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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
46/137

45 魔燭の宴 1


 ◆


 次の日。

 俺たちは城塞都市の一番奥にある施設に案内された。


 さながら中世ヨーロッパのコロッセオのような円形闘技場。

 客席はすり鉢状になっていて、全ての場所から戦いが良く見える。


 しかし、でかい。

 俺はその威容を見上げて、しばしぽかんとしてしまった。


 アビゲイルを除く俺たち4人は、大臣に案内され、『魔燭の宴』の控室に通された。

 どうやら、アビゲイルは直前まで女王の接待らしい。


 室内は簡素な造りになっていた。

 椅子とテーブルしか置いていない、味気の無い部屋。

 そこには選りすぐられた魔法使いたちが控えており、みな一様にピリピリしていた。


「あ、あの、本当に私でいいんでしょうか?」

 と、アリスがおびえた表情で言った。

「わ、わわ、私、何にもできないんですけど」


「まーだ言ってんの」

 マキは杖にもたれかかりながら、肩をすくめた。

「あんたはとにかく、ケガしないように控えてればいいから。あとはまあ、なんか念じてるフリでもしてんさい」


「で、でも――」

 アリスは不安そうに俯いた。


「アリスちゃん、本当に嫌じゃないの?」

 コトトが口をはさむ。

「嫌なら今からでもキャンセルして、ユウスケにしてもいいよ」


「俺なの?」

 思わず、俺は言った。


「仮になんかあっても、あんたは一回なら、チートラックで何とかなるでしょ」

 コトトが言う。


「そ、そうだな」

 俺は頷いた。


 言われてみればその通り。

 そうしたら魔石を引くのが遅くなるけど――


 彼女に比べれば、俺のほうがましかもしれない。


「アリスちゃん。やっぱり俺と変わる?」

 俺は聞いた。


「だ、大丈夫です」

 アリスが即答した。

「儀式に出られることは身に余る光栄ですから。た、ただ、わ、私みたいなものが出ていいのかと思っているだけで」


「本当に……大丈夫なの?」

 コトトが顔を覗きながら、心配そうに言う。


 アリスははい、と満面に笑みを浮かべた。

「わ、私、『魔燭の宴』に出られるなら、死んでもいいと思ってますから」


「死――って、だからそういうことは」

 思わず横から口をはさんだ。


「命を賭ける価値があるんです」

 と、アリスはマキを見た。

「この大会に出れば、この国での地位が上がります。私が出られる可能性は、マキさんが選んでくれなければ0%だった。つまりこれは、人生で一度きりのチャンスなんです」


 決意に満ちた目だった。

 きっと、昨夜、ずっと考えていたんだろう。

 俺とコトトは、もうそれ以上何も言えなかった。


 一晩でこうも変わるのか。

 この子は俺たちなんかよりずっと大人だ。


「分かってんなら胸を張りなさい」

 マキはいつになく大真面目な口調で言った。

「こうなったらもう身分なんて関係ないんだから。堂々としてればいいのよ」


 そして微かに、口端で笑った。

 その笑みにはどこか自信の色が浮かんでいた。


 ◆


「あんたがズルで出たダーダリアンのボンボンお嬢様ね」

 

 声をかけられ、俺たちは目をやった。

 すると、そこにはショートカットの女の子がいた。

 丸眼鏡をかけていて、目が細い。


 勲章バッジは6つ。


「あんただれ」


 見るなり、マキは首を傾げた。


「これからあんたと戦う相手でしょ」

 コトトが小声で言う。

「演目表にイラスト付きで書かれてたでしょ。たしか、名前はクリスタ。読んでないの?」


「読んでない。興味ないし」

 マキはこともなげに答えた。


 こいつは本当に図太いというかなんというか。


「噂通りの女ね」

 アリスタはイライラした様子で顎をあげた。

「その傲慢な鼻をへし折ってやるから」


「はいはーい」

 マキは手のひらをひらひらさせた。


 ぐ、とひと睨みして、彼女は出て行った。


「ほっほっほ」


 すると今度は、また別の方向から笑い声がした。

 目をやると、ターバンを巻いた老婆が立っていた。

 胸にはバッジが7つ。


「怖いもの知らずでいいの。他国のものよ」

 背を丸め、歩み寄ってくる。


「また出たー!」

 マキはいかにも嫌そうに身を縮めた。


「わしはお主と2回戦で当たるモーロウじゃ。丸焼きにしてやるから、楽しみにしておけ」

 ほっほっほ、と再び笑う。


「あーら、皆さん、ごきげんよう」

 さらにその後ろから、声がする。

「私はあなたと3回戦で当たる、モールよ」


 縦ロールの巻き髪のお嬢様みたいな子だ。

 バッジはモーロウと5つ。


「またまた出たー!」

 マキは両手をあげた。


「にゃははは。何を楽しそうにしてるのだー。アチキだって、負けないづら」

 さらに一人、横から口を挟んできた。


 マキは「あーあー」と言いながら、耳をふさいだ。

「もう! ワラワラ湧いてこないで! はっきり言って覚えきれないから!」


 マキは心底うんざりしたように言って、背を向けて長椅子に寝転がった。


「す、すごい」

 アリスが羨望の眼差しで言う。

「み、みなさん、すごいエリート様です。雲の上の存在です」


「あんなモブに緊張してどうすんの」

 マキは寝転がったままピースサインを出した。

「大体、あんたのバディは誰だと思ってんのよ。私は天下無双の美少女ヒロインよ。スーパーミラクルサンダー完璧萌え萌えプリティー魔法少女、マキ様なんだから」


「すいません! 知らなかったです!」

 アリスは律義にそう答えて、また頭を下げていた。



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