表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

241/806

241 ギルドマスターは束縛します

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 ちょっとバロームさん、間違ってもノギさんを挑発しないでね。

 ノーキーさんの彼氏彼女になる権利(一週間限定)を逃して無念なのはわかった。

 凄くよくわかったから、八つ当たり相手にノギさんだけは選ばないように。

 ここにいるメンバーの中では一番不適切な相手なの。

 その人は不破さんより酷薄というか、残虐というか……


「はぁいノギちゃん、久しぶりね」


 バロームさんの動きを見て察してくれたのか、まずは蝶々夫人が先制。

 ノギさんの肩に手を置いてポーズを決めようとしたら邪険に振り払われて失敗。

 ポーズを決め損ねた上、ノギさんにギロリと睨まれる。


「そのアバターで寄るんじゃねぇ。

 何度も言わせるな」

「やぁねぇ、狭量な男はモテないわよ」


 この二人の組み合わせもわたしには珍しいんだけど、ノーキーさんとは別の意味で、蝶々夫人もノギさんに毛嫌いされているみたい。

 ノーキーさん以上にしたたかな蝶々夫人は全然へこんでないけど。

 しかもすぐそばでノギさんに凄まれても全然怯まないのよね。

 憎まれ口まできいちゃって、余裕なんだから。

 でもこれで蝶々夫人の当初の目的である、ノギさんの関心をバロームさんから逸らせることは出来たからいいけれど、逆に当初の目的であるわたしへの関心を思い出させるとか。


 ちょっと蝶々夫人!


「不破、カニ、そこを通してもらってもいいか?」

「悪いけど今日は通行止めなんで」

「そういうな。

 今日はいい通行料がある」


 不破さんを押しのけるようにカニやんの肩に手を置いたノギさんは、そのままのしかかるような体勢でカニやんの耳元で囁こうとする……んだけど、先手をとってカニやんが言う。


「裏掲示板のことでしょう?」


 次の瞬間、ノギさんの顔から表情が抜ける。

 本当に、消えるというより抜ける感じがした。

 ついでに悪気とか毒気も抜けたらいいのに、抜けないのがノギさんよね。


「なんでぇ、知ってるのか」

「【素敵なお茶会(うち)】 にも詳しいのがいるので。

 俺にいわせれば、ノギさんが知っていたほうが不思議です。

 そういう小細工みたいなの、嫌いでしょう?」

「おう、大っ嫌いだね」

「それでセブン君に八つ当たり?」


 ちょっとちょっとカニやん、まかり間違ってもノギさんを挑発しないで。

 忘れてるとは思わないけれど、カニやんだってわたしと同じ魔法使い(モヤシ)なんだからね。

 ナゴヤドーム内じゃダメージは受けないしHPも減らないけれど、痛いものは痛いし、苦しいものは苦しいのよ。

 案の定、ノギさんの手がカニやんの首に伸びるのを、珍しく不破さんが止めてくれる。


「お前は黙ってな、不破。

 あとで遊んでやるよ」

「それはそれ、これはこれ、ですよ、ノギさん」

「どいつもこいつも生ぬるい!」


 結局みんなに八つ当たりするんだから……仕方ないわね。

 不破さん、カニやん、ありがとう。

 どうやらわたしの顔を見なければ気が済まないみたいだから、顔だけは見せるわ、顔だけは。


 顔だけね


 しつこいくらいだけれど、見せるのは顔だけ。

 本当に顔を見せるだけ。

 それ以上は嫌。

 本当に顔だけを二人のあいだからひょっこりと出し、ノギさんを見る。

 目が合うとニヤリと笑われた。


 怖い……


「よう、魔女。

 やっと顔を見せたか」


 ええ、顔だけね……と思ったけど、やっぱり首……かと思ったけれど、顎をしゃくられた。

 うん? 今日は顔が災難な日なのかしら、わたし。

 さっき不破さんに真っ二つに斬られて、これからノギさんに握り潰されるらしい……と思ったら、いきなりノギさんが驚いたような声をあげ、わたしの顎から手を放す。

 何があったのかと思ったら、ノギさんの腕にルゥがガッツリとぶら下がっていた。


「相変わらず怖いもの知らずなワンコだな」


 ルゥが怖いもの知らずでも、わたしが怖い!

 それこそノギさんのことだからルゥを石畳に叩きつけそうな気がして、慌ててルゥを呼び戻す。

 鼻に幾つもの皺を寄せてガッツリとノギさんにかぶりついていたルゥは、わたしの声を聞いて大きな耳をぴくりと動かす。

 そしていつものようにノギさんをぽいっと放りだすと、うっきうきでわたしの許に飛んでくるの。

 わたしがどれだけドキドキハラハラしたかなんて、全く気づきもしない超ご機嫌で。

 しかもノギさんってばすかさずその尻尾を捕まえようとするんだけど、短すぎて掴めなかったっていうね。

 勢いよく突っ込まれたわたしもむせたけど。


「クソ、逃げられた!」

「ワンコ相手にマジにならないでもらえます? ノギさん」

「魔女とくれば黒猫だろうが。

 なんで犬?」


 それはノギさんが勝手にわたしを 「魔女」 って呼んでるだけ。

 そしてルゥを作ったのは運営の小林さんで、正解は狼です。

 しかもノギさんもカニやんも、わたしの頭の上で話をしないで頂戴!


「そこか?」


 そこですって答えたら、またクロウに頭をぽんぽんされた。

 それ、恥ずかしいからみんなの前でしないで。


「どうしたグレイ、顔が赤いぞ」


 ノギさんもうるさい。

 だいたいノギさんはなにをしに来たのよ?


「だから裏掲示板の話」


 そういえばさっき、カニやんとそんな話をしてたわね。

 なんのこと? ……と思ってカニやんを見たら、ちょっと気まずそうな顔をして頬を掻いてる。

 その反応は何?

 ここでは出来ない話?

 それとも 【特許庁】 ?


「いや、【特許庁】 は問題ないけど」

「掲示板に書かれているのなら、隠しても今更ですから」

「水くさいわよ、グレイちゃん。

 何かあるのなら、【特許庁(わたしたち)】 が相談に乗るわよ」


 あるかないかは聞いてみないとわからないけれど、【特許庁】 が出てくると面倒になるのよね。

 でもきっと、今カニやんが言い淀んでいるのは別の理由。

 多分だけど、私に知られたくなかったのよね?

 ほら、にひって笑った。


 大正解


 でも知ってしまったからにはちゃんと聞くわ。

 まずはわたしが確かめるから、マメ、まだ他の人には喋っちゃダメよ。


『アイサー』


 すでにカニやんに喋ったことは棚に持ち上げたマメの声が、インカムから返ってくる。

 たぶんギルドルームにいるのよね?

 じゃあわたしたちも行きましょうか。


「そんじゃ、俺らは地下闘技場でも行くか」

「行くベ、行くベ」


 わたしの反対側をガードしてくれていた脳筋コンビが、ここでの解散を切り出す。

 クロエたちなんてとっくの昔に銃弾の補充とか、銃の損耗修理とかに行っちゃっていないんだけれど、少し離れたところで 【特許庁】 に混じって騒いでいたトール君たちにも声を掛けるんだけれど、さすがに地下闘技場はちょっとね。

 柴さんたちも、装備の損耗修理だけは忘れないでね。


「あいよ」

「俺も行こうかな。

 ノギさんも暇していたんでしょう?」


 不破さんのお誘いにノギさんもまんざらでもない顔。

 実際、今回のイベントに参加できなかったノギさんは、遊び相手のほとんどがイベントに参加してしまって、三時間ものあいだ、暇を持て余していたはず。

 四人いるならと脳筋コンビがタッグマッチを言い出したら、どこから聞いていたのか、ノーキーさんの声が割り込んでくる。


「俺も入れろや!」


 ノーキーさんが入っちゃうと五人になるわよ?

 タッグマッチは出来ないんじゃない?


「不破は俺と組むのが普通だろうが!」


 あとから割り込んできてこれだもの。

 しかも誘われてもいないのに勝手なことをいうわよね。

 でも人数についてはすぐに解決した。

 だってそれを喚くノーキーさんの後頭部をグーパンで襲いながら、串カツさんが……


「俺というものがありながら、他の男誘ってんじゃねーよ!

 この浮気野郎!」


 すっかり嫉妬全開の束縛彼氏に成り果てていた。


「ノーキーは俺と組む。

 不破はノギっち。

 他に行く奴はっ?」


 ノーキーさんを束縛するついでに仕切り始めたと思ったら、その呼び掛けに珍しい人が挙手。


「俺も参加していいっすか?」


 JBね。

 すぐに恭平さんが 「やめておいたほうがいいぞ」 って止めたんだけど、逆に誘われたというか、無理矢理パートナーにさせられた。

 それを面白がったアキヒトさんが 「俺、見学!」 だって。

 最後まで恭平さんは乗り気じゃなかったみたいだけど、JBとアキヒトさんに両脇を固められてほぼ強制連行状態。


 損耗修理だけは忘れないでねぇ~


 わたしは呑気に地下闘技場行きのご一行様を見送ったんだけど、突如としてはっとし、クロウを見る。

 えっと……クロウは行かなくていいの?


「俺はいい。

 一緒に行こう」


 そ、そう?

 別にクロウのことを忘れていたわけじゃないんだけど、ちょっと気まずい。

 どうしてみんな、クロウのことを誘ってくれなかったのっ?


 酷くない?


「だってクロウと組んだら出る幕がないじゃない。

 やるならソロ戦でしょ?

 でも行くんだったらわたしが組んであげるわよ」


 せっかく蝶々夫人が気を遣って言ってくれたのに、クロウってば苦笑いを浮かべて 「遠慮する」 だって。

 そのやりとりを見ていたカニやんが、なぜかなんとも言えない顔をする。

 しかもそれをわたしに見せないよう、向こうを向いて隠す念の入れよう。


 この反応は何?


 ちゃんと見えてたわよ。

 でもわたしがカニやんを追求するより早く、バロームさんが蝶々夫人に泣きついてきた。


「わたしもあんなこと言ってみたいです!」


 あんなこと?

 ひょっとして串カツさんの 「束縛彼氏」 のことを言ってるの?

 あれが羨ましいの?

 なにか違う気もするんだけれど……ごめん、わたしにはわからない。


「あんたね!

 だから襲撃の時は誰も担当しなくていいって言ったのに、どうしてわざわざこんな冷徹な奴を狙うのっ?

 だから落とされたんでしょ?

 せっかくの配慮も無駄にしてくれて、まだ言うのっ?」

「カニとは偶然目が合っちゃったから仕方ないです!」

「仕方ないとはご挨拶だな、この()!」


 ややこしくなるからカニやんは黙っておいたほうがいいと思う。


 つまりなに?


 【素敵なお茶会(うち)】 を襲撃する時、落とされないようにという蝶々夫人の配慮でバロームさんはフリーだったはずなのに、自主的にカニやんを襲って逆襲された……そんなところ?

 同性としてはバロームさんを応援したいところだけれど……結果的に蝶々夫人に落とされることにはなったけれど、バロームさんを相手にカニやんが落とされるわけにはいかないのよね。

 火力やレベル的にも全然脅威にならない相手だし、カニやんにも意地とかプライドもある。

 いずれにしてもそれは 【特許庁】 の問題。

 蝶々夫人たちは 【素敵なお茶会(うち)】 のギルドルームには入れないし、とりあえずここでお別れをしてわたしたちはギルドルームへ向かうことにした。

一つ入れ損ねたエピソードは次話のおまけ予定に変更。

次話は番外の予定です。

一週間後に来るバカップルの別れのシーンが書きたい!

(番外はそのお話ではありません、悪しからず・・・汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ