178 ギルドマスターはGのトラウマと戦います
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ルゥを追いかけるのに必死で、またエリアの境界にある見えない壁にぶつかってしまったわたしたち。
ええ、ルゥとわたしね。
追いかけっこと勘違いしたルゥがあの短い足でずんずん行っちゃって、わたしはそれを追いかけるのに必死で……ねぇ、わたしの足のほうがずっと長いわよね?
ゴボウだけど
それなのに全然追いつけなくて、やっと追いついたーっ!! ……って喜んだ次の瞬間、ルゥとほぼ同時に壁にぶつかって尻餅をついた。
ルゥなんて勢い余って後ろにでんぐり返って可愛いったらありゃしない!
ああ、一緒に転けてなければじっくり見られたのに。
残念すぎる
「残念なの、そこ?」
「グレイさんが残念すぎるよ」
ナゴヤドームでの攻防戦を終えたカニやんとクロエも一緒なんだけれど、転けたわたしに手を貸して立たせてくれるクロウとは違い、ただただ笑うだけの二人。
カニやんなんて、何が起こったのかわからずキョトンとしているルゥの隙をつき、また頭とか撫でてる!
「耳でけぇよな、こいつ!
可愛いー!」
うん、それがカニやんの本音だってことは知ってる。
でもその手にガップリと食らいついているところにルゥの本気もあるんだけど?
片手にガップリと食らいつき、それでももう一方の手でモフろうとするカニやんの手を、短い四肢でピシペシと払うところも本気よ。
でも残念なくらい短すぎて、結局助けを求めてわたしのところに逃げ込んでくる。
はぁ~い、いらっしゃい
ボフッと飛び込んでくるルゥを受け止めて、水着に換装する。
一週間が経って少し慣れてきた水着だけれど、誰がなんと言おうとパレオは取りません。
これ、脳筋コンビからのしつこいリクエストなのよね。
こんなゴボウを見てなにが楽しいのかわかんない!
とりあえずみんなで水着に換装して期間限定イベント 【treasure ship】 のメインエリア 【海】 へ。
そこでは朝から海で泳いでいたトール君たちが砂浜で待っていた。
本当は 【Gの逆襲】 に参戦するつもりだったらしいんだけれど、ドーム内にいたわたしたちにはわからなかったけれど、あれ、外からは入れないんだって。
……えっとルールとしてそうなっているわけではなくて、Gが壁になっていて入れないっていうね。
しかも後背から狙うと凄い勢いで反撃されて、トール君たちの見ている前で勇猛果敢にも挑んだ見知らぬプレイヤーが、あっという間に大量のGに圧死させられたらしい。
なに、それっ?
そのプレイヤー、トラウマにならないといいわね……というか絶対にその人、お昼ご飯は食べられないわよ。
直後、トール君たちが協力して復活と救出をしたあとすぐどこかに行ってしまったらしいけれど、さすがにそれを見たあとじゃトール君、マコト君、ジャック君の三人では火力的に無理と判断。
カニやんの指示で参戦を断念したらしい。
もちろん参戦してもいいけれど、合流は無理。
しかもそれを見たあとじゃね……大量のGに埋もれて圧死はちょっと……わたしじゃなくても嫌だと思う。
特にジャック君は昨日、面白いことをして 【treasure ship bonus stage2】 でGに埋もれているもの。
絶対に嫌よね
あそこで爽快な蹴りを決められるよう、頑張って育成してね! ……としかわたしにはいえない。
しかも 【Gの逆襲】 初日第一戦でプレイヤー側は負けたから、さっそくHPの最大値が1%減少の措置を受けている。
脳筋なベテラン勢はいいけれど、他のメンバーは自分のHP残量をちゃんと認識してね。
経験値をもらえないのはもちろん、ステージによっては報酬の金貨ももらえないし死亡回数はバッチリ計上されるから。
特にそこの怖いもの知らずなJC!
聞いてるっ?!
わたしたちと一緒に 【海】 エリアに入った柴さんとムーさんを見つけて、早速水を掛けたりとちょっかいを出しているラウラは、また違う水着を着ている。
イベント参加でもらえた水着は三種類だから、それが三着目ね。
ピンクのヒラヒラが一杯ついた可愛い感じのワンピース。
そういう感じの楽しみ方も、本人が納得しているのならもちろんOKよ。
「グレイさんは他のは着ないの?」
それこそ着ればいいのに! と明るく爽やかに言ってくるのは腹黒い毒舌家クロエ。
さすがにわたしの装備になにか企んでいるとは思わないけれど、余計なお世話です。
一週間で水着の着用にも少しは慣れた。
自分でもさっきそう言ったけれど、でもそれはこのデザインだけ。
他のは無理です。
作ったパレオも、この水着の色にわざわざ合わせたんだから。
日傘の色が合ったのは偶然だけれど。
そんなに言うんだったらクロエが着てみれば?
……うん、似合う気がする。
「その微妙な間は何?」
想像してみたの。
多分似合うわ。
「僕が女性装備を使えるわけがないでしょ。
どうしても着せたいなら、方法を考えてよ」
それこそそこまでして着せたいのならね……と余裕たっぷりに言われてしまった。
言い負かされたような気がしてちょっと腹が立つわ、美少年のこの余裕の笑みって。
さぁて、それじゃあ沈没船のところに集合ね。
ルゥ……は、どこに行ったのっ?
しまった!!
また目を離した隙に逃げられた!
さっきまで砂浜に埋もれていた頭蓋骨で遊んでいたのに、クロエとつまらないことを話しているあいだにいなくなっているじゃない。
慌てるわたしを見て、マコト君とトール君、ジャック君がほぼ同時に海を指さしてくれる。
その申し訳なさそうな顔ったら……大丈夫、三人が悪いわけじゃないから。
わかってます、目を離すわたしが悪いのよ。
わかってるんだけれど……泣いてもいい?
「ダンジョンクリアのタイミングには戻ってくるんだから、遊ばせておけば?」
どんなにルゥに全力でバックリやられても、本気で拒否られても可愛くて仕方がないカニやんはルゥには極甘。
飼い主を差し置いて食べられないほどに甘々なんだから。
その甘々を確率にしてくれればいいのに……なんて思いながら潜った沈没船は、またしてもボーナスステージ。
しかもよりによってボーナス料理長とか!
またGが来たっ!!
若干昨日のトラウマが残っているジャック君の顔が、ボーナス料理長が出現した瞬間に歪む。
無理もないわよね。
しかもさっき、見ず知らずのプレイヤーとはいえ埋もれて圧死するところまで見ちゃって。
剣士は前衛だけれど、ボーナス料理長に限ってはジャック君、下がってもいいわよ……というか下がりましょうか?
さすがに辛いでしょう。
銅鑼代わりのフライパンの音に両耳を塞いでいるのが気の毒すぎる。
「敵討ち、行ってもいいですか?」
ちょっと勇ましいトール君に、その言葉の意味するところを正確に把握しないままOKしてしまったわたしは、トール君のために道を空けるため、業火を放った数秒後に、顎が落ちるんじゃないかってくらい呆気にとられて口をぽかーんと開ける。
ほんと、カコーンって顎が落ちるんじゃないかと思ったわ。
だってトール君ってば、また蹴りなんだもの。
…………
うん、いいわよ別に。
だけどそれ、失敗したらどうなるかをわかってやっているのよね?
しかもSTRは変わらないけれどHPは減ってるからね。
失敗したらジャック君以上の惨劇が待っているかもしれないって、わかっていてやっているのよね? ……って言ってるそばから失敗したトール君は尻餅をつき、昨夜のジャック君同様あっという間にGに埋もれる。
すぐさま救出すべくカニやんがサラマンダーを放ってくれたんだけれど……間に合わなかった。
トール君、よりによってGに埋もれて落ちたとか……。
昨日のジャック君も晩ご飯前だったけれど、トール君もお昼ご飯前にGに埋もれて、しかもそのまま圧死しちゃうとか……。
だから言ったじゃない、HPが1%減ってるから気をつけてねって!!
昨日までの感覚と同じじゃ駄目よっていったのに……しかもまだ蹴りブームが去ってないし。
「トール君、大丈夫?」
『すいません、失敗しました』
浜に転送されたトール君の声がインカムから聞こえてくる。
このあとちゃんとお昼ご飯を食べられるかどうかは別問題だけれど、とりあえず無事の声を聞けてホッとするわたしの隣で、カニやんが少し頭を抱える感じで呟く。
「君らさ、脳筋の真似をしたいのはわかる。
奴らの考えることは面白いからな」
それこそSTRがあれば自分もやってみたいと言わんばかりのカニやんが呟いていたのはここまで。
ここから少しずつ声の感じが変わってくる。
「でもさ、本当に真似をしたいなら脳筋のレベルに追いついてからにしろや!」
最後は怒鳴ってた。
うん、気持ちはわたしもわかる。
でもカニやんが怒鳴ったからわたしはいいわ。
「起動……サラマンダー」
とりあえず片付けてご飯にしましょう……ってことでGを焼き払って道を空ける。
今度こそ脳筋コンビかクロウが行くかと思ったら、マコト君とジャック君のコンビネーションキックが炸裂。
トール君の敵討ちに、昨日のジャック君のリベンジをマコト君が手伝うって感じかしら?
うん、でもね、もう蹴りはやめなさいって。
隣でカニやんが拳を握りしめてるから、次は雷じゃなくて拳骨が落ちるわよ。
甲板長と違って、料理長は元々魔法耐性の物理攻撃対象。
ボーナスステージのボスがいくら 【偽幻獣】 でもSTRを持たない魔法使いは絶対にやらない。
幸か不幸か、【素敵なお茶会】 の魔法使いはわたしを含めてなぜか慎重派揃い。
候補のキンキーを含めて、揃いも揃って物理攻撃を試そうなんて思わないのよね。
だから料理長が相手だと、通常ステージであってもボーナスステージであっても役には立たないんだけれど、だからってそんな遊びをさせるためにGを焼き払ってるわけじゃないの。
あなたたちが失敗した瞬間、どれだけわたしが冷汗を掻いてると思ってるのよっ?!
水着装備唯一の利点よね、汗染みを気にしなくていいのが。
そうでなかったらわたし、何回着替える羽目になっていたことか。
しかも今はわたしとカニやんの二人がいるから救出のためにすぐ次の範囲魔法を放てるけれど、どちらか一人だと、再起動準備があるから難しくなるわよ。
特にカニやんはお得意の氷水系が使えなくて、火焔系は手持ちが少ないから助けてもらえないかも。
そうなるとどうなるか、わかってるわよね?
圧死確定
相手がG以外ならともかく、Gだと落とされる以上に精神的ダメージが大きすぎて……とりあえず 【Gの逆襲】 本日の第二部は勝つ。
そんでもってHPを取り戻さないと、実はの~りんとかも厳しいわよね?
「うん、かなり。
転送から合流までに落ちそう」
の~りんのVITが紙なのは知っていたけれど、そこまでって……。
今まではレベルを上げることで得られるHPの基本パラメーターに助けられていたみたい。
でもそれでギリギリなのね。
そういえば通路で会う骸骨も物理攻撃しか効かないし、余計に厳しいか。
うん、わかった。
第二部は本気で掛かるわ。
そしてHPを取り戻す。
残る五戦、全勝でいくから
みんな、夜露死苦!
……んーっと、これで合ってたっけ???
合ってます???