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110 ギルドマスターは顎が砕けて禿げます

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!!


入れ忘れたエピソードをねじ込もうとしたら上手くいかず・・・本日も遅くなりました(汗

 勢いよく胸に突っ込んできた……じゃなくて飛びついてきたルゥに押し倒されたわたしは、その重く強い一撃で一瞬息が詰まる。

 たぶんチビフェンリルになってもSTRもVITも変わらないのね、ルゥは。

 見事なまでの攻撃力を使い、無邪気な攻撃で飼い主を殺そうとする……マジで死ぬかと思ったわ。

 ベッドの上で天井を仰ぐわたしはルゥを胸の上に乗せたまま、息苦しさに喘ぐ……ルゥ、ちょっと重いかも……ついでにまた頭がフラフラしてきた。


「ルゥ、下りろ」


 わたしの上に乗っかって楽しそうに顔をぺろぺろなめていたルゥは、クロウにひょいっと持ち上げられた瞬間にキューって悲しそうに鳴いたんだけれど、次の瞬間にはクロウを見てグルグル唸るとか……ほんと、忙しいわね。

 クロウはそのままルゥを肩に担ぐんだけれど、ルゥも負けずに肩にガッツリ食いつく。

 しがみつくように肩に掛けた前足も、ガッツリ爪を食い込ませて……あまりにも足が短いから必死にしがみついているようにも見えるんだけど……クロウには悪いけれど、可愛い後ろ姿……。

 息継ぎをする時に尻尾がピコってなるのも可愛いわよ、ルゥ。


「大丈夫か?」

「初めて死ぬかと思った……」


 このあいだはトール君に驚かれたわたしの死亡回数(ゼロ)

 その記念すべき1がルゥの仕業っていうのは許せるかな?


「俺が許さん」


 えーっとクロウ、ひょっとして真剣に怒ってる?

 ルゥを相手に真面目に怒らないで頂戴……っていうか、いい加減仲良くしてよ。

 今も盛大にルゥに食いつかれてるけれど……。


「そのままで話せるか?」


 うん、大丈夫。

 でもちょっとまだしんどいからこのままでもいい?

 もちろん起きろといわれれば起きるけれど、ちょっと目が廻りそう。


「楽にしていろ」


 そういってくれたクロウなんだけれど、なぜか唐突にウィンドウを開くように言ってくる。

 うん? なに、藪から棒に?

 言われるままにウィンドウを開いたら、またいつものように手を使われて勝手に操作される。

 しかも寝ていていいって言ったくせに、無理矢理ベッドの上に座らされて。

 一体何をしているのかと思ったら開いているのはわたしのメッセージボックス。

 もちろん見られて困るようなメッセージはないんだけれど……なにを探してるの?


「運営からのメッセージ」


 うん? 今日は来てなかったと思うけれど、メッセージがどうかしたの? ……って思ったら、例の樹海での不具合に乗じてPKをしたプレイヤーに対するペナルティーについての発表があって……うん、そこまでは私も知ってる。

 それで公式サイトに出た新しいお知らせ……つまりその内容を読んでっていおうとしていたのよね、いま思い出したわ。

 でもわざわざ読んでもらうまでもなくクロウはすでに読んでいて、内容を知っていて、それでわたしのメッセージボックスを確認したかったらしい。

 クロウの行動とわたしたちが置かれている状況は理解出来たから、今度は運営が出したお達しについて教えてくれる?


「アカウント凍結期間は明日から五日間。

 対象アカウントは公表せず、対象プレイヤーに個別通達。

 通達手段はメッセージだ」


 で、そのメッセージは今日未明に全て発送し終わっているから、今日ログインした時点でメッセージが届いていなければ対象アカウントではないってことね。

 うん、今日はなにもメッセージは届いてなかったし、それ、わざわざウィンドウを開かなくてもわたしに訊いてくれれば済む話じゃない?

 でもクロウってば 「念のため」 とか言うんだけど。

 わたしってそんなに信用ないってことかしら?

 …………なにか忘れてるような気がして落ち着かなかったんだけれど、それがわかったからクロウのメッセージボックスも見せて。

 クロウってば、見てもいいけれど見るだけ無駄っていうことは、クロウにも来てないってことよね。

 じゃあこれで一安心ってことで他のメンバーは?


『やっとそこまで辿り着いたの?

 どんだけ待たせるのさ?』


 最初に悪態を吐いてきたのはもちろんクロエ。

 わたしがログインしてからまだ一時間くらいじゃない、気が短い。


『いや、一時間は結構長いっていうか、待たされる側には十分長いんだけど?』


 この調子じゃクロエは対象外と見ていいんだろうけれど、カニやんは?


『セーフ』

『ぽぽやくるくるも大丈夫』

『恭平とJBも大丈夫らしい。

 パパとムーさんは今日休みだからわからないが……』


 パパしゃんとムーさんは大丈夫よ。

 あの日、パパしゃんはお休みだったはずだし、ムーさんは対象期間の五日、全部休みだから凍結されても関係ないし。

 ベリンダとトール君はたぶんPKはしてないはずだし、あとは……あ、柴さん!


『ひでぇな、忘れてやがったな』


 あはははは、ごめんごめん。

 そういえばインカムが通じてるってことは、ライカさんとはまだ対戦してないの?


『ん? ああ、順番待ち。

 今日は人が多くて時間が掛かる。

 んでさっき不破に会ったんだが、ノーキーとローズだっけ?

 女王を見るとすぐ難癖付けてくる 【特許庁】 の露出女』


 露出女って……なんて的確な表現なのっ?!


『あの二人はアウトだってさ、一緒にいた不破はセーフなのによ』


 ローズはそもそもあの樹海にPKをしに入ったんだから当然アウトでしょうけれど……でもへたっぴだからどれだけのプレイヤーを落とせたか?

 正直たいして斬ってないと思うんだけれど、でもPKをしに行ったってことで悪質と判断されたのかも。

 仕方ないわ。

 で、焚きつけたノーキーさんもアウトと。

 もちろん運営がそこまでの事情を知っているとは思えないから、ローズの捜索とかいって無意味なくらい斬りまくったんじゃない?

 一緒にいた蝶々夫人はともかく、不破さんですらセーフなのに……呆れるわ。

 でもきっと、遭遇するプレイヤーを楽しそうに斬りまくるノーキーさんを、不破さんも蝶々夫人も止めなかったんでしょうね。

 止めてやめる人でもないから仕方ないけれど。

 しかもあの二人もそのことを知っているわけだし、無駄なことをするわけないか。

 イベントも終わったばかりで次の回まで少し時間もあるだろうから、【特許庁】 としてはトップパーティーが欠損しても大丈夫ってことね。

 【素敵なお茶会(うち)】 は全員対象外ってことで、よかった。

 じゃ、何かして遊びましょう!


「動いて大丈夫か?」


 ありがとうクロウ、もう平気よ。

 ルゥ、おいでってわたしが両手を広げて呼んだら、ルゥってば喜んでクロウを放り出すんだけれど、鳴きながら飛びついてくるの。

 言っておきますが、それをやめないと撫でてあげないわよ。

 また頭突きを食らわされちゃたまらない……っていうか、次に食らったら絶対に顎が砕けちゃう。

 その大きな頭の頭突きは信じられないくらいの打撃力があるんだから。

 小っちゃいくせにジャンプ力もあるし。

 ……なんて偉そうなことを言っておきながら結局かわせなくて、危うく食らいそうになったところをクロウが、ルゥの首根っこを掴んで止めてくれた。

 今日はもう一回食らってるから、無理!


 あー……焦った


 わたしの顎、無事よね?

 思わず髭を剃ったあとのオッサンたちみたいに顎を触って無事を確かめちゃったわ。

 ちなみにあれは剃り残しがないかを確かめているらしいってことを、あとでカニやんに教えてもらった。

 髭剃りが面倒だったら、いっそルゥに下顎砕いてもらう?


「いや、いらね」


 空恐ろしそうな顔をするカニやんは、わたしの足下を、いつものようにフンフンフンフンフン……果てしなく臭いを嗅ぎながらも楽しそうに歩いているルゥを見る。


「そういやこいつ、こんなんでも 【幻獣】 なんだよな」


 やっぱりカニやんもそう思うわよね。

 ついでにそのSTRとVITも体感してみない?


「絶対お断り。

 お前さ、美人の顔を変形させたら旦那に怒られるからな。

 いまは好きなだけ噛ませてもらってるけど」


 つまり何?

 クロウってば、ルゥの甘噛みに自分の筋肉を提供してるってこと?

 だったら脳筋っていう最適な筋肉が……


『くぉら女王、俺の筋肉を食わせるなって言ってるだろうが!』


 まだ食わせてないじゃない、もちろん狙ってるけれど。

 あ、そうだ!

 この話……っていうか、ムーさんはまだルゥのことを知らないから、ムーさんにお願いしましょう。


「……ひでぇ……」


 ふふふ、なんとでも言ってよ。

 酷いついでに訊きたいんだけれど、このゲーム、髭って伸びるの?

 そもそも髭ってあるの?

 そういえばすね毛の件もまだ未解決だったわね……って思いつつカニやんの足下を見たら、カニやんてば足を上げて蹴ってきた。

 よく考えたらカニやんって、いかにも魔法使いらしい大きな杖にローブを着てるんだけれど、ローブの下にズボンをちゃっかり穿いてるじゃない。

 これじゃせっかく足を上げてくれても見えない!


「あんたの注目はそこかっ?

 穿いてなきゃただの露出狂だろうが!」


 ああ、あれね。

 コートの下になにも着ていない犯罪者。

 そうか、ローブってマントみたいなものだから、確かに下になにも着てないとあの犯罪者と同じなのね。


「俺をあんな最悪な犯罪者と一緒にするな。

 んなこたぁいいから、これ、外せよ!」


 そういってもう一度振り上げるカニやんの足には、バックリとルゥが食らいついてるっていうね。

 カニやん、犬好きでしょ?

 しばらく噛ませてあげて。


「ひでぇ飼い主だな。

 こいつ、このサイズでも 【幻獣】 かよ。

 結構痛いんだけど……」


 言われてみればそんな細かいことを気にしたことなかったんで、改めてルゥのステータスを呼び出してみる。

 さすがに詳細データは秘匿されちゃってて呼び出せないんだけれど


status チビフェンリル・ルゥ / 種族・幻獣


 うん、やっぱり幻獣ね。

 しかもイベントの時に表示されたアラートと名前が変わってるんだけれど、これ、元の超巨大フェンリルに戻ったら 【巨狼フェンリル】 に戻るのかしら?

 ちょっと気になるんだけれど、でもあのサイズに戻ったら踏み潰されちゃうから危ないのよね。

 とりあえずカニやん、もうしばらく噛ませてあげて。


「マジひでぇ……」


 カニやんと会ったのは偶然で、わたしたちが探しているのはトール君。

 さっきインカムで話しかけられて、教えて欲しいことがあるって。

 で、じゃあ現地集合ってことで、ナゴヤドームの中央にある中央広場。

 その南側に広がる無人バザーに来たんだけれど……まだ来ないのかな?

 肝心のトール君の姿が見当たらない。

 うーん、暇だし髭のことだけでも教えてよ。


「まだそこから離れないのか、この喪は……」


 足を噛ませる代わりに、ルゥの酷い癖っ毛をモフるカニやん。

 ルゥに噛まれたみんなは外すことに必死になっていたけれど、さすがは愛犬家。


 ひと味違うわ……


 物凄く嫌がるルゥと、これ、どっちが勝つのかしら?

 ルゥってばカニやんの足に噛みついたまま、全身を触ってくるカニやんの手を払おうと、短い四肢をバタバタさせて爪を引っ掛ける。


「耳でけぇ~、毛ぇやわらけぇ~、腹毛サイコー」


 うん、カニやんの勝ちね!

 根気負けしたルゥはカニやんを放り出し、鳴きながらわたしに飛びついてくる。

 カニやんってば逃げ出したルゥを追いかけてモフり続けたんだけれど……うぐぅ!

 ……い……たたたた……きゅーきゅー鳴くルゥが可愛くて、わたしが油断しちゃったわ。

 頭突きを食らってあ、顎が…………ねぇわたしの顎、ちゃんとある?


 痛い……


 顎を抱えるようにうずくまったらうずくまったで、またルゥが髪にじゃれついてくる。

 い、痛い、痛い、痛いってばルゥ!


「あーこれはあれだな。

 こいつすげぇ癖毛だから、グレイさんのストレートが珍しいんだろ。

 しばらく好きなだけ触らせてやったら飽きるかも」


 ちょっとカニやん、その 「かも」 ってなによ、「かも」 って。

 疑問形じゃなくて、飽きるか飽きないか、はっきりさせてよ……痛い、痛いってばルゥ!

 禿げるからやめてぇ~!!


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