用語の解説(外傷救護関係)
戦闘外傷救護に関係する用語の解説です。
戦闘外傷救護を前提とするため、普通の医療用語とは若干異なる場合もあります。
( )内は読み仮名です。
【ターニケット(たーにけっと)】
英語のTourniquetのこと。日本語では止血帯と駆血帯という2語に分かれるが、英語では止血帯も駆血帯もTourniquetである。
【IFAK (あいふぁく)】
Individual First Aid Kitの略であり、「個人携行救急品」と翻訳される。間違っても「あいふぁっく」と発音してはいけない。
【エマージェンシーバンデージ(えまーじぇんしーばんでーじ)】
戦闘外傷、特に銃創に対応するために設計された包帯。ガーゼパッド、包帯、独特のプラスチック部品で構成される。銃創に対応するための包帯であるが、各国の軍隊で応用的な使い方が研究されており、様々な使い方ができる。4インチ、6インチ、8インチの3サイズある。
オリジナルはイスラエル製
【止血剤 (しけつざい)】
正確には血液凝固促進剤製剤包帯、包帯状止血剤とも呼ばれる。止血を促進する成分がそのまま布状に加工された製品であり、血液と反応してゲル状に固まる。傷口に布をあてがうよりも効果的に血を止めることができる。日本国内においては、アルゴダームという製品が流通量が多く手に入れやすい。止血効果が高く、癒着を起こさないという大きな利点がある反面、高価で保存期限が短い。
【クイッククロット(くいっくくろっと)】
Quik Clotという血液凝固促進剤含浸包帯の製品シリーズ。止血を促進する成分を染み込ませた包帯・ガーゼであり、様々な大きさの製品がある。ただの布を傷口にあてがうよりも効果的に止血できる。止血剤より止血効果が劣るものの、止血剤より安価で保存期限が長い。
【コンバットガーゼ(こんばっとがーぜ)】
Quik Clotの軍用向け製品。傷口に詰め込む用途を前提としており、コンバットガーゼは7.5cm×3.7mのガーゼがZ字状に折りたたまれた状態で真空包装されている。
【CAT (キャット)】
Combat Application Tourniquetの略で、止血帯の一種。米軍で使用され、民間にも広まった。
【チェストシール(ちぇすとしーる)】
穴となった胸の傷口を塞ぐための救急用品。手のひらよりも一回り大きい粘着シートにバルブがついている。バルブが胸腔に溜まった空気を排出することで、呼吸が維持される。
【人工呼吸用シールド(じんこうこきゅうようしーるど)】
逆流防止弁がついたビニルシート。人工呼吸を行う際、逆流防止弁が口に当たるように傷病者の顔に被せる。人工呼吸で二次感染を防止するためのもの。
【アイシールド(あいしーるど)】
眼球よりも一回り大きい凸状の板。眼球も損傷すると腫れるため、眼球に圧力や衝撃がかからないように保護する必要がある。紙コップを加工することでも代用できる。
【二トリルグローブ(にとりるぐろーぶ)】
救護を行う者が二次感染を防止するために使用する手袋。合成ゴム製であるため、アレルギーの原因となるラテックスやプロテインを含まない。ドラッグストアで容易に手に入る。青等の明るい色が望ましい。黒色は血が付着してもわかりにくいため、救護に適さない。
【銃創 (じゅうそう)】
銃弾による怪我。音速以下の拳銃弾と音速以上のライフル弾とでは、銃創の様相が大きく異なる。高い運動エネルギーを有するライフル弾は、人体を大きく破壊する。射入側は弾丸直径程度の創となるが、射出側は弾丸直径以上の創となる。
【グラスゴーコーマスケール(ぐらすごーこーますけーる)】
英語表記はGlasgow Coma Scale。意識レベルの評価指標で、世界的に広く使用されている。開眼(Eye opening)、最良言語機能(Best verbal response)、最良運動反応(Best motor response)の3区分ごとに状態に応じた点数が定められており、合計点数で傷病者の重症度・緊急度を判定する。
【TAFXXX (たふとりぷるえっくす)】
致命的6大損傷の略。Tは心タンポナーデ、Aは気道損傷・閉塞、Fはフレイルチェスト、Xは開放性気胸、緊張性気胸、大量血胸を指す。
【ショック (しょっく)】
何らかの原因で人体中に酸素、水分、栄養分が行き渡らず、生命の危機に陥った状態のことをいう。「循環血液量減少性ショック」「心原性ショック」「心外閉塞・拘束性ショック」「血液分布異常性ショック」の4種類がある。戦闘外傷におけるショックの要因は下記の通り。
循環血液量減少性ショック:負傷による大出血、脱水症状
心原性ショック:疲労、ストレス、心臓への強い衝撃
心外閉塞・拘束性ショック:緊張性気胸、心タンポナーデ
血液分布異常性ショック:頚椎・脊椎損傷、アナフェラキシーショック