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126 ギルドマスターは鍛治士と話します

pv&ブクマ&評価&感想、ありがとうございます!!


またしても遅刻です、申し訳ございません(汗

 ルゥがプレイヤーを噛むからって、それ、ツボにはまるほど笑うところ?

 トール君が装備の製作を依頼した鍛治士のカジさんは、よりによってあの 【特許庁】 のメンバーで、その製作センスを警戒して店を知っているクロウの案内で会いに来てみたんだけれど……


「そういや 【素敵なお茶会(おちゃかい)】 のメンバーだって言ってたっけ?」


 そんな話を聞いたような聞かなかったような……なんてちょっといい加減なことを言い出した。

 ルゥに噛ませたら思い出すかしら?

 あ、でも別にそこは思い出さなくてもいいわ。

 それこそトール君がどこのギルドに所属していようとカジさんにはどうでもいい話で、依頼には関係ないもの。

 製作依頼を受けるかどうか、受けたら依頼はちゃんとこなす、その二点だけよね、問題点は。

 でもさらに言えば、そこもわたしには問題じゃないのよ。

 問題はカジさんの製作センス。

 だってカジさんは 【特許庁】 のメンバーで、あの個性的な装備一式を製作から整備(メンテナンス)まで一手に引き受けてるんだもの。

 放っておいたらどんな物が出来上がるか、今から気が気がじゃないわ。


「あんな大技、気前よくぶっ放す重火力の割に肝っ玉小さいねぇ」


 生産職のカジさんが自身でイベントに参加することはないだろうけれど、イベント自体は運営が設置する大型モニターで見ることが出来るもんね。

 わたしはまだあれで見たことはないんだけれど……でもわたしの姿はみんなが見てるっていう事実に今、たった今、気がついた!


 なんて恥ずかしいのよっ!!


『相変わらず今更な喪っぷり』


 ちょっとカニやん、相変わらずとか言わないでよ。

 しかもわたしが喪女なのとこれは全然関係ないし!

 今更とかまで言われちゃったし……ひどい!!


『いや、つくづく今更だろうよ』

『今更っしょ?

 公式イベントなんて、もう何回やりましたっけ?』


 柴さんやJBまで……っていうか、こうならないようにJBと恭平さんを脳筋コンビから離していたのに、全然無駄だったみたい。

 これまでのわたしの血と汗と涙のような努力は……してないか、さすがにそこまでは。

 ちなみに公式イベントは、このあいだが四回目です。

 噂があるのは五回目ね。

 インカムの向こうではこの噂について盛り上がりはじめちゃったから、とりあえず放っておく。

 なにかあった時用にインカムはギルドチャットのまま繋いであるけれど、会話には参加せず、自分の用件に集中しましょう。

 こうやって脱線するのがわたしの悪い癖よね。

 わかってるんだけれど、みんながここぞというタイミングで絶妙な突っ込みを入れてくるからついつい……。

 そもそもわたしの気が小さいのと、カジさんが作る装備のセンスとは別問題……じゃないのか。

 関係あるから来たんだっけ、わたしってば…………大脱線!!


 よし、戻るわ


「俺はモニターでしか見たことはないが、ドッカンドッカン、まぁ本当によく撃つもんだって思ってたよ。

 あれだけ撃ってMPが切れないとか、どんだけ魔力タンク?」


 …………これ、褒め言葉よね?

 ちょっとわたしがギルドチャットに集中していた隙に、カジさんってば言いたい放題。

 重火力って自分でいうのはともかく、人にわたし自身のことを言われるのは違和感が大あり。

 さらに魔力タンクとか言われるのは凄く嫌。

 うん、今はっきりわかったけれど凄く嫌。

 重いとか、タンクとか、わたしたちOLには結構なNGワードなのに、デリカシーの欠片もないカジさんは気づくことなく言いたい放題。


「あの手の大技って、一発の消費MPって半端ないんだろ?

 それを連発、しかも詠唱が早い早い。

 どのくらい最大MPがあれば出来るのか、生産職やってると想像もつかなくて」


 最大MPねぇ……もちろん教えないけれど。

 っていうかね、問題なのは最大MPじゃないのよね。

 最低限その(スキル)を発動するために必要な消費MPを持っていればいいだけで……もちろん取得条件は別だけれど……最大MPは問題じゃない。

 どちらかというと詠唱時間のほうが問題で、それは以前に恭平さんと対戦した時に改めて実感した。

 同じ(スキル)を持っていた場合、詠唱時間の差でほぼ勝敗がついてしまうんだもの。

 別の(スキル)であったとしても、詠唱時間が短い方が先制出来るし、大技の発動に時間を掛けていては小技を連発されてしまう。

 もちろん威力の差も意味があるけれど、それはVITやHPの差も関係してくる。

 レベル差も。

 つまり複合的原因だから、なにか一つが直接的敗因になることはないんだけれど……危ない、危ない、また脱線するところだわ。


「カジ、グレイを賞賛しても何も出ないぞ」

「ひょっとしてクロウさん、妬いてる?」

「そろそろ本題に入れ、二人とも」


 いま戻ろうとしていたのに!


「トールの順番は…………簡単に言えばまだまだ先だな」


 ウィンドウを開いてメモを確認したカジさんは、最初はちゃんと数えていたんだけれど、途中で面倒臭くなってやめた。

 そして出した結論が 「まだまだ先」。

 凄くわかりやすいわ。


「なにしろ 【特許庁(うち)】 の連中は人使いが荒いから、次から次にあれ作れこれ作れって。

 しかも注文が細かくて細かくてうるさい」


 つまりなに、やっぱりあの変な……ゲフゲフ……あの個性的なデザインはカジさんの趣味ではなく、依頼者であるプレイヤー側の好みってこと?

 それならちょっと安心出来るんだけれど……


「個性的?」


 わたしの言葉のそこにちょっと驚いた感じのカジさんなんだけれど、わたしはその反応にちょっと驚くわ。

 だって 【特許庁】 のあの装備を個性的と言わずなんと言うの?

 それともやっぱりカジさんにとってもあの感覚(センス)は普通なわけ?


「……あーそういうことか」

「そういうことかって、だってカジさん、不破さんのあの防具を作った人よね?」

「不破の?

 作ったな」


 結構前のことだったらしく、カジさんは思い出すのに少しだけ時間を要した。

 じゃあその不破さんより露出の高い串カツさんの防具は?


「串カツというのはかっちゃんだな……作った、うん」


 たぶんそういう記録もちゃんとあるんだろうけれど、それこそ沢山ありすぎる中から探すのが面倒なんでしょうね。

 カジさんは見もせず、自分の記憶だけを探って答える。

 じゃあローズの、あの超きわどいビキニアーマーは?


「ローズ……ローズねぇ…………ああ、あの()○しか隠れないビキニアーマーな。

 はいはい、思い出した」


 つまり、やっぱりあれもカジさんが作ったのね?


「作ったな。

 あれさぁ、あの柄、データを自分で用意してきたんだけど解像度が荒くて、拡大鮮明化にどんだけ苦労したか。

 最初はボケないレベルに縮小したのを入れようとしたんだが、それじゃ嫌って言われてやり直し。

 画像の修正からだぜ……まったく、参ったわ」


 その時のことを思い出したらしいカジさんは、その苦労や疲れまで思い出したようにグッタリする。

 まぁそりゃそうかな、カジさんは鍛治士であって絵描きさんじゃないもの。

 持ち込みデータの修正から始めてダメ出しまで食らって……さぞかしお疲れでしょう。

 この話のトドメは、追加料金を踏み倒されたってことなんだけどね。


 ちょっとローズ……


 製作費の踏み倒しとか、あり得ないんだけど?

 もちろんカジさんも、次に何かを頼まれた時にその分を上乗せするつもりらしい。

 利子を付けるのは当然よね。


「利子は考えてなかったな。

 あいつとんでもねぇ(ひん)○だからいつ外れるか、そっちを楽しみにしてる」


 それを利子分にするつもりなの? こ、このオッサン……


「ああいうのは、あんたみたいにスタイルのいい女が着てくれた方が……」

「ちょっとクロウ、燃やしていいっ?」


 このクソ親父、なんてことを……。

 言いたいことなんてすぐにわかったから、最後まで言わせてやるものですか。

 思わずクロウに許可を求めちゃったわ。

 途中までとはいえ言ってしまってから 「しまった!」 なんて顔をしても遅いのよ、このエロ親父!

 呼んでも来ないならこっちから……ってことで足下をウロウロしているルゥを捕まえて……ちょっと重いわ、ルゥ……カジさんを頭からガッツリ食わせる。


「いてぇー!!」


 大丈夫よ、ここは一般エリアの中でも安全地帯のナゴヤドーム内。

 どんなに痛くてもHPは減らないし、死亡状態になることはないから。

 だからルゥ、思う存分ガジガジしてやって!


「……グレイ、そのぐらいにしてやれ。

 そんな奴でも技術(うで)はいい」


 …………そ、そうね…………ルゥを持ち上げる腕がそろそろプルプルしてきたわ……。

 やっぱりわたしもちょっと鍛えたほうがいいのかしら?


「……プレイヤーを噛むって、ガチかよ……」


 笑いのツボにはまったカジさんだったけれど、さすがにその痛みを自分で体験すると笑えなかったらしい。

 いつもはルゥにちょっかいを出すプレイヤーを、怒ったルゥが自主的に噛むからもっと痛いんだけどね。

 今はわたしに言われたルゥは 「???」 っていう顔をしていたんだけれど、ガジガジと噛んでいるうちに楽しくなったみたい。

 最初はしょぼーんとしていた尻尾が、途中から嬉しそうにブンブン振り始めたもの。

 うん、ルゥの機嫌がいいと可愛いわね。

 振れる尻尾がわたしの鼻先にあたって、ちょっとくしゃみを堪えるのに苦労したわ。


「グレイ、あまり間違ったところでルゥを褒めるな。

 噛まれる俺たちの身になれ」


 んーっと、それはつまり……クロウも結構痛いってこと?


「痛い」


 そ、そっか……んー……気をつけます。


『旦那の言うことには素直だな』


 そこ、うるさいんだけど?

 まだまだインカムの向こうでは次のイベントの噂で盛り上がっていたのに、またしても絶妙なタイミングで突っ込んでくるカニやん。

 カニやんはカジさんとの話が終わったら燃やしに行く予定だから、もう少し待っていてね。


『……まだ覚えてたのか……』


 もっちろぉ~ん、ふっふ~♪

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