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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Talk To [Alias] Messiah
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[Forbidden] Fruit Is Sweetest 4

 炸裂する銃声、殺到する弾丸をネイムレスはジグザグな軌道でを描いて回避しながら、ミサイルポッドのハッチを開いて黄色のマシンアイへミサイルを発射する。


『殺せ! データと報酬の回収は殺してからゆっくり探せばいいさ!』


 飛来するミサイルを弾幕を張って撃墜したルードの男は声を張り上げて、ネイムレスの撃墜を仲間達に命じる。

 その言葉に無数のD.R.E.S.S.達は戦う事も出来ないサイネリアに警戒から外して、盾を装備したクラックを先頭に、ブレードユニットを装備したルードとクラックがネイムレスへと殺到する。


 ――近接格闘装備を持ったのが2機、盾を装備したのを含めれば3機


 盾を持ったクラックをネイムレス・メサイアで攻撃して動きを止め、盾越しに翻弄しながら他の2機を各個撃破する。

 勝機など元よりないレイは、マシンガンを持つ右手を前に突き出すように半身になりながら左腕をいつでも振りぬけるように引く。

 しかしその考えはスナイパーライフルの狙撃と、盾を装備したクラックとネイムレスの間に割り込んできたクラックによって覆される。

 クラックの合金の刃による斬撃を、ネイムレスはブースターを吹かせてなんとか回避する。

 だが以前ブルズアイに吹き飛ばされ、新しく付け直した右腕のハードポイントが叩き斬られてしまう。


『直したばっかだぞ、クソッタレ!』

『恨むなら自分を恨みなよ! こっちは穏便に済ませてやろうとしたってのにさ!』

『よく言うぜ! 金だけ奪って殺すつもりのくせによ!』


 レイはそう怒鳴りながらも、細かく回避機動を取りながら合金の刃を回避し続ける。

 ネイムレス・メサイアはチェーンソーであり、外歯の強度が分からない以上打ち合いをする事は出来ないのだ。


『家族も仲間も居ないような嫉妬狂い(グリーン)(アイド)化け物(モンスター)のお前なんかが生きてていい理由はないんだ。構いやしないだろう?』


 隊長格のルードはそう言いながらサイネリアから奪い取ったスナイパーライフルを、ネイムレスに向かって発砲する。

 放たれた弾丸はネイムレスの右腿の装甲を抉り、ネイムレスはその場に縫い付けられてしまう。


 ――クソッタレ


 再度突撃を仕掛けてくる3機のD.R.E.S.S.をシアングリーンの視界で捉えながら、レイは振り上げられた合金の刃を回避できないことを理解する。

 一瞬というには長い時間、永遠というには瞬くような短い時間。


 その中でレイは改めてネイムレスの左腕を引いた。

 せいぜい1合もってくれればいい、そう請いながらレイは左腕を横薙ぎに振るう。

 振るわれたチェーンソーの刃は、叩きつけられた合金の強度に負けてその動きを止めるだろう。その後無理矢理にでもクラックが持っている盾を奪って、牽制しながら距離を取ればいい。


 その程度の、希望も何もない苦し紛れの一撃。


 しかしルードの振り下ろした合金の刃にネイムレスのチェーンソー型の喰らい付いた瞬間、その考えは覆された。

 ブレードユニットと交差したネイムレス・メサイアの高速回転する刃は、合金の刃に喰らい付き、火花と甲高い金属同士の摩擦音を上げて合金の刃を真っ二つに分割した。

 金属塊が地面を打つ軽いとは言いがたい音に、両者は時が凍りついたような錯覚が走る。

 それでも不利な状況には変わりはないレイは、自身の目的を果たすべくブースターを吹かせて1歩踏み込んだ。


『……恨むならアンタらの上官を恨めよ』


 そう言いながらレイは右肩から左脇腹へ線を描くように、チェーンソーの刃を振りぬいた。

 ネイムレス・メサイアと銘打たれたそのチェーンソーは今まで使っていたブレードユニットより遥かに重いが、その手ごたえは比べ物にならないほどに軽い物だった。

 そしてD.R.E.S.S.という現代社会において最強とされていた鎧ごと分割され、ブースターが破壊された事によって生まれた誘爆の炎に飲み込まれてしまった仲間。

 その有様に動きを止めてしまった2機のクラック達の懐へ、ネイムレスはブースターを吹かせて一気に踏み込む。


『理解する前に死ね』


 そう呟いたレイの言葉に我に返ったのか、盾を装備していたクラックがシールドバッシュでネイムレスとの距離を取ろうとする。

 しかし1つの確信に至っていたレイは退くことはせずに、チェーンソーを一気に突き出した。

 咄嗟に押し出された合金製の盾をチェーンソーの刃は食い破り、そしてその刃先は水音を合金の鎧が削ぎ落とされていく音に混じらせながら盾の向こうの世界を凄惨な物に塗り潰していく。


 ――振動刃(ヴィヴロブレード)みたいなもんって事なのか


 物言わぬ死体と成り果てたクラックを蹴り飛ばす事でチェーンソーの刃を抜いたレイは、その至った確信を噛み締めるように未だ高速回転する刃を見つめる。


 西洋剣のように叩き斬るのを想定した分厚く作られた従来のブレードユニットと違い、チェーンソーの機構で再現する事で、それすら斬り遂せて見せた高周波振動装置。

 原型は残らなかったもののグレネードキャノンさえ耐えてみせた盾を、貫通させても変形もしていない外歯とガイドバー。


 それは間違いなく"金では買えない"、そしてレイにとって"必要になるもの"だった。



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