260 ギルドマスターは関係を拗らせます
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超特大遅刻です!!!!
クロウより少し歳下のノーキーさんは、クロウより少し背も低い……といってもクロウが190㎝越えだから。
192㎝なんだけど、その中途半端な2㎝をわたしに頂戴。
クロウはその2㎝を減らしても190㎝に変わりないけれど、わたしはその2㎝があれば160㎝に届くの。
ギリギリだけれど160㎝になるの!
夢の160㎝台!!
「どんな夢?」
カニやんのツッコミを黙殺しようとしたら、させまいと脳筋コンビが沸いてくる。
「俺も、2㎝減らしても180㎝以下にはならねぇわ」
「俺も無理だな」
「俺は逆に、その2㎝があれば180台に乗るからグレイさん側」
「2㎝程度じゃ180には乗らないけど、170以下にもならないからムーさんたちと同じ」
ちょっとアキヒトさん、全然違うわよ!
180㎝と170㎝じゃ全然違うから!! ……とわたしがムキになっても仕方がないのよね。
とりあえずクロウの2㎝はわたしが先約ってことで、恭平さんには渡さない。
でも問題はクロウじゃなくて不破さんたち 【特許庁】 の三人。
ノーキーさん、不破さん、串カツさんの中ではノーキーさんが一番背も高く、本来ならば一番権力も強い……はずなんだけれど、現状は最下層にいる感じ。
見るからにただの嫉妬に狂う彼氏状態。
彼女?
そんなノーキーさんに手を焼いている感じの串カツさんと、呆れている不破さん。
背は串カツさんが一番低そうなんだけど、それでも180㎝前後あるわよね。
そこまでの贅沢はいわないけれど、せめて160㎝は欲しい……というわたしの劣等感は脇に置いて、この三人をどうするか?
「どうって、何が?」
「放っておいても一週間だけの関係だろ?」
投げやりなカニやんはカニやんだからわかるけれど、ムーさんの言い方がちょっといやらしくて嫌。
なに、その一週間だけの関係って?
ちょっと待って、変な想像をしたわけじゃないけれど耳が熱くなってきたのはなぜ?
「どんな妄想してんだよ?」
「喪のくせに」
「心底喪のくせに」
またこの三人は……カニやんが余計なことを言うと、すぐに脳筋コンビまで!
そんなに喪を連呼しなくてもいいじゃない。
腹が立ったら余計に耳が熱くなってきた。
「変な妄想するからだろ?
俺らのせいにするな」
だから違うってば!
本当に違うけれど、なんだかいたたまれない……。
気を逸らすために、ノーキーさんの迫真の演技を改めて見る。
ねぇあれ、どうやって破局させるの?
意外にお似合いなカップルじゃない?
まさかと思うけれど、あんなにラブラブなのに一週間経ったら自然消滅とかありなの?
意外にあっさりと終了! ……みたいな感じになるのかしら?
あ、でも破局しなかったらバロームさんの失恋が確定しちゃうから、それはそれで彼女が可哀相よね。
それこそゲームの恋愛に、お互いに本気になって別れないって結末だってあるわけだし。
「あの腐臭女はどうでもいい。
失恋でも何でもしてろ」
うん、カニやんはバロームさん苦手だもんね。
「あの二人が本気になるとも思えないけど、もし本気になったところであんたに何かを相談してくることはないから大丈夫。
心配無用」
そんな力説してくれなくてもわかってます。
喪女に恋愛相談なんて……わたしだって相談されても困るわよ。
逆にわたしのほうが教えて欲しいくらいなんだから。
例えば彼氏の作り方とか……っていったら、なぜかカニやんが困った顔をする。
ん? なに?
「いや、別に……」
心配しなくても大丈夫。
彼氏の作り方を男の人に相談する勇気は、わたしにありません。
でもね、カニやんは喪の生態にあまり詳しくないみたいだけれど、喪だって恋愛には興味があります。
凄くあります。
だから友達と恋愛話とかします。
その……生々しいのとかは全然無理だけど、でも、興味は凄くある。
同僚の話とか、よく聞くのよ。
「耳年増。
ただでさえ喪女なのに」
呆れるカニやんに、また柴さんが割り込んでくる。
「女子ってのはだな、時々恋愛脳とかいうおかしな思考になるらしい」
「恋バナ大好きだよな。
職場にもいる」
合いの手を入れるのはもちろんムーさん。
すると突然カニやんってば、柴さんの肩に手を置いてまるで説得するように話し出す。
「柴やん、惜しいが違う。
いいか?
こういうのは恋愛脳とか恋バナなんていいモノじゃなくて、噂大好きなオバチャン。
ただのオバチャン状態なんだよ」
ちょっと、なんてことをいうのよカニやんってば。
またオバチャンって……小中学生どころか、歳上にまでオバチャンとか言われた!
しかもこれにムーさんが納得しちゃうとか……。
「それはつまりあれだな。
俺たち男が、幾つになっても少年の心を持ち続けるのとは逆に、女は生まれた時からオバチャンの素質を持っている、と」
「あ、そんな感じ」
ちょっとカニやん、なに納得してるのよっ?
しかも柴さんまでが
「あーわかったかも」
……わからなくていいわよ。
わたしには全然わかんない。
クロウに訊いたら 「さぁな」 だって。
これだけやりたい放題やって、まだ機嫌悪いの?
「とにかく、あの二人のゲームは放っておけ。
どっちもいい歳した大人なんだから」
それこそ本気になったって自己責任と、カニやんはちょっと突き放した態度を取る。
「俺にはガタイのデカさばっか目について、関係性が今ひとつ頭に入らん」
「あの二人が組んずほぐれつ?
ウザくね?」
???
なんの話?
あ、プロレス?
男の人って好きよね、ああいうの。
ゲームの中だと怪我をしないから別にいいけれど、子どもみたい。
小中学生の頃、クラスの男の子たちがところ構わず床に寝転がってよくやってたわ。
「さすが喪女!」
カニやんが結論づけるみたいな言い方をすると、脳筋コンビは黙って大きく頷くだけ。
ん? プロレスじゃないの?
ひょっとしてあの遊びには、ちゃんとした名前があるとかっ?
「もうどうでもいいから、あの三人は放っておけって。
【特許庁】 で解決するでしょ?」
まぁ別れが拗れて刃傷沙汰になっても、ゲームだから大丈夫よね。
「それはすでになってるから」
「すでに旦那がやってるから」
「しかも公衆の面前で」
口々に言いながら三人揃ってクロウを見るけれど、次の瞬間には目を逸らせる。
後ろに立たれているからわたしには見えなかったんだけれど、クロウにどんな顔をされたの?
でもね、不破さんが選ばれた理由はわからないけれど、クロウのあれはただの八つ当たり。
明日から三日間出張でログイン出来ないからって、どんな暴れ方よ?
やることがまるで子どもなんだから。
どうせならもっと有意義な遊び方をすればいいのに。
もちろんわたしにとっての有意義な遊び方は 「楽しく」 よ。
決まってるじゃない。
「知らないって平和だな」
カニやんの言葉に、脳筋コンビどころか恭平さんやアキヒトさんまでが大きく溜息を吐いたのはなぜかしら?
しかも同じようなタイミングで串カツさんが溜息を吐くのが見えた。
このシンクロは何?
でもその串カツさんの溜息で話がついたらしい。
すっかりこちらの話に夢中になってしまって、どこをどうしてそうなったのか、経路は全くの不明。
でもノーキーさんの機嫌はすっかり直っていた。
そればかりか、なぜかノーキーさんが落とし前をつけるってことで、クロウともう一戦することになっていた。
不破さんじゃないの?
どうしてノーキーさんなのかと思えば、一応不破さんも悪いってことで、じゃあ上司としてノーキーさんが落とし前をつけようってことになったらしい。
それに納得したってことは、不破さんもクロウに何か悪いことをしたわけ?
その自覚もあるの?
そもそもなんの落とし前?
騒ぎを起こした落とし前?
わからない……
まぁそれはそれでいいけれど、クロウがもう一戦するのなら観ます。
でもわたしはここから一歩も動けません。
さっきのあれで本当にHPを使い切ってしまったらしく、しんどくて動けません。
だからここで観ます。
どうせならそのまま屍鬼で対戦してって、わたしに出来る精一杯の愛想でお願いしてみたらまた持ち上げられた。
そしてさっきの席にすわらされる。
ねぇクロウ、わたしは物じゃないんだけど?
「物っていうより、小学生女児扱い?」
クロウは保護者かーい! ……って突っ込んじゃったわ。
とりあえず、すわらせてくれてありがとう。
「大丈夫か?」
なにが? って訊き返したら、また頭ポンポンなのね。
ちゃんと答えてよ。
「これが終わったら、今日はもう休め。
俺もログアウトする」
そうね、そうしましょう。
わたしも疲れちゃったし、クロウも明日早いしね。
「そうだな」
支度は終わった?
「着替え程度だ」
仕事とはいえ旅行は旅行。
しかも二泊三日なのに、たいした荷物はないって余裕綽々のクロウ。
男の人は身軽でいいわね……って、ここでまた頭ポンポンが来た。
これは余計なことを言うなってことかな。
すぐにクロウとノーキーさんの対戦が始まるのかと思ったら、ノギさんが一つの提案をしてきた。
それも酷く乱暴にね。
「不破、武器を馬鹿に貸してやれや」
もちろんノギさんの言う 「馬鹿」 はノーキーさんのこと。
これは言わなくてもみんなすぐにわかった。
それと同じくらいの早さでノーキーさんが、わざわざ借りなくても自分の剣があるって反発したんだけれど……それも大きな声で。
でもノギさんの趣向を理解した不破さんが、鞘に収めた自分の屍鬼をノーキーさんに差し出す。
「久々に使ってやれよ」
さすがにちょっと頭の回転が悪いノーキーさんも、差し出された屍鬼を見たら理解出来たらしい。
クロウの手に、同じ屍鬼が握られているもんね。
ニヤリと笑って不破さんの屍鬼を受け取る。
「いいねぇ。
ノギにしちゃ、なかなか面白いこと言うじゃねぇか」
「つまらないお前と違って、俺はいつも面白ぇ男なんだよ」
「ぬかせ」
あら、これって久々にクロウとノーキーさんの屍鬼対決が見られるってことじゃない。
提案者のノギさんやそれを受け入れた不破さんはもちろん、見ている脳筋コンビや串カツさんまでがニヤニヤ笑いだす。
みんな楽しみでニヤニヤしちゃって気持ち悪いんだから。
しかも不破さんってば、らしい発破のかけ方をするの。
「負けたら修理して返せよ」
つまり修理代が屍鬼のレンタル料ってことね。
もちろんノーキーさんも負けてないわよ。
「俺が勝ったらどうするよ?」
「折っていい。
俺が修理してやる。
ついでにお前の銘なしも修理してやる」
「その言葉、忘れるなよ」
そう言い残し、ノーキーさんはクロウと一緒に対戦エリアへと転送されていった。
超特大遅刻の上、拗れまくって進まない。
でも今回の地下闘技場は次話で終了予定。
(例によって予定はあくまでも予定ですが・・・汗)
もっふりボディが魅力的なアレと飼い主のイチャイチャが始まります(嘘