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296 ギルドマスターはカボチャを焼きます

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!


サブタイトルを 「焼く」 と 「妬く」 で迷ったのですが、カボチャなので 「焼く」 ことにしましたw

美味しく召し上がっていただけると幸いです。

 い、いたたたたたたたた……ちょっとクロウ、噛まないで!

 やっとヴラドを倒してバンザーイと思ったら、ヴラドに噛まれたクロウが吸血鬼になっていきなりわたしの首に噛みついてきた。


 い……たたたた……


「ちょっと、クロウ!

 か、噛まないで!」


 痛いって……あ、痛いけどこれ、噛んでるんじゃないかも。

 これ、たぶん噛んでるんじゃなくて、その……吸ってる?


 え? 吸ってる……???


 最初はびっくりしちゃってただ痛かっただけなんだけれど、だから噛んでると思ったんだけど、歯を立てられてるわけじゃない。

 だから首を食い千切られることはないんだけれど、わたしの首を吸ってもHPは吸収できないってわかってるわよねっ?

 このゲームにそんなスキルはないし、機能もありません。

 わたしの代わりにヴラドに噛まれたあとちゃんと回復したと思ったのに、まだHPが足りてないなら 【ヒール】 掛けてあげるし、ポーションもまだまだあるから放して。

 ほんとに痛いし、痛いし……それに……


 痣になる


 だってこれ、内出血になるやつじゃない。

 こんな首に……やめてよ、恥ずかしいから。


「アバターだし、内出血はしないだろうけど……」


 ちょっとカニやん、冷静に判断しないで。

 しかもなぜか他の二人と一緒に、明後日の方向とか見てるし。

 そんなことを言うのなら、絶対にあとで内出血していないって確認してよね……っていうか、助けて。

 クロウってば、吸うのは止めてくれたけれど、そのまま肩に頭を置いて放してくれない。

 ちょっと苦しいんですけど……。


「それはだって、あれでしょ?」

「珍しく旦那が見せつけてきた」

「こんなところでするなよ」


 ???


 なんの話?

 ねぇ三人とも、なにを話してるの?

 あ、やっぱり説明はあとでいい。

 先にクロウをなんとかして、本当に苦しい……この鉄筋STRがーっ!!

 暴れる振りをしたら……実際に私が暴れても全然クロウには影響がないモヤシなんだけど、ようやくのことで放してくれた。


 もう!


「ちょっとカニやん、本当に内出血してないっ?」


 首回りに虫刺されとか、とにかく目立つから気をつけてたのに。

 クロウの馬鹿!


「虫刺されって……あ……」


 わたしの虫刺され発言を聞いて何かに気づいたらしいカニやんは、空恐ろしいものでも見るようにわたしを見る。

 そしてそのままの顔でクロウを見て話しかける。


「ひょっとして……ひょっとする?

 だって虫刺されとかいってるんだけど、この人!」


 どうしたのカニやんったら、急に取り乱しちゃって。

 寝てるあいだに虫に刺されたりすると、首筋って服で隠せなくて見えちゃうから、ほんとにあれ、みっともなくて恥ずかしい……と男の人は思わないの?

 確かに営業マンだと、夏でも、ネクタイは外せてもYシャツだもんね。

 冬はガッチガチにネクタイ締めてるし、見えることはないから心配ないか。

 それだと気にもならないわよね。

 とりあえずわたしの首筋に内出血の痕が残っていないか、ちゃんと見て確かめてよ。

 見えやすいように髪を束ねて首筋を出したのに、カニやんってばそっぽを向いて!


「はい、ありません」

「見もしないで言わないで!」

「だからアバターにそんな機能はないって」

「あったら俺ら、痣だらけじゃん」

「勲章っぽくてそれもいいけどな」

「お、いいね」


 そこの脳筋コンビは黙ってて、また話が逸れていくから。

 そもそもクロウはなにを考えてわたしに噛みつく……というか、その、首筋に吸い付いたのよ?


「なにって……ちょっとクロウさん」


 言い掛けたカニやんの視線がクロウを向き、言葉までクロウに向けられる。


「この人、ヤバくね?」

「なにが」

「なにって、普通レベルの純真無垢かと思ってたら、無知が入ってんじゃん。

 これ、野放しにしといて大丈夫?

 国宝級の喪女じゃん」

「俺も少し心配になってきた」

「だよな。

 クロウさんの感覚が普通で良かった」

「今後は気をつける」


 ちょっとちょっと、野放しってなによ?

 人を動物みたいに言わないでよ。

 しかも国宝級の喪女ってなに?

 それ、どんな喪女よっ?


「果てしない喪女」

『そこまで来たら、絶滅危惧種だよな。

 いっそ永久保存?』


 待って、恭平さんまでなにを言い出すの。

 しかも永久保存って、わたしに生涯喪女でいろっていうの?

 前から何度も言っているけれど、わたしは彼氏が欲しいの!

 目指すは脱喪女、喪女卒業なんだから!


「道のり遠すぎ」

『ゴールが見えてないんじゃない?』


 ねぇ二人とも、他人事だと思ってるわよね?

 完全に他人事(ひとごと)だと思ってるわよね?


「100%他人事」

『全面的に他人事』


 そっちの肯定じゃなくて、出来たらわたしの脱喪女に協力して欲しい。


「別に彼氏なんていなくても、グレイさんモテモテなんだしいいじゃん」


 わたしのどこにモテ要素があるのよ?


『全部』


 この程度の顔で、そんな簡単に彼氏が出来たら苦労しないわよ!


『この程度の顔って……』

「前にも言ったと思うけど、グレイさんの審美眼、おかしいから。

 この人の美人の基準、ハイグレード超えてるから」

『そういえばきいたな』


 なんなのよ、この二人ってばさっきから。

 そんなにわたしをからかって楽しい?


「楽しいっていうより、会話が摩訶不思議」

『どうしてそうなるのかわかってないところが問題なんだろうな、グレイさんの場合』


 恭平さんの意味深な言葉の脇で、脳筋コンビが囁きあう。


「とりあえず旦那が憐れ」

「純真とか純粋とか無垢とか以前の無知と来たか」


 旦那ってクロウのことよね?

 どうしてクロウが可哀相なのよ。

 きっとクロウだって彼女の一人や二人、それこそ三人や四人くらいいるんでしょ。

 そんでもって、実は会社でもこっそりイ……ィ……。


「言えないと来たか」

「イチャイチャか?

 おい、イチャイチャが言えないのか?」

「重症だな、これは」


 い、言える時と言えない時があるんです!

 ノーキーさんと串カツさんカップルの時はノリで言えたのに、いま言えない自分にびっくりしてる。

 とりあえずもう駄目だ。

 さっきから色々喚き散らしていたら涙が止まらない。

 ボロボロ出て来て、鼻水とかもうぐちゃぐちゃ。


「グレイ」


 いつものように丁度いいところにクロウがいるんだけれど……もう噛まない?

 わたしは真剣に訊いてるのに、なぜか噴き出すクロウ。


「噛まない」


 本当ね?


 というか、そもそもあれはなんだったの?

 ひょっとして、お化けに悪戯されたというか、ヴラドに悪戯されたとか?

 それで人に噛みつきたくなって、丁度いいところにわたしがいたってこと?

 確か……ツタンカーメンの呪いだっけ?

 お墓というか、ピラミッドを調査した人が次々に死んじゃって、ファラオの呪いじゃないかっていわれたけれど、でも本当はピラミッド内にあった未知の細菌が死因って……これも噂だっけ?

 あんな感じに、ヴラドから変な菌もらっておかしくなったとか。


「さぁ、どうだろう」


 笑って誤魔化さないでよ……とりあえず顔を隠したいからしがみついておくけど。

 そもそもクロウが噛みついたりするから、こんな話にまでなったんじゃない。

 えい! 鼻水付けてやる!

 どうせデータだから汚れないのはわかってるけれど、クロウもわかってるからわたしの好きにさせてくれてるんだろうけれど……なんか悔しい。


『クロウさんがおかしくなったのは事実だろうけどね』


 ねぇクロエ、どういう意味?


『自分で考えなよ。

 喪女、卒業したいんでしょ?』


 したい。


『頑張って』


 ここで粘っても絶対に教えてくれないのがクロエなのよね。

 しかもクロウまで、「おかしくなった」 とか言われてるのに笑ってるし。

 どうしてわたしだけ意味がわからないんだろう。


「落ち着いたか?」


 クロエのおかげでちょっと気が逸れたかも。


「じゃあ出よう」


 クロウが声を掛けるとカニやんたちも同意し、わたしたちは攻略し終えたダンジョンを出る。

 外に出たついでにポンッとルゥを呼び出し、まずは鼻チューで挨拶。

 そのままお腹に顔を埋めて深呼吸……ああ、このもっふり感が落ち着く。

 わたしの頭を短い四肢でガッツリホールドし、嬉しそうにきゅーきゅー鳴いていたルゥが不意にきゅ? と短く鳴く。

 そして……そして……なにをしているのかしら、これは。

 その、お腹に顔を(うず)めているわたしには見えなかったんだけれど、ルゥってばわたしの頭をガッツリホールドしながら回転し、その頭が左肩近くにきたところでぎゅっ! と不快そうな声を上げる。


 ん? なに?


 さすがに気になってルゥをベリッとはがしたら、ルゥが抱っこをせがむように短い足を伸ばしてくる。

 求められるままに抱っこしてあげたら、ルゥってば、わたしの胸とかに爪を立ててよじ登り始めた。


 い、たたたたたた……


 な、なにっ?

 クロウに続いて今度はルゥなの?

 なにがどうしたのっ? ……と驚いていたら、左肩までよじ登ったルゥが首筋をのぞき込んでくる。

 う……ルゥの柔らかい頬毛が当たって気持ちいい。

 お髭がくすぐったいです……とにやけていたら、ぺろっと首筋を舐められた。


 ひゃぁっ?!


 思わず変な声を出したら、みんながこっちを見る。


「今度はワンコか」

「ってかあそこ、さっきクロウさんが……」

「あ~あそこ」


 ん? ……あ、そうか。

 ルゥが舐めた場所はさっきクロウに噛まれたというか、吸われた場所なんだ。

 アバターに傷は残らないけれど、なぜかルゥにはそこがわかって、きっと傷を舐めて治してくれようとしてるのね。


 いい子


 片手でルゥを抱いて、もう一方の手で大きな頭を撫で撫でしてあげる。

 せっかくそこに顔があるから頬で頬毛にすりすりしたら、やっぱりお髭がくすぐったい。

 優しい子ね、ルゥは……と思っていたら、カニやんが不思議なことを言い出す。


「それ、違うから。

 他の(やつ)のマーキング、消してるだけだから」


 …………それはどういう意味?


「むっちゃ焼餅妬いてるんだよ」


 ん? ルゥが誰に焼餅妬くのよ?

 ルゥの可愛さは無敵よ。

 誰がこの可愛さに勝てるのよ。


「ワンコが可愛いのは認めるが、グレイさん勝ってるから大丈夫。

 ワンコ()ベタ惚れだから」


 あら、だったらわたしとルゥは相思相愛ね。


「これは無邪気?」

「無垢に無知に無邪気と来たか」

「邪気がない分(たち)が悪いって。

 どうするんだよ、クロウさん」

「前にも言ったと思うが」

「ああ、付き合うんだっけ。

 あんた、ほんと男前だね」

「どうも」


 …………んーっと、なんの話?

 とりあえずここは四人にルゥをけしかけておいたらいいのかしら?

 まだ噛まれた場所を舐めてるけど。

 ふふふ、くすぐったぁ~い。

一件落着っぽいですが、期間限定イベント 【trick or treat】 はまだ続きます!

ルゥとクロウの直接対決の日も近いっ?!(大嘘)

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― 新着の感想 ―
[一言] さりげに抱き寄せて噛みつくなんてするから、てっきりマメやパパしゃんみたいなハロウィンイベントの状態異常になったのかと思ったら、クロウの煩悩が炸裂しただけだった… 気心の知れたおっさんたちの前…
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