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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第3章 『魔法国家アベルの世界樹』編
33/137

32 魔法大国 アベル 2


 ◆


 尖った屋根の家。

 モザイク調の石畳。

 道を行く馬車たち。

 往来に立ち並ぶ露店。


 初めて見る街というのは、なぜこんなにも胸がわくわくするんだろうか。


 俺は意味もなくニコニコしながら歩いた。


 アベルの町並みはレトロでとてもファンタジックな感じだった。

 色彩は豊かだし、建物は可愛いし。

 まるでゲームに出てくる古代ヨーロッパの風景のようだ。


 道を歩く人の服装は、少し変わっている。

 みな、フード付きの黒い装束を着ているのだ。


 そして、みなどこか元気がない。

 お洒落な風景に似合わず、雰囲気は少し暗かった。


「あ」


 不意にコトトが空を指さしたので、釣られて目を上げる。

 すると箒に乗った黒ずくめの魔女が、音もなく飛んでいた。


「すげー」


 俺は呆けたように言った。

 あんな絵にかいたような魔法使いもいるんだな。


 ◆


「はーダッサい服」

 と、マキが辺りを見回しながら言った。

「ったく、こいつらいつの時代の魔女よ。呆れちゃうわ」


 彼女はショッキングピンクの魔装束を着ている。

 はっきり言って、下品な色だ。


「マキが変わっているだけでしょう」

 と、アビゲイル。

「ダーダリアンでもそんな目立つ服を着た魔法使いはいませんから」


「そんなことないってー」

 マキはくるっとその場でターンした。

「魔女だって、お洒落するのは当然でっしょー。女の子なんだもん」

 

 あんまりお洒落には見えないな。

 いや、お洒落とかよくわかんねーけど。


「……何よ」

 俺の視線に気づいたマキが低い声で言った。 

「何か文句あるわけ?」


「い、いや、ないよ。あ、そういえばさ」

 俺は慌てて話を変えた。

「さっき、門兵が大佐のことを城に確認してたけど、あれ、どうやってたの?」


 俺たちがこの国に入るとき。

 門番たちはアビゲイルという名を聞いて、顔色を変えて「確認する」と言って待たされた。

 しかし、ものの10分ほどで、入ってもよいと許可が下りたのだ。


「通信用の魔石でしょうね」

 と、コトトが言った。

「それも、多分、画像も送れるタイプのやつ」


「画像も?」

「そう。アベル産の魔道具。世界でもここでしか作られてないの」


 俺ははあ、と息を漏らした。


 そんなものがあるのか。

 魔法技術ってやつか。

 

 しかし、まるでスマホだな。

 機械と魔法。

 この二つ、実はどこか似ているのかも。


「では、まずは宿を探そうか」

 アビゲイルが辺りを伺いながら言った。

「考えてみれば、ダーダリアンを出てから一度も休んでいない。さすがに疲れただろうからな」


「やったー!」

 マキが両手を上げた。

「久しぶりに、ちゃんとしたベッドで寝れる!」


「ほんとね」

 

 コトトも半眼になり、安堵の声を出す。

 マキのようにぎゃあぎゃあ騒がないだけで、彼女も気持ちは同じだったんだろう。



「それで、ですね」

 と、コトトが控えめに手を上げた。

「大佐。ちょっとよろしいですか?」


「なんだ?」

「あの、もしよかったら、あとでちょっと自由時間が欲しいなって。せっかくだからほら、この国の商店とか、見て回りたくって」


「ふむ」

 アビゲイルは顎に指を当て、しばし考えた。

「そうだな。では、明日は一日、休日にしようか」


「い、いいんですか?」

 コトトの目がらんらんと輝く。

「よーし、明日は見て回るわよー!」


 ◆


 その日、アビゲイルが決めた宿に、俺たちは入った。

 立派な外観の、ちょっと値の張りそうな宿屋。


「4人部屋はありますか」


 アビゲイルは受付の男に言った。


「ええ、ございますよ」

「では、一部屋たのむ」

「かしこまりました。料金は先払いとなりますので」

「ああ、ちょっと待ってくれ」


 アビゲイルは財布に手をかけた。


「ちょ、ちょっと待ってください」

 俺は横から口を挟んだ。

「一部屋しかとらないんですか?」


「当然だ。贅沢は出来ん」

「で、でも」


「なんだ」

 アビゲイルはじろりと俺を見た。

「もしかして貴様、一人部屋じゃないと嫌だとわがままいう気か」


「い、いや、そういうわけじゃないんですけど」

 俺はかぶりを振った。

「あの、俺、一応男なんですけど、いいんすか?」


「男だからなんだ。これまでも、同じ部屋で寝起きしただろう」

「そ、そうですけど、こういうちゃんとした宿だと、なんていうか――」


 緊張しそうだ。


「嫌なのか?」

 と、アビゲイル。


「いや、嫌じゃないっすよ!」

 俺はぶんぶんと首を振った。

「むしろ、逆です。大佐たちは嫌じゃないんですか?」


「嫌か?」


 アビゲイルが後ろの二人に聞く。


「別にー」

「私も大丈夫だよ」


 マキもコトトも即答した。


 うーん。

 この、男として見てもらえていない感。 


 ……まあ、みんながいいならいいけどさ。


「あ、分かった!」

 と、マキが手をポンとたたいた。


「なんだよ」

 と、俺。


「なるほどねー。そういうことかー。だからユウスケは一人部屋がいいのねー」

 むふふ、とマキがにやける。


「な、なんだよ、その眼は」

「いっやー、考えてみればさ、旅を始めてからこっち、ろくに一人きりになれていないもんねー。若い男の子からすると、溜まっちゃうよねー、色々と」


「なんだ?」

 アビゲイルが眉を寄せる。

「一人にならないと、何か不都合があるのか?」


「あるのよ。アビちゃん」

「なんだ。理由を言ってみろ。納得出来たら、一人部屋を用意してやらんこともないぞ」

「ほら。ユウスケ、ちゃんと言いなさい」


 マキはそう促す。

 俺はぶんぶんと首を横に振った。


「い、いや、お前、何を言わせたいんだよ」

「そんな我慢しないで良いのよ」

 マキはやけに優しい目になる。

「あんたくらいの年の男の子だったら、そりゃたまるわよね」


「なんだ、さっきから溜まる溜まると」

 アビゲイルはずい、と俺に近寄った。

「なにが溜まるのだ?」


「い、いや、大丈夫っす。溜まってないっす」

「いーや、溜まってるわね。きっとパンパンだわ」


 俺は顔が赤くなった。

 こいつ――なんてデリカシーがねえんだ。


「パンパンなのか?」

 アビゲイルが小首を傾げた。

「どこか、膿でも溜まってるということか? どれ、見せてみろ。私が抜いてやる」


 そう言って、アビゲイルが近づいてくる。


 俺はいよいよ硬直した。

 

 ……大佐。

 大佐がそんな言葉言ったら駄目っす。


 思わず、体をくの字に曲げた。

 

 すいません。

 どうやら俺――


 たまってます。


「ま、マジで大丈夫っすから! みんなと同じ部屋でいいっすから!」

「そうか? しかし、化膿すると厄介だぞ。痛くしないから、見せてみなさい」


 アビゲイルはしゃがみ込み、上目遣いで俺を見る。

 うわ、と俺は思わずごくりとつばを飲み込んだ。


 大佐は普段から絶世の美女だけど――

 このアングルだと、いつにも増して……鬼可愛い。


「いいっす! まじで、これ以上はもういいっす!」


 これ以上は本気でヤバイ。

 俺は逃げるように廊下の隅に駆けた。


 ケタケタケタ、という笑い声がして、目を移す。

 すると、マキがお腹を抱えて笑っていた。


 ……この野郎。


 

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