Dedicate [4] Blooms 1
グレーム・レイク空軍基地、通称エリア51がグリーンアイド・モンスターによって襲撃された。
基地の内部は大量破壊兵器を使われたように荒れ、夥しい量の血の痕跡が辺りに残されていた。
その凄惨な有様に人々はグリーンアイド・モンスターの犯した罪に怒り、そして恐怖した。
一夜にしてアメリカ全土に広まったそのニュースと、ギリシャ、ロシア、日本という場所に突然現れ、そして対象となってしまったそれらを焼き尽くして消えるその存在に世界は恐れるほかなかったのだ。
街や襲撃された場所に設置された防犯カメラの映像1つから、空港の出入国記録の全てを探してもそれらしい人物を特定できずにいたのだから、それも無理はないだろう。
しかしクリスマスが間近に迫った頃、世界はとある声明によって驚愕させられる事なった。
ギリシャで起きたフリーデン商会襲撃事件。
ロシアで起きた天然資源施設爆破事件。
日本で起きた会社員連続誘拐殺人事件。
アメリカで起きたエリア51襲撃事件。
それを行ったとされているグリーンアイド・モンスターと呼称されたD.R.E.S.S.の正体、そしてプロジェクト・ワールドオーダーの真相がその声明には記載されていたのだ。
ギリシャでのフリーデン商会襲撃事件は、会長であるダミアン・フリーデンの1人娘であるフィオナ・フリーデンという少女の誘拐が目的だったということ。
ロシアでの天然資源施設爆破事件は、エリザベータ・アレクサンドロフを拉致し、サラトフの天然資源施設に部隊を配置していた敵対勢力。その敵対勢力が議員の救出をするために派遣された傭兵を殺害しようとした結果だということ。
日本での会社員連続誘拐殺人事件は、BLOODという非合法のナノマシン兵器開発に気付いていた社員という都合の悪い存在を鴻上製薬が消していたということ。
そしてエリア51の地下施設に軟禁されていたイヴァンジェリン・リュミエールは、父を殺され、軟禁された母の命と引き換えに新型のD.R.E.S.S.開発を強要されていたということ。
それら全てを内包した計画、その計画はプロジェクト・ワールドオーダーと呼ばれていたということ。
グリーンアイド・モンスターと呼称されていたD.R.E.S.S.はイヴァンジェリン・リュミエールの私兵であり、そのプロジェクト・ワールドオーダーの阻止のために転戦を繰り返していたということ。
その声明の内容を知った人々はあまりにも出来すぎた話に嘲笑を浮かべていたが、その内容に顔色を一変させた。
オブセッションのヘイト・スキャッターとBLOODの一部データと、差出人であるイヴァンジェリン・リュミエールの名前は一部の人間達を隠蔽に駆り立てた。
しかしその誰かにとって都合が良いように改ざんされている声明の隠蔽は、"何者"かによって妨害されてしまう。
その上ロシアでの被害者であるエリザベータ・アレクサンドロフが声明は事実であり、自身の誘拐はラスールと名乗る武装テロ組織と名前も知らない民間軍事企業によって行われていたと公表した。
それによってアメリカ軍国防軍が所持していたディファメイションというD.R.E.S.S.が、何者かによって強奪されていた事。
それに恐怖した資産家達がディファメイションに対抗出来るD.R.E.S.S.を求め、イヴァンジェリン・リュミエールを監禁していた事。
その上でBLOODというナノマシンで何もかもを手中に収めようとした、未だ世界で続く経済戦争を裏で操っている人間達の姿をそれらの事実と共に白日の下に晒した。
その結果、ディファメイションという危険なD.R.E.S.S.を強奪された国防軍は、国民の信頼を完全に喪失した。
代表取締役が死亡しスポンサーが犯罪行為により逮捕された民間軍事企業H.E.A.T.は、中心人物を失った事によって機能を停止してやがて倒産した。
鴻上製薬は代表取締役である昌明・鴻上とBLOOD製作に加担した者達が逮捕され、上層部の人間が全員消えてしまったために、会社の権利は昌明の1人娘である晶・鴻上に譲渡された。
しかし晶は社を売却して被害者の遺族らに賠償をし、鴻上製薬は他の製薬会社に吸収される事になった。
そうして最後まで様子見に徹してたフリーデン商会を含めた世界のあらゆるものが、ゆるやかな変化を強要された。
しかしそれでも戦火の灯し手が変わっただけで、世界は争いをやめようとはしなかった。