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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Goodbye To [Nameless] Avenger
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Breed [Hollow] Blooms 2

 居間のソファに腰を掛けて向き合うヘンリーと由真は、無感情な瞳を向けてくる息子へと事務的に告げる。


 由真が研究、開発に参加していたD.R.E.S.S.が完成し、ヘンリーがそれのテスターに選ばれたということ。

 その全てのものに1流の人間達を使ったD.R.E.S.S.は、大々的にテスト起動が行われる事になったということ。

 そのテスト起動に2人の息子であるレイの出席を求められているということ。


 どうせ関係者に自身の事を聞かれて慌てた母が適当なことを言ったのだろう、とレイは深いため息をつきながら拒むことの出来ない要求を呑むことにした。


 余計なことをするな。何も喋るな。ただ笑顔を浮かべていろ。


 そうしつこいほどに教え込まれたレイはその数日後、連れて来られたヴァンデンヴァーグ基地のテスト起動を行う会場の関係者席で、散髪したての黒髪を落ち着かないとばかりに指先でいじっていた。

 テスターであるヘンリーは格納庫に行っているためそこにはおらず、レイは着飾っている由真に手を握られていろいろな人達への挨拶に付き合わされていた。


 早く帰りたい。


 目の前の相手も見ずにただ取り繕った微笑みを浮かべているレイはそう願いながら、その時を待っていた。


 父に似て綺麗な瞳をしている。

 母に似て聡明な顔つきをしている。


 その言葉の全てが鬱陶しかった。


 そしてレイが子供用の礼服の窮屈さに苛立ち始めた頃、格納庫のシャッターが開かれて黒い巨体を格納したハンガーがトレーラーの荷台に載せられて人々の前へと姿を表わす。

 黒を基調にした黒と赤のツートンの装甲、流線型のフォルム、2丁のライフルと腰から伸びたケーブルに繋がれた巨大な砲身を持ったD.R.E.S.S.――ディファメイションだ。


 レイが無感動にそれを眺めていると、辺りが段々と騒がしくなってくる。

 単眼のマシンアイに赤い光を灯したディファメイションに、ディファメイションを纏っているはずの、ヘンリーのD.R.E.S.S.であるワイルド・カードが攻撃を始めたのだ。


 その光景に人々は狂乱し、我先にと逃げ出し始める。


 それは由真も変わりはなく、由真はレイを突き飛ばして高いヒールで転びそうになりながらも、安全が保障されているわけではない施設へと走り出す。

 しかしその施設の扉はそこに殺到する人々と共に、巨大な合金製の流れ弾によって、原型を止めないほどに破壊されてしまう。

 その余波で煽られた由真は体勢を保つ事も出来ず、そのままアスファルトに叩きつけられてしまう。


 急いで逃げなければ死んでしまう。


 ディファメイションの粒子兵器の開発に携わった由真だからこそ、理解してしまった。

 ディファメイションに立ち向かっているワイルド・カードとインヴィジブル・エースが、敗北すること。

 この瞬間にもディファメイションへと向かっていく援護が、無駄な物であること。


 赤、海上迷彩、そして黒を纏う男達が待っているのを遠くに見ていた由真は、こちらに向けられることがあってはならない光を確かにその目に捉える。


 青白い粒子の光、ディファメイションの手に握られた黒で塗り潰したライフルに、高速で集束する何もかもを焼き尽くす光。


 その自らが兵器転用した光に腰を抜かしてしまった由真は、視界の端でゆっくりと立ち上がっている自らの息子であるレイを見つけた。

 恐怖から声帯は引きつり、言葉を紡ぐ事も出来ないまま由真はただ縋るようにレイへと手を伸ばす。

 その無様であっても生き延びようとするその母の様子にレイは気付くも、何もせずにただそれを笑顔で眺めていた。

 そんな息子の様に激昂した由真はハイヒールを脱いでレイへと投げつけ、自身の方へ来るように促す。

 それでもレイはただ由真のその様子を、笑顔で眺めているだけで何もしようとはしない。


 そして由真は気付いてしまった。


 余計なことをするな。何も喋るな。ただ笑顔を浮かべていろ。


 契約は確かに結ばれ、自らが突き放した血の繋がった息子は皮肉にもそれに応えて見せていた。

 その意図がどういうものかは分からないが、由真はディファメイションと自らの間に入った国防軍のルードに青白い粒子の光が集束する方向が向けられたのを理解してしまう。


 そして由真は青白い光の奔流に飲み込まれながら、幼い頃は綺麗な色だと褒めていた藍色の瞳が何の感情も写していないことに気付いてしまった。


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