桜色って言うけどさ?
「ねえ、これ見てよ」
深夜。なんとなく夜食にいちごを食べることにしたぼくたち。
スーパーで売ってるのって、全体的にすっぱいよね、なんて話をしながら食べ終えて、大き目のお皿を食洗機に入れた後が今だ。
「これ、って。ん?」
食洗機を覗き込むように促した彼女に促されて見てみたら……なんか、食洗機に溜まってる水の色がほんのりと赤い。
「これ。桜色っぽくない?」
指差して言う彼女に、
「言われてみれば」
と同意を示す。けど、なにが言いたいのかわからないので「で?」と続きを促す。
「変じゃない。だって、いちごだよ? いちごなのに桜色なんだよ?」
「いや、あの。そんな力説されましても……」
天井に目線をやって困るぼくを尻目に、彼女が堪えきれないって様子でクククっと笑い始めた。何事かと視線を彼女に向けると。
「ククッ。いちごっ、いちごなのにククク。いちごなのに桜色っ。いちごなのにさくらっ、チェリー チェリーブロッサム アッハッハッハッハ!」
ながし横の、まないたとか置くスペースをバシバシ叩きながら大爆笑する彼女。二つの三つ編みが左右にブルンブルン揺れている……笑いすぎでしょ。
「あの……近所迷惑になるから、静かにしない?」
控えめに言うけど、彼女はどうも自分の笑い声でぼくの声が聞こえてないみたい。
ぼくにはいったいどこがそんなに面白いのかわからない。……深夜テンション、おそるべし。
でも、ぼく、実は。桜色って言うか……うっすーい血溜まりに見えたんだよね……。
うん。
絶対に黙っておこう。
おわた。