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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Goodbye To [Nameless] Avenger
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Breed [Hollow] Blooms 8

 荒れ果てた建物、抉られたアスファルト、横転するジープ。


 紛争地帯の市街地を模したそのフィールドに4機のD.R.E.S.S.が立っていた。


 海上迷彩の装甲に白い鷲のエンブレムを描いた、クラック改修機であるジョナサンのインヴィジブル・エース。


 青白赤のヒロイックなトリコロールカラーの盛り固めた装甲にドラゴンのエンブレムを描いた、ルード改修機であるチェレンコフのゴリニチ。


 薄いピンクの装甲に紫の花のエンブレムを描いた、クラック改修機であるアネットのサイネリア。


 そして灰色を基調とした灰色と黒のツートンの装甲にバーコードのエンブレムを描いた、ルード改修機であるレイのネイムレス。


『最後にもう1度確認します。弾丸はペイント弾を使用、ミサイルとロケットは効果が大きく違うので気をつけてください。そして撃墜判定、もしくは戦闘不能となった場合その場で動かないように』

『じゃあこっちも最後に聞いておくけど、本当にブレードユニットを代えなくていいのか?』


 黄色のデュアルアイを輝かせるインヴィジブル・エースから漏れ出すジョナサンの声に、レイは思わず問い掛けてしまった。


 その4機が装備している銃器はペイント弾を装填してある物に代えられているその中で、異彩を放っている飛び出しナイフのような機構を持ったブレードユニット。

 当たり所が悪ければ死ぬというペイント弾とは違い、当たれば確実に死ぬように作られたブレードユニット。


 正式所属が決まるまでジョナサンとの1対1で繰り返した訓練でも使っていたそれを、3対1という数の上ではジョナサンが不利なはずの戦闘で使うことにレイはどこか抵抗を感じていた。

 しかしジョナサンが纏うインヴィジブル・エースは、そのレイの言葉に呆れたとばかりに頭を振っていた。


『構いませんよ、むしろやれるものなら真っ二つに切り裂いてみてください。私は隊長の責務を放棄するような子供に負けるほど弱くはありませんから』

『……後悔すんじゃねえぞ』


 ジョナサンの苦言に毒づいたレイは、お互いの定められたポイントへとネイムレスの背部ブースターを吹かせて戻る。


 チェレンコフとアネットが立てた作戦はこうだった。


 ネイムレスとゴリニチがフロントマンとしてインヴィジブル・エースを襲撃して撹乱し、後方からジャミングで自身の存在を消したサイネリアが狙撃を仕掛ける。

 サイネリアと同じくクラック改修機であるインヴィジブル・エースに、隠れられてしまう前に一気に片付けてしまおうという電撃戦。

 しかしレイは隠密(ステルス)襲撃(アサルト)が常套手段である、インヴィジブル・エースに急襲を掛ける程度の電撃戦で、急造の部隊が勝利出来る訳がないと確信していたのだ。


 ――でも俺は勝たせもらう


 ジョナサンは「模擬戦で何かしらの結果が出るまでは全員に依頼を請けさせない」と言っていた。


 レイが目指すのは味方であるチェレンコフのゴリニチを利用しての、レイ個人の勝利なのだ。

 レイは勝利でき、ジョナサンに部隊は不要だと思わせるにはそれしかない。


『準備出来てんのか、クソチビ?』

『ああ、アンタの立てた作戦も理解してる。頼りにしてるぜ、"先輩"』


 思ってもない言葉を吐き出しながら、灰色の装甲の下でレイは口角を歪ませる。


 誰かに利用されるのではなく、誰かを利用するのだ。


 そして準備が出来たというメッセージをアネットがジョナサンへ送ったのを切っ掛けに、壁に取り付けられたスピーカーからマシンボイスが漏れ出す。


『3』


 ネイムレスとゴリニチが手に握る什器を構えて前傾の姿勢を取り、サイネリアは片膝を付いて長身のスナイパーライフルを正面へと構える。


『2』


 シアングリーンの視界には進むべき作られた荒れた路地が広がり、インジケーターはブースターが飛び出す準備が出来た事を告げていた。


『1』


 レイは2人に気付かれないように、一瞬だけインジケーターの数値を下げる。


『0』


 そしてゴリニチがいち早く飛び出し、それから少し遅れるようにネイムレスがそれに続いた。

 思い描いていた展開とは少し違うものの、それを新兵特有の緊張とあたりをつけたチェレンコフはゴリニチのハウザーの砲口とアサルトライフルの銃口を正面へと向ける。

 ネイムレスの装備は近接特化の物であるため急襲の戦力としてはあてにならず、チェレンコフは黄色い視界の中で有効射程距離までカウントダウンを始める。

 やがてゴリニチの黄色い単眼はインヴィジブル・エースを捉え、チェレンコフは自身の作戦がなったことを確信した。


『もらったぜ、社長ォッ!』


 そう叫び声を上げたチェレンコフがハウザーとアサルトライフルの引き金を引こうとしたその時、インヴィジブル・エースのアサルトライフルから1発の弾丸が発射される。

 ブースターを吹かせることで回避したチェレンコフは、それから意識を外して更に速度を上げようとしたその時、ゴリニチに下から噴出したペイントが襲い掛かる。


 ――仕掛けてやがった、クソッタレ


 その光景を背後から見ていたレイは胸中で毒づきながら、背部ブースターを全開で吹かせてゴリニチの背中へと飛び出す。


 この戦場にはジョナサンによって既にいくつかトラップが設置されていた。


 クラックの索敵性能を使用すれば見つかるはずだったそれは、急襲作戦に夢中だった小隊が気付けるはずもなくインヴィジブル・エースの弾丸を喰らってその内容物をゴリニチへと吐き出した。

 そしてネイムレスは既に撃墜判定を受け速度を落としていたゴリニチへとタックルをかますようにぶつかり、左手にその頭部を掴んだままインヴィジブル・エースへと向かっていく。


『テメエ何しやがる、クソチビ!?』

『黙ってろよ、アンタもう死んでるんだぜ?』


 チェレンコフの怒鳴り声を、レイはそう言って簡単に切り捨てる。

 インヴィジブル・エースアサルトライフルとマシンガンの弾丸をゴリニチの分厚い装甲で受けながら、ネイムレスは若干速度を落としながらも撃破対象へと向かっていく。

 その彼我の距離は段々と狭まっていき、ネイムレスの戦闘範囲に入った事を確認したレイはゴリニチをインヴィジブル・エースへと投げつけ、左腕に装備したブレードユニットを展開する。

 長引けば勝ち目はないと理解しているレイは1撃で終わらせようと、マシンガンのグリップを握った右手を突き出して合金の刃を輝かせる左腕を引く。


 ――殺す


 手を抜いて勝てる相手ではないジョナサンへと全力の1撃繰り出そうとしたその瞬間、レイはありえてはならない事態に気付かされる。

 ゴリニチを叩きつけて動きを奪っていたはずのインヴィジブル・エースは、ゴリニチを挟んで対角線上に居るはずだった。

 しかしインヴィジブル・エースはゴリニチを伸ばした足の裏で受け止め、その力に逆らわないようにブースターを駆使して後退してしまい、ブレードユニットの有効範囲から逃れてしまっていた。

 慌ててレイが背部ブースターを吹かせて再度接近しようとしたその時、大口径の銃口から放たれたペイント弾がネイムレスの足を捉えてバランスを崩させる。


 ――あのクソ女


 レイはその弾丸が飛んできた方角に居るサイネリアを纏っているアネットへと胸中で毒づきながら、それでもネイムレスの体勢を整えようとするもその時にはもう胸の装甲に2つの銃口が突きつけられていた。


『お仕置きの時間ですよ、レイ君?』


 そして放たれた無数の銃弾にネイムレスの灰色の装甲は、ペイント弾による赤へと染められいった。

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