納得少女
夕暮れ時。
人通りの少ない道を歩く少女。
少女の真後ろを歩く少年。
少女は何かを決心したように少年に話かける。
「あの……私の後ろを歩くのやめてくれませんか?」
「……?」
「あなたに話しかけているんです!」
「え……?僕???」
「……なんでずっと私の後を付いてくるんですか」
「た、たまたまだよ!目的地が偶然にも一緒なんだ!」
「……本当にですか……?」
少年に対して怪しむ少女。
怪しむのも無理はない。
少年は5時間前から少女の真後ろを歩いているのだ。
「ほ、本当だよ。偶然ってあるもんだなぁー」
「……私は家を出る前にシャワーを浴びていました」
「そ、そうだね」
「あなたは私の後ろでシャワーを一緒に浴びていました」
「……あ、浴びてたね」
「……なんでそんなことをするんですか?」
焦った表情をする少年。
「……ぼ、僕も汗をかいててね。丁度シャワーを浴びたい気分だったんだ」
「自分の家でシャワーを浴びたらよかったんじゃないんですか……?」
「……一緒に浴びたほうが水道代が浮くでしょ?節約だよ。節約」
「……なるほど」
納得する少女。
「……まだあります。私は家を出た後、服屋に行って気になった服を何着か試着しました」
「……してたね」
「あなたは私と一緒に試着室に入っていました」
「……は、入ってたね」
「……なんでそんなことをするんですか?」
焦った表情をする少年。
「……い、妹に服をプレゼントをしようと思ってね。参考に見てたんだ」
「……私が着た服が妹さんも似合うとは限らないですよね……?」
「……実は妹なんていないんだけど、見たかったから見てたんだ」
「……なるほど」
納得する少女。
「……まだあります。服屋を出た後、私はお腹が痛くなってトイレに行きました」
「……行ってたね」
「あなたは私と一緒にトイレに入っていました」
「……は、入ってたね」
「……なんでそんなことをするんですか?」
焦った表情をする少年。
「……僕もお腹が痛かったんだけど、出そうで出ない感じだったんだ」
「……男性トイレに行ったらよかったんじゃないんですか……?」
「……純粋に君がトイレをしている姿を見たかったんだ」
「……なるほど」
納得する少女。
しかしながら、まだ腑に落ちていない様子。
「……聞いたことに関してはわかりました。……でも、ずっと私の後を付いてくるのは絶対におかしいと思うんです」
「……早く警察を呼ばない君のほうがおかしいと思うんだ」
「……なるほど」