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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第4章 『幻想大図書館の世界樹』編
70/137

69 メーティス幻想大図書館へ 9


 ◆


「いやーおひさー」

 天使はそう言って手をひらひらと振った。

「チュースケ=ボロタ」


「ユウスケ=モロタだよ!」

 俺は突っ込んだ。

「ったく、無理やりボケるな。さっきはちゃんと覚えてただろ」


「ああごめんごめん」

 天使は特に悪いと思ってもなさそうに謝る。

「元気してた? ユウスケ」


「いや元気だけどさ。どうしてここでお前が出てくるのよ」

 と、俺。


「しょうがないでしょー。ある条件が揃ったら召喚されるようになってんだから」

 天使はちょっと口を尖らせた。

「言っとくけどねー、私だって忙しいのよ。まだこないだ借りた新作DVDも見てないし、今度ドラ〇エ11も出るし、ハン〇ーハ〇ターも再開されるし」


 なんだその暇な大学生が言いそうな理由は。

 俺ははあと息を吐いた。

 こいつ、全然変わってない。


「それにしても――生意気ね」

 天使はちらとアビゲイルとコトトを見た。

「村人Aのくせに、すごい美少女たちとパーティ組んでるじゃん」


「成り行き上、そうなっただけだよ」

 俺は苦笑した。

「別に俺の魅力で仲間になってもらったわけじゃない」


「ま、そうでしょうね」

 天使は肩をすくめた。

「あんたがこんな美女口説けるわけないし。口説けたらムカつくし。つーかあらゆる権力を駆使して邪魔するし」


 この野郎。

 相変わらずだな。


「あ、あの」

 と、バギムが口をはさんだ。

「わたくし、このメーティス幻想大図書館で館長をさせていただいております。バギムと申します」


「うん。知ってるー」

 天使はやる気なさげに言う。

「いやー、思った以上にげっ歯類だね。あんたこそチュースケだわ」


「し、知っていただいていたんですか! 光栄です」

 バギムは嬉しそうに言い、背筋をぴんと伸ばした。

「それで、あなたは古文書の通り、智天使ウリエル様でよろしいのでしょうか?」


「違うよ」

 天使は首を振った。

「私は熾天使のミカエル」


「ミカエル――様?」

「そ。本当はあなたの言う通り、この世界はウリエルちゃんの担当なんだけどね。今、ちょっと地獄関係のことでごたごたしててさ。私が後任になったわけ」

 全くいい迷惑だわ、と天使――ミカエルは肩をすくめた。


「そうでございましたか」

 バギムは頭を垂れ、平伏した。

「それは失礼をいたしました」


「んな畏まらなくてもいいってば」

 と、天使――ミカエルは言った。


「そうそう。バギム館長がビビる必要ないっすよ」

 と、俺も便乗する。

「こいつはどんだけえらいのか知らないけど、性格はろくなもんじゃないんだから」


 そうである。

 俺はこいつのせいで、ミジンコになるところだったのだ。


「うるせーぞ無能」

 ミカエルは言い、俺を睨みつけた。

「まあいいわ。で、今日はどういう要件なわけ?」


 ◆


 それから。

 俺はミカエルにこれまでの経緯を説明した。


 ダーダリアンでポチ(ラリーポス)の黒魔石を引いたこと。

 その際、チート=スキルを使ったこと。

 ひょんなことから、世界を回る旅をすることになったこと。


「ふーん」

 ミカエルは祭壇に寝そべり、腹をぼりぼりと掻きながら言った。

 

 実家か。

 ここはお前の実家か。


「で? あんた、何が聞きたいわけ?」

 ミカエルはあくびを噛みながら言う。


「とりあえず、俺って本当に勇者なのかどうかを教えてくれよ」

 と、俺は言った。

「確か、俺の運命は「村人A」だったよな。でも、俺は勇者しか引けない魔石を引いちまってる。これ、どういうことなんだ?」


「そうねー」

 ミカエルはどこからかポテチを取り出し、むしゃむしゃと食べ始めた。

「まず、『ラリーポス』が勇者しか引けない魔石ってのは間違いないみたいね。それから、あんたが『村人A』だったってことも確かね。そこも間違いない。なんつっても、私が担当したんだし」


「だろ? 矛盾してるじゃんか」

「矛盾ってこともないんだけど」

 ミカエルは今度はコーラを取り出しごきゅごきゅ飲み始めた。

「あんたが転生するときに言ったでしょ? 人は運命通りに生きる。でも――時々、その運命を自分の力で変えてしまう人間がいるって。だから、そういうこともありうるとは思うの。んぐんぐ」

 プハーっとミカエルはコーラを飲みほす。


「……じゃあ俺って、チート=ラックのせいで運命を捻じ曲げ、勇者になっちまったってことか?」

 俺は自分の手のひらを見た。


「そこが微妙なのよねー」

 ミカエルはアメリカンドックを取り出し、先っぽにがぶりと食いついた。

「あんたはどう見たって、村人Aのままだもん。それなのに、勇者の役割を担ってる。なんていうか、微妙なところで揺蕩ってる感じね」


 そんなことを言われても。

 俺は難しい顔をした。

 よくわからない立ち位置だ。


「そもそもさ」

 と、ミカエルはから揚げ串を取り出した。


「あ、あのさ」

 さすがに、俺は口をはさんだ。

「さっきから思ってたんだが、もの食うの、後にしてくんない?」


「えー」

 ミカエルは露骨に嫌そうな顔になった。


「集中できないんだよ。あと、大事な話してんのに雰囲気台無しだし」

 と俺は言った。

 つーか、コンビニで買えるジャンクフードばっか食う天使ってどうなのよ。

 威厳も何もあったものじゃない。


「まーいいけどさ」

 ミカエルはぶー、と頬を膨らませた。

「えーっとなんだっけ。ああそう、勇者はこの世界に一人だけなのよ。しかも、すでにいるし」

「いるの?」

 と、俺は聞いた。


「いるわよー。えーと、たしか」

 ミカエルはそう言いながら、何やら書類を取り出し調べ始めた。


「ね、ねえ、ユウスケ」

 と、その隙にコトトが小声で言った。

「あ、あんた、このお方と知り合いなの?」

「知り合いっつーか――まあ、ちょっとな」


「ユウスケ……お前は一体、何者なんだ」

 アビゲイルも驚きながら言う。


「あーあったあった」

 やがて、ミカエルが言った。

「ほら、やっぱりよ。ここメーティスから東に行ったとこにアルアイン領の「ロイス」って村があるんだけど、そこに本物の勇者がいることになってるみたい」

「ロイス?」

「別名、『始まりの村』って呼ばれてて、そこにしか勇者は生まれないって書いてある」

 

 へえ、と俺は言った。

「つーかさ、なんかお前、多分とからしいとか、そういうの多くね?」

「しょーがないでしょー」

 ミカエルは口を尖らせた。

「本来、ここはウリエルの担当世界なんだからさー。私はただの臨時だしー」

 そういって、毛先を指でいじいじする。


「とりあえずさ、その「ロイス」って村に行ってみ?」

 と、ミカエルは言った。

「んで、本物の勇者にあって来てよ。どうなってんのか、事情聴いてきて。私も、その辺把握しときたいし」


「お前は来ねーのか?」

「うん」

「なんで?」

「面倒くさいから」


 即答である。


「……分かったよ。行ってくる」

 と、俺はしぶしぶ頷いた。



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