113 ギルドマスターは怨霊と露出に目をやられます
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ルゥ、ちゃっちゃとマサカドもトチョウも吹っ飛ばしてナゴヤドームに戻るから、いい子にして待っていてね!
今も右手首の腕輪の中で寝ているはずだから、一緒にいることは一緒にいるんだけれど、やっぱり撫でてあげたり出来ないのは辛い。
あのフンフンフンフンフンフン……しつこいくらい臭いを嗅ぐのも、わたしの臭いを嗅がなければ可愛い。
低く唸りながら噛みついても、息継ぎの時に短い尻尾がピコってなったり……嗚呼、もう可愛さが爆発。
早く出してあげたいからマサカドは一発で成仏させる!! ……って意気込みたいところなんだけれど、それが出来なさそうな先客がいる。
いや、えっとまだわからないんだけれど、ひょっとしたら一発で片付けさせてくれるかもしれないんだけれど、こんなところで会ったことがないからよくわからないっていうのが正解かな。
顔とかは距離があってまだはっきりは見えないんだけれど、でもあの髪の色とか、まず間違いないと思うんだけれど……しかもお連れさんがいるみたいで、そっちの人は全く心当たりがない。
運営がキャンペーンとか色々頑張ってユーザーも増えてきているから、ご新規の人かもしれないけれど、関東エリアに来ているってことは初心者ってほどでもないかな。
わたしはそんなことを考えていたんだけれど、初めてマサカドを見るトール君は全然違っていた。
「あの、あれが首塚ですか?」
「首塚っていうか、あの巨大な首がマサカド」
現実世界の首塚をわたしは見たことがないんだけれど、わたしの視線の先には、樹海から溢れた木々に囲まれるように墓石がポツンと一基。
トール君が指さす先にもその墓石があり、なぜかその周りには結構大きなカエルの置物があって、突然沸いて出るノブナガと違って、マサカドが出現する前にはそのカエルが盛大に鳴き出す。
まさにカエルの大合唱があって、いまはすでに役目を終えて静かに鎮座しているんだけれど、その頭上を巨大な武将の首が飛んでいる。
赤い眼光鋭いノブナガと違い、マサカドは怨霊……いや、ま、ノブナガも故人っていうか、幽霊っていうか、まぁ、うん、あれなんだけれど……結局同類なんだけど、しかもどっちもエリアボス扱いの幻獣で、当然高火力の高HP。
そういえばノブナガにしろマサカドにしろ、夜時間昼時間にかかわらず現われてくれるのよね。
しかも昼時間でも、ノブナガやマサカドが現われると急に周辺が夜時間並みに暗くなる
そして制限時間が過ぎるか、倒されると元の明るさに戻るんだけれど、今は元々夜時間。
オドロオドロしい効果音とともに、古めかしい兜を被った首が髪を振り乱して飛び回る。
もちろんタダ飛び回るだけならなにもないんだけれど、出現時に通りかかったプレイヤーを無差別に襲うの。
ノブナガはプレイヤー先制……だったんだけれど、いつの間にか修正されていたっけ?
マサカドははじめからマサカド先制っていうか、早い者勝ち?
今もプレイヤーの攻撃を待たず、早速髪のようなで髭のようなモジャモジャで攻撃を仕掛けるマサカド。
その顔の大きさは、たぶんわたしの一抱え以上あって、あれに胴体がついたらって考えたら、それこそノブナガでも小さく見えるかも。
「その、ノブナガとはまた違った迫力ですね……」
そうなのよね。
頭しかないっていうのも結構衝撃的な姿形だと思うし、その攻撃手段も独創的というかなんというか……手足がないから他に方法がないといえばないわけで。
まだわたしたちとマサカドは離れていてこちらには来ないんだけれど、アラートが出たってことはマサカドの攻撃範囲内。
いま交戦中のプレイヤーを倒したら、次はこっちっていう順番待ちの状態ね。
もちろん待たなくてもいいわけで……う~ん、どうしようかな?
マサカドはノブナガや大蛇と同じエリアボスだから横殴りOKなんだけれど、優先権はあの二人にあるわけで、横殴りを嫌うプレイヤーもいる。
もちろん無視して通過してもいいんだけれど、マサカドが見逃してくれるとは思えなくて、当然仕掛けられればこちらも仕返さないと落とされちゃうわけで、結果横殴りになる。
いや、マサカドに仕掛けられても耐えて走り抜けるっていう手もあるんだけれど……たぶんトール君は無理ね。
そこまでのHPはないと思う。
相談するつもりでクロウを見たら、腕組みをしてマサカドを見ていたクロウもこちらを見る。
どうしたらいいと思う?
「あれは助けたほうがいいかもな」
……クロウがそんなことを言うなんて、珍しいかも。
もちろん助太刀するのはかまわないんだけれど……でもあれ、不破さんよね?
あの紫の髪とか、長い細身の刀とか、間違いなく 【特許庁】 の不破さんよね?
さすがに顔まではわからないから、今どんな表情をしているのかも見えないし、装備もよく見えなくて目のやり場に困らなくて済む。
だからガン見して確かめました。
間違いなく不破さんです。
不破さんって横殴りをしても怒らない人?
正直、こういう形で不破さんと遭遇するのって初めてで、声を掛けてもいいのかどうかすらわからない。
しかもノーキーさんや蝶々夫人じゃないお連れさん付き。
わたしが戸惑っているうちに、わたしの頭上遥か上で……腹が立つくらい背が高いのよね、クロウってば。
ほんと、ムカつく!
すぐそばに立たれると必然的にわたしの頭上で話すことになるんだけれど……うん? 誰と話してるの?
「行くぞ、話がついた」
わたしの腹立ちなんて意に介さないクロウは、背負っていた大剣・砂鉄を抜いてわたしの背を押す。
ん? 話がついたって、誰と? ……あ、直通会話で不破さんと話してたのねっ!
でも話がついたってことは素通りOK?
それとも横殴り?
走りながら訊いてもクロウってば教えてくれないんだけれど、とりあえずこれだけはトール君にいっておかなきゃ。
「トール君、マサカドの目を見ないでね」
「マサカドの目、ですか?」
そ、マサカドの目。
見たらどうなるかを知りたければ見てもいいけれど、ちょーっと怖い目に遭うからね。
トール君と三人連れだって走るわたしたちの前で、不破さんが連れのプレイヤーを庇って、振り乱れるマサカドの髪? ……髭かもしれないけれど、毛むくじゃらのあれに手足を捕らえられる。
え? ちょっとやだ! あれ、なんかSMプレイっぽく見える!!
他のプレイヤーなら、それこそ大ピンチの鬼気迫る絵面なんだろうけれど、不破さんだから、ね。
だって、む、胸とか大きくはだけちゃって……あ、はだけたわけじゃなくて、元々露出してるんだけれど、こう……両手を広げさせられちゃって……もう嫌!
クロウ、さっさとあれ、なんとかして!!
クロウが振り下ろす大剣・砂鉄が豪快にマサカドの、鋼のような硬さで不破さんの手足に絡みつく髪を切り裂く。
「すいません、クロウさん。
グレイさんも、ご挨拶はあとで」
この状況でも気遣いを忘れないのはさすがの不破さん。
大きく頭上から振り下ろした砂鉄の軌道を変え、そのままマサカドの顔面に横から斬りかかるクロウ。
その隙に不破さんは、後退しつつ体勢を整える。
わたしとトール君は、すぐそばで座り込んでいる不破さんのお連れさんに声を掛ける。
「立って!」
「よ、横殴りっ?!」
不破さんの連れの女性プレイヤーがわたしたちに非難の目を向けるんだけど、いつまでもそこにすわってないでくれる?
立って後ろに下がって。
どこの誰か知らないけれど、その装備は魔法使いよね?
どうしてこんな前に出てるわけ?
ノブナガなら不意をつかれたってこともあるけれど、マサカドはカエルの合唱があるもの。
だから絶対に不意はつかれない。
マサカドは首塚、つまりあの墓石を中心とした一定範囲しか動けず、そこから手持ちスキルの有効範囲が攻撃範囲。
魔法使いなら攻撃有効範囲ギリギリまで下がりなさいよ……っていうかこの人、間違いなく 【特許庁】 のメンバーだわ。
だって…………うん、もちろんわたしの中のイメージなんだけれど、全身真っ赤な装備の魔法使いって……なんか違うと思う。
しかも真っ赤なローブっていうのも凄く、十分すぎるほど個性的なんだけれど……もうほんと、わたしには 【特許庁】 が理解出来ない。
だってこの人、その真っ赤なローブの下に、ローズ並みに露出の高い真っ赤なビキニアーマーとか着てるのよっ!
でも持ってる武器が杖だから魔法使いに間違いはないと思うんだけれど、どこをどうしたら魔法使いがローブの下にビキニアーマーなんて着るのっ?
これ、もうコートの下になにも着ていない犯罪者並みに強烈。
こんな人見たことないし、これから先も現われないと思う。
うん、でも胸はわたしのほうが全然ある! ……ゲフゲフ……今のは無しでお願いします。
でも、でもでもでも、大丈夫よ、どこの誰とも知らないプレイヤーさん、ローズよりは全然あると思うから!
……うん、それも違うわね。
腰を抜かしたように座り込んじゃっている彼女の正面に立ったわたしがローブの前を思い切り開いちゃったもんだから、彼女に手を貸して立たせようとしたトール君が目のやり場に困り、差し伸べ掛けた手が行き場を失って宙を彷徨ってる。
その手をわたしが取ったらどうなるんだろう? ……なんて悪戯心が、むくむくと頭をもたげちゃった。
でもきっと、今は何をしても彼女の真っ赤なビキニアーマーの印象には勝てないような気がする。
これ、どう見てもローブの下に赤い下着を着てるようにしか見えないんだもの。
トール君には刺激が強すぎるわよね。
いや、まぁほら 【特許庁】 には確かに真っ赤な装備の魔法使いがいるのよ。
支援系を得意とする蝶々夫人。
少しデザインは違うんだけれど、わたしと同じチャイナシリーズの赤を着たあの魔法使いがね。
戦闘に耐えうるほどの火力を持たないため、個人でのイベント参加をしない彼女はランカーとはいわれないけれど、わたしに匹敵するMPを持った高位魔法使い。
わたしの 【灰燼】 並みに見る機会がないからあまり知られていないけれど、ちょっと変わったプレイスタイルを持っていて、わたしたち一部のプレイヤーたちのあいだでは 「毒婦」 って呼ばれている。
いい言葉じゃないけれど、でも他に表現のしようがないプレイスタイルなのよ、あれは。
まぁそんな蝶々夫人もいる 【特許庁】 はほんと個性派揃いで……でもローブの下にビキニアーマーは初めて見るわ……発想も凄いけれど、それを実際に着ちゃうセンスも理解出来ない。
世の中には色んな人がいて、色んな考え方があって……そんなことを言われれば理解出来ないわたしの心が凄く狭いんだって思うんだけれど、とりあえずもう少し下がってくれない?
ここだとたぶんマサカドの髪というか髭というか、あの黒いモジャモジャが全然届いちゃうのよね。
クロウたちの邪魔になるし。
「髭なんですか、あ……れ……」
赤くなった顔を上げたトール君の言葉が不自然に途切れたのは……あ~あ、だからマサカドの目を見ちゃダメって言ったじゃない。
焔を思わせるノブナガの真っ赤な目と違い、マサカドの目は赤みの強い黄色なんだけれど、どうしてその目を見ちゃダメかっていえば固有スキル 【眼光】 を食らってしまうから。
何気なく顔を上げてマサカドを見たトール君は偶然に目を見てしまったらしく、まともに 【眼光】 を食らった模様。
状態異常 【石化】 で動けなくなってその場に倒れ込むと、全身からじわりじわりとHPを流出させ始める。
このマサカドの固有スキル 【眼光】 による状態異常は、術やアイテムじゃ解除出来ないのよね。
だからHPがだだ漏れし放題……もう……トール君のHPって、自然回復まで保つくらいあるのかしら?
自然回復まで保つ保たないにかかわらず、ここから移動出来ないんじゃクロウたちの邪魔になるのよね。
「クロウ、不破さん、落としちゃっていい?」
「どうした?」
「かまいませんが……?」
「トール君が 【眼光】 を食らっちゃった」
「ああ」
「じゃ、どうぞ」
話しているあいだにも襲ってくる黒いモジャモジャを斬り払うクロウ。
その脇で屍鬼を構える不破さんは、少し恭しい身振り手振りで場を空けてくれる。
さすがホストよね。
では僭越ながら……
「起動……セントクルス」
あまり使うことのない光属性の高位術。
マサカドは 【幻獣】 だけれど、怨霊だけあって光属性の攻撃には弱い。
同じ 【幻獣】 でもノブナガにはあまり効果のないこの術でも、マサカドは一撃で落ちるというか溶けるというか……成仏?
うん成仏ね、マサカドの場合。
もちろんまた沸くんだけれど、とりあえず今回はわたしが放つ聖なる光とでもいうのかしら?
名前が名前だし、たぶんそれで合ってると思うんだけれど……その光に包まれて消滅。
ちょっと眩しすぎて、わたし自身、目がシパシパしちゃうのが難点なんだけどね。
……目に残像が……
「あれ、君は確か……」
マサカドの消滅と同時に前線から戻ってきた不破さんが、石化を食らって地面に横たわったままのトール君を見て呟くんだけれど……なにかしら、その意味ありげな笑みは?
いつもの怪しげな笑みとはちょっと違っていて、逆にわたしには気に掛かる。
一緒に戻ってきたクロウは大剣を手にしたまま、インベントリからポーションを取り出して半端なくMPを持って行かれたわたしの回復をしてくれる。
うん、使うのが久々すぎて消費MPの量をすっかり忘れていたわ。
【妖獣】 や 【魔獣】 にも有効な術なんだけれど、例えばガルムなんて次から次に沸いてくるから、再起動準備がある 【セントクルス】 はあまり有用じゃないのよね。
しかも消費MPも半端ないし。
むしろ効率が悪い。
マサカドみたいな強力なボスキャラだと、一撃必勝みたいな感じで有用なんだけどね。
でもわたしはガルムがいる関東エリアが苦手であまり来ない。
で、使うのが久々だったわけ。
クロウがMPを回復してくれたから、じゃあ早速トール君を回復しましょう! ……うぐっ!
なんなのよクロウ、いきなりその大きな手で口を塞がないでくれる?
どうやらわたしに回復スキルを使わせたくないみたいなんだけれど、それならそれって言って……あ、なんかわかったかも。
不破さんたちの前で回復スキルを使わせたくないんじゃなくて、わたしが回復スキルを持っていることを知られたくないんだ。
もちろん理由はわからないんだけれど、とりあえずクロウに逆らう必要もないし、ここは言われたとおりにしておく。
マサカドの固有スキル 【眼光】 は状態異常 【石化】 による行動不能だけでなく、一定時間のHPドレイン現象が付随する。
しかも 【石化】 同様、術やアイテムじゃ解除出来ないっていう面倒さ。
自然回復するまでHPの回復が必要になるんだけれど、本人は行動不能で自分じゃ回復出来ない。
それどころか地面に横たわったまま起き上がれないんだから。
マサカドはそうやって動けなくなったプレイヤーを串刺しにして止めを刺す。
こんな墓石に近い場所で固まっちゃったらそれこそいい餌食。
クロウと不破さんに任せておいてもマサカドは落とせるんだけれど、その前にトール君が串刺しにされて落ちちゃうわ。
理由はわからないんだけれど回復スキルは使っちゃダメらしいんで、インベントリからHPポーションを取り出して瓶を割る。
とりあえずトール君の 【石化】 が解けるまでわたしたちはここから動けないんだけれど、不破さんたちが付き合う必要はないからお先にどうぞっていったんだけれど……
「手をお借りして、このままお先にというわけには行きません」
こんな装備とか容姿をした人だけれど、やっぱり真面目な人よね、不破さんって。
それこそわたしの回復に使ったMPポーションをお返ししましょうかって言われたんだけれど、使ったのはわたしだからそれはお断りする。
返してもらういわれがないもの。
「いえ、コレの不手際でお手数を掛けてしまいましたから」
目を見てはいけないマサカドと剣士はあまり相性がよくない。
それで攻撃対象を多く散開させてマサカドの気を散らせるのが安全な攻撃手段なんだけれど、お連れさんが早々に腰を抜かしちゃって不破さんの足を引っ張っちゃったっていうね。
しかもあんな墓石のそばで。
まぁだからクロウは助けた方がいいって言ったのね。
わたしが不本意そうな顔をして不破さんの隣に立つ彼女を見ると、不破さんは気がついたように切り出してくる。
「そういえばグレイさん、クロウさんは初めてでしたよね?
こちらはうちの魔法使いでバローム。
バローム、こちらは 【素敵なお茶会】 の主催者をしていらっしゃるアールグレイさんとサブマスのクロウさん。
お前、初めてだっただろう?
ちゃんと挨拶しろ」
わたしとクロウの紹介を受けた真っ赤な魔法使いバロームさんは、急に目を輝かせてわたしの眼前に立つ。
近い!
しかもわたしより結構背が高い!
ムカつく!!
離れて欲しくて突き飛ばしたくなる衝動を抑えていると、彼女はいきなりわたしの両手をとって握りしめる。
そして堰を切るように話し始める。
「あなたがあのアールグレイさんですか!」
どのアールグレイなのかしら?
なんだか凄く嬉しそうに顔を赤らめるんだけれど、その理由がよくわからずわたしは呆気にとられる。
でも彼女は全く気にしないのよね。
それこそ私が話を全く聞いていなくても話し続けるような勢いでしゃべり出す。
「わたし、アールグレイさんに憧れて魔法使いになったんです!
お会い出来て凄く嬉しいです!
握手までしてくれて、ありがとうございます!」
いや、それ、あなたが勝手に握ってるんだけど?
「モニターで見るより全然綺麗だし、ああ、小さい!
可愛い!
どうしてこんなに美人なのにあんなに強いんですかっ?
うちのクズマスの首、スカーンって落としてくれた時なんて、本当にすっきりしました!」
なんか色々と言われたんだけれど、とりあえずノーキーさんをディスるのはやめた方がいいんじゃない?
あんな人でも一応 【特許庁】 の主催者なんだし……そう思ってチラリと不破さんを見るんだけれど、にっこりと妖艶に笑って返してくる。
でも笑うだけでバロームさんを止めないのね。
こ、この確信犯……やばい、顔が熱くなる。
「ああ、もうこの楚々とした感じが……可愛すぎる、綺麗すぎる!」
……そろそろ止めてくれない、不破さん。
なんか聞いていて、たぶん褒めてくれていると思うんだけれど、こう……コンプレックスを刺激されて居たたまれない。
これ以上言われたら、穴に埋まりたくなるからやめて……
「わたし、今はレベル上げとスキル取得を頑張ってるんですが、いずれ剣も使えるように練習します!
そしたら、いつもアールグレイさんの周りにいるむっさいオッサン連中に代わってお守りします!」
……あ……なにかわかったかも。
うん、それでビキニアーマーなのねっ!
ちょっと不破さん、これ、止めなくていいのっ?
まさかと思うけれどバロームさん、ステータスをINT以外に振ってないでしょうねっ?
ちょっとぐらいAGIやDEXに振るのはいいけれど、それこそ勘違いをしてSTRとかに振ったりしたらマメの二の舞よ。
いや、彼女がマメを知っているとは思わないけれど、不破さんもたぶん知らないだろうけれど、わたしは魔法使い対策として物理攻撃を使用するだけで、ステータスポイントをSTRに振ることはないし、意図してSTRを上げたりしてないわよ。
これ、勘違いされていたらわたしのせいになるんじゃないの?
ちょっと待って、待ってよ!
誰か彼女を止めて!!
「育成方法は人それぞれだ、お前が気にすることじゃないだろう」
いや、待ってクロウ。
今わたしがなにを考えたか、わかっていてそれを言っているでしょう?
クロウだってマメを知っているくせに、ここで彼女を止めてあげないのっ?
「よそのギルドメンバーに口出しは無用だと思うが」
うん、それもわかってるんだけれど……わかってるんだけれど……放っておくの?
そりゃクロウは自分とは全くといっていいくらい関係のないことだから気にもならないんだろうけれど、ただ面倒臭いって思ってるんだろうけれど、でもわたしはそんなに割り切って考えられないわよ。
わたしを真似るつもりで、間違いをわたしのせいにされたらって考えたら気が気じゃなくて……
「不破さん、アールグレイさんはどうかしたんですか?」
クロウの腕を握ってオロオロするわたしの様子を不審に思ったらしいバロームさんは、不思議そうに不破さんに訊くんだけれど、ここでちゃんといってくれればいいのに、不破さんってば、たぶんわかっているはずなのに
「グレイさんはシャイだから照れてらっしゃるんだろう」
不破さん、それ、絶対わざとよね?
わざと色々気付かない振りをしてるでしょ!
バロームさんのステータスとか、ちゃんとチェックしてあげてるっ?
思わず不破さんの、面積の少ない装備部分を掴んじゃったんだけれど……どこを掴めばいいのか迷うくらい本当に面積が少ないのね、この装備。
「【素敵なお茶会】 は過保護……じゃなくて配慮がきめ細かいですからね。
でも 【特許庁】 は主催者がクズですから」
そうじゃなくて、ノーキーさんはそれこそどうでもいいです。
なんだかんだいって蝶々夫人はノーキーさんを主催者として立てていて、不破さんの悪態もその都度訂正を入れてるんだけれど、今はその蝶々夫人もいないからどうでもいい。
でもこのバロームさんって人、絶対なにかを勘違いしてると思うの。
その証拠がビキニアーマーとか、ビキニアーマーとか、ビキニアーマーとか……それだけで十分すぎる確証だわ。
そもそも魔法使いの装備に鎧なんて絶対におかしいじゃない!
どうして誰も突っ込んであげないの?
「それが 【特許庁】 ですからね」
…………そうね、凄く説得力のある言葉だわ。




