用語の解説(自衛隊関係)
自衛隊用語の解説です。
自衛隊用語の通称は必ずしも自衛隊全体で使われているわけではありません。
【注意事項】
本編を読む上で理解しやすいよう、若干補足する程度のものです。
「解説が不十分だ」といったご指摘はご遠慮ください。
「○○をもっと詳しく解説にして欲しい」といった要望はお受けします。
( )内は読み仮名です。
【原隊 (げんたい)】
①隊員が所属する部隊のこと。何らかの事情により所属部隊を離れている場合において、「私の原隊は○○隊です」などと言う。
②隊員が新隊員教育を終え、最初に配属された部隊のこと。何度か転属をしている場合において、「私の原隊は○○隊です」などと言う。
【警衛 (けいえい)】
駐屯地の警備任務のこと。24時間勤務で、大抵駐屯地に駐屯する部隊の持ち回りでやりくりしている。警衛を行う部隊を警衛隊、警衛の長を警衛司令という。警衛隊の勤務する建物が警衛所であり、大抵駐屯地の正門に位置する。
【業務隊 (ぎょうむたい)】
駐屯地の維持管理を担当する部隊のこと。駐屯地に所在する部隊が出動した場合は駐屯地が空になってしまうため、各駐屯地には業務隊が必ず存在する。
【運用訓練幹部 (うんようくんれんかんぶ)】
幹部自衛官の役職、幕僚(旧軍の参謀)の一種。大抵「運幹」と略される。指揮官を補佐するスタッフであり、部隊を指揮する権限はない。中隊においては中隊長の右腕的存在である。教育訓練を主要な業務としつつ、係陸曹の業務も統制するため、業務の幅は広い。副中隊長がいない場合は中隊のNo.2。
【訓練准尉 (くんれんじゅんい)】
教育訓練を担当し、運用訓練幹部を補佐する係陸曹のこと。配置の無い部隊もある。
【係陸曹 (かかりりくそう)】
部隊長が行うべき装備品の管理を細分化し、区分に応じた業務を担当する陸曹のこと。中隊においては中隊本部に所属する。隊員の分類としては、幕僚に該当する。
【隊力 (たいりょく)】
人的・物的資源に基づく部隊の任務遂行能力のこと。
【間稽古 (まげいこ)】
零細時間を使った訓練のこと。短い時間でも出来ることを選んで行う。
【幹部自衛官 (かんぶじえいかん)】
3尉(少尉)以上の自衛官のこと。B、U、I、Cと4つの区分がある。Bは防衛大学校出身、Uは一般大学出身、Iは部内出身(陸曹から選抜試験を経て幹部となった者)、Cは3尉候補者課程出身(上級陸曹からたたき上げで幹部となった者)を意味する。
【上番 (じょうばん)】
自衛隊において、ある職務に就任すること。「○○長に上番する」というように用いる。離任することは「下番」という。
【89 (はちきゅー)】
89式小銃の通称。機関銃と区別をする場合は単に「小銃」という場合もある。「Buddy」という公式愛称があるが、公式愛称を使う隊員はいない。
【単発 (たんぱつ)】
英語でいうセミオート射撃のことで、一度引き金を引くと1発発射される。
【連発 (れんぱつ)】
英語でいうフルオート射撃のことで、引き金を引き続けると、弾切れになるまで銃弾を発射し続ける。発射された銃弾は散らばりやすく、制御が難しい。
【3制射 (さんせいしゃ)】
89式小銃の3発制限点射のこと。英語でいうバースト射撃のことで、89式小銃の場合は一度引き金を引くと3発発射される。2発目、3発目はぶれやすく、命中率は一般的に低い。
【テッパチ (てっぱち)】
自衛隊で使われているヘルメット、88式鉄帽の通称。「鉄」とあるが、樹脂製であり、金属製ではない。諸外国のそれと比べると防護性能は・・・。
【MINIMI (みにみ)、 MG (えむじー)】
5.56mm機関銃MINIMI(Machine Gun)の通称。小銃に比べて持続発射性能(継続的に多量の弾丸を発射する能力)が高い。また、その持続発射性能を成り立たせるための構造をしている。ベルトリンク(弾薬を金属部品でベルト状に繋いだもの)または小銃の弾倉によって給弾される。陸自では「なぜか」弾倉による給弾方法は用いられない。
【LAM (らむ)】
110mm個人携帯対戦車(Light weight Antitank Munition)の通称。瞬間交戦性に優れる。
オリジナルはドイツのダイナマイトノーベル社製パンツァーファウスト3
【84 (はちよん)】
84mm無反動砲の通称。瞬間交戦性に優れる。陸自では榴弾、対戦車榴弾、発煙弾、照明弾の4種類を運用している。
オリジナルはスウェーデンのFFV社製84mm Recoilless Rifle Carl Gustav
【01 (まるひと)】
01式携帯対戦車誘導弾の通称。熱源画像誘導方式の誘導弾であり、スタンドオフ性能(射撃後、照準を維持する必要がないこと)を有する。
【87 (はちなな)】
87式対戦車誘導弾の通称。レーザー誘導方式の誘導弾であり、誘導弾発射後も命中するまで目標に対してレーザーを照射し続けなければならない。
【81迫 (はちじゅういっぱく)】
81mm迫撃砲の通称。普通科中隊に装備され、中隊長が運用する。砲身、二脚、底板(砲身を支え、射撃の反動を受け止める円形の金属板)の3つに分解して持ち運ぶ。分解して人力で運ぶこともできるため、移動しやすい。
【120迫 (ひゃくにじゅっぱく)、重迫 (じゅうはく)】
120mm迫撃砲の通称。重迫撃砲中隊、または重迫撃砲小隊に装備され、連隊長が運用する。車輪が一体化してついており、車で牽引して移動する。81mm迫撃砲のように分解できないため、移動には手間がかかる。
【教育入校 (きょういくにゅうこう)】
何かの教育課程に入ること。期間の長短は教育内容により様々である。現所属のままで入校する場合と入校先への転属を伴う場合がある。
【BOC (びーおーしー)】
Basic Officer's Courseの略。3尉昇任したての初級幹部が職種ごとの専門教育を受ける教育課程。俗称は「坊ちゃんお遊びコース」、教育が厳しい時代においては「坊ちゃんおしおきコース」と呼ばれる場合もある。
【LP (えるぴー)】
Lesson Planの略。時間の配分、訓練の要領等を具体化した計画のこと。自衛隊においては、教育訓練の科目ごとにLPを作る。
【官品 (かんぴん)】
1、官給品のこと。
2、自衛官の子供の俗称
【チェストリグ風装備】
弾帯とサスペンダーの装着方法。陸自の個人装備が弾帯とサスペンダーから進歩がないため、現場隊員の創意工夫から生まれた。サスペンダーを短く調整し、チェストリグのように弾帯が胸の位置で吊るされるようにした状態。合わせて、弾帯のバックルを脇腹にずらし、身体正面にポーチ類を着け易くしている。かつて、某ミリタリー系雑誌で「ビンボータクティカル」と書かれたことがある。
【対抗部隊】
訓練や演習における敵役のこと。
【状況 (じょうきょう)】
訓練・演習で、ある設定(想定)や規則が適用されている状態のことをいう。設定や規則はあらかじめ示されるか、必要に応じて与えられる。訓練や演習において、部隊はそれに基づいて行動する。関連用語は下記の通り。
状況開始 (じょうきょうかいし)=設定・規則が適用された訓練が始まること
状況終了 (しゅうりょう)=設定・規則下での訓練が終わること
状況外 (じょうきょうがい)=設定・規則が適用されない場所、人、物等
【普通科中隊 (ふつうかちゅうたい)】
歩兵中隊のこと。陸自では普通科連隊(歩兵連隊)の直下にあり、連隊と中隊の間に大隊が存在しない。中隊本部、小銃小隊、迫撃砲小隊、対戦車小隊で構成される。編制によっては、対戦車小隊がない中隊もある。陸自において、独立して戦術行動が可能な最小部隊単位(※)である。
※「戦術行動」には兵站機能も含まれる。分隊や小隊には兵站機能はない。
【広域多目的無線機 (こういきたもくてきむせんき)】
通称広多無 (こうたむ)と呼ばれている、陸自で運用されている最新型の無線機のこと。中隊レベルでは中隊長が使う車載型、小隊長が使う携帯用Ⅰ型(背負子+αの大きさ)、分隊長が使う携帯用Ⅱ型(手で持てる程度の大きさ)がある。音声通信、データ通信が可能で、Ⅰ型にはタブレット端末が付属している。第一線での評価は……。
【70 (ななまる)】
1、携帯無線機1号のこと。大きさは広多無の携帯用Ⅰ型と同じくらい。
2、70式地雷原爆破装置のこと。
【80 (はちまる)】
携帯無線機2号のこと。大きさは広多無の携帯用Ⅱ型と同じくらい。
【訓練検閲 (くんれんけんえつ)】
部隊の任務遂行能力を確かめるために行われる試験のような演習のこと。部隊の規模に応じて定期的に行われる。指揮官の指揮能力、部隊の任務遂行能力を評価されるため、部隊にとって検閲は重要度が高い。関連用語は下記の通り。
統裁官 (とうさいかん):検閲を取り仕切る評価責任者のこと
統裁部 (とうさいぶ):統裁官を補佐して、検閲の運営にあたる部署のこと
補助官 (ほじょかん):統裁部の一員で、部隊に同行して細かく評価する役割にある要員のこと
受閲部隊 (じゅえつぶたい):検閲を受ける部隊のこと
【スズランテープ】
薄く幅の広いテープ。陸自においては、ガムテープと並んで訓練や演習で出番が多く、必需品といってもいいかもしれない。粘着テープではないため、適当な長さに切って、何かに結び付けて使用する。危険区域、地雷原、天幕の位置等、何かを標示するために用いられる。
【ODシート】
ホームセンターで売られているブルーシートがOD色となったもの。防水シート、簡易テントの屋根等、スズランテープと同様に色々と使い道が多い便利品。
【射撃号令 (しゃげきごうれい)】
射撃を命じるための号令。命令であると同時に射撃に必要な諸元が含まれる。
号令の一例は下記の通り
84 (注意喚起、射手に対する呼びかけ)
対戦車榴弾 (弾種の指定)
正面停車中の敵装甲車両 (射撃目標)
400 (射距離)
準備でき次第撃て (射撃の統制)
【防護マスク (ぼうごますく)】
自衛隊ではガスマスクと言わない。面体と呼ばれるマスク本体と付属品で構成される。自衛官がすぐに取り出せる位置、脇腹に装着している長方形のバッグがそれ。演習ではなぜか防護マスクケースから魚肉ソーセージ、お菓子等が出てくることがある。その昔は「元気が出る魔法の水」が入った小瓶すら出てくることもあったらしい。
【エース】
通常はエースパイロットのように、技能に秀でて顕著な戦果を挙げた者を指す尊称として用いられる。自衛隊においては、鈍くさい者、間抜けな者を指す俗称としても使われる場合がある。