第4話 リオンの過去 2
リオン達は記憶の世界から現実世界へと帰ってきた。
先程まで自分たちが為すすべもなく仲間たちが殺されていくところを見ていた場所に、再びリオンは横たわっていた。
リオンの脳裏には、魔法で切り刻まれる親方の姿がまだはっきりと焼きついている。
「嫌なもん見せちまったな...。でもあれがここで起きたことの事実だ。この魔法の力は遺伝するらしくてな、お前もいつか力が覚醒したら俺みたいに使いこなせるようになるはずだ」
「...どうして今までこの力の事を教えてくれなかったの?」
「それは...この力が危険だからだ」
「危険?」
「あぁ。確かにこの力は人を殺めたり、傷つけたりすることはできない。だが、記憶を読めるということは、どんなに完璧に隠された秘密であっても暴くことが出来ちまう。お前も大人になれば分かるが、人には他人に絶対に知られたくない隠し事ってもんが一つはあるもんだ」
「でも他人の秘密を知れるくらいの力が危険だなんて、よく分からないよ」
「そのうち分かるさ。個人レベルの秘密ならまだいいんだ。この力があれば、世界中の闇に葬ってきた情報...俺らなんかが知ってはいけない情報が手に入っちまう。そうなりゃ俺らは追われる身だ。口封じで殺されるか、この力を利用しようとする奴らに狙われるか。とにかく何をされるか分かっちゃもんじゃない」
「分かったよ、誰にも言ってはいけない秘密なんだね」
「すまない。俺がもう少し早くお前に全部説明していたら詳しく話せたんだが、今は時間がない。いくぞ」
「行くってどこに?」
「帝都だ。ドレイクって奴はあの石を国に持ち帰ったら、時期にここへ戻ってくる。とにかく今すぐここを離れて、皇帝陛下が到着する前に危険を知らせなきゃなんねえ。あちら様もこっちに向かっている頃るだろう、きっと道中で出会えるだろうさ」
「なるべく早く出会えるといいね。僕、あまり長い距離は歩きたくないよ」
「さっきあれだけの光景を見てその軽口が叩けるお前も、なかなか肝が座ってやがるな」
「僕はいつか国に仕える立派な戦士になるんだ。このくらいで挫けたりはしないよ」
ナバールは息子の意外なリアクションに驚きながらも、その成長を少し喜んでいた。
♢♢♢♢♢
ーー帝都へ続く街道
「父さん、なぜ皇帝陛下は、ハァ、ハァ、さっきの奴らみたいに魔法を使って視察に来ないのさ...ハァ、ハァ」
リオンは荒れた街道を疲弊しながら歩いていた。当然主要な町と町をつなぐ道はしっかりと整備されている。しかし、リオン達が住む村と町をつなぐ道は街道と呼ぶにはほど遠い、荒れ果てた獣道だった。
「ワープか。あれは他人に使うと、移動距離が離れるほど到着地点の精度がおちる。それにかなり高度な魔法だ。自分に使うならまだしも、万が一皇帝陛下の半身だけが転送されたりでもしたら大問題だろ。そのリスクを負ってまで使う必要はないという判断だろう」
「魔法使いってズルいね...」
「...そうかもな」
ナバールはニヤリと笑った。
「でも、お前がさっき言った国に仕える戦士になる夢が本当なら、多分魔法を身に付けるのが一番手っ取り早い」
「え?だって魔法は生まれつきの資質がかなり重要だって、父さんがいつか言ってたじゃないか」
「そうだ。お前にはその資質が備わっているんだよリオン」
父の意外な言葉にリオンは驚く。
「お前と俺について、話さなきゃいけないことがある。本当はもう少しお前が大人になったら話すつもりだったが、こんな危険に巻き込まれちまったし、今後いつ話せるかも分からねえからな」