274【番外】 孤高のサムライ
pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!
いつもとは違う時間ですが、いつもの半分程度の小話を置いておきます。
どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ。
『ノギさん、ちょっとお時間いいですか?』
うるさいのから呼び掛けがあった。
丁度いい、クロウもノーキーも居やがらなくて暇を持て余していたところだ。
少しのあいだなら話し相手くらいしてやる。
だがつまらない話をしたら即切るからな。
『ノギさんが言うと、切るがkillに聞こえるから怖いな』
切られてぇか?
『暇をしてるんでしょ?
だったら琵琶湖に行きませんか?』
琵琶湖?
ノブナガか?
『そう。
素材の高騰はご存じですよね?』
くだらねぇな。
どうせお前らの仕業だろう。
『それはなんとも……まぁどう思われてもいいですけどね』
全然動じやがらねぇ。
それどころか笑っていやがる。
しかも否定しやがらねぇ。
全く食えねぇ狸だぜ。
『素材を集めるプレイヤーが 【大蜘蛛の森】 に集まっているんですが、そこにノブナガをけしかけて遊んでいるプレイヤーがいるんです』
よくあることだ、今更だろう。
『もちろんそうなんですけど、あそこは初心者も行く場所です。
ちょっと力を貸してやってもらえませんか?』
お前が自分のギルドを動かせばいいだろう。
それに 【灰色の魔女】 はどうした?
あれは、知れば黙って見ていられる性格じゃない。
『あの人はすでに 【東京砂漠】 で掃除を始めています。
【特許庁】 とか、あの人を尊崇しているギルドにも声を掛けているみたいですね』
あそこでもやっているのか。
馬鹿の沸きが多いな。
『そうですね、呆れます』
お前が言うな。
『そう仰らずに』
同じことを言わせるな。
その程度の騒ぎの収拾、自分のギルドを動かしたらいいだけのことだろう。
俺に声を掛ける必要がどこにある?
『僕らにも事情がありまして』
事情? 素材高騰に拍車でも掛ける気か?
廃人っていうのはよくよく暇人どもだな。
『う~ん、ドロップ素材は扱いがちょっと面倒だから、どうだろう?
素人転売ヤーも多いし』
そういやこいつらの専売は課金装備だったな。
今は一般プレイヤーもそこそこ課金しているから、以前のような勝手は出来ないだろうが。
『メンバーが欲を掻いてちょっとまずいところに目を付けられてしまって、ログイン自体を自粛中とでも言っておこうかな』
どうせサブ垢を持ってるんだろうが、なにを言ってやがる。
それこそ一つや二つじゃ済まない数を。
だがサブ垢では確かにノブナガは厳しいか。
こいつの話が本当なら、あいつらは 【東京砂漠】 を駆けずり回っていて地下闘技場には来ない。
つまり俺はこのまま暇を持て余すわけだ。
いいぜ、お前がそこまで言うなら行ってやらなくもない。
『ありがとうございます』
で、その裏はなんだよ?
『なんのことです?』
すっとぼけんじゃねぇぞ。
お前が何もなしに、それこそ見ず知らずの初心者のため、俺に頭下げるわきゃねぇだろ。
言えよ、なにを企んでやがる?
『企んでるなんて酷いな。
そうだな……強いていえばこのあいだの借りを返すってことで』
このあいだ?
お前んとこの阿呆が裏掲示板でやったことか。
『そんなこともありましたよね。
一応釘は刺しておきましたので、その件はこれで手打ちってことにしてくれませんか?』
なるほど、そういうことか。
マジ食えねぇ狸だな、面ばっか綺麗で質が悪い。
『【素敵なお茶会】 からはなにも言ってきませんけれど、バレてはいると思います』
おお、カニは知ってたぞ。
『カニやん?
マメさんかと思ったのに、カニやんか』
カニがどうやって知ったかは知らないがな。
そのマメって奴のことも知らん。
とっくに灰色の魔女にもバレてんだろ、今更じゃねぇか。
『そうかもしれませんね。
ノギさん、まだそう呼ぶんだ。
本人嫌がっているし、止めてあげたらいいのに』
なに笑ってやがる。
灰色の魔女をやめて、他の連中みたいに……なんつったっけ?
『女王陛下ですか?』
ああ、それそれ。
他の連中と一緒になって俺にもそう呼べってのか。
そんでもってアホみたいに崇め奉れってか?
『実際、あんな綺麗な人があの火力ですからね。
運営的にも、ゲームシンボルとして利用したいところでしょう。
偶然だろうけれど、グレイさんが 【灰燼】 を取得したのは運営にとって嬉しい誤算だったんじゃないかな』
けっ、くだらねぇこと考えやがる。
運営なんざ、どうでもいいんだよ。
『でも確かに、ノギさんが他の連中と一緒になって、グレイさんを女王陛下なんて呼ぶのは違和感しかないか。
グレイさんも嫌がりそうだし』
そいつぁ見てみたい。
『へそ曲がり』
ところでそっちはどうしたって?
多少の連中に目ぇ付けられたところで、痛くも痒くもない連中揃いの古参ギルド様がコソコソするたぁただ事じゃねぇ。
三大ギルド様がよ。
『あーあ、余計なことを言っちゃったかな』
なに言ってやがる、余裕かましやがって。
言っておくが、俺を利用しようなんて考えるなよ。
そんなことをしたらただじゃ済まさねぇ。
『怖い、怖い。
そんなこと、このゲームの誰が考えるんです?
あ、でもノーキーさんは考えるか』
その名前を俺に聞かせるな、胸くそ悪い。
『あとグレイさんの天然かな』
…………ノーキーはクズだが、あの魔女の思考は読めん。
俺のことを怖い怖いと言いながら口先だけで、一太刀浴びせられりゃいいほう。
未だ、ただの一度も俺の剣じゃ落ちやがらねぇ。
あいつ……ひょっとして死亡回数0か?
『そうかもね。
私情抜きにしても、案外クロウさんでも落とせないかも』
なんでぇい、あの野郎。
ところで、そろそろ琵琶湖が見えてきたんだが……ついでにノブナガの野郎も見えてきた。
『もう向かっててくれたんだ。
さすがに早い』
ご希望どおりひと仕事してやるから聞かせろよ。
なにに目ぇ付けられたんだって?
『なにって、まぁ俺の取り越し苦労って可能性もあるんですけどね。
でも相手が相手だから、万が一を考えて用心しているだけです』
いいから言えよ、もったいつけんなって。
ノブナガが来ちまうだろうがよ。
『…………運営』
あぁ? 運営……?
ノギがノブナガ退治に向かった経緯を書いてみました。
話している相手は 「雲隠れ」 しているあの人ですw