20 森の中の聖域 2
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「……今、そこからなんかの泣き声したわね」
と、マキがこちらを見ながら言った。
「うん。した」
と、コトト。
「ポチの声のようだったが」
アビゲイル。
「ポチ? まさか」
と、コトトがちょっと笑う。
「あの魔獣は、ユウスケにべったりなんだから、一匹でそんなとこいいるわけがないですよ」
「……なるほどね」
マキが言う。
「どうしたの?」
コトトが聞く。
「ペットがいるところには、飼い主ありってこと」
マキが言い、温泉からざばりと上がった。
ま、まずい。
俺は慌てた。
今すぐ逃げないと――。
だが――近くに隠れる場所はない。
今さら茂みに戻るわけにもいかないし――。
(すまん、ポチ! おとりになってくれ!)
俺はとっさに、ポチをマキのほうへと投げだした。
ポチはふよふよと浮遊してマキの方へと向かった。
「あら」
マキがそう言って、ポチを見上げた。
ポチはキューン、と可愛らしい鳴き声をあげながら、空中でホバリングした。
小さな羽でも、浮くことが出来るらしい。
「あら、あんた、一人なの?」
ポチを抱っこしながら、マキが言う。
「あのドスケベそうな男は一緒じゃないの?」
誰がドスケベだ。
しかし、うまく気を引けたな。
俺はその隙に逃げ出した。
◆
「ほんっとに、見てないのね?」
帰って来たマキが、俺に向かって言った。
「見てないよ」
俺はしらばっくれた。
「でも、ポチは温泉の近くにいたんだけど」
「知らないって。つか、俺もポチを探してたんだから」
「……あくまでしらをきるのね」
マキははあ、と息を吐いた。
苦しい言い訳だが、物的証拠は何もない。
状況証拠だけならなんとか言い逃れられるはずだ。
マキは不満げな顔をしながら、ポチを擦った。
するとーー。
(すまん、ポチ! おとりになってくれ!)
いきなり、俺の声がした。
「あれ?」
マキが首を捻った。
「今、この子から、ユウスケの声がしたような――」
マキはもう一度、胸に抱いているポチを色々と撫でまわした。
すると――右耳の後ろを触った時、
(すまん、ポチ! おとりになってくれ!)
また、俺の声がした。
「……どうやら、録音機能があるようだな」
マキの背後から、アビゲイルが顔出して言った。
「ろ、録音機能!? なにその近代的な機能! この世界観にあってないっしょ!」
俺は思わず、大声を出した。
「メタなこと言ってる場合じゃないでしょ」
マキが満面の笑みで俺に迫る。
「ねえ、知ってる? 軍では、上官へのセクハラは極刑なのよ」
「い、いや、それは知りませんけど――」
俺は逃げようと踵を返した。
すると――。
目の前に、アビゲイル大佐がいた。
手には、剣を持っている。
「どうやら、仕置きが必要のようだな」
ダーダリアンの国王様。
すいません。
どうやら、俺の旅はここで終わりそうです。




