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チートスキルで世界樹ガチャを引きまくれ!  作者: 山田マイク
第2章 『ガビビ族の世界樹』編
18/137

17 少数民族が祀る世界樹


 ◆


 これから初めての冒険が始まる。


 俺はドキドキしながら、ダーダリアンの城下町を出発した。

 町の外にはまず、見渡す限りの草原が広がっていた。


 強い風が吹いて、思わず目を細める。

 地平線の向こうには高い山々の稜線が見えた。


 俺たちはここから、ダーダリアン国の領土を出るまで川沿いに南下し、さらに広大な密林を抜け、その向こうにある山脈を目指す。

 そこは地図上はどこの国にも属しておらず、少数民族が暮らしている未開の土地だと言う。


 アビゲイルの話では、お目当ての「天佑世界樹」はそこにあるらしい。


 5分も歩かない内に、モンスターが現れた。

 鱗粉をまき散らす、巨大な蛾のような魔物だった。


 俺は身構えたが、初戦闘は一瞬で終わった。

 あ、と思った時にはもう奴らは真っ二つになって落ちた。

 

 俺の出番、ねえや。

 俺は安堵するとともに、張り切っていた自分がちょっと恥ずかしかった。

 そして俺は、アビゲイルやマキがあまりにあっさり倒すので、やがて戦闘にも慣れていった。


 ◆


「まだ発見されて日が浅い世界樹だ。小さな部族が守っているようだが、油断は禁物。あの辺りはモンスターも強いと聞くからな」

 川沿いの道なき道を歩きながら、アビゲイルはそのように話した。


「余裕っしょ。私とアビちゃんがいれば余裕っしょ」

 マキは茶化すように言った。


 たしかに、余裕だろうな。

 俺は必死に二人について歩きながら思った。


 この二人は全く底を見せていない。

 直感的にそう思った。

 この二人の後ろにいる限り、俺とコトトに危険な目に会うことはまったくない。



 日が傾きだしたころ、一度休憩をとった。

 俺のための休憩だ。

 ほんと、俺は一般高校生と比べても体力がない。


 みんなについていくだけでひぃひぃ言っている。

 俺は岩場にしゃがみこみ、背を丸めて項垂れた。


「あの」


 木陰で休んでいると、コトトがマキに聞いた。

 アビゲイルは水を汲みに行っている。


ぶっちゃけ、三人にされると困る。

コトトとマキはなんつーか……


 微妙な空気なんだよな。

 マキはやっぱり、コトトのことを認めていないみたい。



「その杖って、どう言った品物なんですか?」

コトトがマキの杖を見ながら言った。


 どうやら、距離を詰めようとしてるらしい。

 

 がんばれ。

 俺は心の中でコトトを応援した。


「これ?」

 マキは持っていた杖を軽く上げた。


 杖の胴に葉っぱのような意匠の紋章がある、金属で出来た杖だ。

 先端には、黒い球体が誂えてある。


「うん。ちょっと見ても良いでしょうか?」

「別に良いけどー」

 マキはちょっと口をとがらせて、それをコトトに手渡した。


「やっぱり……見たことも聞いたこともない武器だわ」

 コトトはひとしきり鑑定すると、そう呟いた。

「特に、この黒い球体。金属でもないし、鉱石でもない。少し魔力も宿っているみたいね。一体――どこで手に入れたのでしょうか?」


 コトトは未知の道具に目を輝かせながら聞いた。


 世界の武器防具に明るいコトトが「見たことがない」と言うのだから、相当レアなものなんだろう。

 そう言えば、ゴードンも似たようなことを言っていた。


「どういう品って言われても――物心ついた時には持ってたから」

「代々、家系で受け継いでいるものってことですか?」

「ううん。私が今の親に拾われたときに、持っていたんだって」

「拾われた?」


 思わず、俺は口を挟んだ。

 

「そ」

 マキは肩をすくめて、俺たちから目線を外した。

「戦争孤児ってやつね。子供のころの記憶はほとんどないんだけど、気付いたらこの国の孤児施設にいたわけ」


 とんでもないことを、さらりという。


「ご、ごめんなさい」

 コトトが謝る。


「謝ることないってー」

 マキが頬をほりほりと掻いた。

「だからやなのよねー。こういう空気になっちゃうからー」


「でも」

 と、コトトが自嘲気味に笑いながら言った。

「でも、それじゃ、私と同じですね」


「え?」

 マキは思わず目を開いた。

「あんたも、孤児そうなの」


「うん」

「……ふーん」


 マキは短く頷いた。

 値踏みするように、コトトを眺めている。


「ただ私の場合は、お金に困った両親に捨てられただけなんですけどね。マキさんと違って、両親の記憶もばっちりある」

 コトトはあはは、と笑いながら言った。


 両親の思い出がある分、そちらのほうが残酷かもしれない。

 俺はずきりと胸が痛んだ。


 ――商人がお金を稼いで何が悪いの。


 つと、以前コトトが言っていた言葉を思い出す。

 きっと、お金には特別な想いがあるんだろう。


 マキは「そう」とだけ言って、黙り込んだ。

 すぐに背を向けてしまったので、表情は伺えなかった。


「待たせたな。では、進むとしよう」

 やがて、アビゲイルが帰って来た。


「うぃっす」

「はい」

 俺とコトトは返事をした。


「コトト」

 マキが、コトトに向かって言った。


「なんですか?」

「今日から、敬語はなしにしましょ」


「え? でも――」

「同じ仲間なんだから」

 それだけ言い、マキは歩きだした。


 そしてその途中、一度振り返り、

「ユウスケ。あんたもだからね」

 と言って、指をさした。


「ああ、わかった」

 と、俺は言った。


 ふと横を見ると、彼女の背中を見ながら、コトトは微笑んでいた。



 ◆


「さて、そろそろお目当ての世界樹がある山が見えてくるぞ」

 アビゲイルが地図を見ながら言った。


「……その地方に住んでいるのは、ガビビ族ですね」

 神妙に言ったのは、コトトだった。


「うむ」

 と、アビゲイルは頷いた。

「知っておるのか」


「はい。あの地方からはよい防具の材料となる石が採れるのです。師匠から、一度教えてもらったことがあります」

 コトトは淀みなく答えた。


 こいつはやはり物知りだ。

 商売のノウハウではゴードンには負けるかもしれないが、知識量は負けてない。


「ならば、私が憂慮していることも分かるな」

「ええ。おそらくは」

 コトトは神妙な声音で言った。


「憂慮……ですか」

 そこで、俺が口を挟んだ。

「えっと、何か問題でもあるんでしょうか」


 なにを心配することがあるんだろうか。

 アビゲイルとマキさえいれば、どんな危険も楽勝に思われた。


「ガビビ族は、別名『首狩り族』って言われてるんだよ」

 と、コトトが言った。


「く、首狩り族?」

 驚いて、思わず声が裏返った。


 一気に背筋が冷えた。

 恐ろしく、強烈なワードだ。


「そうだ」

 と、アビゲイルが後を継いだ。

「やつらはかなり好戦的な部族だ。敵と判断したら容赦はしない。全力で襲ってくる。噂では、戦闘能力もかなり高いと聞く」


「余裕だってば」

 マキはのん気に答えた。

「アビちゃんがいるんだから」


「むろん、私たち二人だけなら問題はない。だが――」

 アビゲイルはそう言って、俺たちを見た。


「ああ、こいつらね」

 マキは苦笑した。


「うむ。相手はモンスターでは無く人間だ。奴らには知恵がある」

「まあね。人質にとられたりしたら厄介だし」


 俺とコトトは目を合わせた。

 どちらともなく、ぶるっと震えた。


「ユウスケ。コトト」

 と、アビゲイルが言った。

「とりあえず、やつらの縄張りに入ったら、私たちから離れぬように」

 

 言われなくともそうさせていただきます。

 はあ――と、俺は背を丸めた。

 いきなり、すんげー怖い。



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