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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
36/137

35 ホテルにて 3


 ◆


 というわけで、である。


 いよいよ、就寝時間になった。


 俺はドキドキしている。

 めちゃくちゃドキドキしている。


 なぜなら、例の件、がまだ片付いていないから。


 例の件――


 すなわち、俺がマキと同じベッドで寝るというあれだ。


「お前たち、しっかり休息をとるようにな」

 俺の緊張をよそに、アビゲイルは横になって布団をかぶった。


 やがて、コトトの横ですぐに寝息を立て始める。

 寝るのも早い。


「さ。私たちも寝ましょうか」

 他方、目がらんらんとさえているマキがいう。


 これみよがしに、胸元のざっくり空いたシルクのパジャマを着ている。

 そしてそこから、放漫な胸の谷間がのぞいている。

 

 い、意外とでかい。


 い、いや、そんなことじゃなくて――


 こいつ、なんでわざわざこんな格好で寝るんだ。


「お、おう、そうだな」

 俺は谷間から目をそらしながら、ベッドの端にちょこん、と座った。


 ただ、異論を言う気にはなれない。

 女子の胸が見えるのに、それにわざわざ言及する男子高校生はいない。


「もう、そんなに端に寝なくても、もっと近づきなさいよ」

 言いながら、マキは俺をベッドの中央に引きずった。


「いいってば、やめろって」

 俺は抵抗した。

「なんでよー。アビちゃんも言ってたでしょ? ちゃんと疲れ取らなきゃ」

 そう言って、俺の体にまとわりついてくる。


 むにゅ。


 胸が。


 胸が背中に当たっている。


「さ、寝ましょうね――ってあれ?」

 マキはそこで、コトトを見た。


 彼女はアビゲイルの横で女の子座りをしながら、じ、と俺たちのやりとりを見ている。


「あれ? どうしたの、コトト? 寝ないの?」

 マキがすっとぼけたように言う。


「ね、寝るわよ! あんたたちがうるさいの」

 コトトは怒ったように言い、ぼすん、と横になり、寝返りを打って背を向けてしまう。


「あーら、ごめんね。もう静かにするから」

 マキはそう言って、部屋の蝋燭を消して回った。


 すると、室内は一気に真っ暗になった。


 ◆


 5分ほど経った。


 体は疲れ切っているはずなのに――目はギンギンに冴えていた。

 それはそうだろう。

 同じベッドのすぐ隣に、女の子が寝ているのだ。

 

 しかも、マキは黙っていればかなりの美人だ。

 胸も――めちゃ大きい。

 

 い、いかんいかん。

 こんなことを考えていてはいかん。

 俺はぎゅっと目を瞑った。


 すーすー。

 マキの寝息が聞こえてくる。


 あかん。

 眠れへん。

 

 興奮して、思わず関西弁になった。


 しょうがなく、俺は目を開けた。

 すると、さらに悪いことに、暗闇に目が慣れて来て、マキの寝顔が見えるようになってきた。

 窓から射す月明かりも手伝って、結構はっきり視認出来る。


 マキは目をつむり、少し微笑んだような顔で寝ている。


 こいつを褒めたくはないが――

 ぶっちゃけ、可愛い寝顔だ。


 ごくり、と喉を鳴らす。

 改めて考えるとすごい状況だ。

 美少女が、同じベッドの上にいる。

 手を伸ばせば届く距離にいる。

 

 そうなのだ。

 ここで、俺はかっと目を見開いた。

 触ろうと思えば今にも触れるわけだ。

 いや、それ以上のことだってできる。

 例えば――例えば!

 キスをしようと思えば、キスだってできるのである!


 考えたくなくても、自動的にそんな風に頭が考えてしまう。

 これはもう、男のさがだ。

 

 そんな風に悶々と見つめているとき、事件は起こった。


 寝ているはずのマキの口が――動いたのだ。


(……んっ。ちょっと、ユウスケ、駄目だってば)

 色っぽい声だ。

 俺は眉を寄せた。

 こいつ――何言ってるんだ?


(みんなが起きちゃうでしょ。……あんっ、そんなとこ、触っちゃダメだって――やんっ)

 マキの独り言は続く。


 俺は一瞬、理解できなかった。

 だがその刹那。


「こらあああああああああ」

 コトトががばっと飛び起きた。

 続いて、部屋の明かりがぱっとつく。

「あ、あ、あんたたち、なにやってんのよお!」


「ほらー、ばれちゃったじゃない」

 マキがなまめかしいため息を吐く。

 よく見ると、パジャマをわざとはだけさせている。


「……ユウスケ?」

 コトトがじろりと見る。

「あんた――何やってたの?」


「い、いや、何もしてないけど」

「……嘘言いなさい」

「ちょっと待て。誤解だって」

 俺はぶんぶんと首を振った。

「お、おい、マキ、なんとか言えって!」


「うん、そうね。そうだよね。分かったわ。次から、声は出さないようにするね」

 マキはもじもじしながら意味深なことを言った。

「でも、ユウスケも悪いよっ。いきなりあんなデリケートなとこ触れたら、女の子は声が出ちゃうんだから」


「誰がそんなことを言えって言ったよ!」

 俺は怒鳴った。

「大体、俺はお前に指一本触れてねーだろ!」


「あ、ごめん。そうだよね、ここは、そう言っておくべきだよね」

 ちろり、と舌を出す。

「でも……上手だったゾっ!」

 マキはキャっと言って両頬に手を当てた。


「だから、そういう誤解を招くような言い方をするなつってんの! そんなこと言うから誤解が――」

 ぞくり――。

 その時、殺気を感じて、俺は振り返った。


 ロープを持ったコトトが、そこに立っていた。


 殺される――。

 俺はとっさに思った。


「お、落ち着け」

 俺は後ずさりをしながら言った。

「誤解だよ。俺、マキとはなんもなかったんだから」

 思わず、不倫がばれたオヤジみたいなセリフを言ってしまう。


「……信用できない」

 コトトはそう呟き、ロープをピシッと張った。

「ごめんね……こうするしかないみたい」

 顔が普通じゃない。


「や、やめ、やめろ――やめてえええええええ」


 ◆



「あー、やっぱ一人で寝るとベッド広いわー」

 マキの声がする。


 俺はグルグル巻きにされ、床に転がされた。

 どうやら俺は、ここで一晩寝ることになったようである。


 身動きが取れない俺の耳に、「ケタケタケタ」という、悪魔マキの笑い声が聞こえてきた。



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