろん周囲には他にもギルドがいる可能性があって、そのギルドにも発見された可能性がある。


 出現した(沸いた)瞬間、わたしが反射的に攻撃を仕掛けてしまったから、たぶんこの大天使様はわたしたちを目標(タゲ)に定めているはず。

 それにこのイベントの主力(メイン)の敵はこの大天使様。

 だって天使はどう見たって雑魚だもの。

 だから教会に近づけば近づくほど大天使様との遭遇率は高まるだろうし、まだ距離があるうちに、それも本格的な対ギルド戦(G V G)が始まる前に火力を見ておくのもいいと思う。


了解(りょー)

 でも魔法耐性高いみたいだから、魔法使い(おれら)はお呼びじゃない感じ?」


 そうね。

 アキヒトさんは、の~りんと一緒に全体支援をお願い。

 指示はカニやんが出すわ。


了解(りょ)

「わかった」


 クロエは言わなくてもわかってると思うけど、くるくるとぽぽも哨戒を。

 三人で全方位は厳しいかもしれないけれど……


「三人しかいないんだから三人でやるに決まってるでしょ」


 心配するわたしをよそに、強気に返してくるクロエ。


「ぽぽは10時のほうを監視。

 哨戒は僕とくるくるでするよ」

「わかった」

「やってみる」


 クロエがなにをどう考えてこういう指示を出したのか、わたしにはわからない。

 なにしろ射撃センスが(ゼロ)だから。

 皆無なのよ。

 だから余計な口出しはせず、いつものように銃士(ガンナー)の指揮はクロエに任せる。

 残る問題は大天使ウリエル様なんだけれど、高い魔法耐性に加え火焔属性のスキルは無効。

 もちろんわたしだって火焔属性以外のスキルはある。

 ただ火焔属性が得意ってだけよ。

 手持ちが多いからね。


 でもウリエルが火焔属性無効なのには理由があった。

 うん、まぁ見当はついてたけど。

 わたし以外のメンバーもね。

 だってウリエルの剣は焔を()しているだけでなく、火焔属性のスキルを付与してあって、剣を斬り結んだ柴さんとムーさんは付与スキルによる追加ダメージを食らっていたから。

 しかも高い魔法耐性を持っているということは、魔法攻撃も仕掛けてくるはず。

 その直撃を最初に食らったのはムーさん。


「洒落にならねぇ被ダメ!」


 これはあれかしら?

 クリスマスイベントだけに美味しくローストビーフを作ろうとしているとか? ……なんて呑気なことをいっていたらムーさんに怒られた。


「ウェルダンだよ!

 ゆりこさん、頼む!」


 え? ちょっと待って。

 ムーさんのHP(体力)VIT(防御力)でヤバいって……無茶苦茶ヤバくない?

予定どおりクリスマス(現実)は終わりましたが、イベントは続きます。

ご了承くださいw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ