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338 ギルドマスターは獣にスルーされます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 どうやらクロウの予想通り、ルゥはお猫様に妬いていたらしい。

 あるいはわたしがお猫様に乗り換えると思ったか。

 でもどちらでもないから、どっちでもいいんだけどね。

 だってわたしはルゥだけでいいんだもの。

 だからこれから重大なミッションをこなさなければならない、ルゥを盗られないようにね。

 なにしろ相手はわたしより全然(モフ)の扱いに慣れていて、その奴隷根性は到底真似出来ないくらいレベルが高い。

 だからわたしは最終手段に出ることにしたの。


 お猫様


 そう、このお猫様を使ってね。

 でもルゥの嫉妬がわたしに向かったのはよかったわ。

 だって 【幻獣】 のルゥと違い、実はこのお猫様は 【妖獣】 だから全然格が違う。

 もちろんNPCにも色々と種類があって、同じ 【妖獣】 でも等級(クラス)がある。

 お猫様はこんな可愛らしい姿をしているけれど……見るとモヤモヤするから見ないで話すけれど、とっても綺麗な毛並みに可愛らしい姿、愛嬌のある仕草が……見なくてもモヤッてきた。


 なんだろう?


 みんなが待っているナゴヤジョーまでの道中、安全のためクロウがお猫様を抱えて連れて行ってくれるっていうんだけれど、それを見るのがなぜかモヤる。

 気にしないように、クロウごと見ないようにしても無理。


 大きいのよ!


 決して太っているわけないけれど、むしろ痩せてるけれど、そもそもの身長が190㎝越えって。

 わたしより30㎝以上高いんだもの、ムカつく。

 しかも目的地が一緒だから、どうしても視界の隅に入ってしまうし。

 おかげで話が進まない。

 ちょっとクロウ、責任を取って!


「どう取ればいい?」

『旦那、甘やかしすぎ』

『それ、責任問題?』

『お猫様、まだ?』


 最後のは言うまでもなくカニやんね。

 もちろんその前の脳筋コンビのオッサン発言もよくわからないんだけれど、クロウにはあとで責任を取ってもらいます。


「わかった。

 とにかく歩け。

 カニやんが暴れそうだ」


 それはそれでちょっと見てみたい。

 でもクロウには、脳筋コンビが憐れだからやめてやれと言われた。

 大丈夫じゃない?

 だってあの二人はカニやんとベタベタしたいんだから。


『女王、語弊!』

『誤解されるからやめろ!』

『さっさとお猫様寄越せや!』


 ……カニやんが重症なので少しだけ急ぎます。

 わたしの中ではやっぱりルゥが一番なんだけれど、二番目に可愛らしいお猫様はルゥと違って 【妖獣】 で、どの程度のステータスを持つのかはもちろんわからない。

 さっきも言い掛けたけれど、NPCは同じ種族であっても等級(クラス)があるからね。

 でも絶対的な強者の位置にあるのが 【幻獣】 だから、ルゥが相手じゃ 【妖獣】 のお猫様は始めから負けが決まっている。

 ルゥはプレイヤーが相手だと、わたし以外でも加減をしてくれるけれど、NPC同士じゃわからないから余計にお猫様を狙わなくてよかったと思う。

 以前、イベントで派手な巨獣対戦をやらかしたもの。


 ただね、ルゥの頭突きを食らったわたしは思わずお猫様を落としちゃったんだけれど、もちろんお猫様は綺麗な着地をしてみせてくれた。

 わたしに見る余裕はなかったけどさ。

 そしてそのあと、いじけているというか、しなびているルゥをチラリと見た。

 その態度が優越感を感じさせたというか、可哀相なくらいしおしおのルゥを鼻で笑うような感じがあったの。


 恐ろしい子


 このお猫様はきっと、自分が可愛いということを自覚しているんだと思う。

 そしてルゥに勝てると思っているに違いない。

 生憎とわたしの中での一番はルゥと決まっていて、それが揺らぐことはないんだけどね。

 でもきっとこの先、ギルド内で色々とやってくれそうな気配がする。


 愛され女子


 そんな感じだもの。

 愛され女子の関心を引こうとして、みんなの争いが……ま、いいけど。

 わたしはとりあえずクロウとルゥがいれば大丈夫だし。

 愛され女子お猫様も、きっとあしらいはお手のものだろうから身の安全は心配しなくても良さそうだし。


「お、来た来た」

「ワンコの散歩もしてるかと思ったのに」


 ナゴヤジョーの出発ロビーが見えてきたと思ったら、一番最初に気づいてくれた脳筋コンビ。

 確かにいつもならルゥは散歩をしているところだけれど、今日はちょっとね。

 機嫌は治ってるみたいだけれど、自分から下りたがらないから抱っこのままここまで連れてきた。

 いつもはわたしに飽きたら下りたがり、わたしを捨てるようにぷいっとそっぽを向いて散歩を始めちゃうんだけど。


 ナゴヤジョーの出発ロビーには、インカムで話を聞いていた他のメンバーも集まっていた。

 そのメンバーに向けて、少し離れたところでお猫様を下ろしてやるクロウ。

 とくに嫌がる様子を見せないお猫様は素直に下りると、期待に満ちた目で自分を見つめるメンバーたちに向けてゆっくりと歩き出す。

 ちょっと落ち着きがなく、忙しなく顔を左右に振ってメンバーたちをキョロキョロと見ている。


 ふふふ、可愛い


 あ、もちろんルゥが一番可愛いわよー……というわたしの言い訳なんてルゥは全く聞いていない。

 そのモフッとした頬毛で、ずっとわたしの胸にすりすりしている。

 小っちゃな爪を少しだけ出してしがみついてるところとか、可愛すぎよ、ルゥったら。


 最初にお猫様が辿り着いたのはトール君の足下。

 するとお猫様は、挨拶をするようにトール君の足にすりすり。

 なかなかの愛嬌ね、さすがお猫様だわ。

 そうやってメンバー一人一人にご挨拶代わりのすりすりをしていたお猫様なんだけれど、カニやんだけは飛ばして、隣にいた柴さんの足にすりすり。

 その瞬間のカニやんの顔ったら、なかったわ。

 ショックで顎が地面に落ちる感じ。


 カコーン


 イケメンが台無し……と思ったけれど、ショックを受けて顔面崩壊してもイケメンっていうのは、ちょっと罪深くない?

 だって確かにショックで顔面が崩壊している。

 カニやん自身、崩壊する顔面なんて気にする余裕もないくらいショックを受けているから、意図的にイケメンを維持しようとしているとは思えない。

 つまり天然で、崩壊状態ですらイケメンを維持している。


 生来のイケメン


 そっかぁ、生まれついてのイケメンってこんなに強靱なんだ。

 知らなかったわ。

 しかもこれだけ色々言われていてもまったく突っ込みがないって、どんだけショックを受けてるのよ?


「そりゃもう、海よりも深く」

「空よりも果てしなく」


 息の合った突っ込みをありがとう!

 そしてやっぱり締めくくりの突っ込みがないっていうね。

 これ、いつになったら正気に返るのかしら?


「チビ助をモフらせてあげたら?」


 【素敵なお茶会】 が誇る気まぐれ美少年、クロエのご登場。

 シャチ銅を、キンキーと二人で潜っていて、たった今クリア後の転送で戻ってきたばかり。

 もちろんダンジョン内にいても、インカムで話は聞こえているから今の状況はわかっている。

 そのクロエとキンキーにもご挨拶のすりすりをするお猫様。

 ショックを受けて固まったままのカニやんの前をスルーしてね。


 残酷


 でも知ってるの。

 これはお猫様流の気の引き方だって。

 言ったでしょ、ネットで色々調べたって。

 お猫様はそういう生き物なんだって。

 ルゥを飼うよりも難しそうね。

 ちなみに、カニやんを正気に戻すためとはいえ、しかも今は別に戻す必要もないんだからルゥは貸してあげません。


 絶対に嫌!


 そうよ、わたしはこれからカニやんのちょっかいからルゥを守るための、とてつもなく重大なミッションをしなければならないんだから。

 カニやんを除いたメンバー全員……もちろん今ログインしているメンバーとだけね、挨拶を済ませたお猫様はようやくのことでカニやんの前に来る。

 でもすりすりはしないの。

 カニやんの前に、カニやんを見上げるようにすわるだけ。


「…………ちょっとグレイさん!」


 ただただ見つめ合うだけ。

 お猫様は人語を話さないから見つめ合うしかないわけだけれど、その状態に耐えきれなくなったカニやんがわたしに助けを求めてくる。


 なに?


「なに? じゃねぇよ、この美人は。

 これ、どうなってるんだよ。

 俺になんの用?

 ってか、俺にどうしろってのっ?」


 すっとぼけやがって……とも言われました。

 なぜか落ち着きのないカニやんは、大きめの声で早口にまくし立てる。

 でも、どうしろとわたしに訊かれても困るんだけど。

 だってそれを決めるのはカニやんじゃない。

 どうしてわざわざわたしに訊くのよ?


「どうしてって……」


 とりあえず撫で撫でしてあげないの?

 さっきモフりたいって言っていたじゃない。

 早く来いとか急かしてまでおいて。

 それが目の前で待ってるのにモフらないとか、ひょっとしてカニやん、どこか具合でも悪いの?


「至って健康」

「悪いのはせいぜい口だけ」


 柴さんとムーさんの、カニやんに代わっての返事に、そうよね……と頷いたら、なぜかクロウに小突かれた。

 振り返ってみたら少し笑っていたから怒ってるわけじゃなさそうだけれど、とりあえずカニやんは突っ立ってないでくれる?


「いや、だから俺にどうしろと?」


 好きにしたら?


 わたしもさっき答えたけれど、もう一度答えるわ。


「それをわたしに訊かないで」


 ようやくのことで観念……という言い方もおかしいんだけれど……あ、決心した感じ?

 うん、そうそう。

 ようやくのことで決意したカニやんは、緊張した面持ちで跪き、片手を地面について体を支え、もう一方の手を恐る恐るお猫様の丸っこい頭に向けて伸ばす。

 その掌がお猫様の見事な毛並み、その毛先に触れた瞬間にカニやんは悲鳴を上げてのけぞる。


 驚いた……


 あ、わたしが驚いたのはカニやんの声にね。

 でもカニやんが驚いたのは、お猫様に触れた瞬間にウィンドウが開いたから。

 何度ルゥにバックリやられても、モフの魅力に勝てない下僕(しもべ)にしては珍しい反応ね。

 ちなみにお猫様は誰に撫でられても噛まないわよ、今のところ(・・・・・)


status 名前を決めて下さい


「はぁっ?

 これ、どうなってるのっ?!」


 どうもこうもないでしょ、さっさと決めてよ。

 そうしないとわたしのミッションが終わらないのよ!


「ミッションってなに?

 俺になにをさせようってのっ?」


 まるでわたしがカニやんを、何かしらの罠にでもはめようとしてるみたいな言い方をしないで。

 失礼ね。


「失礼じゃなくてはめようとしてるだろ、これ」


 してないからさっさと決めてよ。

 ペットの名前を決めるのは、飼い主としての最初の使命でしょ。


 早くして!


「飼い主?

 誰が誰の?」


 カニやんってば、この期に及んですっとぼけたことを言うんだから。

 ルゥを抱いたままのわたしはカニやんの前までつかつかと進むと、お猫様を踏まないようすぐ横に立ち、その眼前に指を突きつけようとしてちょっと距離感を間違えた。

 ほら、足下のお猫様に気を遣ったから。

 たぶんそのせいだと思う。

 カニやんを指そうとした指先がカニやんの鼻に当たり、爪をぶっ刺してしまった。


「なんの真似?」


 ごめん……ちょっと勢いがついちゃって。

 と、とにかくね、このお猫様の飼い主はカニやんだって言いたかったの!

 だから早く名前を決めて付けてあげて!!


「は? 俺がヌコ様の飼い主?

 はぁ~? なんで俺がっ?!」


 もう、ミッションが終わらないじゃない!!

そんなわけで新たな仲間が加わり、この話はあと一話で終了予定。

あくまで予定ですが・・・(汗

終了後は、ちょっと早いですがクリスマスイベント開始です!

それもあくまでも予定ですが・・・(大汗

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― 新着の感想 ―
[気になる点] お猫様はなんでグレイの意思に沿ったような行動をしたのでしょうか? 以下教えていただけると嬉しいです。 ①撫でたのはカニやんだけでしたっけ? ②カニやんには媚びないで、目の前で待つ [一…
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