表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

254/806

254 ギルドマスターは串刺しです

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!



キーワードでも R15 と 残酷な描写あり を設定しておりますが、今話はサブタイトルにありますとおりです。

ご注意ください。

(作者基準でちょっと・・・と思ったので、一応書いておきますね・汗)

 もし、ノギさんと不破さんが勝っても、こちらにもいうことをきいてもらう権利が一つある。

 それで帳消しにすればいいわ! ……なんてわたしなりにちゃんと考えたつもりだったのに、よくよく考えてみれば大失敗。

 だってノギさんは対戦できれば条件なんてどうでもいいんだもの。

 それこそ 「一週間ギルドに所属してね」 なんて無理難題……少なくともノギさんにとって、激しくポリシーに反する要求でも出されなければたいした問題じゃない。

 ちなみにギルドの調和を守るため、絶対にわたしがそんなことを言わないっていうのは織り込み済み。


 絶対に言いません


 わたしがたいした無理難題を出さないだろうと踏めば、対戦するために条件を呑むなんてノギさんにはなんでもないことなのよ。

 それこそ 「勝ったほうが何か一つ、負けたほうにいうことをきいてもらう」 なんて条件もいらないの。

 わたしたちがタッグマッチを受けるだけでいいのよ。


 やっちゃったぁ~!!


 気がついたわたしもそれを顔に出さなければよかったのに、顔どころか態度にまで盛大に出しちゃったから、それを見たノギさんの、してやったりと言わんばかりの顔が憎らしい。

 あのイケメンにグーパンしたい。

 あの爽やかに勝ち誇った顔にグーパンしたい!


 無理だけど


 だって届かない……ってほどじゃないけれど、あの高さにある顔を殴るのはちょっと難しい。

 わたしに丁度いい高さまで屈んでくれたらいいけれど、ノギさんにそんなサービス精神はない。

 ええ、全くありません。

 しかもその隣では、すでに相棒気分で立っている不破さんが、わたしを見て至極申し訳なさそうな顔をしてるんだけど、それが上っ面だけってことはなんとなくわかる。

 まぁホストなんてそうよね、客商売だもの。

 とりあえず、その露出の高い上半身装備からは目を逸らせておく。

 まぁ……なんというか、久々に大きなやらかしをしてしまったってことね。


 ……クロウ、ごめん


 申し訳なさ過ぎて顔を上げられないので、ガッツリしがみついて顔を隠しておく。

 ほんと、ごめん。

 またしてもわたしのやらかしに付き合わせることになっちゃった。


「俺はかまわないが……」


 が? ……なに?

 中途半端に言葉を切られると凄く不安になる。


「いや、大丈夫ならいい」


 なにが?

 意味がわからなくて顔を上げてクロウを見たんだけれど、クロウはノギさんを見て言う。


「ノギ、この一回だけだ。

 それ以上はやらせない、いいな?」


 ……日本語がおかしいような気がする。

 けれどクロウに言われたノギさんはなぜかわたしを見ていて、わたしと目が合うと、一瞬遅れてなにかに納得したような顔をする。


 これ、なに?


「いいぜ。

 今日はこの一回だけだ」


 この返事も曲者よね。

 今日は……だって。

 つまりまた別の機会を狙うつもりなんだろうけれど、脳筋コンビやクロウじゃあるまいし、そんな頻繁に地下闘技場に来るもんですか。

 代わりに脳筋コンビを日参させるからそれで我慢して頂戴。


「勝手に売るなよ」

「おいおい」

「ひでぇ」


 いいじゃない、どうせ時間を見つけては来てるんでしょ?

 だったらギルドのために役に立って頂戴。


「ギルド?

 どんな関連?」


 つまりね、最初に出した条件よ。

 こちらのお願いを一つきいて頂戴っていうあれ。


「具体的にきいてもいいですか?」


 カニやんの問い掛けに応えたら、さらに不破さんが追求してくる。

 もちろんいいわよ、別に。

 今回のイベントで裏掲示板の問題が出たでしょ?

 またああいう企みがあった時、ちょっと助けて欲しいなぁ~っていうお願い。

 今回は 【暴虐の徒(ライカさんたち)】 が助けてくれたけれど、毎回あんなにタイミングよく助力を得られるとは限らない。

 だから少しでも備えておこうと思って。

 ただこれを条件に出すかどうかは、タッグマッチの勝敗次第だけどね。


「そんなこと考えてたわけ」

「うちの蝶々夫人(ちょうちょ)もそうですが、責任ある立場は大変ですね」


 考えてました。

 カニやんにはちょっと呆れられたっていうか、拍子抜けされたっていうか。

 でも不破さんは感心したように言って、直後、冷ややかな目でチラリとノーキーさんを見る。

 まぁ日頃の行いよね、それは。

 もちろん串カツさんの、束縛を超えた愛情に悲鳴を上げながらも聞いていたノーキーさんは 「うるせぇー!」 とか叫んでいたけれど。

 ノギさんは……まぁノギさんよね。

 わざわざ舌打ちとかされた。


「チッ!

 これだからギルドなんてものは面倒臭ぇ」


 別にノギさんに責任を肩代わりしろなんて言ってません。

 ちょっとそういう場面で力を貸してってお願いしているだけ。


「まぁいいぜ、そういうことなら協力してやっても」


 あら、どういう心境の変化?


「言っただろう?

 俺はああいう小細工が大っ嫌いなんだよ。

 それを叩き潰すってんなら、力を貸してやらなくもない」


 ストレートに 「貸す」 っていえばいいのに、このひねくれ者。

 でもノギさんらしいかな。


「それに美人にお願いされるっていうのも、なかなか気分のいい話です」


 もちろんお願いの対象には不破さんも含まれているんですけど?

 この程度の顔でいいのなら、笑顔も付ける?


「安売りはいけませんよ。

 もちろんタッグマッチを受けて頂く以上、俺も条件を呑みます。

 でもどうせだったらその案件、【特許庁】 で受けてもいいですよ。

 叩き潰すなら、盛大に、徹底的にやりたいでしょ?」


 不破さんの提案に、つるむのが大嫌いで、騒がしい 【特許庁】 が好きじゃないノギさんが珍しく 「いいねぇ」 だって。

 よっぽどあの裏掲示板の話が気に障ったんだ。

 でも不破さんの提案には問題がある。

 だって実質的な副主催者(サブマス)的立場にはいるけれど、実際には権限を持っていないのよね、不破さんは。


「ご心配なく。

 蝶々夫人(ちょうちょ)も、何かあれば相談に乗ると言っていたでしょう?

 一も二もなく同意を得られます」


 そう言ってにっこりと笑う不破さんの背中に、突然どこからか飛んできた大剣が刺さり、その先端が不破さんのお腹あたりから突き出てくる。

 え? ……っと、何が起こったわけ?

 状況は、誰かの大剣が不破さんを背中から刺した……つまり不破さんが突然串刺しにされたの。

 もちろんここは一般エリア扱いだからHPは減らないし、HPの流出(ドレイン)現象(エフェクト)もない。

 でも刺された衝撃で一瞬不破さんの体が傾いで……ビックリした。

 ちょっと心臓がバクバクしてる……


「大丈夫か?」


 クロウが気遣って声を掛けてくれる。

 うん、大丈夫。

 でもあの剣、誰の?

 どうして突然こんなことをするの?


「抜いてやるよ」

「悪い」


 隣に立っていても助けてあげないのがノギさん。

 代わりにムーさんが気を利かせて抜いてあげると、その柄を見て呟くの。


「見覚えのある剣だな」

「ああ」


 ムーさんに見せられる柄を受け取った不破さんは、次の瞬間両手にその大剣を握り直して床を力強く蹴り、大きく踏み込む。

 その先には、串カツさんにプロレス技……だと思うんだけど、技の名前はわかりません。

 串カツさんに背中から固定されて動けないノーキーさんがいて、その腹部を狙って力一杯突き出す。


「このボケが、なにしとんじゃ、おらぁ!」

「ちょい不破、気持ちはわかるが俺まで刺すな」


 柄を握る手に力を込め、ノーキーさんと鼻を突き合わせる距離で睨み合いながらも罵声を浴びせる不破さん。

 その大剣の先端がノーキーさんの体を貫いて、背後にいた串カツさんにまで届いていた。


「一蓮托生、心中してろ」

「まぁお前は絶対やると思ってたけどな」


 不破さんの反撃を見てすぐさまヤバいと気づいた串カツさんだったけれど、【束縛彼氏からDV彼氏に移行中】 を演じることをやめられなかったらしい。

 ただノーキーさんが仕返しされるだけでなく、自分も巻き添えを食らうってことまでわかっていながらもね。

 そこまで徹底しなくてもいいと思うんだけれど、しなければならないのが 【特許庁】 なのかしら?

 しかも串カツさんってば……


「心中ってのはなかなかいい響きだ」


 ……理解不能……。

 ところでノーキーさんはいきなり剣を投げて不破さんを刺したりして、何がしたかったわけ?


「なにがもクソもあるか!

 どうしてあいつなんだよっ?

 俺がいるだろうが!」


 ん? これはなんの話?

 唐突すぎるというか、簡潔すぎるというか、これを聞いただけでは理解出来ないんですけど?

 でも不破さんにはわかったらしい。

 急に柄から手を放し……でも抜いてあげないのね。

 柄から手を放した不破さんは、ノーキーさんからゆっくりと顔を離して直立する。


「そういえばお前がいたな」

「いたんだよ!

 これだけ騒いでるのに忘れるかっ?」

「忘れてた。

 で、OKなんだろ?」

「当たり前!」


 これは 【特許庁】 の話ってことでいいのかしら?

 よくわからないんだけど、これで話はついたみたい。

 くるりと踵を返す不破さんの背中に 「抜けよ、ごらぁ!」 とか罵声を浴びせているノーキーさんだけれど、そもそもそれはノーキーさんの剣でしょ。

 しかも不破さんを振り向かせるためにあんな乱暴な方法を使ったりして。

 返してもらったわけだし、自分で抜きなさい。


「というわけで蝶々夫人(ちょうちょ)に話す手間が省けました。

 必要とあらば、【特許庁】 を自由にお使いください」


 ここまでを聞いてようやく話がわかったわたしって、実は結構な馬鹿なの?

 不破さんがわたしの出した条件を呑むにあたって、不破さん個人じゃなくて 【特許庁】 として話を受ける。

 その許可を、権限のある人間にもらわなきゃならないんだけど、あとで、わざわざここにいない蝶々夫人にもらいに行かずとも、蝶々夫人よりも上の権限を持った人間がすぐそこにいたっていうね。


 忘れてたわ


 あ、でもでもでも!

 さっきも言ったけれど、これはタッグマッチが終わってからの話。

 場合によっては使い方を変えないと、わたしとクロウの身が危ない。


「あ~?」


 ちょっとノギさん、その面倒臭そうな態度はなによ?


「なにも……その話は別にいい」


 いいっていうのはどういう意味?

 どっちのペアが勝っても何もなしってことでいいの?


「俺もそれでいいですよ。

 勝負を受けていただければ、それで」


 そこはわたしの考えが甘かった。

 そうか、そうよね。

 この二人は勝負するってこと以外に興味がないんだった。

 わたしがどんなお願いをするか 「ちょっとだけ」 気になったのね。

 あくまで 「ちょっとだけ」 ね。


 なるほど


 二人とも男前なんだから。

 いいわよ、この期に及んで逃げも隠れもいたしません。

 この勝負、受けて立つわ。

 いざ、尋常に勝負!


 ……の前にもう一つ忘れてた!!

まだ何かあるのか、グレイっ?!


串刺しの一件はもっとサラッと流して、今話で対戦まで入る予定だったのですが……予定はあくまでも予定でした(涙

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは あれだよね あのふたりをバカップルで認識していたから、個体名と役職が認識されなかったんだね 皆……………ww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ