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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
56/137

55 魔法国アベルの世界樹 2


 ◆


「さあ、もうじきつきますよ」

 先だって歩く兵士が言った。


 やっと着くのか。

 俺は上を見た。

 入口がずいぶんと小さくなっている。


「さあ、こちらです」

 兵士が指さした先には、背の低い扉があった。


 俺たちはくぐるようにして、そこを通った。


 中はそれほど大きな部屋ではなかった。

 ちょうど俺が前世で通っていた学校の教室くらい。

 

 そしてその中央に――天祐世界樹があった。

 背は3メートルほどしかない。

 とても大きいとは言えない身の丈だ。


「ち、小さい」

 俺は思わず、言った。

「こんなに小さい世界樹もあるんですね」


「うむ」

 と、アビゲイル。

「私も、こんなに小さな樹は初めて見た」


 葉っぱや幹なども、ダーダリアンやガビビ族のそれとは違い、あまり力強くない。

 ところどころ、萎れてしまってさえいる。

 本当に日の光が当たらず大丈夫か、と心配になってしまうくらいだ。光合成とかできないし。


「心配はいらないですよ」

 と、兵士が俺の顔を見ながら言った。

「この樹はもう何千年もこの状態らしいです。どうやらこの環境がこの樹にとって、ベストな環境のようで」


 へえ、と俺は頷いた。

 本当に不思議な樹だ。

 この世界においては、俺の常識など無関係なのだと、改めて思った。


 ◆


「さあ、さっそくどうぞ」

 兵士に促され、俺は世界樹へと向かった。


 左手首を右手でつかみ『発動ベッシュウーロン』と唱えた。

 そして、幹に空いた空洞に手を突っ込む。


「SSよ、SS」

「黒! 黒を引くの!」


 後ろでマキとコトトがうるさい。

 

 だが、もちろん俺も同じ気持ちである。

 来い来い来い……来いっ!

 心の中で強く念じる。


 やがて手に魔石の感触が現れる。


 思い切り引くと――


 掌には、漆黒の魔石が乗っていた。


 ◆


「よっっっしゃあああああ」

 俺は右手を掲げた。


「やったー!」

 コトトが抱き着いてくる。


「ユウスケ、でかしたぞ!」

 アビゲイルが肩に手を置く。


「まっ、これくらいはやってくんないと」

 マキが肩をすくめる。


「す、すごいですー」

 よくわかってなさそうなアリスは、ニコニコしながらとりあえずぱちぱちと手を打っていた。


 それから俺は、さっそくコトトに魔石を渡した。

「どうだ? わかるか?」


「SSの魔石は現物はないから、鑑定には時間がかかるの。でも」

 コトトはルーペで魔石を覗きながら「んー」と唸った。

「とりあえず、魔法系の魔石だと思う。これ以上は、ゴードン師匠と連絡を取り合ってからね」


「うむ」

 と、アビゲイルが頷いた。

「なにはともあれ、これで一つSSの魔石を手に入れたな」


「すごいです」

 アリスはやっぱり手をたたき続けている。


「しかし――改めて、本当にすさまじいね、ユウスケのその能力」

 と、コトトが言った。

「一発でレア度SSがひけるなんて、チートすぎるわ」


 俺は「んふー」と鼻から息を出し、自分の手のひらを見つめた。

 頭にこの能力をくれた天使の顔が思い浮かぶ。

 ちょっと嫌な奴だったけど、あいつのおかげだな。

 心の中で、そう感謝した。

 

 ◆


「いやーでもさ」

 と、俺はみんなを見回しながら言った。

「今回の件では、俺たちはレア度SSの黒魔石よりも、もっと素晴らしい宝物が手に入ったよな」


「なに?」

「なんだ?」

「なんのこと?」

「なんのことでしょう?」


 4人が一斉に俺を見る。


 俺は胸を張って、

「新しい仲間だよ! そう、たからものとは、アリスちゃんのことさ!」 

 さわやかにそう言った。


「うむ。そうだな」

 アビゲイルが微笑んだ。


「そうだね! よろしくね、アリスちゃん」

 コトトが満面の笑みでアリスの肩を抱く。


「ありがとうございます! よろしくお願いします!」

 アリスはぶんと頭を下げた。


 そしてマキはというと――無言でプルプル震えていた。


「どうした? マキ」

「……っせー」

「うん? 何って?」

「くっせーって言ったのよ!」

 マキはぶるりと体を震わせたあと、ずびし、と俺たちに指をさした。

「あんたらみんなくさいのよ! なーにが『仲間が何よりたからもの』よ! 青いのよ! 青すぎるの! 青春の匂いがするの! あーー寒い寒い!」


 改めて言われると――顔が赤くなる。

 たしかに――さっきの言葉は恥ずかしかったかも。


「大体さあっ」

 と、マキがヒートアップして続ける。

「アビちゃんもコトトもリアクションおかしいでしょ! うむ、じゃないわよ! そこは無言でユウスケにラリアットでしょ! 首を振ってからハリケーンミキサーでしょ!」

「い、いや、そんなこと――」

「ギャー! 近づかないで! 青春菌が移るから!」

 マキは一人で大騒ぎをしながら、部屋から出ていこうとして扉にぶつかった。

 きゅう、と妙な声を出してその場に昏倒する。


 なんか――

 若手芸人みたいなやつだ、と俺は思った。


 ◆


 翌日。

 早朝。

 俺たちはアベル国を出発した。


 昨夜、マキとアリスは少し疲れが残っているようだった。

 だが、コトトの回復薬がよく効いたようで、今はだいぶ元気になっている。


「さあ、いくぞ」

 朝日が照らす極彩色の景色の中、アビゲイルの号令で歩き出す。

 先頭からアビゲイル、コトト、マキ、アリス、そして最後に俺の順だ。



 その途中。

 アリスがつと立ち止まり、アベル国の城壁を振り返った。


 ざあと風が吹いて、彼女の前髪を跳ね上げた。

 朝の静寂の中、どこか遠くのほうで馬が嘶いている。


 アリスは唇を引き締め――

 そして、ちょっと笑った。

 

 いったい、何を想っているんだろう。

 俺は城壁を眺めるアリスの横顔を見ながら、そんな風に思った。

 

 少しはいい思い出もあったんだろうか。

 それとも、つらい経験を笑い飛ばしているんだろうか。


 考えを巡らせてみたが、結局、頭の悪い俺には判然としなかった。


 そうしてしばらくみつめたあと――


 アリスは急にぶんと頭を下げ、

「ありがとうございました! 行ってきます!」

 と、そう言ったのだった。




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