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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第5章 『勇者の村の世界樹』編
80/137

79 カイル=カシージャ 2


 ◆


 それから、俺たちはカイルに俺たちの目的を伝えた。


 この村は勇者の村だと言われていること。

 そして、ここに本当に勇者がいるのかを確かめに来たこと。


 カイルは大人しく聞いていた。

 ……鏡で自分の髪型をチェックしながら。


「で、酒場であなたが自らを勇者だと名乗っていると聞いて、やってきたんです」

 と、アビゲイルが言った。


「……その前に、ちょっといいかな」

 カイルはちらとアビゲイルを見た。


「なんでしょう?」

「あなた、アビゲイルさんって言ったっけ」

 カイルは前髪をかき上げた。

「あなた、見たところかなりの美形だね。お肌のケアはどんなことをしているんだい?」


「は?」

 アビゲイルは首を傾げた。

「いや、特に何もやっていないが――」


「ほう」

 カイルは目を細めた。

「生まれたままでその美貌か。ふむ。君、自分をもっと誇ったほうが良いよ。かなりイケてる。イケメンが言うんだから間違いない。イケ値(イケメン特有の値)で言うと95はあるね。まあ、僕はそれが30000あるんだけどね。でも、もしかすると君は磨けばもっと――ぬごっ」


「話が長いのよっ」

 マキはカイルの背中にドロップキックした。

「長い上に内容がないのよっ」

 カイルはそのまま前のめりに吹っ飛び、顔面を強打した。


 暴力はよくないが――

 マキの気持ちはよくわかる。

 さっきから、こいつの話は気絶するほどどうでもいい。


「分かった分かった」

 カイルは立ち上がって振り向いた。

「で、僕が勇者かどうかの話だったね」

 あ、鼻血が出てる。


「よ、よくわからんが――」

 と、アビゲイルが頷いた。

「話を元に戻させてもらうぞ。実を言うとな、うちの仲間のこのユウスケが、もしかすると勇者かもしれないのだが」

 アビゲイルはそう言って、俺の肩に手を置いた。


 カイルは俺を見た。

 その直後に上半身をのけぞらせ、「あーっはっはっは!」と爆笑した。

「君が勇者、だって? なんだ、君たちは大道芸人か? よくそんな面白いジョークが言えたもんだ」


 カイルは俺のほうに向かってきた。

 それから肩を組み、顔を並べる。

「そこの君」

 と、カイルはマキを指さした。

「こうしてみればわかりやすいだろう。一体、どっちが勇者だい?」


「そりゃあ見た目で言えば100対0であんたよ」

 マキが即答する。

「月とスッポン。勇者と村人A。巨乳とアビちゃん」


「なにッ!?」

 アビゲイルがすかさず反応する。

「……マキ。貴様、それは一体、どういう意味だ」

「ま、まあまあ」

 俺はアビゲイルをなだめた。

「話が進まないので、今回はこらえてあげてください」



 アビゲイルは少し不満顔だったものの、すぐにこほんと空咳をして話を戻した。

「では、カイル殿はユウスケは勇者ではないとおっしゃる」

「無論だ」

「なぜ?」

「それは――」


 カイルは鼻血を出しながら、格好いいポーズでこういった。

「この僕こそが、正真正銘、本物の勇者だからさ」


 ◆


「しょ、証拠はあるのか?」

 と、俺は聞いた。


「証拠? そんなものはないが――」

 カイルはそこでようやく鼻にティッシュを詰めて鼻血を止めた。

「ただ、僕は幼いころ、天使に出会ったのだよ。そして僕は彼女に、勇者だと直々に任命された」


「天使?」

 俺は眉を寄せた。

「それって――ミカエルって名前の?」

「いいや」

 と、カイルは首を振った。

「ウリエルという天使だ。たしか、智を司ると言っていた。巨大な羽を5枚、生やしていた」


 俺はアビゲイル大佐を見た。

 大佐は――大きく頷いた。


 ミカエルは、この世界の担当は本来ならウリエルなのだと言っていた。

 要するに、カイルはミカエルに代わる前のウリエルに出会ったのだ。

 名前も見た目もミカエルの言っていたものと合致するから嘘ではない。


 こんなこと、本物の勇者でないと知りようがないはずなのだから。

 

 つまりカイルは――本当に本物の勇者なのだ。


 だが。

 そうなると、一つ問題が出てくる。

 バルの店主の証言だ。


『カイルは村の娘を殺した』


 昨夜の言葉が脳裏で蘇る。

 これが本当ならば、カイルを勇者と認めるわけには行かない。


「カイル殿」

 アビゲイルが口を開いた。

「私たちはこの村の人たちにあなたの評判を聞いてここに来ました。その中には、とても不穏なものが混じっておりました」


 アビゲイルはそこで一旦言葉を止めた。

 カイルは顔色一つ変えず、涼しげな顔で聞いている。


 アビゲイルは意を決したように、続けた。

「大変失礼なことを聞くが、あなたはかつてこの村の――」

「アビゲイル様あああああ」

 と、その時。

 アリスの声が遠くからしてきた。


「どうした?」

 肩で息をするアリスに、アビゲイルは聞いた。


「コトトさんが――」

 アリスは肩で息をしながら、こういった。

「コトトさんの熱が、ものすごく上がってるんですっ! 回復魔法も試したんですけど、全然効かなくって……」


「何だって?」

 アビゲイルは眉を寄せた。


「た、大佐! 一旦、宿に戻りましょう」

 俺が言うと、アビゲイルは大きく頷いた。


 

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