表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第5章 『勇者の村の世界樹』編
79/137

78 カイル=カシージャ


 ◆


 次の日。

 俺たちは早速、カイル=カシージャの家へと向かうことにした。


 だが、いざ出かけようというとき、一つトラブルが起きた。

 コトトの体調がすぐれないというのだ。

 おでこを触ってみると、たしかにちょっと熱っぽかった。


「大佐、ごめんなさい。今日は一緒に行けそうにないです」

 簡易の布団に寝ころんだまま、コトトが言った。


「うむ」

 アビゲイルは頷いた。

「無理はするな。今日はゆっくりと体を休めろ。アリスを置いていくから、何かあれば事付けるように」


 はい、とコトトは頷いた。


「大丈夫か?」

 と、俺は聞いた。

「なんなら、俺も残ろうか?」

「大げさよ、このくらい大丈夫」

 コトトは気丈に微笑んだ。

「ていうか、ユウスケはいかなくちゃ。勇者様のことはあんたのことでもあるんだから」


 俺は名残惜しかったが、結局はコトトの言う通り、アビゲイルたちと出かけることにした。


 ◆


 こうして。

 俺とアビゲイルとマキの3人は、カイルの家へと向かった。


 俺たちは村の人にカイルの家の場所を聞きながら歩いた。

 結局、あれから店主は彼の家を教えてくれなかったのだ。


 彼の家を聞くついでに、その評判も聞いて回った。

 すると、誰もがカイル=カシージャという名を聞くと眉を顰め、口を重くした。

 以下が大まかなその内容である。


 父子ともども変わり者。

 特に息子は嘘つきで偏屈。

 完全に頭がおかしい、村の嫌われ者。


 散々である。

 そしてやはり――かつて、村の娘を誘拐し、殺した、というものもあった。


 噂だけだと、どう見ても勇者とは思えない。

 

「つーかさー」

 マキは二日酔いに頭をふらふらさせながら言った。

「ほんとに大丈夫なの? その、カイルってやつ。かなりやばそうなやつじゃん」

「確かになあ」

 と、俺。

「特に、村娘を殺した、なんてさ、ちょっと物騒ってレベルじゃねえよな」


「ま、行けば分るだろう」

 こともなげに、アビゲイルが言った。


「怖くないんですか?」

 と、俺は聞いた。


「大丈夫だ」

 と、アビゲイルが言った。

「どんな奴だろうが、私が負けると思うか?」


 うーん。

 すごい説得力。

 俺たちは「思いません」と声をそろえた。

 

 ◆


 カイルの家は村の中心から少し離れたところにあった。

 バルの店主が言っていた通り、農園(農園というには少し小さいかもしれないけど)が家の隣にあった。


「すいません」

 アビゲイルは言いながら、玄関のドアをこんこんと叩いた。


 反応はない。

 アビゲイルがもう一度叩く。


 すると、今度は音もなく扉が開いた。

 俺たちは思わず身構えた。


 だが――誰も出てこない。

 俺は眉を寄せ、首を伸ばして入口の中を覗いた。


 すると――

 いた。

 家の少し入ったところに、男が妙なポーズをとりながら、無言で立っている。


「あ、あのぅ」

 と、俺が言った。

「ここ、カイルさんのお宅ですかね?」


「……」

 男は黙ったままだ。

 金髪に細い体。

 服装は普通の布製の上下。


 相変わらず――変なポーズをとったまんまだ。

 顔を右手で隠し、左手は右側の腰に回している。

 微妙に体を傾け、上半身をくねらせていた。


 一言でいうなら――ジ〇ジョ立ちだ。


「……何か」

 と、そこで男が喋った。

「何かようかい?」

「あ、あの、ですから、カイルさんは――」

「カイルは僕だ」

 今度は急に早口で返してくる。

「この僕に、何か用なのかい?」


「ええ」

 と、そこでアビゲイルが前に進み出た。

「私はダーダリアン王国からの使者で、アビゲイル=ジョブワと申します。少し、お話を聞かせてくれませんか?」


「…………」

 男――カイルは再び黙り込んだ。

 そしてゆっくりと「……いいよ」と言った。


 そこでようやく、男が家から出てくる。

 顔は右手で隠したまんま、のっそりと、ゆっくり出てくる。


「…………だー!」

 と、それまで黙っていたマキが突然でかい声を出した。

「もう我慢できないわ! あんた、さっさと出てきなさいよ! 何よ、その無駄なたっぷりとした間は! あんたは昭和の大御所俳優か! 銀幕のスターか!」


 マキはそう言って、カイルを引っ張り出した。

 カイルは思わず前につんのめって――そこで初めて、彼は俺たちの前にその面相を見せた。


「え? これマジ?」

 マキはカイルの顔を見て、口元に手をあてた。

「ちょっとなにこれ、やばくない?」


「た、たしかに――こいつはやばいな」

 俺も思わず同意する。


 カイル=カシージャは――信じられないほどのイケメンだった。


 ◆


 カイルは長身でモデルのような体躯をしていた。

 髪は美しいブロンドで、目は透き通るような青。

 涼し気な両眼は完璧なシンメトリーで、鼻梁は高くすっと伸びている。

 

 あんまり言いたかないが。

 男でも見惚れるほどの――イケメンである。


「勇者だわ!」

 マキが目をハートにして即答した。

「決まり! これもう決まり! この人、勇者様だわ!」


「お、おい、マキ」

 と、アビゲイルは言った。

「あまり不用意に近づくな」


「ふっ」

 カイルは少しよろめいたものの、すぐに先ほどの格好いいポーズに戻った。

「すまないね。カッコよくて。いやあ、今日もかっこいいなあ、僕」

 懐から鏡を取り出し、うっとりと自分に見惚れている。


「は?」

 俺は眉を寄せた。

「あ、あんた、何いってんの?」

「僕がイケメンだって話だよ。あ、イケメンってのはイケてるメンズって意味だよ」

「知ってるよっ!」

 俺は思わず怒鳴った。


「うるさいなあ。全く、ブサイクは声がでかいから嫌いだ」

 カイルはやれやれという風に首を振る。


 ぐさり。

 あまりの直球に、俺はよろめいた。

 俺の本能が告げている。

 こいつは――敵だ。


 その時、ぽん、と肩を叩かれた。

 マキが悲しそうな目で短く頷いた。

「やめて! 同情が一番傷つくから!」


「とにかく、この彼女を責めないでやってくれないか」

 カイルはジョジ〇立ちに戻って言う。

「僕が悪いんだ。僕が格好良すぎるんだ。彼女がはしゃいでしまうのは仕方がない」


 アビゲイルはあっけにとられていた。

 気持ちはわかる。

 まさか――こんな奴だとは思っていなかった。


 そんなアビゲイルに、カイルは手を差し出した。

「あ、どうも、申し遅れました。イケメンです」


 ここに至り、俺は完璧に気付いた。

 この男――相当アレな人だ。


「ん? どうしたんだい? その顔は。ああ、そうか」

 カイルはやれやれという風に首を振った。

「なるほどなるほど。そういうことか。ごめんね、気付かなくって」


「なんのことだよ」

 と、俺は口を尖らせた。


「君たち――」

 と、カイルは無意味に両手を広げた。

「君たち、僕のサインが欲しいんだね?」


「いらねーよ!」

 と、俺は怒鳴った。


「……顔は確かにいいけど」

 一瞬で目が覚めたマキが、半眼になって言った。

「この男、いわゆる”残念なイケメン”だわ」


 何はともあれ――この男に勇者かどうか聞かなければなるまい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ