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176 ギルドマスターはGの逆襲を受けます

pv&ブクマ&評価&感想、ありがとうございます!!

 期間限定イベント 『treasure ship』 は半分の日程を終えたところで、【素敵なお茶会(わたしたち)】 の戦績(クリア状況)は芳しくなく。

 わたしたちは通常ダンジョンとボーナスステージは同じ数と考えているんだけれど、クリアした通常ダンジョンは 【1】 【2】 【4】 のみ。

 【3】 と 【5】 をどこかに置き忘れたまま。

 でも 【5】 があるのは確かで、うっかり一時的に塩漬けにしてしまった 【暴虐の徒】 を主催するライカさんからもらった情報はもちろん、ボーナスステージでは遭遇しているから間違いなし。


 そう!


 なぜかボーナスステージは全部クリア出来たのよ!

 海辺で会った運営の小林さんは確かに確率をかなり厳しくしているといっていたけれど、これはちょっと厳しすぎるんじゃない?

 二週間という長いイベント期間を、プレイヤーに飽きさせずにイベントを保たせるための策とはいえちょっとやり過ぎよ。

 しかも通常ステージと同じだけボーナスステージを用意するなんて……暇なの?

 立案で色々ネタが出過ぎて、乗りに乗っていつの間にか出来ちゃったなんてうまい話はそうそうないでしょうし。

 しかも初日のオープニングイベントに始まり、まだまだイベントが目白押し。

 一週間が経ったこの週末も中間イベントがあったんだけれど……


「……G退治……ってなに?」


 思わず声が裏返っちゃった。

 いつもログアウト前にナゴヤドームに戻ることにしているわたしは、期間限定エリア 【海】 を出てすぐに通常装備に戻すようにしている。

 この日は土曜日でお仕事もお休み。

 ちょっとゆっくり朝を過ごしてログインしたわたしを待っていたのは、今日と明日に渡って行われる中間イベント 【Gの逆襲】 ……ってなによ?

 人類の敵が人類に逆襲っ?!


 なによ、それ?


 通常装備でギルドルームにログインしたわたしは、同じように通常装備でログインして間もないカニやんと遭遇。

 ウィンドウを開いて公式サイトを確認していたらしい。

 その口から語られた恐怖イベントが 【Gの逆襲】 って……ほんと、なんなの?


「んーっと……あ、クロウさんが来た」


 テーブルを挟んだ向かいにすわっていたカニやんは、わたしたちとは少し離れた場所にログインしてきたクロウを見ていう。

 いつもギルドルーム内では自由に過ごしているルゥの、フンフンフンと歩いていた鼻先に、一瞬で出現したものだから大きな目をさらに見開いてビックリ。

 クロウの頑健な足にプニッと鼻チューをした状態で固まっている。


 あら、可愛い


 こういうのをSSで撮って収集しようかしら?

 もちろんわたしだけが見て楽しむの。

 自分のスマホに転送して仕事中に一息吐きたい時とか、癒やしが必要なほどにみんなが煮詰まっている時とか……って妄想していたら、カニやんに呆れられた。


「それ、人に見られたらヤバい人だから」


 え? そうなの?

 ひょっとしてわたし、喪に腐の称号もつく?


「付けて欲しいなら妹を紹介するけど、グレイさん、絶対あいつらの会話についていけないから。

 そもそもグレイさん、BLがなんの略か知ってる?」


 ん? なんの略? なにかの略なの?

 あ、でも確か、小説のジャンルよね?


「小説でも漫画でもある。

 表現媒体が違うだけで、内容は同じ」


 そうなのね。


「やっぱ知らないよな」


 え? あ……思い出した、ボーイズライフでしょ?

 スポ根とかのジャンルじゃないの?

 男の子とか、男の人しか出てこないんでしょ?


「ビミョーにズレてるところがグレイさんだな。

 たぶんグレイさんの許容範囲を超えるから、腐とはかかわらない方がいい」


 カニやんってば、妹さんに興味を持って欲しくないだけじゃないの?


「あんたの兄貴どもじゃあるまいし」


 なに、それ?

 まぁいいわ、とりあえず今回のイベントの説明をして頂戴、クロウ……って当たり前のようにお願いしたら、さすがお仕事が出来る課長はゲームの事前情報収集も万全。

 先に公式サイトを確認してからログインしてきたらしい。

 やっと我に返ったルゥに、足をガップリやられながらものんびりと歩いてくる。

 そしてしてくれた説明によると今回の限定イベントは時間が決まっていて、朝の部はじきに始まる。

 あと昼の部、そして夜の部と一日三部制。

 二日間でGを退治した数で個人報酬がもらえるらしい。


「あら、個人ランキングなのね」

「ランキングは出ないらしい。

 ただ退治数に応じて報酬がもらえる、それだけだな」


 そうなのね。

 でも、どうしてよりによってGなの?

 沈没船にGが出るのはこのイベントのための布石なの?


「そうかもしれない」


 否定しないクロウのさらなる説明によると、難破船を自力で脱出して海を渡ってきた、あるいは調査員(プレイヤー)に密かについて(おか)に上がってきたGが、プレイヤーの活動拠点になっているナゴヤドーム周辺に大量発生。

 おそらくプレイヤーたちが出す生活ゴミを餌に繁殖したとみられる……というのはもちろん設定よ、設定。

 実際にVRで生ゴミなんて出るはずがないんだから。

 でもそうやって餌にありついたGたちが大量に発生。

 ナゴヤドーム内への侵入を防ぐべく退治せよ! ……というのが臨時政府を代表するいつものNPC長官からのお達し。

 このイベントに限っては個人報酬のみなんだけれど、まぁそれなりに美味しいアイテムが並んでいる……というか、それなりのもので釣らないと、よりによってG退治なんて参加者が限られるんじゃないっ?


 不参加で!


『え? グレイさん、参加しないの?』


 ちょっとハルさんには意外そうな声を出されたんだけれど、全然意外じゃないと思う。

 だって攻撃対象がGだなんて、冗談じゃないわ。


 絶対に嫌!


 だからこうしましょう。

 一回の攻防戦時間が一時間もあるから、そっちに参加しない人はわたしと一緒に 【treasure ship】 を潜りましょう。

 もちろんクロウもどっちを選んでもいいわよ。

 今度こそ、ルゥと一緒に海底散歩をして沈没船に辿り着くから。

 それこそ海底を歩くルゥに連れて行ってもらう手もあるんじゃないかとわたしは考えるんだけれど、問題はルゥの舵取りが出来ないってこと。

 真っ直ぐに進んでってどんなにお願いしても、フンフンフンと海中ですら臭いを嗅いで進むルゥは自分の思うままに海底散歩を楽しむわ。

 だってどこまでも果てしなく残念な子なんだもの。

 そういえばマメの話では、やっぱり海底散歩を楽しむルゥの姿を目撃したプレイヤーがいて、その様子にビックリしたと公式の掲示板に書き込みがあったらしい。

 SSは撮ってないのかしら?

 もし撮るなら、絶対に可愛く撮ってあげてね。

 そしてわたしにも見せてね。

 データを送ってくれてもいいわよ、匿名可で。


「その匿名性は必要ないと思う」


 ハルさんを手伝って隣の作業部屋にいた恭平さんには呆れられてしまった。

 装備の換装が面倒で、それこそ期間中ずっと水着で過ごすつもりらしいプレイヤーも多いけれど、わたしに合わせてくれているのか、【素敵なお茶会】 のほとんどのメンバーは 【海】 エリア以外では通常装備に戻している。

 恭平さんもハルさんも。

 たぶんハルさんは、ステータスの都合上、調合などをする時は通常装備に戻す必要があるんだと思う。

 装備である程度ステータスを補正しているかもしれないから。

 でもそのへんは個人情報。

 ううん、企業秘密ね。

 だから主催者(マスター)でも実際のところは分からないし、訊くこともしない。

 いくらわたしが天然でも、そのへんはちゃんと(わきま)えていますから。

 それじゃG退治と 【treasure ship】 攻略組と別れましょうか?

 G退治組はナゴヤドーム出入り口に集合。

 カニやんが目印よ。

 【treasure ship】 攻略組は沈没船に直接集合で。

 人数が少なければ、あの辺にたむろしている野良パーティ募集中の人に声を掛けてもいいわね……なんて思いながらギルドルームをみんなと一緒に出てみれば、すでに第一回G攻防戦が始まっていた……


 うそ


 まるでナゴヤジョーに出現するシャチたちみたいに大小様々なGってば、隙あらば本当にナゴヤドームに入ってこようとする。

 え、ちょっとこれは駄目じゃない?

 だってドーム内には、まだチュートリアル中の初心者だっているのよ?

 武器はもちろん、攻撃方法に不慣れな初心者が襲われたらどうするのよっ?


「どうするかはともかく、ちょい手伝ってよ」


 ナゴヤドームにいくつかある出入り口の一つ。

 わたしたちは 【海】 エリアに向かうのに一番近い入り口を目指したんだけれど、そこを塞ぐような大量のプレイヤーたちと、その向こうには押し寄せるGたちの茶色い蠢きが……


 ぎゃーっ!!


 背筋を走る耐えがたい悪寒と恐怖に、思わずクロウにしがみつく。

 いつの間にイベント開始時間になってたのよっ?

 みんな頑張って叩くなり焼き払うなりしているんだけれど、Gの勢いが止まらない。

 本当に止まらない。

 止まるということを知らないんじゃないかって思うくらい止まらないの。

 それこそすぐ近くに幾つもの沸き位置があるんじゃないかと思うほど、大量に次々と押し寄せてくる。


 は……入ってくるなー!!


「起動……業火!」


 このイベントは第三回イベントであった金魚すくいと同じ。

 つまりエリアダンジョン扱いだから横殴りOK……というか殴り放題。

 けれど勢いに乗っているGの侵攻は業火の一撃で終わるはずもなく、焼け落ちる仲間の屍を超えて次々と新たなGがうしろからうしろから押し寄せてくるから、他のプレイヤーたちは横殴りされたことに怒っている余裕もない。

 そういえば第三回イベントは最初アットホームなファミリーイベントの様相を呈していたのに、最終的には大量虐殺(ジェノサイドゲーム)

 エリアのそこら中に死体(プレイヤー)が転がっているような有様でイベントは終了したんだけれど、今回は最初から全力で来たわ!

 なに、この容赦ない猛攻っ?

 もちろんGに容赦なんて求めるのがそもそもおかしな話なんだけれど、人類だってGに容赦は無用。

 こうなればどっちが絶滅するか、全面戦争よ!


「勝ち目薄いけどな」


 一緒になって詠唱をしていたカニやんが、ふと手を休める。

 ちょっとカニやん、容赦なしっていったでしょっ! ……と思ったら……


「とりあえず予定変更。

 グレイさんが本気でG狩り始めたから 【treasure ship】 攻略はなし。

 【海】 にいる奴も参加するならドームに戻れ。

 但し、外の様子がわからん。

 危なけりゃ終了まで泳いでてくれ」


 ごめん、自分で号令掛けておいてすっかり忘れていたわ。

 カニやん、ナイスフォロー!


 ありがとう!


 ……ということで、こいつらマジでぶっ殺す!!

始まりました、イベント後半戦。

このイベント終了以後更新が不定期になるまもしれませんが、どうぞ今後ともよろしうお付き合いくださいませ。

                  2020/07/10 藤瀬京祥

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