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144 ギルドマスターはまた長さに悩まされます

pv&ブクマ&評価&感想、ありがとうございます!!

 今時のJCとかJKっていうのはそんじょそこらの喪女なんかよりメンタルが強くて、人前で水着とか全然平気らしい。

 そういえば制服のスカート……あんないまにもパンツが見えそうな長さのスカートなんて、わたしにはあり得ないんだけれど、みんなそうよね。

 わたし自身、高校を卒業して10年も経っていないけれど……


『みんながみんなってわけじゃないだろうけれど……グレイさんって公立の共学だっけ?

 いたでしょ、スカートの短い子』


 うん、いたわね。

 当時はそんな彼女たちと平気で一緒にいられたけれど……今は無理。

 遠目に見るのがわたしの精一杯です。

 そういうカニやんは?


『俺も公立の共学。

 いたよ、ふっとい足見せつける女子』

『あれさ、迷惑になってるってわかってるのかな?』


 またそんな、世の女子中高生を敵に回すようなことを言っちゃうんだから。

 しかも最近ちょっとカニやんがクロエ化してきたと思って焦ったら、本家毒舌も一緒になってさらなる毒を吐き始めた。

 しかもこれで終わりじゃないとか、ほんとやめて!


『わかってたら見せないだろ?』

『やっぱりわかってないよね。

 世の中には見せていい足と見せちゃいけない足があるって、まずは世間の常識を勉強しろっての。

 お前ら英語とか数学とかあとでいいから、まずは社会常識』


 ごめんなさい、訂正します。

 カニやんの毒なんて本家毒舌家クロエに比べたら、全然普通でした。

 あ、普通とかいったらわたしも批判されそうだけれど、でもちょっと、ほんとクロエのはヤバい。

 ちょっとやそっとじゃ浄化出来そうにない毒。

 これ、絶対解毒出来ない。

 わたしの解毒スキルではどうにも出来ません。


 ほんと、やめて!


 メンタル最強人種の一つ、JCやJKに正面切って喧嘩売るとか、本当にやめて。

 わたしみたいなメンタル最弱人種喪女は、喧嘩を売られたら絶対に勝てないから。

 絶滅させられるから、ほんと、やめてよ。

 正面衝突なんてされたら、絶対に木っ端微塵よ。

 もうね、考えるだけで恐ろしくなってきたんだけれど、どうして援軍は毒吐きしかしないの?


『あ~あいつらなぁ~』

『このあいださ、駅のホームで電車待ってたら、こっち見んな! とか言われて、怖かったなぁ』

『あるある。

 別に見てないんだけど、あんなこと言われるんだったら見とけばよかった? って思うよな』


 い、今もそんなことをいう子がいるのね。

 同じ女のわたしは言われたことはないけど……えっと、わたしの場合、視線を感じたら言い返すより逃げる方だから、ちょっと見習いたいほどの強気ね。

 でもきっと、それはJCやJKの中でも珍しい絶滅危惧種よ、きっと。

 わたしと同じ絶滅危惧種。

 とりあえず脳筋コンビも黙ってて、お願い! ……って必死にインカムに拝んだんだけれど、全然聞いてくれないインカムの向こうの男性陣。

 ムーさんも、見なくていいから。

 言われ損とか、そんなレベルの問題じゃないから。


『そもそもあのスカートの短さはファッションであって、ファッションなら見られてナンボだろ?』

『いや、服は着る人を選ぶから。

 スカート丈も足の太さで選べよ』


 いや、やめて!

 本当にやめて、お願い!!

 もう誰がなにを言ったかなんてどうでもいいから、みんな黙って!


『言ってくれますね、みなさん』


 ……んーっと、この声はラウラよね?

 女の子は少ないから聞き間違えることはないんだけれど、なにかしら?

 こう、いつになく挑戦的なこの話し方は?


『ミスコン当日を覚えておいて下さい。

 ただじゃ済ませませんからね。

 全員ビックリさせて上げます。

 そしてわたしが優勝します』


 い……い、いやいやいやいや、待ってラウラ。

 思わぬところから来た反撃にわたしは一瞬気を失いそうになったんだけれど……だって、どうしてラウラがここで出てくるのよっ? ……って思ったんだけれど、よくよく考えてみたら現役女子中高生なのよね。

 そりゃオッサンどもに言いたい放題言われちゃって、さすがに黙ってはいられないか。

 だからって、これじゃ全面戦争じゃない。

 しかもラウラの余計な一言で、また別のところに飛び火しちゃって……


『優勝出来るかどうかは別問題だけどね』

『そうそう。

 わたしたちもいるし』


 すでにラウラと同じくミスコンに出場を決めているベリンダとゆりこさん。

 出場は自由ってもう言っちゃったからそれは別にいいんだけれど、だからってここで互いに宣戦布告とか、牽制し合うとか、やめて……もうさっきからわたし、これしか言ってないんだけど、でも誰もやめてくれない。

 やめてくれないどころ……


『マメも出まーす!

 マメの優勝で決まりですよー!』


 うわ……これは世に聞く女の争い? ……っていうかもうギルド内紛勃発で収拾がつかず。

 頭が痛いわ……って嘆いたら、全種類が出そろった新アイテム水着の収集にマメは忙しくて……今回の販売はガチャだから、そりゃ大変よね。

 被ったアイテムを、掲示板にある 『売ります・買います』 で外したデザインと交換するつもりらしく、会話にはちょこっと参加するけれど、ギルドルームにいてずっと掲示板に張り付いている。

 わたしも……もちろん水着は買いません。

 買いませんが、一緒に発表された日傘が欲しくてちょっとだけ課金したの。

 無理のない課金(無課金)よ。

 こっちもガチャだったから、欲しいデザインを外したらわたしも交換(トレード)に出そうと思ってたのよね。

 でも一回で当てるとか、もうどんな強運よ。

 きっと前回のイベントで頑張ったご褒美よね。

 ちょっと小さめの、藤色の日傘。


 綺麗な色


 ルゥも気になるらしくて、早速散歩中に差していたら、わたしの足にまとわりつくように上を見ながら歩くの。

 で、ベンチとかにぶつかって、大きな眼を見開いてビックリしてる。

 ちょっとだけ前を見て歩いたほうがいいわよ……ってルゥに言ったら、クロウに


「お前もな」


 とか言われて、すれ違ったプレイヤーとぶつかりかけたことを知った。

 さりげなく進路変更をしてくれていたらしくて、ルゥにばかり気をとられていたわたしは全く気づいていなくて。

 ごめん。

 しかも油断をすると、またルゥがフンフンフンフンフン……周囲に興味を示してところ構わず臭いを嗅ぎに行ってしまう。

 えぇー、もう飽きちゃったのっ?

 ねぇねぇルゥってば、見てよ!

 新しいアイテム買ったんだから!! ……って頑張って主張したら、ようやく思い出して戻ってきてくれた……と思ったら足下で綺麗にお座りして、いつもの期待に満ちた目でわたしを見上げてくる。

 うん、わかった、撫でて欲しいのね。

 撫でてあげるけれどさ…………見てくれないんだ、日傘。

 淋しいやら悲しいやら、八つ当たりよろしくルゥの全身をワシャワシャと撫でてあげる。

 そのあいだ、ちょっと邪魔になる日傘はクロウに持ってもらう。


「綺麗な色だな」


 わぁ~い、ありがとう!! 

 やっと褒めてくれた人が一人……たった一人……。

 この侘しさというか虚しさというか……そんな傷心のわたしに、未だ続いていた内紛の火の粉がまた降りかかってくる。


『そういえばグレイさん、最近あの短パン穿かないんだね』


 スカートの短さとか、足を出すとかって話で思い出したらしいクロエの余計な一言。

 すっかり忘れてくれたと思っていたのに、おかげでみんな思い出しちゃって。

 クロエ、あとでぶっ殺す!

 しかもその頃のことを知らなかったキンキーやラウラにまで知られちゃうとか、絶対に許さないからね。


『クロエさん、今はショーパンって言うんですよ。

 短パンなんて、いつの話ですか?』

『すいません、クロエさん。

 ラウラが生意気言っちゃって』

『今更?

 さっき宣戦布告したじゃん、生意気にも』


 ねぇクロエ、未成年相手にマジになるのはやめてくれない?

 本当に見ていて……いや、インカムから聞こえるだけだけど、見苦しいから……見えていないけれど。


『グレイさん、前は普段、違う装備だったんだよ。

 それがショーパンだったんだけど、あれ自体は短剣使い(スプリンター)用の装備だったんじゃなかったっけ?』


 同じチャイナシリーズの白と併用していた装備があったことを、わざわざ説明してくれるカニやんに、知らなかった恭平さんとかJBとかが 『へぇー』 という声を上げる。

 JBに悪気があったとは思わないけれど


『もう着ないんすか?

 グレイさんの足、綺麗じゃないすか。

 出したらいいと思うっすよ』


 ストレートに来た!

 着ません。

 もう絶対に着ません、人前では。

 そもそもあれは別の目的があって作った装備だから、もうその時以外は着ません。


 決めたの!


 ……だってもう、足とか出せないし。

 そんなに若くないって自覚したら、さすがにあの装備は恥ずかしくなった。

 ベリンダとか、わたしより歳上っぽいけれど、結構足とか腕とか出しているけれど、ああいう健康美人っていいわよね、溌剌としていて。

 なんか、幾つになっても手足とか出していても全然恥ずかしくない感じで……わたしには絶対無理だけれど。


『あら、そんなことないわよ。

 是非是非穿きましょうよ』


 い、いや、ベリンダ、なにを言ってるの?


『ショートパンツが無理なら、水着とかどう?

 暑くなってきたし』


 うん? ゆりこさんまでなにを言ってるの?

 どうして二人してわたしに足を出させようとしてるの?

 水着なんて足どころの話じゃないんだけれど……ん? どうしてクロウが渋い顔をするわけ?

 よくわからないんだけれど、ベリンダとゆりこさんが言い出したら、なぜか日傘を持ったままのクロウが渋い顔をするの。

 この顔って、このあいだと同じような……つまり、なにを言ったのかはわからないんだけれど、このあいだクロウに直通会話でしつこくなにか言っていたのはゆりこさんかベリンダってこと?

 ねぇクロウ、なんの話だったの?


「お前には関係ない」


 …………絶対あるわよねっ?!

日傘では火の粉は防げないようです・・・(笑

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― 新着の感想 ―
[一言] よし、(我らが女王とその周囲の意識の)間をとってミニスカドレスにしよう(取れてないとか言ってはいけない)、損なわない程度に足も出せるし、女王の清楚・・・というか落ち着いた印象?も程よく残せる…
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