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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
35/137

34 ホテルにて 2 


 ◆


 

 夕方になり、俺たちは風呂に入った。


 久方ぶりのまともな入浴。

 マジで、涙が出るほど気持ちよかった。

 女性陣も身ぎれいになって、旅の疲れを癒したようだった。


 それから自分たちの部屋でうだうだやっていると、給仕に食堂へと呼ばれた。

 綺麗な大広間には、すでにたくさんの料理が並べられていた。


「ひょー」


 間抜けな声を出して、俺は駆けた。

 ここまで、ろくな食事をしてこなかった。

 口元からよだれが垂れる。

 美味そうなもの見ると、本当に涎が出るんだな。



「ユウスケ。室内で走るな」

「あ、すんません」

 アビゲイルにたしなめられ、すぐに立ち止まる。

「腹が減りすぎて、つい」


「いいか、ユウスケ」

 アビゲイルはこほんと空咳をした。

「人間の本質と言うのは、こういう時に出るものなんだ。お腹がすいていても、いや、すいている時こそ、上品に、人間らしく振舞うのだ。マナーとは、そういうことなんだ」


 アビゲイル大佐は確かに何をしていても上品だ。

 発言にも含蓄がある。


 さすが、上流階級の人間は違うな、と俺は思った。

 この人たちを見て、テーブルマナーを学ぼう。


「ぐおー! めしー!」


 そう決心した俺の横を、マキが猛ダッシュしていった。


 ◆


 食事はどれもこれも美味しくて、俺は夢中で食べた。

 テーブルマナーの話はぶっ飛んで、マキと取り合うようにしてがっついた。


 やっぱ、根っからの庶民である俺に上品な所作なんかできっこない。


「兄ちゃんら、どこから来たんだい?」

 散々食い散らかし、満足して茶をすすっていると、横に座った大柄な男が話しかけてきた。

「どうも見慣れない服を着ているけど」


「ダーダリアンから来ました」

 俺は答えた。


「ほう。道理で」

 男は出っ張った腹をさすりながら言った。

「どこか垢抜けた人たちだと思ったよ」


 男はそう言ってアビゲイルを見た。

 やはり、こうして普通にしていても何かが違うんだろう。


「おじさんはどこから来たんです?」

「俺はベジアだ」


「ベジア?」

 アビゲイルが口を挟んだ。

「ベジアは確か、アベルとは国交がないはずでは」


「ないね。表向きには」

「表向きには?」

 

「まあ、コネと金だよ」

 男はビールをぐびと煽りながら言った。


「お金で――入れるんですか?」

 今度はコトトが言った。


「そりゃそうだ」

 男は眠そうな、とろんとした目で言った。

 かなり酔っているらしい。


「でも、この国は完全独立国家ですよね。それも、かなり貿易を制限してる。国の外壁を見ても、他国からの干渉も拒否している」

 コトトは男の方に近づいた。


「だから、それが表向きだって言ってんだ」

 男はひっひと笑った。

「あんたら、この国のこと、よく知らねえようだな」


「何か、あるんですか?」

 コトトは体を前傾させ、息をのんだ。


「そりゃあ、あるさ。これだけ閉鎖的な国だ。秘密が無いわけがない」

 男はまるで講釈を垂れるように、人差し指を立てた。

「この国は一見豊かなように見えて、その実かなり不安定だ。歪な全体主義のせいで、貧富の差が広がっている。格差が広がれば、社会には隙間が生まれる。その穴に、俺たちは滑り込むのさ」


「法が機能していないと」

 アビゲイルが聞く。


「そういうことだ」

 男ははあと息を吐いた。

「この国の繁栄は、労働者階級に相当な負担を強いた上に成り立っている。そのせいで、彼らは非合法に稼がないと食っていけないのさ」


「あなたは、ここに何を買いに来てるんです?」

「決まってるだろ。魔法具だよ」


 魔法具。

 この国で作られているという、魔法と道具を組み合わせて作る技術だ。


「非正規に作られた粗悪な魔法具を大量に買ってる。まあ、それでも他国のものより優秀な品だがな」

 男はそこで言葉を止め、ぐびりとビールを飲んだ。


「そんな話、してもいいんですか?」

 コトトが聞いた。


「構わんよ。みんな知ってることだ。警察だって知ってる」

 そう言って、ひっひと笑う。


 俺はこの街を歩く人々のことを思い出した。

 お洒落な街並みとは裏腹に、どこか疲弊した色があった。


 ワイロと密売、か。

 中々、きな臭くなってきた。


「ところで、あんたらは何をしにここへ来たんだ? 商売人のギルドには見えんが」

「私たちはアベルの世界樹の恩恵を受けに参りました」

 と、アビゲイル。


「世界樹?」

 男は眉を寄せた。

「それは、アベル産の魔石を頂きに来たってことか?」

「ええ。一度だけ、恩恵を引かせていただこうかと」


「……あんたら、何者だ?」

 男は急に声を落とした。

「世界樹の話となったら、女王との話し合いになる。普通の人間が、陛下に会えるとは思えんが」

 

 女王。

 アベル国の国王は女性なのか。


「私たちはダーダリアン国王の使徒として来ております」

 アビゲイルはいった。


「ダーダリアンの国王?」

 男は目を丸くした。

「そ、そいつは――へえ、大変失礼な物言いをしてしまいました。下賤な口をきいてしまいました」

 

 急に居住まいをただし、かしこまる。


「やめてください」

 アビゲイルはにこりと笑った。

「こちらも、この国のことを色々と教えていただきました。どうか、そのままで」


「そうか。じゃあ、そうさせてもらいますわ」

 男は微笑んで、ぺこりと頭を下げた。

「ただ、いくら国王からの命でも、厳しいんじゃないかと思いますがね。ダーダリアンの王様も、強力な魔法兵団がいるアベルとの関係は壊したくないだろうし。あまり強固にいかないほうが良いかと思うが」


「……なるほど」

 アビゲイルは神妙に言い、顎に手を当てた。


「いや、ちょっと待てよ。そう言えば」

 と、男が膝を打った。

「今お城では、魔法バトルの大会が行われているんだ。たしか、それの優勝者は魔石をもらえるとか言ってたような気がするな」


「魔法――バトル?」

「女王が無類のバトルマニアでね。戦いを見るのが好きなんだ。だから、あんたたちが優秀な魔法使いなら、その大会への参加も認められるかもしれないな」


「優秀な魔法使い、ですか」

「そうだ」


 それから男は俺たちを見まわし、「あんたたち、魔法使いはいるのかい?」と聞いた。


 俺たちは一斉に、席の端にいるマキを見た。

 まだチキンを頬張っている。


「ほえ?」

 マキは視線に気づいて、首を傾げた。


「ふぁに? ふぁんかふぉう?」

 口元に、べったりと油がついている。


「……こいつで、大丈夫ですかね」

 俺はアビゲイルにきいた。


「大丈夫……だろう。真面目にやりさえすれば」

 アビゲイルは微妙な顔つきで言った。


「……真面目にやればいいけど」

 コトトが言う。


 その言葉に、俺は大きく頷いた。



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