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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
49/137

48 魔燭の宴 4 ~マキVSアニー~



 ◆


 コロッセオの中央。

 観客たちの歓声はピークを迎え、熱狂の渦が辺りを包み込んでいた。

 

 彼らの応援は、当然ながら、ほぼすべてアニーコンビに向けられている。

 

 ハッ。

 上等だわ。

 マキはぐるりとコロッセオを見渡した後、最後にメインクーン女王の貴賓席を見た。


 アビゲイルの姿が見える。

 私が負けるなんて全く思ってない眼だ。

 マキは嬉しくなって、思わず微笑んだ。


 その横には心配そうなユウスケとコトト。

 ふん。

 相変わらず、間抜け面してるわね。

 マキは思わず苦笑した。


「何笑ってるのかしら」

 と、アニーが言った。

「勝ち目がないから、気でも触れたの?」

「まさか」

 マキは首を振る。

「全く逆。自信が湧いてきたのよ。あほたちのおかげでね。あんたこそ、心臓が縮み上がってるんじゃないの? 女王のプライドのためにも、絶対に負けられないんだろうから」


「余計な心配だわ。私が負けるなんて、あり得ないから」

 アニーが不敵に笑った。


 プライドの塊のような表情。

 いいツラしてるわね。

 マキは口の端を上げた。


「両者、こちらへ」

 その時、二人の間に審判が入ってきた。

 それから位置を確認し、互いに魔石を装備していないかを確認する。

 そして――

 手を天にあげ、一気に振り下ろした。


「では、勝負開始バトルスタート!」


 ◆


 先に動いたのはアニーだった。

 勝負開始と同時に、詠唱を始める。

 ほぼ同時に、アニーの後ろに控える、彼女の相棒の魔法使いもマキの攻撃に備えて詠唱の構えを見せる。


 これまでの戦いで、マキの詠唱を視認してから防御魔法を唱えたのでは遅いと踏んでいるのだ。

 マキの最大の武器は魔法発露に至るまでの時間の短さ。

 魔力を練るために必要な刻が、ほぼないに等しい。

 ならば、無駄な魔力消費は覚悟のうえで、あらかじめ障壁を発露させておくべきだ。

 そのように考えているに違いない。


 ふん。

 さすがに対策を練ってきてるわね。

 マキはちっと舌打ちし、詠唱を開始した。


 あえて、先手は取らせてやるつもりだった。

 アニーの強大な魔力に勝つには、こちらも満タンの魔力が必要だ。

 現在、マキの魔力は7割ほど。

 フルパワーでやるにはまず、向こうの魔力を吸収する必要がある。

 

 魔法吸収と魔法防御を同時に発露させながら、なんとか魔力を回復させなければならない。

 大事なのはバランスだ。

 ある程度はダメージを食らう必要がある。


 アニーの魔法は、おそらく最高レベル。

 タイミングを間違うと、死んでしまう可能性すらあった。


 やがて、アニーの詠唱が終了する。

 手元が鈍く光り――


『七龍火炎雷』


 激しいエネルギーのうねりが、ギュウウウウウウというノイズの混じった凄まじい音と共に放射される。


『絶対障壁』

『魔逆流陣』


 マキはすかさず同時に二つの魔法を唱えた。

 目の前に五芒星と半透明の壁が2重に重なって顕現する。


 あ、という間にエネルギーの奔流がマキを飲み込む。


「くっ」

 マキは顔を歪めながら、ダメージを半減させながら魔力を吸収した。


 体中が焼けるように痛い。

 あまりの熱風に、意識が飛びそうになる。

 

 だが――うまくいった。

 体力の消費と引き換えに、魔力はフルまで戻っている。

 さすが私!

 マキはぐ、とこぶしを握った。

 そして、すぐさま魔法の詠唱に入る。


 次の防御のことはもう考えていなかった。


 一撃で仕留める。

 元々格上の相手。

 それしか、アニーに勝てるすべはない。


 マキは神経を研ぎ澄ませ――

 渾身の詠唱に入った。


 マキは自分の出せる魔法の中で、最強のものを発動させるつもりだった。

 神雷ドーナゴッド

 詠唱者の魔力の多寡に比例して、その威力を変えるという変則的な魔法だ。


 自分の魔力のすべてを出し切った『神雷』ならば、トータルで勝るアニーにも勝てるという確信があった。


 マキはすーと息を吸い込んだ。

 彼女の周りに、渦が出来始める。

 大気は張り詰め、細やかに蠕動を始めた。

 地面が波紋上にさざめいていく。


 あまりのエネルギーの凝縮に、行き場を失った熱量がマキの体を浮きあがらせた。


 ◆

 

 アニーは目を見開いていた。

 なんだ?

 この茫洋な魔力は。

 大海を思わせるほどの力に、アニーは体をこわばらせた。


 マキの体が――虹色に輝いている。


 神々しいまでのその姿に、アニーの全身から汗が噴き出した。


 まずい――


 まずいまずいまずい。


 アニーの本能が全力で告げている。

 今すぐ降伏し、ひれ伏すべきだと。


 アニーはとっさにポケットから注射器を取り出した。


 使ってはならない禁断の麻薬。

 破滅と引き換えに、悪魔の力を手に入れるドラッグ。


 アニーは逡巡した。

 これを使えば、もはや前には戻れないかもしれない。

 だが――と、アニーはマキを見た。


 あの魔力。

 このままでは絶対に、自分には勝ち目がない。


 私が――負ける?

 アニーは顔をゆがめた。

 彼女はこれまで、一度も負けたことがなかった。

 エリートとして育ち、エリートして戦ってきた。

 そんな私は――敗北するだと!?


 ちらと、メインクーン女王を見る。

『お前は国の誇りだ。絶対に負けるでないぞ』

 女王の言葉が頭にリフレインする。

 アニーはかっと目を見開いた。


 負けるのは――死んでも嫌だ!

 

 アニーは口で先端のプロテクターを外した。

 そして――

 注射器をぶすり、と自らの腕に突き刺した。


 ◆


神雷ドーナゴッド


 マキはかっと目を見開き、持てる全てを解き放った。


 コロッセオの中に、光の竜に似た電雷が現出する。

 竜はうねりながら一直線にアニーたちに向かって突進した。

 アニーの相棒は防御壁を顕現させている。


 いける。

 マキは思った。

 やはり、彼女の障壁ならこの魔法で打ち破れる。

 そう思った瞬間――。


 敵チームの魔法障壁が2枚に重層された。

 アニーだ。

 どうやら彼女も、マキと同じく防御系の魔法も唱えられるようだった。


 だが――無駄なことだ。

 私の最強魔法の前には蟷螂の斧――かなうはずもない。

 

「いけえええええええええええ」

 マキは渾身の力を込めた。

 文字通りすべての魔力を、その手にかけた。


 バギイイイイイイイイイ。


 コロッセオの中央で――

 鈍い、金属が破裂するような音が響いた。


 ◆


 やがて、砂塵が晴れていく。

 手ごたえがあった。

 確実にやつらの防御壁は破壊できたはず。


 マキはフラフラになりながらも、笑みを浮かべた。

 これで――アリスも人並みの暮らしができるはずだ。

 

 だが――視界が開けたとき。

 マキは驚きで動きが止めた。


 その向こうで――アニーたちは立っていた。

 驚くべきことに――無傷である。


 マキは目を見開き、膝をついた。

 バカな。

 どうして――どうして、こんなことが。


「やばい呪文唱えやがって」

 アニーは顎を腕で拭いながら言った。

「今のはまあまあすごかった。ダーダリアン一の力ってのも、嘘じゃないみたいね。でも――この私には勝てなかったみたいね」

 

 信じられない。

 アニーの魔力がどれほどのものかは分からないが――神雷をくらって無傷にできるなんてありえない。

 マキの頭を、そのような思考がグルグルと回る。


 マキは糸の切れた操り人形のように、その場に両手をついた。

 負けだ。

 もう自分には、どんな平易な魔法も唱えることはできない。


「こ、降参よ」

 と、マキは言った。

 死んでも言いたくない言葉だったが――アリスを巻き添えにするわけにはいかない。


「ふんっ。聞こえないわね」

 アニーは言い、口元をゆがませた。

「あんたの存在は、癪に障るのよ」


 その目は、正気ではなかった。

 白目は血走り、こめかみには太い血管が浮き上がっている。

 顔色は紫がかり、口角はだらしなく下がっていた。


 アニーはゆっくりと手のひらをマキ達に向けた。


「アニー! 戦闘態勢を解きなさい! 相手は降伏宣言をした! 勝負はついた!」

 審判が抑えに入る。


「うるさい!」

 アニーは彼を突き飛ばした。

「こいつは、私を愚弄したの! 許すわけにはいかないわね!」

 

 こいつ、普通じゃない――マキは顔をしかめた。

 明らかに様子がおかしい。

 あれはまるで――中毒者だ。


 つと、傍らに転がる注射器が見えた。

 この子――まさか。

 マキはアニーを見つめた。


「さあ、お祈りの時間よ」

 アニーはそういうと、魔法の詠唱を始めた。

「ゴミ屑と一緒に、塵と化しなさい」




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