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197 ギルドマスターは額を刺されます

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 すぽーんっ!! って船長の頭が抜けた瞬間、ビビりなわたしの心臓は一瞬止まっちゃって、ついでに息まで止まったわ。

 それまでなるべくくるくるの負担にならないよう頑張って立っていたんだけど……腰が抜けた。


「えっ? グレイさん、大丈夫っ?!」


 せっかくクリアに安堵したところ悪いんだけれど、くるくるを驚かせてしまった。

 ごめん。

 でもノミみたいな心臓だから度胸とかなくてその場にへたり込む。

 気絶しなかっただけでも褒めて欲しい。

 そのくらい驚いてへたり込むわたしに、狼狽(うろた)えるくるくるはクロウに助けを求める。


「大丈夫か、グレイ」


 へ、平気じゃないけど、なんとか持ちこたえた。

 でも立てない。

 こ、腰が……。

 とりあえず戻ってきたクロウがそばに屈んでくれたから手を借りるんだけど、やっぱり立てない。

 とりあえず、先に息を整えるわ。

 ちょっと驚きすぎて、息苦しい。


「これ、あれだな」

「黒ひ○危機一発」

「それそれ」

「だなだな」


 柴さんとムーさんの話ではなにかのゲームがあんな感じで終わるらしい。

 世にはそういうドキドキハラハラなゲームがあるらしいんだけど……


「グレイさん、知らない?

 黒ひげ○機一発」


 どうやら結構な市民権を持ったゲームらしい。

 カニやんには不思議がられたけれど知りません。

 でもこれって……ちょっとあれね。


「どれ?」

「グレイさん知ってる?

 こそあど言葉が増えたら老化」


 それ、このあいだ脳筋コンビにも言われた気がする。

 だからクロエの言葉は無視して、カニやんにだけお答えします!

 あれっていうのはこのゲームの基本というか、プレイヤーが持つ絶対の弱点。

 首を刎ねられれば一撃で落ちるっていうルールを思い出したのよね。

 他の部位と違い、首だけは欠損扱いにならず回復は不可。

 絶対に死亡になる。

 なぜかそれを思い出したのか。

 もちろん思い出したことに意味はないんだけど、なにかこう……ちょっと嫌な予感のようなものというか、なにかモヤるのよね。


 これ、なにかしら?


「女の勘ってやつ?」

「うわー、一番当てにならないやつだよね」


 カニやんはともかく、クロエには思いっきり馬鹿にされたけれど、あとで覚えてなさいよ!

 しかもこの予感は当たるんだから!!

 もちろん当たるのはいいんだけれど、クロエだけじゃなくてわたしまで一緒に痛い目に遭うとか理不尽じゃない?

 

 でも遭うのよ


 人生は理不尽の連続だって、この時はしみじみと思ったわ。

 それは後の話として、今はとりあえず報酬があることにみんなで驚く。

 これまでボーナスステージ以外では、途中で拾う花火と金貨、そして敵を撃破することによる経験値しかなかったんだけれど、船長の骨がバラバラになって崩れたあとに大きな宝箱が出現。

 開けてみたら中には金貨が……これ、何枚くらい入ってるのかしら?

 脳筋コンビに 「数えてみるか?」 と言われたから任せた。

 だって目が痛いし、そもそもカニやんたちにいわせればわたしは数えられないらしいから。


 そんなわけないけど


 まぁいいわ、面倒は任せる。

 わたしはちょっと休憩。

 クロウには悪いけど、もうしばらく寄りかからせてね。

 もうね、まだ心臓がバクバクいってるの。

 船長戦がずっとこんな感じで続くなら、途中でわたしの心臓が止まるかも。

 うん、でもね、先に言っておくけど人工呼吸とか要らないから。

 聞いてる? そこのやに下がってる脳筋ドスケベ野郎ども!


 要らないからね!!


「人工呼吸、俺担で」

「んじゃ俺、心臓マッサージ担で」


 ちょっとちょっと、なんの話よっ!

 どっちも要らないから、さっさと数えて配分して!!

 そんな余計なことを考えたりしてるから、また一から数え直しとか……あんたらこそ数えられないじゃない!

 冗談じゃないわよ、わたしのファー……ゲフゲフ……なんでもありません!

 だ、ダメだ、余計なことを考えたらまた顔が熱くなってきた。

 心臓のバクバクが止まらない。


 ど、どうしよ……


 こういう時に限ってルゥってば遊びに行っちゃっていないし……いても出せないけどさ。

 しかもクロエってばとんでもなく恐ろしいことを言うの。


「じゃあもしもの時は誰に人工呼吸をしてもらいたいか、指名しておけば?」


 ………………絶句。

 まさかまさかの切り返しに驚いて言い返すのを忘れるわたしに、カニやんが追い打ちを掛けてくる。


「心臓マッサージもいる?

 ゲーム内ってAEDなさそうじゃん」


 だからそうじゃないから!

 もう、みんなしてわたしをからかって……どうしてくれるのよ?

 顔どころか耳まで熱くなってるじゃない!


「とりあえず海で冷やしたら?」


 あまりにもみんながわたしをからかうから、気の毒そうにの~りんに言われた。

 枚数の確認を終えて配分も終わったら、言われるままにさっさとウィンドウをポチってダンジョンを出る。

 転送された浜辺では……あら?

 てっきり先に戻ってきていると思っていたルゥがいないじゃないっ?

 あ……あのモフに癒されると思って堪えていたのに、いないとか……もう、泣いていい? って訊いたらクロウには 「好きにしろ」 っていわれた。


 冷たい……


 しかも笑ってるし。

 残念なAIを搭載したルゥは、わたしたちが浜に戻ってきて少しした頃に戻ってきた。

 いつものようにフンフンしながら力強い踏ん張りで水から上がってきたルゥは、足下を波にさらわれながらも不意に足を止める。

 なにかに気づいたみたいで、ハッとしたように顔を上げて周囲をキョロキョロ。

 浜で休んでいたわたしと目が合うと、おっきな目をさらに大きく見開いてビックリ。


 あら、かわいい


 フンフンするのを忘れて、短い足で一生懸命に砂を蹴って一直線に走ってくる。

 短い尻尾をブンブン振ってね。

 数メートル手前で大きくジャンプすると……この柔らかい砂の上でよくそんなに跳べるわね。

 わたしだけでなく、浜で休憩、あるいは遊んでいたメンバーたちまで驚かせる大ジャンプをしてみせたルゥは、見事にわたしの膝に着地。

 そこをわたしがぎゅっと抱きしめる。

 はぁ~……やっぱりこのモフッと感は最高に癒される。


「どうする、グレイさん。

 そろそろ潜るけど」


 戻ってきて間もないわたしたちはともかく、先行組は結構な待ち時間があって暇を持て余してきたらしい。

 遊ぶのにも飽きてきたんだって。

 それにまだ航海士をクリアしていないゆりこさん。

 彼女が一緒なら船長戦になることはないっていうもあって、カニやんたちも行くことにしたらしい。

 夜にログインしてくるパパしゃんも航海士をクリアしなきゃならないんだけど、その前に 【Gの逆襲】 の最終戦があって……ハードなスケジュールよね。

 とりあえずこの一周は休憩してるわ。


「オッケ。

 そんじゃ、行きますか。

 参加者は沈没船に集合」


 カニやんがみんなに声を掛けると、それぞれに海に向かって移動を始める。

 それを見ながらカニやん自身も海に足を向けたんだけど、なにかを思い出したように振り返る。

 ん? どうかした?


「体調悪い?」


 あ……そういうこと。

 ううん、大丈夫よ。

 ちょっと寝不足なだけだからご心配なく。

 まだ時間はありそうだから次は参加するわ。


「了解。

 じゃ、行ってくる」


 一番最後に海に入っていくカニやんを見送って……あら?

 クロウは行かなくていいの?

 ルゥを抱きしめたまま見上げたら……うん、この角度で見上げるのも格好いい。

 ちょっと見とれちゃってぼんやりしていたら、また笑われた。


「次に一緒に行く」


 そ、そう。

 じゃあもう少しこうしていてもいい? ってきいたら頭を撫でてくれた。

 えと、これはいいっていう返事よね?

 もちろん確かめるなんて出来ないからわからないけど、わからないんだけど……ヤバい、顔がにやける。

 さっきとは違ってルゥがいるから、モフモフッとした癖っ毛に顔を埋めて隠そうとしたのに、腕の中でまたルゥがもぞもぞと。

 今はカニやんはいないからわたしの他にルゥを触る人なんていないから、どうしたのかと思ってチラッと見たら、ルゥが短い前足を必死に伸ばし、わたしの頭に乗せられたクロウの手を払おうとしていたっていうね。

 でも短すぎて届かなくて、時々勢い余ってわたしの額に肉球を押しつける。

 あ、これも可愛い。


「グレイは、ルゥのすることはなんでも可愛いんだな」


 ?????


 これ、なに?

 クロウにしては珍しいことを言っているような気がする。

 表情も声もいつものクロウなんだけど、言っていることがいつものクロウじゃない。

 なに、どうしたのっ?!

 一瞬前までにやけていたわたしの顔が、真顔に戻ってしまうくらい意外な反応。

 なにかあったの? ……っていっている額に、またルゥのスタンプがちょっと強めに押される。

 うん、まぁそれはいいんだけれど、ムキになりすぎて爪を立てるのはやめて。


 刺さってるから


 これ、痛くて涙が出る。

 ここは一般エリアだからHPは減らないけど、痛いものは痛いのよ。

 思わず涙が出ちゃってルゥをビックリさせた。

 ルゥは無意識だったから爪を立てている自覚がなくて、わたしの額から離した自分の手を見て爪が出ていることを知ってさらにビックリ。

 本当にどこまでも残念な子。


「大丈夫か、グレイ」


 この飼い主にこのワンコあり、よね。

 すっかり呆れるクロウに額を撫でられる。

 どうせこの体は電子データだし、傷なんて残らないから平気なんだけどね。

 ごめんなさいと、きゅ~きゅ~悲しそうに鳴いていたルゥ。

 でもね、やっぱりルゥはルゥなのよね。

 本当に残念すぎる。

 わたしとクロウ抜きで回っていたメンバーが戻ってきてほどなく、今度は、そろそろご飯の準備に掛かるからというゆりこさんを抜いて 【treasure ship】 に潜ったんだけれど、さっきの反省はどこにやら。

 腕輪に収納する直前に逃げられた。


「そろそろ諦めたら?」


 なにを?

 ルゥの躾を?

 それはとっくに諦めてるわ。


「クロウさんも諦めるってことを知らないよな。

 二人して諦めの悪い」


 ちょっとそこの寝不足の原因、言いたいことははっきり言って。

 そうじゃないとわたしにはわからないから。

 ほんと恭平さんってば、わたしを振り回すのは例の話だけにしてよ。

 さらに眠れなくなるじゃない! ……って思うんだけれど、さすがにこれは心の内に収める。

 だって口に出したら恭平さん、ギルドを辞めちゃうかもしれないじゃない。

 それは絶対に嫌だもの。

 まぁこのイベントが終わったらなにかしらお話があるらしいんだけれど、聞きたくないなぁ~なんて思いながら潜ったダンジョンは、よりによってまた船長。

 カニやんやクロエ、恭平さんあたりと話したんだけど、船長への挑戦権を持っていても必ずしも船長と遭遇するとは限らない。

 この 【treasure ship】 は確率だからね。

 でも確率が高くて連続で船長に……あ、そうでもないか。

 わたしとクロウをのぞいたメンバーはゆりこさんを含めて一周潜ってるもんね。

 だから連続じゃないんだけど、また船長が来たわ。

 でももう弱点はわかってる。


alert 骸骨船長 / 種族・幻獣


霹靂(へきれき)


 アラートが出た直後、早速柴さんが先制をかけるんだけれど、こともなげに吹っ飛ばされた。

 …………え? 吹っ飛ばされたっ?

 え、なんで? どうしてっ???

誤字脱字どころではない間違いに気がついて冷汗が止まらない・・・

初見の船長戦、直前にぽぽは中途離脱して浜に転送されてんじゃん!

近く、直します!!!!(2020年7月31日時点では修正されていません・汗)


追記:2020年8月10日にぽぽの件、修正しました!

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[一言] ( ̄□ ̄;)!!まさか、属性がランダム?
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