表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第1話 友達

ーーリオンは入学式に臨むべく集合場所の大広間を目指して足速に歩いていた。


先程からずっと馴れ馴れしくアイツが後ろを追ってくる。


「さっきは悪かったよ。僕は同じ歳くらいの友達と話すのが初めてでさ。少し言い方を間違えただけなんだよ、な!」


「ちょっと待った、いつ俺とお前が友達になったって言うんだ。さっき門の前で会ったばっかりじゃないか」

リオンは相変わらず不機嫌そうに言葉を返した。


「いつってそりゃあ僕が話しかけた時にだよ!城を見上げて口を開けてる田舎者くんに優しく口を塞ぐように教えてあげたあの瞬間からね」


リオンは大広間に向かう足を一層早めた。


少年はまた軽い謝罪の言葉を投げかけながらリオンの後を追う。


「どうやら君はこの学校に入れる能力はあっても、人と会話をする能力は乏しいらしい。口を開けば田舎者田舎者と、やはり国の中心に近づくにつれロクな奴がいないな」

リオンは少年へ目もむけずに吐き捨てた。


「それは心外だなぁ。僕はこう見えてーー」

少年の返答はそこで遮られた。


「到着したぞ」

どうやらリオンたちは目的の場所へ到着したようだ。大広間へつながる大きな扉は数百メートル先に微かに見えていて、その扉の前には何百もの新入生の大群でひしめき合っていた。


「いったい一つの学年に何人の生徒がいるんだ」

リオンは新入生の多さに驚いていた。


「この学校は定員がないからね。入学を希望する中から基準を満たす人間は全員入学できる。だけどその基準が一般の士官校とは比較にならないほど高くて20人もいない学年もあったと聞いたけど、今年はどうやら豊作らしいね」


「認定を受けるにはこの中で勝ち抜かなければいけないのか」


「勝たなくてもいいんだよ。認定を受けるのも競争じゃない。自分が基準を満たせばいいだけだ」

アーサーはやけに落ち着いている。


「さて、君ともここでお別れだな。名残惜しいよ。自分のクラスの列を探さなきゃ」


「そうだね、僕も自分のクラスを探そうかな。そう言えば名前をまだ名乗ってなかったね。僕の名前はアーサー、騎士の学級に所属する予定だよ。これも何かの縁だし、過去は水に流して仲良くしようよ」


「気にくわないけど、悪気はないようだし田舎者呼ばわりは忘れてやるよ。俺の名前はリオン。元奴隷だからラストネームはない。リオンでいいよ」


「わかった。よろしくリオン!さっき言いかけたけど僕はーー」

アーサーの声は再びかき消される。


「新入生の皆さん。よく聞いてください」

扉の前に老齢の女性が立っていた。

この大音量の声は<拡声魔法>によるものだろう。


白い祭服に杖、見たところ白魔術の使い手であることは分かるがーー


(あれは引率の教員か。相当高齢だがかなり強い魔力を感じるな)


「これより皆さんには大広間に入場していただきます。私たち教員、そして学校の先輩たちも皆歓迎しています。列を乱さないよう、静かに私に続いて入場してください。私語は厳禁ですよ。ではーー」

そう言うと老齢の女性は大広間へ続く扉を開け中に入っていった。


リオンはふと周りを見渡すと、アーサーの姿はもうそこにはなかった...。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ