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27 ギルドマスターは第一回イベントに参加します

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!

 今回のイベントエリア【ニューヨーク】は伊勢湾に出現するんだけれど、橋などはなく、イベント参加者のみ転送にて上陸可能。

 不参加者は、ログインしていればそれぞれのウィンドウでゲームの状況を見られるらしい。

 運営が実況をしてくれるっていう話だけれど、今後のイベントでもこういう方式になるのかな?

 参加条件はレベル、職に関係なく二人以上五人までのパーティーで、期日内に参加表明(エントリー)をパーティーで行うこと。

 なお、参加表明(エントリー)後のメンバー変更及び棄権は不可。

 イベント当日は、開始時間までにパーティーで所定位置に集合しておくこと。

 イベントエリア転送を以てゲーム開始とし、イベントエリア内の敵を撃破しつつリバティ島を目指す。

 イベント開催中の装備の変更は不可だけど、MP及び弾丸数に制限はなく、装備品の損耗もなし。

 但しHPの回復は不可。

 これはポーション(アイテム)はもちろんだけれど、ヒール(スキル)の使用も不可ってことだから、回復系魔法使いの仕事がなくない?

 一応神経系及び被毒に関しては、ポーション(アイテム)及び回復スキルの使用可。

 うーん、これをイベント開始三〇分前に発表されてもねぇ。

 今頃はナゴヤドーム中の薬屋で、えらい騒ぎが起こってるのかな?


「グレイさん、毒消し買い足しますか?」


 ウィンドウを開いてアイテムを確認するトール君のインベントリには、このあいだ(じゃ)の道に行った時の残りがまだあるらしい。

 それならあるだけでいいわ。

 今からドームに戻っても、調合士の対応も間に合わないだろうし、NPC薬屋も同じだと思う。

 一応わたし、毒消しスキル持ってるしね。

 最大の問題は対人(PK)戦ありってやつね。

 あ、もちろんわたしは別にかまわないの、こういうイベントだとだいたい入ってくる要素だし。

 問題なのはわたしじゃなくてココちゃん。

【素敵なお茶会】 には今、二人の回復魔法使いがいるんだけれど、その一人、ゆりりんことゆりこさんは、どこからどう見ても聖女って感じの清楚キャラ。

 白い修道女のような装備に、二割くらい割り増し効果がありそうな綺麗な杖を持っている。

 もちろん割り増し効果なんてないけどね。

 今回のイベント開催告示を見た彼女は、わたしと同じく対人(PK)戦を危惧。

 真っ先にギルド内で不参加を表明した。

 わたしもこれは妥当な判断だと思う。

 で、問題のココちゃんなんだけど、回復魔法使いの先輩ゆりりんが不参加ってことで彼女も不参加にしたんだけれど、ギルド内の締め切り当日になって参加に変えたの。

 対人(PK)戦があるかもしれないことを言ってみたんだけれど、参加するって……


 うーん、ちょっと自信つけ過ぎちゃったかな?


 まぁ覚悟があるならいいんだけど、ココちゃんが不参加を翻した理由がちょっとね。

 イベント開始直前にクロエが言っていたんだけれど、ココちゃんがギリギリで参加を決めたのは、の~りんに説得されたからなんだって。


 なんで、の~りん?


 そもそもイベントって、説得されて参加するもの?

 学校とか会社なんかのイベントじゃないんだし、自由意志でしょう。

 の~りんだって、不参加を決めたゆりりんやマメたちにはなにも言ってないし。

 よくわからない……あ、でもそういえばパーティー分けをする時、の~りんはココちゃんと一緒がいいって言ってたっけ。

 バランス的には全然よくないんだけど、なぜかカニやんとクロエがOK出しちゃって決まり。

 いつものことだけれど、こういう時、わたしの意見はスルーされちゃうのよね。


 主催者(ギルマス)なのに!


 このことに関しては、どうなっても知らないから。

 対人(PK)戦ありで、部位欠損回復(リカバー)はもちろん死亡状態回復(リカーム)もなし。

 ほんと、回復系魔法使いは何をするわけ?

 これじゃただの的じゃない。

 ちょっと運営の悪意を感じるのはわたしだけ?

 ゲーム自体はパーティー対抗戦で、敵キャラを一体倒せば3P(ポイント)、プレイヤーを一人倒せば5P(ポイント)、ボスの不自由の女神を倒せば100P(ポイント)が入り、最終的には一番ポイントを稼いだパーティーが優勝ってシステム。

 これは対人(PK)戦の横行確定事案ね。

 結局参加者はわたしにクロウ、クロエ、カニやん、パパしゃん、の~りん、柴さん、ムーさん、ベリンダ、ココちゃん、マコト君にぽぽ、くるくる、トール君の十四名。

 二十名中……あ、そうそう、例の双子なんだけど、あれから蝶々夫人と会って話したら、ギルドを移籍したいってことだったの。

 どうもね、【特許庁】 がああいう集団だってわかっていて加入したわけじゃなかったみたい。

 倣って髪の色をカスタマイズしたり装備をいじったりしたらしいんだけど、大蛇(おろち)に放置されたのが決定打だったんだろうね。

 それで蝶々夫人が 【素敵なお茶会】 を勧めてきたわけ。

 本人たちも納得していたから、今はいつもどおりお試し期間中の仮加入。

 ただね、今回はマメの時とは逆の条件を出しておいた。

 二人が 【特許庁】 に戻ることを希望したら、【特許庁】 は二人を受け入れることってね。

 今のところ戻りたそうではないけれど……あの扱いじゃ、無理ないか。

 そんなわけで二十名になった 【素敵なお茶会】 なんだけど、今回のイベント参加は十四名。

 ジャック君も参加するかなって思ったんだけど……


「俺、まだレベルも低いんで、足引っ張りたくないっす。

 マメさんと、ジャックと豆の木コンビで留守番してます!」


 可愛いこと言うわ。

 最初はちょっと生意気な感じでクロエと揉めたりしたけれど、今はなんだかんだいってオッサン連中に可愛がられてるっていうか、からかわれてるっていうか……まぁ本人が楽しそうにしてるからいいわよね。

 居残り組についてはゆりりんとマメにお守を任せることにして、わたしたち参加者は運営の指定する場所に集合していた。

 装備の途中変更不可がルールだから、今回はわたしも最初から重装備(チャイナ)で待機中。

 装備によってステータスの補正値が変わるから、念のためウィンドウで自分の状態チェックもちゃんとした。


 うん、大丈夫


 パーティー分けで少しくらい揉めるかなって思ったんだけれど、これが結構すんなり。

 最初に決まったのはわたしとクロウ、クロエの三人パーティー。


「ま、そうなるよな」


 カニやんのこの言葉で決定されたって感じかな。

 そのカニやんもクロエに誘われたんだけど、珍しく断っていた。


「カニやんも入るでしょ?」

「いや、今回はパス。

 ほかのPTに入るわ」

「珍しいね。

 でも、じゃ、うちはグレイさんがPTリーダーするから、もう一つはカニやんで。

 あと一人、リーダーどうする?」


 …………わたし、リーダーするなんて言ってないけど?

 ねぇクロエ、なんでそこ、決定事項なの?

 どうして誰もなにも言わないの?

 毎度毎度主催者(マスター)の意見は無視……いま気がついたんだけど、無視以前に意見を言わせてもらえてすらいなかったわ!

 ねぇうちのギルドってどうなってるのよ?

 主催者(わたし)の存在意義ってなに?


「あの、俺、グレイさんのパーティーに入りたいです」


 トール君ってば、本当にクロウが好きなのね。

 あ、だったらトール君がリーダーする?

 もちろんわたしはOKだったんだけど、なぜか他のメンバーが大反対。

 それどころかやめておけとか説得をし始めるって、どういうことよっ?


「え? いや、そこ、マッドティーパーティーだし、やめた方が……」


 最初に止めたのは加入を断ったカニやん。

 あんたね、よりによってまたそれを言う?

 そういえば何も知らないトール君にそれを教えたの、確かカニやんよね!


「やめとけトール、そこだけは。

 ろくなことにならんぞ」

「付いていけないって」

「振り落とされるから、やめとけ」


 他のメンバーまで……なんだかわたしたちがろくでもないことをするみたいじゃない。

 なんにもしないわよ、失礼ね!

 だいたい参加人数が十四名なんだから、誰か一人はわたしたちのパーティーに入らなきゃならないでしょ。

 カニやんに断られて、トール君はダメ。

 じゃあどうするつもりよ?

 誰が入るの?


「……いいんじゃない、別に」


 たぶん、みんながトール君を止める理由をわかっている側のクロエだけど、腹黒の上にいたずらが大好き。

 今回もちょっとした悪戯心だったと思う、トール君をわたしたちのパーティーに振り分けることを了承したのは。

 もちろんわたしはかまわないからこれで決定したんだけど、なぜかみんながトール君に憐れみの目を向けるって……。

 ただ、久々にログインしたマコト君が、トール君と一緒に組みたかったらしく残念がっていた。

 一五人参加ならもう一人入れるんだけれど、今回はどこかのパーティーが四人になる。

 火力の都合上、どうしてもそれはわたしたちのパーティーになっちゃうのよね。

 ごめんねマコト君、次は一緒に組みましょ。


 アールグレイ班 アールグレイ/魔法使い LV48

         クロウ / 剣士 LV48

         クロエ / 銃士 LV48

         トール / 剣士 LV19


 カニやん班   カニやん/魔法使い LV37

         しば漬け/剣士 LV31

         ベリンダ/短剣使い LV21

         マコト /剣士 LV25

         ぽぽ  /銃士 LV23


 ミンムー班   ミンムー /剣士 LV33

         パパしゃん/剣士 LV34

         の~りん /魔法使い LV25

         ココちゃん/魔法使い(回復系)LV23

         くるくる /銃士 LV27


 う~ん、レベルや職は上手く割り振ったつもりだったんだけれど、ミンムー班がちょっと不安かな?

 魔法使いを一つの班に二人入れるんだったら、ココちゃんとカニやんを組ませたかったのよね、本当は。

 カニやんも結構えげつない火力の持ち主だから。

 の~りんとココちゃんのカバーに、レベル・火力高めのムーさんとパパしゃん、くるくるを組ませたんだけど……ちょっと厳しい?

 でも、いくら火力高くても魔法使い三人じゃ、カバーの二人が厳しすぎるもんね。

 ちなみに同じ剣士(アタッカー)で、しかもギルド内でもカニやんの次に古株のパパしゃんが、レベルでも上なのにムーさんをPTリーダーにしたのは、パパしゃんが盾剣士(ガード)だから。

 なによりも性格がね、先頭を切って戦うってタイプじゃないのよ。

 全体を見るのはさすがに剣士(アタッカー)だけど、人に指示を出して動かすってタイプでもない。

 その点ムーさんは怖い物知らずっていうか、無謀っていうか……所詮脳き……いやいやいや、なんでもない。

 それにしてもさ、全体を見ても一番レベルの低いトール君をわたしたちのパーティーに入れるのは妥当なのに、最後の最後までムーさんってば……


「トール、生き残れよ。

 あ、いや、無理なら棄権で」

「無理すんなよ、トール。

 今回のイベント、死亡制裁(デスペナ)はないらしいから」


 柴さんまで、どういう意味?

 喉まで出かかった言葉をわたしは頑張って呑み込んだのに、クロエは呑み込まないの。

 見事なまでに全ての毒を吐き散らかしたのよ。


「大丈夫だって。

 トール君は、ムーさんや柴さんと違って脳筋じゃないから」


 それ、ダメ。

 言っちゃ駄目なやつ。

 みんなわかってることだけど、ノーキーさんに比べれば全然ましな脳筋だけど、言っちゃ駄目なやつだから。

 だいたい心配するなら、トール君じゃなくてココちゃんでしょうに。

 ケラケラ笑うクロエの背後でムーさんと柴さんが剣を抜こうとしているのを、見て見ぬ振りをしたのはわたしだけじゃないから。


「イベントエリア転送後は、エリアチャットとパーティーチャットのみ。

 エリア外との会話は出来なくなるから、ゆりりん、暇だったらみんなで遊んでて」

『みんなで見てますから』

『頑張ってください!』

『おーえんしてまーす!』

『まーす!』

『まーす!』


 次のイベントはみんなで参加出来るといいな。

 そんなことを思っていたら、運営の音声インフォメーションが入る。


『これより第一回公式イベント 【不自由の女神を解放せよ!】 を開始します』


 5から始まったカウントダウンが0になった次の瞬間、わたしたちはイベントエリア・ニューヨークに転送された。

 空っ風に砂埃が舞う、廃墟となったビル群の中に。


「ここがニューヨークなの?」

「そうじゃない?」


 行ったことないからわからないわよ、わたしだって。

 でも通常マップの景色と違い、読める看板の文字が全て英語。

 道路標識なんかも向こうの物を模しているみたい。

 転送場所はパーティーごとにバラされたらしく、見える範囲に他のパーティーはいないみたい。

 それでも周囲を見回しながら歩いていると、随分肌色の悪い人影がフラフラとこっちに向かって歩いてくる。

 あれが敵キャラってわけね。

 ゾンビかしら?

 手応えを確かめようと思ったんだけど、すぐ後ろから撃鉄を上げる音がしたと思ったらクロエが一発で仕留めちゃった。


「……ほらね、攻撃速度(アクション)銃士(ガンナー)が一番速い」


 いつかトール君にレクチャーした話の実践ね。

 ゾンビが消失する瞬間、中空に 【3P】 の文字が見える。

 なるほど、こうやってカウントされるのか。

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