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189/806

189 ギルドマスターは頼み事をされます

pv&ブクマ&評価&感想&誤字脱字報告、ありがとうございます!!

 またまた遭遇したインパクトドライバー機関長。

 このボーナスステージの攻略方法は、インパクトドライバーへの電力供給を断つこと。

 そのためには電源コードをコンセントから抜く必要があるんだけれど、そのコンセントが三つも見つかった。

 第一発見者のゆりこさんは天井に。

 そして第二第三の発見者であるトール君とジャック君は物陰に。

 その二つはわたしの位置からでは見えないんだけれど、それぞれの話によるとトール君が見つけたコンセントは壁に、ジャック君が見つけたコンセントは床に設置されているらしい。


 うん、別物ね


 もちろん別物でもいいんだけれど、問題はどれが本物かってこと。

 だって機関長のインパクトドライバーは一つ。

 つまり電源コードも一本しかないわけで、見つけたコンセントから伸びる電源コードのうち、一本だけが機関長が乱発するインパクトドライバーにつながっていることになる。

 不意に 「せーの!」 というJBの威勢のいい声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には 「ハズレ」 という声が上がり、笑いが起こる。

 何をしたのかと思ったら、JBの号令に合わせてトール君とジャック君が同時に電源コードをコンセントから抜いたっていうね。

 でもその直後、試しにムーさんが機関長の前を横切ってみたらインパクトドライバーはピンシャンしていて、ムーさんの筋肉に飛ばされたナットが二、三個食い込んだらしい。


 ちょっと、なにしてるのよ……


「威力も落ちてねぇ」

「痛いままかよ」


 柴さんまで……そうじゃなくて、ただのハズレってことでしょ?

 本当に何をしてるの?

 そりゃ手っ取り早く当たりかどうかを調べるにはいい方法でしょうけれど、その場合はダメージを受けないことが大前提。


 食らってどうするっ!


「怒るのはそこ?」


 そこよ、文句ある。

 しかも食らいすぎ!!

 HPの減少(マイナス)措置(ペナルティー)のこと、忘れてない?

 油断したら、いくら脳筋コンビのHPが高くても落ちるわよ。


「まぁ落ちる時は誰でも落ちるんだけど……」

「落ちないでしょ、グレイさんは」


 仲のいい柴さんたちを擁護しようとしたと思われるカニやんを止めたのはクロエ。

 カニやんはそれを聞いて一瞬考え、「……そうだな」 と納得しちゃうとか、どういうことよ。

 しかもクロエってば


「このゲーム始めて結構経つのに未だに死亡回数(デス)(ゼロ)とか、立派な落ちない実績じゃない。

 そのグレイさんがダメ食らうなって言ってるんだから、食らっちゃ駄目でしょ」

「サラッとハードル上げて来やがったな、この腹黒少年」


 カニやんの嫌そうな顔ったら……最近この顔、よく見る気がする。

 しかもこの時、会話の邪魔をするのが申し訳ないと、いつものようにおずおずと入ってくるトール君。

 うん、邪魔をするつもりはなかったのよね、ちゃんとわかってるから大丈夫。

 それよりなに?


「……あの、コンセント、もう一つありました」


 どうしたらいいかと問う前に、ほとんどのメンバーが声を揃える。


「抜け!」


 その声の大きさというか、迫力に負けたトール君は次の瞬間、すでに手にしていたコードを引っ張る。


「抜きました」


 うん、でもハズレ!

 【素敵なお茶会】 で一番のAGI(速さ)を持つと思われるベリンダが、それを確かめる役に立候補。

 ダメージこそ食らわなかったけれど、ボーナス機関長は容赦なくナットを撃ち込んできた。

 ガンガンに電力供給されてるじゃない。


「おいおい、どうなってるんだよこれ?」

「幾つダミーがあるんだ?」


 さぁ幾つあるんでしょうね?

 とりあえずあれも試してみる?

 一番最初にゆりこさんが見つけたあれ……と視線を天井に向ける。

 ただ、手が届かないのよね。

 どうしたらいいと思う?


「あー……あれ?」

「天井か」

「上は盲点だったな」

「あのくらいの高さなら、ベリンダ、平気でしょ?」


 え? ベリンダ、いける?


「いけるわよ、たぶん」


 さっきはちょっと沈み込んじゃったベリンダだけれど、元々前向きな性格の彼女。

 たぶん……なんていいながらも、とりあえずやってみましょうと言っているあいだに走り出す。

 さすがに瞬発力だけで届く高さじゃないからって助走をつけるんだけれど、そのあいだも速さだけでボーナス機関長を出し抜く。

 彼女のあとをインパクトドライバーが狙う感じ。

 勢いのある踏み込みで飛び上がった彼女は、狙いを外さないため差込プラグの部分じゃなくて、その少し手前のコードを握って引っこ抜く。

 次の瞬間、彼女に追いついたと思ったインパクトドライバーが沈黙した。


 よし、勝った!


 これで金貨をゲットよ。

 【素敵なお茶会】 は団体戦(ギルド戦)ではまだ九位。

 ギルドボーナスがもらえるのは八位以上だから、まだまだ集めないと。

 通常ステージでの攻略も重要だけれど、ギルドボーナスを目指す 【素敵なお茶会(うちのギルド)】 としては金貨の収集も重要。

 だからボーナスステージも侮れない。

 でもそっちを捨てているギルドは、ボーナスステージとわかったらログアウトして中途離脱(リタイア)

 すぐにログインして潜り直すらしい。

 まぁそういうギルドには、クリアするたびに浜に転送されるのも面倒臭いのかも。

 確かに時間が掛かりすぎるわよね、今回のイベントは。


「知ってるグレイさん?

 二兎を追う者は一兎をも得ずって言葉」


 ちょっとクロエ、わたしのことを本当に馬鹿だと思ってるでしょ。

 そのくらい知ってるわよ。

 でもね、わたしは二兎どころか三兎を追います。


「通常ステージの全クリに団体戦(ギルド戦)でしょ?

 もう一つは?」


 なに言ってるの?

 【Gの逆襲】 に決まってるじゃない!

 明日の二日目は全戦全勝するわよ。


「ああ、あれね」


 やるからには勝ちます。

 特に 【Gの逆襲】 は、負けたらHPの減少(マイナス)措置(ペナルティー)はイベント最終日まで続くんだから。

 内容がわからない船長戦に備えて不利になる条件はクリアしておきたい。


「船長戦も勝つつもりなんだ」


 当然です。


「貪欲ぅ~」


 そういうクロエだって凄く楽しそうじゃない。


「もちろん楽しんでるよ」


 だったら協力してね! ……ってことでもう一周行きましょうか?

 あ、でもその前にランタン買ってくる!

 さっきは花火で凌げばよかったなんて血迷ったことを考えちゃったけれど、そんなことをしてゾンビと出会い頭はごめんだわ。

 魔法攻撃なら一撃で落ちるゾンビだけれど、たぶんSTRがモヤシな魔法使いの体当たりにはビクともしないだろうから。

 ノックバックする(吹っ飛ばされる)のが関の山よ。

 だからランタン買ってきます!

 例によって腕輪に収納する前に逃げ出したルゥが浜で待っていたから……途中でラウラが静かになったと思ったら、ルゥを見つけてちょっかいを出し、バックリやられていたらしい。

 退屈しのぎになってよかったわね。

 そのルゥを、ナゴヤドームまで競争よ! ……と誘って走り出したんだけれど、やっぱりあの短い足のほうが速いのはなぜっ?

 これ、小林さんに質問状を出したら答えてくれるかしら?


「どうだろうな?」


 保護者然と付いてきたクロウの素っ気ない返事。

 まぁこれもいつものことだけれど。

 NPC雑貨屋さんでランタンを調達し、時間がもったいないからすぐに 【海】 エリアに戻ろうとしたところで珍しい直通会話が入る。


call 恭平 / 素敵なお茶会


 恭平さんはみんなと一緒に 【海】 で待ってるはずよね?

 しかもギルドチャットじゃなくて直通会話って、なにかしら?

 とりあえず応えてみる。


『突然で悪い』


 うん、いいけどね。

 どうかした?

 みんなとなにかあった?

 わたしが知る限りでは特に問題なさそうに見える恭平さんとギルドのみんなだけれど、当事者にしかわからないことだってある。

 特に恭平さんは加入時が加入時だったし、この直通会話だって、わざわざわたしがみんなと離れるのを待って掛けてきたのよね?

 だからなにかあったんじゃないかって思ってしまった。

 それでついついわたしのほうから矢継ぎ早に質問しちゃって、逆に恭平さんに気を遣わせてしまったらしい。

 ごめん、小心者だから。


『そうじゃなくて……これ、クロウさんは知ってる?』


 うん、ウィンドウが開いた瞬間に見られた。

 さすがに全力疾走じゃ落ち着いて話せないから、小走りで話すわたしのすぐ後ろから来るクロウ。

 ルゥはわたしのそばを離れないからともかく、クロウだけでも先に戻っていいわよっていったのに付いてくるんだから。

 クロウにも知られたくない話だった?


『確認だけ。

 このイベントが終わったらグレイさんに頼みたいことがあって』


 なに?

 一応話は聞くけれど、答えは内容によりけりよ。


『イベントが終わったら話す。

 たいしたことじゃないけど、ちょっと面倒になるかもしれない』


 どんな面倒か気になるところね。

 その話はカニやんやハルさんは知ってるの?


『いや、あの二人にも話してない。

 俺自身の問題だから』


 結局恭平さんはこの通話でその内容は全然話してくれなかったんだけれど、凄く気になることをいってるわよね。

 恭平さん自身の問題?

 まさかと思うけど……辞めないわよね?


 ちょ、ちょっと聞くのが怖くなってきた!

果たして恭平はギルドを抜けるのか?

答えはイベント終了後に!!

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