戦闘力を測る能力
もう姉貴来てるかなあ。
放課後クラスメイトと雑談とかしながら時間を潰した後、俺はゆっくりと姉貴に指定された部室へと向かっていた。
足取りは重い。
教室で時間を潰していたのはわざとだ。ろくな目に遭わないことは分かりきっているからな。
憂鬱な気分になりながら引き戸を引く。
そして目の前に飛び込んできたのは……満面の笑みの常磐だった。
「すいません、間違えました」
俺は一言謝り戸を閉める。
ん、待てよ。ここで合ってるよな?
俺はゆっくりと慎重にもう一度戸を引く。
そこで目に写ったのは長机の周囲に並べられた椅子に座る不機嫌そうな常磐の姿と1番隅の席で儚げな目で窓の外を眺める女子の姿だった。
あの女子は見覚えがある。
クラスメイトで俺の前世を見た間厘だ。
「ハザマ、お前も誘われたのか?」
俺は部屋に入り、ハザマの隣に座って話しかける。
するとこっちの方を向きこくりと頷いた。
誘われたって事はハザマも俺と同じDランクだったのか。まぁ確かに前世の姿が見れたからって社会に貢献できるかと言ったらそうじゃないもんなあ。
そしてもう一人不機嫌そうな面でそっぽを向いている男にも話しかける。
「お前もDランクだったんだな」
その瞬間ピクッとその男が反応する。
「君と一緒にしないでくれないか?」
声が明らかに苛ついている。
「しないでくれつったってここに居るって事はそういうことだろ?」
「僕はCランクだ」
「嘘、マジで?!」
常磐の能力は覚えている。確か相手の戦闘力が見れる『スカウター』と言う能力だ。だが実際に披露したところは見たことが無い。
基本的に常磐はクラスでいつも一人であり誰かとつるんでる様子は無い。いつも教室にやってくる姉貴を除いては。
「じゃあ何でここにいるんだよ?」
「千里さんが部活を立ち上げると耳にしたので私が自ら志願したのだ」
「へぇそうかい。じゃあいい機会だからお前の能力ちょっと見せてくれよ」
少し興味があった。
「ふ、いいだろう見せてやる。Dランクとの格の違いをな」
常磐は立ち上がり右手でピースサインを作ると右目でその二本の指の間から自分の顔を見つめる。
「そのポーズ必要なのか?」」
「ふ……」
突然不敵な笑みを浮かべる。
「何だよ気持ちわりい」
「戦闘力…たったの2か……ゴミめ……」
「2って俺の戦闘力が?」
「そうだ」
2か……数字だけ聞くと恐ろしく低いように思える。俺は格闘技をやってるわけでもないし喧嘩が強いわけでもない。だが、平均的な高校生の筋力と体力はあるはずだ。
「ちなみにお前の戦闘力はいくつなんだよ」
俺をゴミ扱いするんだ。さぞ自分の戦闘力は高いのだろう。
「2だ」
「は?一緒じゃねーか。それでよく人をゴミ扱いできたな」
「それは単に言ってみたかっただけだ」
「じゃあハザマはどうだ?」
ハザマは女の子だ。流石に俺たちよりは低いだろう。
「2だな」
「へ?」
「普通の人間はだいたい2だ。ちなみにプロの格闘家が3、熊やライオンみたいな猛獣が4くらいだな」
「大雑把すぎるだろ!」
「普通の人間も銃を持てば5にはなる」
呆れた。何だその能力は、Cと聞くからそれなりに使える能力かと思ったのに。
「よくその能力でCランクになれたな。Dランクだろどう考えても」
「はぁ~」
そう言われた常磐が大きくわざとらしいため息をつく。
「これだからDランクは困る。この能力がどれだけ相手の危険度を知るのに役立つか」
「どこら辺が役立つってんだよ。猛獣や格闘家なんか見た目でだいたい強いの分かるし。銃なんか持ってたらそれこそ危険だ。こんな大雑把な測定じゃ危険の回避にならないだろ」
「銃を持てば5になる。この意味が分からないか?」
「だから銃も見た目で……は!」
そうか、そういう事か。
「やっと気づいたかウスバカゲロウもといウスバカくん」
「略してんじゃねーよ」
「持ってる銃が本物かどうか、それが瞬時に分かる。さらに、相手が銃を隠していたらどうだ。見た目では分からない。だが僕は分かる。これにすぐに気づけ無い時点でウスバカくんと呼んでも差し支えないだろう」
「調子に乗りやがって……」
「一方君の能力はどうだ?手からからあげをだすだけ。しかも3個出すのが限界と聞くじゃないか。今にも餓死しそうな人をなんとか救うぐらいしか出来ないな。だがそんな人に偶然出会うなんてこの日本じゃなかなか難しいだろう。ん?そうだ、良い所があるぞ。君の能力を生かしたいのならア○パ○マンの世界にでも行くんだな。お腹をすかせた子どもたちが道端に倒れてるぞ。そこなら君もヒーローだ」
調子乗ってさんざん好き勝手言いまくる常磐。
流石にこれには俺もカチンと来た。
「常磐、俺とお前の戦闘力変わらないって言ったよな?」
「ああ言った」
「今ここで証明しないか?」
常盤の顔がニヤリとする。
「ふっ、良いだろう。僕は暴力は嫌いだが、君には負ける気がしない」
俺もお前に負ける気は無い。。
散々俺を馬鹿にしたこと今ここで後悔させてやるよ。
「おっまたせー!」
突然入り口の扉が開かれた。
その声に反応して思わずその方向を振り向く。
この声は……姉貴だ。
「あんたら何してんの?」