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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
50/137

49 魔燭の宴 5


 ◆


「あれは、魔法増強薬イリーガルドラッグだわ」

 眉間に皺をよせ、コトトが言った。


「魔法増強薬?」

 俺が聞いた。


「そう」

 コトトは人差し指を立てた。

「この前、アベルの裏路地で怪しい男に出会ったでしょ? あいつが売っていた、非合法な薬」


 休日にアベルの城下町の路地裏にいた、フードを被った黒ずくめの男が想起される。

 彼が売っていた、アベル国内で生成されている麻薬。

 

 アベル国の――裏の顔。


「ま、まじかよ」

 俺はごくりと喉を鳴らした。

「それはどういう薬なんだ?」

 と、アビゲイルが言った。


「魔力を一時的に何倍にも膨れ上がらせる薬です。先ほどのアニーの力。あれは――おそらく『スピリタス』と呼ばれる劇薬。流通している中でも最も効果が高く、そして副作用が大きなものです」

「副作用――?」

「はい。あの薬は脳を破壊します。戦闘欲がまし、凶暴になるんです。戦争用に作られた、非人道的なドラッグなんです」


 その言葉を聞くなり、アビゲイルはメインクーン女王の元へと走った。


 ◆


「女王陛下。今すぐ、宴を中止してください」

 と、アビゲイルは言った。

「あなたの選手は禁止薬物を使用した。この国の法律に違反している。よって、アニーの反則負けです」


「どこに証拠がある」

 メインクーンは肥えた体を震わせた。

「我には、そんなものを使用したようには見えなかったが」

「あのアニーの姿を見ればわかるでしょう」

 アビゲイルはコロッセオを指さした。

「血管が浮き出て、目は瞳孔が開いている。状況証拠はそろっている」

「状況証拠など知らんわ。我らが魔法使いが、負けることなどあり得ん」

 メインクーンはほっほっほ、と笑った。


 こいつ――知っていたな。

 俺は顔をしかめた。

 最初から、いざとなったらあのドラッグを使えと指示していたのだ。


「……メインクーン殿」

 アビゲイルが低い声音を出した。

「今一度言う。宴を終わらせよ」

「駄目じゃ。我は――こ奴らの戦いを最後まで見たい」

「終わらせよと――そう言っているのが分からんのか!」

 アビゲイルはそう怒鳴ると、メインクーンの胸元をつかんだ。

 

 ぐぐぐ、と彼女の体が浮く。

 300キロを超える巨体を――片手で持ち上げたのだ。


「貴様ぁ! その手を離せ!」

 その瞬間、周りの兵士が動き出した。


「控えろ! 下郎ども!」

 アビゲイルは裂帛の気迫で兵士をねめつけた。


「ひっ」

 兵士は急に動きを止め、小さく悲鳴を上げる。

 アビゲイルの眼光で、兵士は身動きが取れなくなった。


 彼女の双眸は殺意に満ち溢れていた。

 俺は背中に氷を突っ込まれたように、恐怖で全身が凍えた。

 死――

 アビゲイルの目を見ただけで、殺されると思った。


「な、なにをする! 無礼者」

 メインクーンが巨体を揺らして暴れる。


「……女王陛下。あまり私を怒らせるな」

 アビゲイルは目を伏せ、静かに言った。

「なんなら、ここにいる全員を皆殺しにしてもいいんだぞ」

「皆殺しだと?」

 メインクーンはせせら笑った。

「馬鹿め。いくら天才剣士・アビゲイルといえど、わが最強の魔法軍隊に勝てるものか」


「しょうことなし」

 アビゲイルはさらにメインクーンを締め上げた。

「いいか。この私が本気になれば、この国を亡ぼすことなど些末なことなんだぞ」

「な、なんだと?」

 アビゲイルはメインクーンを睨みつけた。

「そのような児戯に等しい脅しに屈すると思うか」


「脅し?」

 アビゲイルは言った。

「どうやら、私のことを知らんようだ」

 アビゲイルは鞘から大剣クラウソラスを抜いた。


「そ、その剣は」

 メインクーンは驚愕のあまり、口をだらしなく開けた。

「ガインシャ公国を亡ぼした悪魔の子が持っていたという――伝説の剣。よ、よもや――あれは、ただの寓話ではなかったのか」

 


「マキに何かあれば」


 アビゲイルはその場で剣を突き刺した。

 すると――地響きが鳴り、貴賓席に大きな地割れが生じた。


「この国はあそこと同じように、半刻も持たず灰塵に帰す」


 

 脅しではない。

 その場にいるすべての者が、本能的に悟った。

 この女剣士アビゲイルは――人間じゃない。


「わ、わかった」

 と、メインクーンは言った。

「お、おい、今すぐアニーを止めろ! 宴は中止だ」


「ハッ」

 そういって、警備兵は走り出した。


 


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