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198 ギルドマスターの勘は当たります

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!


後書き部分に 『休閑小話:運営の人々』 がございます。

ルゥの生みの親は小林氏ですが、実はGの生みの親は……w

「雷撃が無効?」

「盛大なノックバックだな、おい」


 みんな口々に意見というか思ったことを言い出すんだけど、間違いなく全員が驚いている。

 もちろんわたしもだし、吹っ飛ばされた柴さん自身も。

 でも驚きながらもすぐさま落とした剣を拾って体勢を立て直すのは、さすが超高性能危機管理センサー内蔵剣士(アタッカー)

 ただ驚いて突っ立っているだけのわたしとは全然違う……。

 やっぱり魔法というか魔力というべきか、反応を示す船長は柴さんを追撃すべくその高AGI(ハイスピード)で迫るのを、クロウが押しとどめる。


 この展開はなに?


 だって船長の弱点は雷撃系攻撃じゃなかったの?

 さっきはそれで落とせたわよ?

 展開の速さに、驚くわたしはちょっとついていけずに思考が止まる。

 もちろんいつまでも驚いていられないし、思考も止めていられない。

 まず状況の確認からよね、うん。

 というわけで柴さん、確認させて。

 今の攻撃にダメージは出た?


「ねぇ」


 うん、その 「ねぇ」 は呼び掛けの 「ねぇ」 じゃなくて、「ない」 の意味よね。

 この情報を処理するに当たって、わたしは記憶を呼び起こしてみる。

 確か初見で、詠唱(アクティブ)スキル 【一刀両断】 を使ったムーさんが、今の柴さんみたいに吹っ飛ばされたのを見た気がする。

 その時もほとんどダメージは出なかったはず。


 これ、どういうこと?


 色々とわけがわからなくなってきた。

 ここはちょっと落ち着いて情報を整理……しようと思ったのに混戦状態で、なんか落ち着けない。

 初見の時と違って今回は人数も多く、ラウラたち年少組が嵐を呼びまくってくれて大混戦で全然落ち着けない。

 気になることもあるんだけど、それを考えようとしても叫び声が邪魔をするの。

 ちょっとラウラの口に猿ぐつわ噛ませて!


「おいラウラ、女王の命令が来たぞ!」


 ちょっと柴さんが巫山戯た調子で声をかけたら、ラウラってばゲラゲラ笑いながら 「ムーリー」 とかさらに声を張り上げてわたしの邪魔をしてくる。

 でもね、そこにクロエが出てくると反応が変わるの。


「いっそラウラ、落としちゃえば?

 ほんと、うるさいし」


 一瞬で静かに出来るとか、さすがの毒舌。

 しかもただの毒舌じゃなくて、本気でそれをしようとするとか……え? ちょっとクロエ、なにしてるのっ?

 反射覚悟でファイアーボールを撃ったクロエは船長の狙い(タゲ)を自分に向けると、素早くラウラの後ろに回り込む。

 そうすると必然的に船長の攻撃は、手前にいるラウラを狙うことになる。


 ちょっとーっ!?


「そこの腹黒美少年、冗談が過ぎるんじゃねーかっ?」


 寸前にムーさんのフォローが入って難を逃れるんだけれど、その後ろで囃し立てるのはやめなさい。

 だってクロエは……


「冗談?

 僕はいつだって本気だけど?」


 それこそ 「なにを言っているの?」 と言わんばかりの顔で見返してムーさんを黙らせる。

 もちろんそれでも黙らないのがラウラで、そのうち本当に落とされてもわたしは知らない。

 だって止められないし。

 忘れられがちだけど、クロエたち銃士(ガンナー)はDEXの他にINTとAGIを持ってるのよね。

 INTは属性攻撃スキル 【魔弾の射手】 を取得するために必要な一定値しか持っておらず、AGIのほうが高い。

 つまり筋肉第一の剣士(アタッカー)を選んだラウラよりずっと動きが速いのよ。

 あれ、魔法使い(わたしたち)でも全然追いつけないから。

 ギャーギャー文句を喚き散らすラウラに、ちょっとヤバいレベルで怒っているクロエがわざとファイアーボールを船長にぶつけて反射させている。

 直接狙ってもPK出来ないのをわかっていてわざとやっているんだけど、もちろん狙いはラウラ一人。

 そのために周囲の被害も迷惑もお構いなしなのがクロエなのよね。


「放っとけ」


 うん、カニやんに言われるまでもなく放っておく。

 わたしに魔法反射は効かないからクロエの嫌がらせも意味ないし。

 でもこれ、大丈夫なの?

 二人のやりとりを見ているとちょっと不安を覚えるんだけど、とりあえずこの状況を整理するわ。

 クロエのおかげでやっぱり火焔属性は反射するってわかったし。

 ついでに雷撃属性も反射……は、わからないか。

 よくよく考えてみれば、柴さんの攻撃は 【霹靂】 だから物理攻撃として反射された可能性もある。

 じゃあ避雷針を撃って確かめてみる? ……って考えたら、の~りんが空恐ろしそうな顔をこっちに向けてくる。

 その顔、さっきも見たわね。

 今度はなにを言いたいのかしら?


「避雷針、撃とうとしてない?」


 あら、なんでわかったのかしら?


「今、凄い悪寒がした」


 それはつまり身の危険を感じたってことね。

 の~りんもなかなか良いセンサーを内蔵してきたじゃない。

 とりあえず避雷針はやめておくわ。


「俺がサンダー撃とうか?」


 んーとね、たぶん今回は雷撃属性はダメだと思う。

 反射を警戒すると、誰か剣士(アタッカー)詠唱(アクティブ)スキルを使って打ち込んでもらいたい。


「さすがにそれは無理」


 うん、の~りんにはお願いしない。

 あとで氷水属性のなにかを打ち込んでみて。


「そっち系なら俺がやるけど、なにを撃てばいい?」


 の~りんの向こうから話を聞きつけたカニやんが気を利かせてくれるんだけれど、全然気が利いてなくて、の~りんを怯えさせている。

 これはわたしにもわかった。

 絶対に大技を撃とうと考えてる。


「え?」


 反射したらみんなが落ちるからやめて。

 わたしの言葉との~りんの視線に非難されたカニやんは、一瞬の間を置いてにひって笑うの。

 ほら、やっぱり大技を使おうとしていた。


「とりあえずウォーターボール?」


 尻上がりの疑問系で一発船長にぶつけるんだけれど、やっぱり反射される。

 それがはからずもラウラのほうに飛んでいって、ちょっと復唱するのが嫌なくらい汚い言葉の罵りがカニやんに返ってきていた。

 まぁ剣士(アタッカー)を目指すだけあって、ラウラも結構な反射神経を持っているから簡単には当たらないで済んでいるけど、それ以前にあれはどうなのよ?

 まだクロエと争ってるんだけど……。


「だから放っておけって。

 それよりムーさんか柴やん、ちょっと吹っ飛ばされて来いや」

「お前が行けや」

「飛ばされて来いや」

「スキルないから無理」

「じゃあ行くわ」

「付き合うわ」


 …………なにかしら、このコント感。

 ひょっとしてコントなの?

 三人でコントをしてるの?

 本気で罵り合っているようにしか見えないクロエv.s.ラウラと違い、この軽いコント感はなにかしら?

 いつも罵声を浴びせ合ってるけど、どうしてこの三人ってこうなのかしら?

 いつかクロエとラウラもこうなってくれるのかしら?

 出来たら早い内にこの感じになって欲しいんだけど……無理?


「無理じゃね?」

「無理だと思う」


 カニやんだけならともかく、の~りんにまで言われているあいだに脳筋コンビが、ほぼ同時に詠唱(アクティブ)スキル 【一刀両断】 を忙しく動き回る船長に打ち込む。

 次の瞬間、その威力をほぼ減少なしで跳ね返されて筋肉の塊がノックバックする(吹っ飛ばされる)

 かといって打ち込んでくる船長の攻撃を、恭平さんたちが骸骨から奪った短剣で打ち返しているんだけれど、隙を見て反撃もしているんだけれど、出るダメージは微々たるもの。

 初見の時と同じく、攻撃を仕掛けた本人にしかわからないくらいしかHPが流出しない。

 えっと……これで四大属性はアウトね。

 通常攻撃もダメで、物理スキルもダメ。


 …………ん?


 ちょっと待って、全部ダメじゃない。

 マジでこれ、今回はどうやって攻めたらいいのよ?


「いや、まだ風が残ってる」


 風なら任せて。


「起動……スパイラル……うぐっ?!」


 なぜか詠唱途中でクロウに口を押さえつけられた。

 反対側では冷汗を掻いて顔を引き攣らせているカニやんがいる。

 ん? なに? わたし、まずいことをした?


「した!

 無茶苦茶した!」


 そのカニやんより先に口を開くの~りんの、酷く慌てた声ったら……わたし、そんなにヤバいことをしようとしたのかしら?

 ちなみに完全に展開を終えた魔法陣はまだ足下にあるわよ。

 だからいつでも発動出来るわよ。


「すんじゃねぇ!

 ここで範囲はアウト!!」

「グレイさんの威力だと、間違いなく全員死ぬから!!」


 二人して人を化け物みたいに言わないでよ。

 でもそうね、確かにここで範囲魔法はまずかったかも。

 しかも反射されたら全員……は落ちないわよ。

 たぶんクロウと脳筋コンビは生き残るわ。

 とりあえず二人の気が休まらないらしいから、足下の魔法陣は踏み潰しておく。

 でもあと風と地の二つを試してみる?


「俺らがやるから、あんたは大人しくイチャついてろ」


 このあとカニやんとの~りんで 【ロックフォール】 と 【ウィンド】 を試すんだけれど見事に反射。

 予想通りね。

 予告して全員が身構えたから被害は最小限に留められたけど、そっちに気をとられてキンキーが船長に斬られ、HPゲージが危険な領域(レッドゾーン)に入ったらしい。

 早く回復して。

 もちろんそのあいだにもわたしたちは攻略方法を考えるんだけど、あと残っている属性といえば光属性と闇属性くらい?


「それ、どっちも 【幻獣】 は効かないだろ?」


 そうなのよね。

 指摘してくれるカニやんはどちらのスキルも所持していないらしい。

 でもこれじゃあ八方ふさがり。

 そこでわたしが考えたのは……ちょっと話が逸れるんだけど、カニやんたちがいっていたポピュラーなゲームについて聞かせて欲しい。


「ゲーム?

 ああ、黒ひ○危機一発?」


 そうそう、それ。

 ルールとか知りたいんだけど。


「本当にやったことないんだな」


 カニやんには改めて驚かれてしまったけれど、知りません。

 やったこともないし、見たこともないわよ。

 知っていたら、もう少し強い心臓を手に入れられていたと思う。


「天性だからそれは無理」


 ……なんだかよくわからない絶対的な否定をしてくるカニやんの説明によれば、黒髭の入った樽に、短剣を順番に刺していく単純なゲームらしい。

 で、どこかにある当たりに剣を刺すと黒髭がジャーンプ! ……船長の首が飛んだ瞬間を思い出して、ちょっと心臓がドキドキしてきた。

 うん、あんな感じに首が飛ぶんだ、なるほど。

 しかも当たりは一回一回場所が違っていて……ん? 場所が変わる?

 あら? これってひょっとして……


 わたしが感じた嫌な予感って、これじゃない?

休閑小話:運営の人々


「小林、お前のクソ犬に俺の傑作が蹴散らされた!

 どうしてくれるっ?」

「どうって……そもそも傑作って、お前……」


 一方的に罵ってくる渋沢氏に小林氏は呆れるばかり。

 しかも呆気にとられているあいだにも渋沢氏の罵りは続く。


「次は絶対に負けん!

 あのクソ犬め、覚えてろよ!!」

「……覚えててたまるか、バーロー」


 呆気にとられながらも一応言い返してみる小林氏だが、すでに渋沢氏は背中を向けて行ってしまった後である。

 そもそもクソ犬改めルゥはグレイの愛犬であり、ルゥが戦略としてナゴヤドームに侵攻しようとするGの大群を蹴散らしたのもグレイの指示。

 小林氏にはとんだとばっちりなのだが、これはきっとあれだろう。


 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い


 まさにとんだ迷惑である。

 しかも……


「次ってお前……次のイベントでもまだやるのかよ。

 だから女性ユーザーが少ないって、いい加減気づけ。

 ってか次にしくったら、俺がお前の頭禿げ散らかしてやるから覚悟しとけよ」

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