30 ガビビ族の世界樹
◆
3日後。
早朝。
俺たちは、ガビビ族の護る世界樹の前へとやってきた。
苔むした木々。
伸び放題の蔦。
そんなうっそうとした森の中にある、ひときわ大きな木。
モンビーレがいなくなり、動物たちも戻ってきている。
枝の上では赤い鳥が鳴き、樹幹の鹿が腰を下ろして休んでいた。
天祐世界樹は、そんな彼らを見守るように鎮座している。
「わ……あ」
俺は思わず声を漏らした。
なんて大きいんだ。
ダーダリアン国の世界樹よりもさらに一回りも大きい。
その威容は――やはり、身震いするほどの迫力があった。
村人の話では、この世界樹は一度に3つしか出さないと言う。
その代わり、ひと月に一度ほどの頻度で魔石が出てくるとのことだ。
「さあ、SSの魔石を頼むわよ。苦労したんだから」
と、マキが言った。
「いや、そんな期待されても困るよ」
俺は首を振った。
「駄目。絶対SS。黒い魔石。それ以外は許さないから」
マキは腰に手を当て、俺をねめつけた。
どうやら、ここでの生活に相当ストレスがあったようだ。
「無茶言っちゃいけないってば」
と、コトトが言った。
「世界樹によっては、絶対にSSがでないものもあるからさ」
「そうなの?」
マキが不満そうに言う。
「うん」
コトトが頷いた。
「ユウスケの能力は多分、一発で一番いい奴を引けるから、もしもそれでSSが出なかったら――もう諦めていいと思う」
「……なによそれー」
マキは下唇を出して不満顔を作る。
「こんだけ頑張って、SS無し?」
「仕方ないだろう。駄々をこねるな」
アビゲイルが諫める。
「さ、それではどうぞ」
村長に促され、俺は『チート=スキル』を発動させてから、世界樹の穴に手を突っ込んだ。
前やった時と同じように――手がじんわりと暖かくなって来た。
やがて、手に魔石の感触が現れる。
さあ――どうだ。
俺は恐る恐る手を引いた。
出てきたのは――青色の魔石だった。
この色のレア度は「S」である。
「あっ!!」
マキが口をとがらせた。
「何やってんのよ! ハズレじゃん!」
「ハズレじゃないってば!」
コトトがすかさず大声を出す。
「Sの魔石だって、超貴重品なんだから! ああっ、すごい! うっとりしちゃう! 早く鑑定したい! 見せて見せて!」
俺はほい、と言って、コトトに魔石を渡した。
彼女はすぐにル-ぺを使って鑑定を始めた。
「そんなこと言ったってさ、私たちの目当てはSSなんだから」
マキが不満そうに言う。
「諦めろ」
アビゲイルがぴしゃりという。
「というより、この能力は凄まじいぞ。やはりこの旅には、ユウスケは絶対にかかせん存在だな」
「そんなすごい奴には見えないけどね」
マキははあ、と息を吐いた。
「でも、どうやら、長い旅になりそうねー」
「どうだ? コトト」
アビゲイルが問うた。
んー、とコトトは生返事をし、しばらくして「はい」と頷いた。
「これ、特殊系の魔法ですね」
「特殊系?」
アビゲイルが眉を寄せた。
「レア度Sの特殊系魔石か。そいつはまた珍しいな」
「ええ――おそらく、これは『透明』だと思います」
「バニシュ?」
アビゲイルは少し声を大きくした。
「それはどのような効力を持っているのだ?」
「身につけて発動させるだけで、透明になれるんです」
「透明に?」
「はい。気配も消えます」
ほお、とアビゲイルは顎に手を当てた。
「そのような不思議な魔石があるのだな」
「めちゃくちゃ……レアなものです」
コトトは興奮気味に、んふー、と鼻から息を出した。
「も、ものすごい一品です! わざわざここまでやって来た甲斐がありましたね!」
「はえー」
と、マキ。
「そいつはいいもん引いたわね」
やるじゃん、とマキは俺の背中をたたいた。
「サンキュー」
俺は苦笑した。
ったく、すぐに掌を返しやがって。
まあ、悪い気はしないけど。
「私が保管する」
そういって、アビゲイルはマキから魔石を受け取った。
「では、ガビビの民に礼を言ってから、山を下りるか」
「はい」
「了解です」
「はー……やっとオサラバできる」
口々に言いながら、俺たちは歩き出した。
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ガビビ族の世界樹で入手した魔石
レア度 S 特殊系魔石 『透明』




