62 メーティス幻想大図書館へ 2 ~それぞれのステータス~
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俺たちは各々のステータスを見せ合った。
まずは俺。
氏名 ユウスケ=モロタ
レベル 13
・種族:人間族
・性別:男
・年齢:17
HP 132
MP 0
物理攻撃力:13
物理防御力:37
魔力(攻):8
魔力(防):51
スピード :21
賢さ :19
属性:無
総合戦闘力 H
「備考 頭は悪いが危険性なし」(うるさいよ)
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続いて、コトト。
氏名 コトト=ガーネット
レベル 22
・種族:人間
・性別:女
・年齢:16
HP 231
MP 15
物理攻撃力:51
物理防御力:32
魔力(攻):11
魔力(防):70
スピード :109
賢さ :350
属性:水
総合戦闘力 G
「備考 特になし」(……めっちゃ賢い)
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そして――問題のアビゲイル大佐。
氏名 アビゲイル=ジョブワ
レベル 511
・種族:人間族(?)
・性別:女
・年齢:19
HP 5072
MP 0
物理攻撃:999+(測定不能)
物理防御:772
魔力(攻):15
魔力(防):381
スピード ;818
賢さ :117
属性:光
総合戦闘力 S+
「備考 危険性あり。種族、要査問」
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……笑った。
なんつーステータスだよ。
魔法攻撃以外は、ほぼすべてが高レベルである。(つか物理攻撃カンストって)
「で、これに何の問題が?」
と、アビゲイルが問うた。
「うーんと、ですね」
パリィは万年筆の柄で額をほりほり掻きながら言った。
「まず、アビゲイルさんが単純に強すぎる点、ですよね。我が図書館の警備は一流ですが、こんなにも強い人はほとんどこられたことがない。なので、少し異を唱える職員がおりました」
「つ、強すぎる、ですか」
俺はつぶやいた。
無理もない。
こんなに強い人間を、人類の宝のある場所に入れるのはためらうだろう。
「ただ、この意見は却下されました。強い、と言っても、図書館の中に入ってしまえばかなり弱体化されますからね」
「弱体化?」
「はい。図書館内には特殊な結界が張ってありますから。出来る限り、コントロールされています」
「そ、そんなこともできるのね」
コトトが言った。
「まあ、それでもアビゲイルさんは危険因子ですが――それだけなら大丈夫だろうというのが多数派でした」
「で、それに加えて、最も問題になったのが、ですね」
と、パリィは言った。
「アビゲイルさんの属性です」
「属性?」
「はい。彼女のこの『光属性』というのは、ただでさえ非常に珍しいんですが、人間族の光属性なんてものは聞いたことがないんですね。そして、ここが重要なんですが、光属性はそのほとんどが『竜族』なんです」
「竜族?」
と、アビゲイルは眉を寄せた。
「よもや、私が竜族だと言いたいのか?」
「いえ」
パリィは首を振った。
「そうでないことは見た目でわかります。しかし、あなたの祖先はそうかもしれない」
「……信じられんな」
アビゲイルは呟いた。
そして、自分の手のひらを見る。
「ちょっとわからないんですけど」
と、コトトが口をはさんだ。
「そもそも、どうして竜族だと、この図書館に入ってはいけないんですか?」
「うーん、これも返答が難しいですが」
パリィは眉を下げた。
「竜族というのは、分類学的には非常に魔族に近いんです。かつて、世界を炎で焼き尽くした種族の末裔ですからね。我々の規定では、魔族と同じ扱いです」
なるほど、と俺は頷いた。
魔族なら、当然館内に入れるわけにはいかないだろう。
それは何というか、納得のできる説明ではある。
「では、私は図書館内には入れぬということか」
と、アビゲイルが問う。
「いえ、悪意がなければ入れます」
と、パリィは首を振った。
「悪意、だと?」
「はい。そして、それを判断するために、私が来たんです」
「どういうことだ?」
アビゲイルは少し首を傾げた。
するといきなり、
「すいません。ちょっと失礼」
パリィはそう言って、アビゲイルにぴょんと近づいた。
そして――
ペロっと頬を舐めた。
まさか頬を舐められるとは思っていないアビゲイルは「ひゃ」っと小さく声を上げて、目を丸くした。
いかにも女の子な、可愛い悲鳴だった。
それから顔を赤くし、自分の頬をごしごしと拭く。
「な、なにをするのだ」
「んー……」
パリィは味を確かめるように口をもごもごさせながら考え込んだ。
それから少しして、
「ごうかくー」
と言った。
「うん。アビゲイルさんに、敵意はないね」
「わかるのか?」
「うん。そういう技術だから」
パリィはにこりと笑った。
「潜在的な悪意があるかどうかまでも判別できるの」
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「えーと、それからもう一つ」
と、パリィが紙に目を落としながら言った。
「そちらの、ユウスケさんの頭の上にいる生物。『精査』よると分類は『魔石獣』と出たんですが、これはペットか何かですか?」
「まあ……ペットみたいなものですかね」
と、俺は答えた。
「えーと、こいつを入れるとまずいんですかね?」
「いえ」
パリィは短く首を振った。
「どうやら戦闘能力は0に近いのでとりあえず問題はないんですけども。一応確認のために、敵意があるかどうかを見せてもらっていいですか」
「ええ、もちろん」
「ありがとうございます」
パリィはそう言って、俺に近づいた。
そして、頭上のポチをじ、と見つめ、鼻先をつんとつついた。
「キューン」
ポチは目を細めて、一鳴きした。
「可愛いですねー」
パリィは口元をむずむずさせながら、頭上の耳をぴくぴくさせた。
いや、あんたも十分かわいいよ、と俺は思った。
それからパリィはポチを抱き上げ、ぺろぺろと舐め、
「うん、大丈夫そうですね」
そういって、親指を立てた。
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「では」
と、パリィが言った。
「長々とすいません。審査はこれで終わりです。中へどうぞ」
彼女に促され、俺たちはいよいよ幻想大図書館へと足を踏み入れた。




