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139 ギルドマスターは天然と故意の違いを見せつけます

pv&ブクマ&評価&感想、ありがとうございます!!


今日は諦めようかと思いましたが、なんとか・・・(汗

 わたしたち 【素敵なお茶会】 を……というよりわたしをというべきかしら? 敵視するギルド 【シシリーの花園】 の主催者(マスター)シシリーさん。

 思わぬ彼女の登場に……そもそも私は彼女とは会ったことがなく、その声はもちろん、容姿(すがた)も装備も知らなかったんだけれど、なぜか一度会ったことのあるカニやんも彼女を見ても誰だかわからず。

 会ったことがあるといっても一回くらいじゃ無理もないか……とも思うんだけれど、全身黒ずくめの彼女を見れば、これ、結構印象的だと思うの。

 いうまでもなく性格は強烈でその個性(キャラクター)はとても印象的なんだけれど、この黒ずくめっていうのも結構強烈な個性(キャラクター)だと思う。

 でも思い出せなかったカニやんに代わり、教えてくれたのは恭平さん。

 わたしの 【灰燼】 の発動に蝶々夫人と不破さんが 【特許庁】 を引き連れてやってきて……ちょっと早足の説明でわかりにくいかも知れないけれど、まぁ雲行きが怪しくなってきたのを察した恭平さんは、ハルさんと相談して、年少組とゆりこさん、マメを連れてギルドルームへ避難。

 ジャック君がちょっとごねたらしいんだけれど、そこは空気を読んだゆりこさんが説得というか説教というか……行き届いた躾に逆らえず連れて行かれたって感じ?

 みんな空気を読むのが上手な日本人らしい日本人で、ほんと、対応と行動が迅速で助かったわ。

 やらかした本人であるわたしですらきついこの状況に、さすがにあの子たちは巻き込みたくないもの。

 で、そのギルドルームから戻ってくる途中でシシリーさんの登場となったんだけれど、さすが恭平さんというべきかしら。

 声だけでシシリーさんってすぐにわかったもの。

 そしてすぐにわたしたちに教えてくれた。

 一瞬カニやんが 「え?」 って声を出したんだけれど、その理由もすぐに、人垣を掻き分けて戻ってきた恭平さんが教えてくれる。


「……あいつ、装備だけじゃなく、髪色も変えてるな」

「だよな。

 俺が会った時はあんな真っ黒じゃなかった」


 恭平さんが 【シシリーの花園】 を離れる前からシシリーさんは魔法使いだったけれど、その時とは装備が変わっているらしい。

 それこそ今のような全身黒ずくめなら、見た瞬間に思い出せていたってカニやんはいうの。

 前にも説明したと思うけれど、このゲームでは顔はいじれない。

 でも髪色や髪型なんかはある程度最初に選択出来て……それでわたしは真っ白にしてるんだけれど、それだって課金をすればゲーム途中でも変更出来る仕様になっている。

 つまりシシリーさんは課金で髪色なんかを変えたってことね。

 でも声や顔なんかの基本データはいじれなくて、それなりに付き合いのあった恭平さんにはすぐにわかった。

 でもシシリーさんって、最初は剣士(アタッカー)だったのを魔法使いに転職(クラスチェンジ)して、さらに容姿まで変えて……忙しいわね。

 しかも結構な課金額になっているような……ゲフゲフ……やだわ、人様のお財布事情に口出しするなんてはしたない。

 今のはなしで、ふふ。

 それでもやっぱり気になるのが 「シシリーさんは何がしたいの?」 ってこと。

 だってこの人、以前は剣士(アタッカー)をしていて、シャチ銅のタイムトライアルでずっとトップをとっていて、それを邪魔するプレイヤーを怒鳴りつけるなどの威嚇までしてトップを守り続けていたらしい。

 公式サイトの掲示板でも火種になっていたっていうし。

 それを 【素敵なお茶会(わたしたち)】 が、ちょっとしたギルドイベントのつもりでした遊びで、到底破れない記録を作っちゃった。

 わたしならそこで立ち直れないくらい折れちゃうんだけれど……そもそもそんなことに興味はないんだけれど、シシリーさんは執念深いっていうか、神経が図太いっていうか……たぶん両方ね。

 この両立が 【素敵なお茶会】 に怨念を抱くに至らしめた、と……あー鬱陶しい!

 ちなみにクロウの記録は未だ破られていなくて、今日も私のポストにはクロウからHPポーションが送られてきました。

 ほんと、これもいつまで続くのよっ?!

 わたしには悩ましいことばっかりなんだけれど…………いや、ま、自分のやらかしがそもそもの原因といわれれば返す言葉もないんだけれど、でもまさか、こんなに根深くねっとりと糸を引くとは思わないじゃない。

 もう納豆顔負けの粘り具合よ。


 後味最悪


 食傷気味なんてレベルを通り越して、()……ゲフゲフ……なんでもありません!!

 やばい、OLにあるまじきNGワードが出るところだったわ。

 というわけで言い直します、えっと…………あ、消化不良!

 うん、これが正解ね。

 出すもの全部出し……じゃなくて! ……えっと、その、胃薬飲んですっきりしたいわ!!

 もちろんここでシシリーさんが出てきてくれたからといって全ての因縁が解消されるとは限らないんだけれど……むしろ解消しなさそうなんだけれど、とりあえずわたしは初めてのご対面ってことなんだけれど……


『グレイさん聞こえますかー?

 マーメでーす』


 聞こえてるわよ。

 なに?


『掲示板がシシリーさんとグレイさんの直接対決! で盛り上がり始めてまーす』


 あー……そっか。

 【シシリーの花園】 やシシリーさんが 【素敵なお茶会(わたしたち)】 に粉を掛けてるっていうか二つのギルドの不仲っていうか……一方的に敵視されてるんだけれど、でもこの話は当事者以外も知っている、いわゆる周知の事実ってやつなのよね。

 以前のスレッドは運営によって 【不適切】 とでも判断されたのか消去されちゃっているけれど、あの時も公式の掲示板で結構炎上したし、第二回イベントのあとでも色々と噂を流されて迷惑したんだっけ。

 その一つにあった 「ギルドの恥を晒したメンバーを強制退会させた(くびにした)」 っていう噂の真偽がここで聞けるんじゃないか……まぁそんなところかしら?

 みんなよく覚えてるわね。

 わたしなんてすっかり忘れていたわ。

 とりあえずマメ、情報をありがとう。

 引き続きよろしく。


『あいさー!』

「そうか、忘れてたんだ」


 元気なマメの返事の影でカニやんが溜息を吐く。

 それを元気づけるように周りにいる柴さんやムーさんが肩を叩くんだけれど……それ、わざとよね?

 STRに任せて思いっきり叩いて、物凄いカニやんが痛がってるの。

 ほんと、仲間思いのいいお友達じゃない。

 わたしにやったら、仕返しにルゥに噛ませるけど。


「シシリーとグレイさんが相容れない理由がちょっとわかったような気がする」


 恭平さん?

 それ、どういう意味?


「対局過ぎるだろ、性格が。

 シシリーの執念深さもたいがいだけど、グレイさんのその…………性格も」


 言葉のあいだに入った妙な()

 恭平さんがそこにどんな言葉を入れようとしたのか凄く気になるところだけれど、そのうちに聞かせてもらうとして、とりあえずシシリーさんよね。

 とりあえずここは定石(セオリー)通りに行きましょうか?


「初めまして、【素敵なお茶会】 を主催しているアールグレイです」


 話が逸れて足の震えは治まったけれど、いつ再発するかわからないハラハラドキドキの状況で、とりあえずいま出来る精一杯の営業スマイルで挨拶をする。

 シシリーさんをはじめとする集まったプレイヤーたちは……少なくともわたしに見える範囲じゃみんな、ちょっとビックリしたっていうか、意外そうな顔をしているんだけれど、別におかしくはないでしょう?

 だってわたしたち、初対面だもの。

 挨拶と自己紹介は基本中の基本じゃない。

 それなのになぜかざわめきがあって、そのざわめきに押されるように、シシリーさんは少し早口に挨拶を返してくれる。


「わ、わたしが 【シシリーの花園】 のギルドマスター、【漆黒の魔女】 シシリーだ!」


 漆黒の魔女……へぇ、シシリーさんってそう呼ばれてるんだ、知らなかったわ……って思ったら、みんなも知らないってざわめくの。

 なにかしら、このおかしな空気は?


「……つまり、そういう二つ名を自分で考えて色々と変更したんだな」


 それこそ髪を黒くし、装備も黒一色に。

 一人で納得したようなカニやんの呟きに、【素敵なお茶会(うちのギルド)】 では一番彼女をよく知っている恭平さんも 「たぶん」 と、なんだか少し疲れた様子。

 どうしたの、恭平さん。


「自分に酔いやすい奴だとは思っていたけれど……さすがにここまで恥ずかしい奴だとは思わなかった」


 そんなシシリーさんのサブマスをしていた自分も恥ずかしいらしい。

 確かに振り返れば残念な過去だけれど、済んだことじゃない。

 今はうちのメンバーなんだし、そんな黒歴史は綺麗さっぱり忘れちゃいましょうよ。


『グレイさんは色々と忘れすぎだけどね』


 痛いところを衝いてくるクロエってばどこにいるのかと思ったら、噴水の反対側って……あんた、ちょっとね。


『だって 【特許庁】 がうるさいから』


 ま、こんな感じだから不破さんもクロエを覚えてないのかも。

 くるくるも一緒にいるっていうし、何かありそうならギルドルームに避難してねってことで銃士(ガンナー)二人は大丈夫でしょう。


『グレイさんに 【灰色の魔女】 って二つ名があるから、それに対抗したかったんじゃない?

 だからって全身真っ黒にしてそのまんまの名前付けちゃうとか、マジくっだらない馬鹿』


 うん、まぁそんなところじゃないかっていうのはわたしでも想像が付く。

 最後の一言はクロエらしいとはいえ、余計だけど。


『一応黙ってるけど、言い負かされたら許さないからね』


 うん、そこは肝に銘じておくわ。

 今回の炎上事案のそもそもの原因が 【素敵なお茶会】 にあるとか、とんだ言いがかりだもの。

 確かにココちゃんがそういう作戦をとったのは事実だけれど、第二回とこの第五回はあくまで個人戦だってことを忘れてもらっちゃ困る。

 参加登録(エントリー)の段階から全て自己責任なんだから。


「まずはっきりさせておくけれど、今回の炎上事案と、あなたがここで主張する話は別問題よ」

「卑怯者!

 そんな言葉でわたしが騙されると思うなよ!」


 騙されてくれなくて結構よ、騙すつもりなんて微塵もないし。

 とりあえず大きな声を出すのはやめてくれないかしら?


「隠れて生存点を稼ぐやり方なんて、誰だって考えつくことよ。

 同じようなイベントがあれば、他のゲームでだって行われているわ。

 第二回イベントでだって他にもしていたプレイヤーはいただろうし、それに誰も気づかなかっただけで、何食わぬ顔で中堅層にランクインしてるわよ。

 今回も同じことを考えていたとしたら、ずいぶんと迷惑したでしょうね。

 あなたが 【素敵なお茶会(うちのギルド)】 の評判を落とすため、そんなやり方があるってみんなに教えてあげたから、実際に多くのプレイヤーが真似をした。

 今回のイベントの結果は、あなたが招いたといってもおかしくはないのよ」


 それこそ前回のイベントで 「隠れキャラ」 を成功させたプレイヤーにとってはいい迷惑だったでしょうね。

 シシリーさんが言い広めなければ五〇人近いプレヤーが 「隠れキャラ」 になることはなかっただろうし、【灰燼(かいじん)】 の発動を招くこともなかったんだから。

 恨まれてもおかしくはないレベルだと思う。

 もちろん噂を言い広めた時点でそんなことになるなんて思わなかっただろうし、あの噂を聞いた時にはわたしもこんなことになるとは思わなかった。

 今も、シシリーさんが登場しなければ、こんな形で逆転出来るとは思っていなかったし。

 もちろん完全にひっくり返すつもりはないけどね。

 だって最終的な裁定を下すのは運営だもの。


「責任転嫁も甚だしい!」

「だから最初にいったじゃない。

 わたしが 【灰燼】 を使ったことと、あなたの言いがかりは別問題だって。

 さっきも説明したとおり、イベント中に隠れて生存点だけを稼ぐ。

 そのやり方が運営が定めたルールに反していない以上、方法としてはあり。

 やり方を誰が考えたかなんて問題じゃないわ。

 所持スキルである以上、どこでどのスキルを使うかもプレイヤーの自由。

 もし特定のスキルの使用を禁じるのであれば、運営はルールとして事前にその旨を全プレイヤーに告知し、イベント内では発動出来ないようにすべき。

 禁止スキルの所持プレイヤーには、その上でイベントに参加するかどうかの選択権がある。

 違う?」


 特定スキルの使用禁止は所持プレイヤーを不利にするものだから、公平さを保つため、事前告知は運営の義務よ。

 でも今回運営は 【灰燼】 をはじめとする特定のスキル使用禁止をルールにしていない。

 じゃ、使ってもいいってことじゃない。

 文句があるのなら運営にいってくれる? ……っていう挑発はしないけどね。

 炎上事案は 【灰燼】 使用によるわたしの一人勝ちだもの。

 何度もいうけれど、シシリーさんとは全く関係ないの。

 それこそ生存点を狙う方法をわざとわたしが撒いて、【灰燼】 を使いやすくしたとでもいいたいの?

 あのぶっ壊れスキル 【灰燼】 にもちゃんと欠点が三つもあって、特に 「エリアの境界を越えない」 っていう欠点には本当に冷や冷やさせられたんだから。

 もちろんそのことをここでいうつもりはないけれど、でも、これだけは言っておくわ。


「例え運営が事前に 【灰燼】 の使用を禁止したとしても、わたしは今回のイベントに参加してるけどね」


 まぁそりゃ 「隠れキャラ」 に時間切れで逃げられるのは癪だけれど、【灰燼】 が使えないなら他に方法はなかったわけだし、それはそれで仕方がない。

 それがルールなら従うしかないもの。

 そもそも禁止されなくたって、欠点をさらけ出す危険を冒してまで、そうそう発動させたりしないわよ。

 実際、第二回イベントでは使わなかったわけだし。


「だが次のバトルロワイヤルでも使わないという保証はない。

 三連覇のためならやりかねないわ」

「何度も言うけれど、それはスキル所持者の自由であり、制限出来るのは運営が定めるルールだけ。

 でも次は序盤からあぶり出されるだろうから 「隠れキャラ」 で制限時間を逃げ切るのは難しそうだし、ゲームが動くなら 【灰燼】 なんて必要ないんじゃないの?

 実際前回は使わなかったし」

「三連覇が掛かっていれば別じゃない」

「【灰燼】 使って連覇しても面白くないんだけど?

 そもそもわたし、1位じゃなくてもいいし」

「は?」


 連覇連覇と連呼するシシリーさんがなにを言いたいのかわたしにはわからなかったんだけれど、今度はシシリーさんが、なにを言っているのかわからないとばかりに間の抜けた顔をする。

 だって10位以内に入賞したら結構な賞品がもらえるじゃない。

 15位以内も対象だけれど、前回ギリギリ11位だったムーさんに聞いたら、そこから格段に内容が落ちていたから是非とも10位以内を目指したい。

 でも3位以上だとインタビューとかあって、あんなの受けたら目立っちゃうから嫌だし、だから希望としては10位以上5位以下。

 そこがわたしの理想だから、【灰燼】 なんて使っちゃうと目標を大幅にはみ出しちゃうのよね。

 だから 【灰燼】 の発動は却下で。


「なんか、凄い我が儘っすね」

『グレイさんは美人なので、なにを言ってもいいのでーす』

「俺なんて50位にも入らないのに、凄いですね、軽く10位以内とか言っちゃえるところとか」

「まぁうちのギルマスだからな」

「女王陛下には当然のことだろ?」

「どっちも女王キャラのはずなのに、どうしてこうも印象が違うんだ?」

『グレイさんは天然の喪だからね。

 そんじょそこらの養殖女王と一緒にしちゃダメだよ、恭平さん』

「そろそろ誰か止めろよ。

 別のところが壊れてるのがバレる」


 ……なんかメンバーが色々とうるさいんだけれど、とりあえずクロエとカニやんはあとで覚えてなさいよ!

一応炎上事案は解決!・・・してません。

予定以上にシシリーの粘度が高くて、消火しきれませんでした。

次こそは解決でオチを付けたいと思います。

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