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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第5章 『勇者の村の世界樹』編
84/137

83 ロイス世界樹の洞窟


 ◆


 予定通り、マキにはコトトの面倒を見てもらい、天祐世界樹へは俺とカイル、それからアビゲイルの3人で行くことになった。

 

 世界樹は村のはずれにある、山裾の洞窟内に生えているという。

 俺とアビゲイルは道々、『ロイスの天祐世界樹』について、いくつか質問をすることにした。


「なあカイル」

 と、俺は言った。

「その世界樹って立ち入り禁止になっているって言ってたが、どうして村人さえも入ってはいけないんだ?」

「危険だからだよ」

 と、カイルは答えた。

「そうだな。洞窟内に入る前に、一応聞いておくよ。君たちは腕に自信があるのかもしれないが、それでも命の保証は出来ないぞ」

 それでも大丈夫かい? とカイルは聞いた。


「無論だ」

 と、アビゲイルは頷いた。

「仲間が死にかけているのだ。大事の前の小事。危険だなんだとは言っていられない」


 全く同意見。

 アビゲイルに倣い、俺もうんうんと大きくうなずいた。


 まあ――大佐がいれば、僕らの命が危機に晒されることもなさそうだけれど。


「まあ、そういうだろうと思ったよ」

 カイルはクールに肩をすくめた。


 ◆

 


 あぜ道から山の裾野から洞窟へと通じる森へと入った。

 村を出て20分ほどたったころ、ようやく洞窟の入り口に着いた。

 山の麓にぽっかりと空いた穴には、大きな岩がすっぽりと挟まっている。


 その前を、木の板や護符、それから鎖などで大仰に塞いであった。


「さあ剣士さん」

 と、カイルはアビゲイルに言った。

「この封を、斬っていただけますか」


 アビゲイルは無言でうなずき、鞘から大剣『クラウソラス』を抜いた。

 それから音もなく疾駆し、木板とその奥で塞いでいた大岩を切り裂いた。


「……ブラボー」

 カイルは静かに感激した。

「やはり――あなたは美しい」

「世辞はいらん」

 アビゲイルはふん、と顎を上げた。

「さっさと中へ入るぞ」


 軽口をいなすと、俺たちはいよいよ洞窟へと足を踏み入れた。


 ◆


 洞窟内は暗く、ひんやりしていた。

 足元がぬめり、奥から湿った空気が流れてきている。


「転ばないようにね」

 カイルは簡易のカンテラで洞窟内を照らしながら言った。


 それから、15分ほどは無言で歩いた。

 ここまではずっと一本道で、モンスターや獣は一切出てこない。

 俺は少し、拍子抜けしていた。

 あんなに大仰に立ち入りを禁止していたから、もっと恐ろしいところを想像していた。


「カイル」

 と、アビゲイルが聞く。

「ここの洞窟は、具体的にはどう危険なのだ? 強力なモンスターが出てくる気配はないが」


「モンスターは出ないよ」

 と、カイル。


「では――何が危ないのだ」

 アビゲイルが問う。


「悪魔だよ」

 カイルが間を開けず答えた。

「世界樹を護る、本物の悪魔」


「あ、悪魔?」

 俺は眉を寄せた。


「そう」

 と、カイルは頷いた。

「大昔、ここロイスの天祐世界樹には世界中からたくさんの人が来ていた。その目的は魔石ではなく、その葉だった。万病に効く万能薬になるのは、ここの世界樹だけだからね。彼らは目の色を変え、葉を乱獲した。そして世界樹の葉は、とても高価で取引をされた。巨万の富を得たものも、一人や二人じゃないはずだ」

「天祐世界樹に対して、なんと無礼なことを――」

 と、アビゲイルが言った。

「そんなことをしては、神の怒りを買うぞ」


 全くだね、とカイルは言う。

「あなたの思った通り、その行為がおそらく神の怒りに触れたんだろうね。ある日から、ここの世界樹には悪魔が住み着くようになった」


「悪魔?」

 アビゲイルは顔をしかめた。

「それは――いわゆるモンスターの一種なのか?」


「そんな安いものじゃない」

 カイルは首を振った。

「本物の地獄から召喚されたデモンさ。そして乱獲者は、たくさんその悪魔に殺された。それ以来、ここは封じられ誰も来てはならないことになったんだ」


「その悪魔は――そんなにも強いのか?」

 と、俺は聞いた。


「強い、というのは少し違うね。恐ろしい、と言ったほうが正しい」

 カイルは言った。


「ま、マジか――」

 俺はごくりと喉を鳴らした。

 ただ――それほど深刻な事態にはならないはずだ。

 相手がどんなものでも、こっちにはアビゲイルがいる。


「見た目もまさに異形のものでね。まさに悪魔そのものだった。雰囲気も放つオーラも、本当に怖かった。あれを見れば、誰でもここには近づかなくなるはずだ」

 カイルの声は少し低くなっている。


「……まるで自分の目で見てきたような物言いだな」

 と、アビゲイルはちらとカイルを見た。


「まさか」

 と、カイルは目をつむった。

「僕は話を聞いただけさ。もしもここに来ていたら、無事に帰ることなんか出来っこないんだから」


 そうか、とアビゲイルは言った。

 カンテラの灯に照らされたその横顔は、少し訝しげだった。


「……なあ、カイル」

 と、俺はそこで気になっていたことを聞いた。

「お前、この洞窟は入り組んでるって言ってたよな。だから、案内が必要だって。だが――この洞窟はずっと一本道だった。これはどういうことだ?」


 この洞窟に入ってから、ずっと妙だと思っていた。

 こんな一本道なら、俺と大佐だけで迷わずに世界樹にたどり着けたはずだ。


「…………」

 カイルは無言だった。


「どうなんだ?」

 俺は重ねて聞く。


「……さあね。そんなこと、言ったかな」

 カイルは若干、足を速めた。


 それからは黙り込んで、彼はあまり口を開かなかった。

 カイルは思いつめたようにじっと前を見つめていた。


 少し不安が胸をよぎった。

 カイルの様子が、明らかに変わっている。

 

 数分歩いたところで、カイルは足を止めた。

「さあ、着いたよ」

 彼は、そう言って半身だけ振り返った。

「ここが、悪魔の巣だ」




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