表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/806

196 ギルドマスターは首を刎ねます

pv&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 速い、速い!


 攻撃側(わたしたち)再起動時間(クールタイム)がないから連発してるんだけれど、船長の反撃も速い!!

 あ、えっと反撃が速いというより、反撃しに来るのが速い。

 しかも船長の攻撃は、速さの分だけ単調になるかと思ったらそこも 【幻獣】。

 カニやんとの~りんで船長を挟むように仕掛けても、上手く魔法を使って片方を牽制してくる。

 かといって避雷針は再起動時間(クールタイム)が長い。

 この攻略ではもう使えないからわたしもサンダーボルト程度しか攻撃手段がなくて、地味に三人で連発して削るしかない。

 しかもわたしは避雷針を使った反動(ダメージ)が大きくて、クロウの足すら引っ張ってる。

 二人みたいに移動しながら攻撃が出来なくて、そのことに気づいた船長がわたしに攻撃を集中し始めたの。

 たぶん船長のAIにはプレイヤーが所持するスキルについての情報はない。

 だからまたわたしが避雷針を撃つんじゃないかって警戒してるのもあると思う。


「避雷針を警戒してる?」


 そのことにカニやんも気がついた。

 でもクロウの負担を軽減する方法はわたしが離れるしかない。

 幸いにしてわたしに魔法攻撃は効かない。

 常時発動(パッシブ)スキル 【愚者の籠】 があるからね。

 というわけでクロウから離れて後退かな。

 だってこのままじゃクロウが削り落とされるもの。


「クロエ!」


 わたしの行動より一瞬先に声を上げるクロウ。

 その声の大きさに驚くわたしをよそに、クロエってば少し巫山戯たように応える。


「はいは~い。

 でも僕一人じゃ無理だからね」

「手伝うよ」


 そこは気の好いくるくる。

 銃士(ガンナー)二人はバラバラに立っていたから、それぞれの位置から走ってわたしたちのところにやってくる。


「じゃ、つっかえ棒はくるくるに任せる」

「うわぁ~光栄」


 うん、全然光栄と思ってないでしょ?

 凄く迷惑そうな顔してるわよ、くるくる! ……っていうか、つっかえ棒ってなによ?

 最近は一緒にいることが多いせいか、すぐにクロエの言わんとするところを理解したくるくるは、クロウにしがみつくわたしの手を解きにかかる。


 ん? なにしてるの?


「なにって、つっかえ棒の交換に決まってるじゃない」


 平然とした顔のクロエは、クロウの代わりにくるくるに支えてもらえって言いたいわけね。

 その言い方だとわかりづらいし、クロウやくるくるをつっかえ棒扱いって、ちょっと酷くない?


「クロウさんほど頼りにならないけど」


 しかもお人好しのくるくるは本当にお人好しで、クロウとクロエに面倒と危険を押しつけられたのに、わたしに申し訳なさそうな顔をするの。

 申し訳ないのはわたしのほうなのに、ごめん。

 なるべくくるくるに寄りかからないようにと思ったんだけど、くるくるも背が高い。

 もう! どうしてみんな、こんなに背が高いのよ!


 腹が立つ!!


 マコト君と同じ物静かなタイプのくるくるだけど、年齢はもっと上。

 たぶんわたしと変わらないんじゃないかな。

 いつもクロエの我が儘に振り回されても怒らず、しかもその高い要求にも応えられるっていう銃士(ガンナー)

 クロエの腕がよすぎてあれだけど、ゲーム全体の銃士(ガンナー)を見れば高火力なのに、控え目な性格だからその火力を下手に誇示したりしない。

 でも油断するとへたりそうになるわたしをしっかり支えてくれる……凄く恥ずかしいけど。

 最近ちょっとクロウを木の代わりにするのに慣れてきたけれど、慣れてもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしくて、慣れてない人だともっと恥ずかしい。

 もう情けなくて泣ける。

 でもここで泣き出したらくるくるに申し訳ないし、船長にサンダーボルトを投げつけて八つ当たり。

 そもそもクロウはクロエとくるくるを呼びつけてわたしを押しつけ、何がしたかったのかと思えば……


霹靂(へきれき)


 なに、それ?

 わたしには聞き慣れない言葉を呟きつつ船長に斬り掛かったから、たぶん詠唱(アクティブ)スキルだと思う。

 でもそれ以上はわからない。

 そもそもわたしは魔法使いだから、剣士(アタッカー)のスキルなんてほとんど知らないのよね。


『属性攻撃』


 わたしの疑問に答えてくれたのは恭平さん。

 その声がインカムから聞こえてくる。

 全滅した先行組は、浜で楽しく遊んでいるのかと思ったら……実際少し前まで賑やかな声が聞こえていたんだけど、わたしたちが船長に挑戦しているとわかってから、ずっと耳を澄ませてこちらの様子を伺っていたらしい。

 その恭平さんの解説によれば、【霹靂】 は剣士(アタッカー)が持つ数少ない属性攻撃(スキル)の一つ。

 攻撃自体は斬撃扱いの物理攻撃になるんだけれど、雷撃の追加効果がある。

 魔法攻撃(スキル)に雷撃系が少なく、攻略wikiに避雷針が載っていないほど取得も難しいように、【霹靂】 の取得も生半ではないらしい。

 恭平さんもクロウの詠唱を聞いて 『珍しいな』 と呟いていた。

 クロウはその 【霹靂】 を船長に打ち込む。

 船長は物理攻撃には強耐性だから、剣戟が響いた瞬間に被弾(ダメージ)効果(エフェクト)はほとんど見られない。

 けれど次の瞬間には、骨しかない船長の体は電気を帯び、あちらこちらで静電気のような火花を散らせてHPを流出させる。


 効いてる!


 ……全然量としては少ないんだけどね。

 でも間違いなくダメージがありHPが流出した。

 クロウの試しに協力するため、その一撃を打ち込む一瞬だけ全員が攻撃の手を止め、結果が出た次の瞬間には慌ただしく攻撃を再開する。


「効くなら俺もやるわ」


 クロウと同じく 【霹靂】 を所持している柴さんが、カニやんを放棄して前に出る。

 残念なことにムーさんは所持しておらず雷撃攻撃には参加出来ないけれど、もちろんそれは柴さんに比べてムーさんが劣っているというわけじゃない。

 雷撃系はスキル自体が少ないってこともあるけれど、避雷針が攻略wikiに載っていないくらい所持者も少ない。

 つまり取得が難しいの。

 銃士(ガンナー)スキルの一つにも 【魔弾の射手】 というものがある。

 属性射撃とでもいえばいいのかしら。

 基本銃撃は物理攻撃扱いになるんだけど、剣士(アタッカー)詠唱(アクティブ)スキル 【霹靂】 と同じく属性攻撃がある。

 それが 【魔弾の射手】 で、取得にはステータスに一定のINTを必要とする。

 そしてスキルレベルとして開眼して最初に火焔系の 【ヒートショット】、氷水系の 【アイスショット】、風系の 【ゲイルショット】、そしてようやく雷撃系の 【ライトニングショット】 が取得出来るっていうからその難しさが一番よくわかると思う。

 もっともこのダンジョン 【treasure ship】 では銃を装備出来ないから、魔法スキルとしてのサンダーかサンダーボルトを取得していなければ、一定のINTを持ち、【ライトニングショット】 を所持しているクロエたちでも雷撃系の攻撃は出来ない。

 残念なことにここには来られなかったぽぽにいたっては、まだ 【ライトニングショット】 取得にいたっていないらしい。

 うん、難しいもんね。

 とりあえず今はレベルを上げましょう。

 この 【treasure ship】 は経験値だけは美味しいから、このステージもクリアして稼ぎましょう。

 レベルが上がれば振れるステータスポイントが増えて、その分スキルの取得もしやすくなるからね。


 頑張ろう!


 なにを頑張るかって?

 もちろん生存クリアに決まってるじゃない。

 攻略方法がわかった以上、一人も脱落させないわよ。

 ギリギリでもいい、一人でも落ちる前に船長を落としてやるんだから。


「急に強気になるな」


 カニやんにはからかわれたけれど、強気で押さなきゃ勝てないじゃない。

 弱点が、よりによってスキルの少ない雷撃系とか……難易度高過ぎ。

 スキルも少ないし、所持者も少ないし。

 どう考えたって運営は狙ってやってるわよ。


「ほんと、こんなことばっか考えてるよな」


 まぁそれが仕事っていわれればそれまでなんだけど。

 でも、よく考えたものだわ。

 弱点は属性攻撃の一つだけ。

 しかも魔法攻撃でもっともポピュラーな火焔属性を反射にして 「魔法攻撃は無効」 とプレイヤーに思わせる。

 しかも反射を警戒して他の属性を使いにくくし、弱点がバレることを遅らせる。

 ほんと、よく考えたものだわ。

 撃てるものならもう一発くらい避雷針をお見舞いしてやりたい気分。

 もちろん出来ないけどね。

 詠唱を考えるわたしの視界の隅には、【避雷針】 の残りの再起動準備(クールタイム)が表示されている。

 これが終わるのを待っていたら間違いなく誰かが落ちる。

 次々に仕掛けられる雷撃に船長はどんどんHPを流出させながらも、全然その攻撃力が落ちない。

 とうぜんHP残量でステータスが変動することはないから、高STRの高VITで、高HP。

 そして高AGIなのよ。


 全然スピードが落ちない!!


 反撃も防御も全然威力が落ちず、反応速度も移動速度も落ちない。

 弱点がわかっても、これを落とすのは本当に難しい。


「ムーさん、グレイさんのほうに行ったほうがいい」


 なに、の~りん?

 自分でポーション瓶を割ってMPを回復しつつ、サンダーやサンダーボルトで攻撃するの~りんも当然船長の攻撃を受ける。

 それをムーさんがカバーしていたんだけれど、その盾を自分から手放そうとするのはなぜ?

 だってその筋肉、盾として有能よね?

 凄く有能でしょ?


「筋肉を褒められるのは悪くない」


 ……そんな言葉が返ってくるとは思わなかったわ。

 の~りんに言われるまま……というより、の~りんがなにを言いたかったのかわかったムーさんの行動力は船長の反応速度並みで、気がつくとわたしの壁に。

 うん、立派な筋肉ね。


「役には立たないけど、助けくらいにはなるかな?」


 ムーさんと立ち位置を交代したクロエがの~りんのそばに。

 もちろん二人とも似たようなSTRにVITで……いや、VITに関してはの~りんが特別薄い。

 だから船長の物理攻撃を直接食らえばどちらかが落ちそうなんだけど、器用なクロエならなんとかしての~りんを守ってくれそうな気もする。


『それって、雷撃以外はダメなんすか?』


 インカムからJBの声が聞こえてくる。


『火焔系は反射でも、雷撃が効いたってことは他も効くかもしれないっすよね?』

『いや、その手の弱点はピンポイントだから、雷撃なら雷撃一択だと思う』


 わたしも恭平さんに賛成。

 それでもクロウに脳筋コンビ、クロエだけならスパイラルウィンドもお試しだけど、自力で何とかしてくれそうなカニやんやくるくるはともかく、の~りんは絶対に無理だと思うから今は試さない。

 さっきも言ったけど、全員でクリアする予定だから。


「貪欲」


 攻撃に忙しいカニやんじゃなくて、暇をしているクロエね。

 それに船長(この敵)の弱点は雷撃一択のピンポイントで、もう攻略方法を変えようがない。

 それこそ雷撃以外なら他にも考えられるけれど、攻略方法の選択余地がないくらいスキルが少ないのよね。

 でも誰も落ちなければ 【素敵なお茶会】 の得意とする持久戦に持ち込める。

 このまま火力を維持して削り落とすわ。

 少し時間は掛かったけれど、柴さんの 【霹靂】 の一撃に止めを刺された船長は、頭蓋骨を吹っ飛ばして……うん、頭が飛んでいったの。

 あ、柴さんの 【霹靂】 が首に決まったわけじゃないの。

 でも首が飛んでいった。

 なんかこう……ぽーんって感じで頭が飛んでいって、直後、本体の骨がバラバラに砕け……いや、砕けてはいないか。

 バラバラになって崩れ落ちた。


 なに、今の???

最近甘味が足りないような気がするのはわたしの気のせいでしょうか?

どんなにダイエットを頑張っても、無性に甘いものが食べたくなる。

そんな時はありませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ