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248 ギルドマスターは迷子です

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 うん、ちょっと落ち着いて話を整理しよう。

 つまり、わたしのアップにした髪型は見るに堪えられないほど似合わないわけじゃないのね?


「そんなことを言った覚えはない」


 クロウには不思議そうな顔をされちゃったんだけれど、ちゃんと答えてね。

 わたしには凄く重要な問題だから。


『問題の場所が違うだろ』


 ちょっとカニやん!

 さっきまで知らん振りするように、みんなと一緒になってだんまりを決め込んでいたくせに。

 キンキーがピンチで忙しかったなんて言い訳をしてきたけれど、この大嘘つき!

 シャチ銅ごときで、カニやんがキンキーをピンチになんてさせるものですか。


 もういい


 そのまま楽しく遊んでいて頂戴。

 話が終わったらわたしも合流するわ、ルゥもほとんど回復したことだし。

 わたしも一眠りしてちょっと楽になったし。


『早く来て下さーい』


 はいはい


 で、話を戻すわ。

 危うくクロウの膝枕で目を覚ました時のことを思い出しかけたけれど、いいタイミングでマメが声を掛けてくれて気が逸れてくれた。

 ……でもちょっと耳が熱い。

 ちょっとクロウ、笑わないで。


「悪い」


 そう言いながらまだ笑ってるんだから。

 今の 【素敵なお茶会】 の女性プレイヤーはゆりこさん、マメ、りりか様、ベリンダ、そしてわたしの五人のみ。

 わたしの思惑とは裏腹に、女の子ばっかり辞めていっちゃったのよね、悲しいことに。


『それ、ここしばらくのことだし』

『旦那が何人野郎を切ったと思ってるんだよ、女王は』


 これまた対戦待ちの脳筋コンビ。

 まだまだ 恭平さん×JB コンビでは ノギさん×不破さん の酷薄コンビには及ばないらしく、もうすぐ終わりそうな状況ではあるらしい。

 次は 脳筋コンビ v.s. バカップル らしいけれど余裕ね。

 でも言われてみればそうだった。

 女の子はたった二人だけれど、クロウが切った元メンバーは男性ばかり。

 結構な数だったから途中で数えるのをやめてしまった。

 だって辞めた人の数を数えるなんて不毛じゃない。

 そう気づいてやめたの。

 そういえば、柴さんやムーさんも何度も切られたのよね。

 この二人はそのたびに戻ってきてくれて、クロウのほうが切るのを諦めた。


 不毛な戦い


 しかも勝者が脳筋コンビっていうね。

 男性プレイヤーにも髪の長いアバターの人は結構いて、セブン君とかハルさんとか。

 クロエも、ロングっていうほどではないけれど長めで、たまに襟足を束ねていたり。

 カニやんは逆に前髪がちょっと長めよね。

 邪魔になったらチョンマゲとかしないの?

 クロウから髪ゴム取り返したら貸してあげようか?

 可愛い花飾り付きよ。


『しねーよ』


 あ、そ。

 マメ、そのうち一緒に悪戯しましょうね。


『アイサー』


 うんうん、いいお返事ね。

 そういえば恭平さんたちと一緒に地下闘技場に行ったアキヒトさんが、ずっと静かなんだけど大丈夫?


『へ? 俺?

 全然大丈夫……ってなにが?』


 うん、大丈夫そうでよかったわ。

 じゃあさっさと話を済ませて髪ゴムを返してもらわなくちゃ。

 えーっと何?

 つまりクロウの好みはストレートのロングってこと?


「それは違う」


 ん? んん? 違うのっ?

 じゃあどういうことっ?


「どういうことだろうな」


 だから笑わずに真面目に答えて!


『クロウさんも大変だな。

 グレイさんをショートさせないようにっていうのは難易度が高い』


 カニやん、それもどういう意味?


『俺じゃなくてクロウさんに訊いて。

 キンキー、もう一周行こうぜ。

 プレートあるし』

『はい!』


 キンキーが元気でなによりよ、楽しそうだし。

 カニやんの前髪を花飾り付きの髪ゴムでチョンマゲにしてやるには、まずは髪ゴムをクロウから取り戻さなきゃね……と思うんだけど、どういうこと?

 ギルド 【素敵なお茶会】 に所属する女性プレイヤーは、わたしを含めて五名。

 そのうちロングヘアはわたしとゆりこさんだけ。

 マメはおかっぱで、ベリンダはショート。

 そういえばベリンダの髪も緑色をしているけれど、串カツさんのように目が痛くなるような蛍光色ではない。

 もっと深く落ち着いた緑色。

 りりか様もロングだけれどグルングルンにパーマをあてていて、それを高く結い上げている。

 だからわたしと同じ、ストレートのロングヘアにしているのはゆりこさんだけ。

 長さはわたしより少し短めで、それでも肩に届くくらいの黒髪をいつもフードを被って顔と一緒に隠している。

 聖女様の神秘性っていうのかしら?

 ナゴヤドーム内にある施設の一つ 【教会】 にも聖女はいるけれど、あっちは守銭奴。

 課金にせよ、ゲーム内通貨にせよ、とにかく払わないとなにもしてくれない。

 でもゆりこさんは本物の聖女様だから、対価なんて求めず回復をしてくれるの。


 マジ聖女様


 うん、まぁそのゆりこさんも髪を下ろしているし、クロウが下ろせっていうのなら……。

 さっきも言ったけれど、クロウにはいつもお世話になっているし、そのクロウの要望(リクエスト)なら可能な限り応えようと思う。

 でもわたしもお願いがあるの。

 まず、髪ゴムを返して。

 それから、イベントの時なんかは上げたい。

 だってこのあいだの骸骨の時みたいになるのは嫌だもの。

 あの時は危うくカニやんにバッサリ切られるところだったんだから。

 しかも骸骨ってば、頭皮ごと毟る勢いで引っ張ってきたし。


 痛かった


 あれは本当に痛かった。

 涙が出るくらい痛かった。

 あの時はプチパニックで気づかなかったけれど、ひょっとしたら髪を引っ張られただけでHPが減っていたかもしれない。

 そのぐらい痛かったし、あの時のことを思い出すと冷汗が噴き出してくる。

 というわけで同じ愚は繰り返したくないと思います……って真面目にいったのに、クロウってばずっと楽しそうに笑っているのはなぜっ?


「そうだな、あの時は俺も少し焦った」


 そうでしょ?

 普段は要望(リクエスト)どおり下ろしておくから返して!


「なにを?」


 …………まさかここですっとぼけられるとは思わなかったわ…………。

 いいです、わかりました。

 クロウに預けるわよ。

 髪を上げる必要が出来た時に返してくれればいいわ。


「グレイさんが折れたんだ」


 なによ、カニやん。

 そんな珍しそうな顔をして。

 全然珍しいことじゃないでしょ。

 みんなだって言っていたじゃない、クロウがギルドで一番我が儘だって。

 クロウにはいつもお世話になっているから、その我が儘をきいてあげたの……ということにして、ギリギリ上から目線で主催者の面子を保ってみる。

 まぁカニやんにはバレていて、いつものようににひって笑われたけど。

 とりあえずキンキーにはわたしが付き合うから、カニやんはクロウと一緒に金にでも潜ってきたら?

 地下闘技場に行った連中はこのままご飯落ちして、戻ってくるのはご飯を食べてからになりそうだし。


「クロウさんと金に潜ったら落ちる」


 どうして?

 カニやんの火力で落ちるはずがないでしょ?


「いや、落ちる。

 だってこの人、速いんだよ」


 うん、知ってる。

 銅シャチとか銀シャチとか完全に落とさず、道だけを開いてスピードで切り抜けて消耗を避けるの。

 単身や少数で潜る時はそうやってクリアを優先するのがクロウのやり方。

 ナゴヤジョーに三つあるダンジョンの中で、シャチ金は経験値を稼ぐためにあるような火力ダンジョン。

 そりゃ途中に出る銅シャチや銀シャチを全部落とせば相当な経験値を稼げるけれど、油断をすればプレイヤーのほうが落とされる……というか叩き潰される。

 踏み潰されるが正解?

 まぁどれでもいいんだけれど、あの巨大なピカピカシャチが何十匹も出現して通路を塞いでいる。

 そして落とされれば、それまでに稼いだ経験値の半分くらいを死亡制裁(デスペナルティー)として持って行かれることを考えれば、道中の巨大シャチは無視してラスボスの金シャチを倒したほうが経験値を稼げる。

 人数が少なければ、これが一番の安全策だもの。

 クロウはだいたいこの方法。

 うちの重火力が五人でパーティを組めば全然余裕だから、全部倒すけど。


『脳筋とか、いないの?』


 不意にクロエの声が割り込んでくる。

 うん、いないわよ。

 なにか用があった?


『金に潜ろうと思って』


 あら、珍しい。

 でももちろん銃士(ガンナー)三人……は無理か。

 ぽぽのレベルが足りないもの。

 それにいくらクロエが一緒とはいえ、銃士(ガンナー)二人で組んでのパーティでは厳しい。

 それで壁が欲しいのはわかったけど、地下闘技場組はこのままご飯落ちするような気がする。


『じゃあ早めにご飯食べてこようかな』


 うん、それでもいいわね。

 先に再ログインして待っていたら?

 インカムの向こうで銃士(ガンナー)三人の相談する声がする。

 じゃあわたしたちは銅に潜りましょうか……ってキンキーに声を掛けたんだけど、結局カニやんはどうするの?

 そこを訊くのを忘れていた。


「俺? 銀組に合流する」


 そうね、それもいいかも。

 マメのせいでカオスになっていてクリアが難しいみたいだから。


『マメのせいじゃないでーす』

『鯉の口の中からなに言ってるんですかっ?』


 ナイス突っ込みね、トール君! ……っていうか、またバックリやられてるのね。

 どおりで声がくぐもっていると思った。

 さすがマメ、ちっとも進歩してないんだから。


 むしろ退化?


 いっそクロウを入れて 三人パーティ × 2 にする?

 もちろんマメはクロウチームよ。


『絶対嫌ー!』


 さっき散々お説教されたものね、そりゃ嫌でしょうとも。

 わたしもさっきのことを思い出してモヤッとするんだけど、一眠りしてすっきりしたし、反省しました。

 いつまでもクロウに甘えていないでちゃんと自立します! ……って宣言したら、なぜかカニやんが変な顔をするの。

 わたしの宣言に対する反応だと思うんだけど、わたし、何か変なことを言った?

 わからないから率直に訊いてみる。


 それはどういう意味の顔?


「どうって……どうしてそっちに行くのかわからない顔」


 そっちってどっちよ?

今話は健康管理のため甘味控えめにしましたw


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― 新着の感想 ―
[一言] リアル中学男子 これだけレパートリーがあれば、彼女が出来たら対処は楽だな……………ww
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