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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
45/137

44 前日


 ◆


 『魔燭の宴』を翌日に控えた夜。

 アビゲイルはようやくメインクーン女王の接待から解放されたようで、俺たちの待つ部屋へと戻ってきた。


「……疲れた」

 アビゲイルはそういうと、ベッドにどさりと倒れこんだ。


 彼女がこんなに疲弊しきっているのはとても珍しい。


 この旅が始まって初めての弱音。

 大佐の珍しい姿に、俺は思わずちょっと笑ってしまった。

 どうやらこの3日間、女王のよもやま話を聞かされ続けたらしい。


「お疲れ様です」

 俺は白湯を出しながら言った。


「ああ、すまない」

 アビゲイルはむくりと起き上がり、カップを受け取った。

「本当に疲れたよ。私にはああいったことは向いていない」


 ちびりと口をつけ、部屋を見渡す。


「コトトとマキはどうしてる」

「コトトはお風呂です。マキは――もう寝ちゃいました」


 俺は隣のベッドを指さした。

 マキが鼻提灯を作ってぐーぐー寝ている。


「寝た?」

 アビゲイルはむくりと起き上がった。

「私は何にも聞いてない。明日の宴の対策はどうなっている。大丈夫なのか」


 俺は腕を組み、首をひねった。

「さあ、どうなんでしょうか」


「どうなんでしょうか、じゃない。相棒は誰になったんだ」

「いえ……それが――」


 俺はそれから、ここ数日のことを詳細にアビゲイルに話した。


 兵士にはろくな人材が残っていなかったこと。

 結局、マキはアリスと言う雑用係を選んだこと。


「雑用係?」

「しかも、子供です」

「なんだそれは。天性の魔法使いでもいたのか」

「いえ。それが、魔力はからきしみたいです」


「馬鹿な」

 アビゲイルは頭を抱えた。

「ああ、こいつは何故そうやっていつも適当なんだ。もしかして、わざとやっているのではないか」


 いつになく神経質そうな声を出す。

 どうやら、本当に疲弊しているようだ。


「あと、なんかえらく強そうな人もいました。アニー将軍、と言ってましたか」

「アニー将軍」

「はい。あれはやばそうでした」

「ふむ。アベル国を代表する魔法の使い手だ。あらゆる法術を駆使するらしいが、中でも攻撃魔法は激甚な威力だという」

「はえー……そうなんですか。マキの奴、大丈夫なのかな」


 ちらりと、マキを見る。

 彼女はむにゃむにゃと幸せそうな顔しながら、パジャマのはだけた腹をぼりぼりかいていた。


「夜分にすいません」


 その時、扉の外からノックする音がして、そのような声が聞こえた。

 どうぞ、と返事を返すと、扉の隙間からアリスが顔を覗かせた。


「ああ、アリスちゃん」

 俺は彼女を招き入れた。

「ちょうど君の話をしていたんだ。何か用かい?」


「あの、その」

 アリスはもじもじしながら言った。

「アビゲイル様に、ご挨拶をしておこうと思いまして」


「なるほど。いいよ」

 そう言って、大佐の元に戻る。


「あ、あの、私、アリスと言います! 明日は、アビゲイル様の部下様であるマキ様と、儀に出場させていただきます!」

 言いながら、アリスはぶんぶんと何度も頭を下げた。


「大佐。この子ですよ」

 俺はアビゲイルに紹介した。

「マキが選んだ娘は」


「そうか」

 アビゲイルは立ち上がり、慇懃に頭を下げた。

「アリス殿。明日はマキをよろしくお願いします」


「そ、そんな! 顔を上げてください」

 アリスはその場に土下座せんとばかりに恐縮した。

「明日は、マキさんの盾となり、命を懸けて戦わせていただきます!」


「それは駄目だ」

 アビゲイルは強い口調で言った。

「戦闘は全てマキに任せておいてください。あなたは、絶対に無事に戦いを終えてください」


「でも――」

「そうだよ、アリスちゃん」


 俺はアリスを遮り、頭に手をぽんと置いた。


「君は戦闘員じゃないんだ。くれぐれも、そこを履き違えないようにね」

「でもそれじゃあ、私である必要が」

「君がいいんだよ。マキのやつ、意外と神経質だからさ。きっと、この国の人間で、アリスちゃんが一番信用できると思ったんだよ」


「そういうことです」

 アビゲイルが後を継ぐ。

「ですから、明日は自分の身の安全だけを考えてください」


 そう言うと、アビゲイルはもう一度、「よろしくお願いします」と頭を下げた。


「へ、へへー!」


 アリスは恐縮しすぎて、その場にしゃがみ込んで床に頭をこすりつけた。


「そこまでしなくていいよ」

 俺は苦笑しながら彼女を起こした。


「す、すいません」

 アリスはぶんと頭を下げた。

「そ、それでは今日は失礼させていただきます! 申し訳ありませんでした」


 アリスはそれだけ言うと、逃げるように部屋から出て行った。


「いい子でしょ」


 その様子を見届けた後、俺は言った。


「……」


 返事がない。

 アビゲイルの方を振り返ると、彼女は目を細めて、何やら考えているようだった。


「どうかしました?」

「ああいや、なるほど、と思ってな」

「なるほど?」

「うむ。どうやら、マキがあの子を選んだのは、単なる酔狂というわけではなさそうだ」

「どういう意味です?」


 俺は聞いた。

 するとアビゲイルは口の端で意味深に微笑み、こう言ったのだった。


「あのアリスという娘、よく似ているんだ。マキの幼いころに」



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